2008-01-16 20:01:10

『女神の誓い』〈タルマ&ケスリー1〉

テーマ:海外SF・ファンタジイ
本作は、おそらく、アメリカのファンタジイにとって記念すべき一作である、と思う。
もちろん、R・E・ハワードのコナンなどに始まる、いわゆるヒロイック・ファンタジイの系譜は、アメリカで始まり、アメリカのものが主流なわけだが、
そもそも、そこに、「男じゃなくて女が主人公(しかもお姫様ではない)の作品を!」
そういう主張をしたのが、マリオン・ジマー・ブラッドリーであり、
いわばその門下生であるマーセデス・ラッキーは、当然、女性を主人公とするヒロイック・ファンタジイ(というより、ソード・アンド・ソーサリー)作品の旗手といって間違いはない。
しかも、マーセデス・ラッキー作品の場合、これといったフェミニズム臭が感じられないというのも良い点だ。

しかし、私が本作を「記念すべき」と思うのは全く違うところにある。
それは、本作以前のメジャーな諸作品が、たいてい、「外国の神話や伝説」から取材しているのに対して、本作では、全くそういう要素がないという事だ。
かといって、ポール・アンダースンやアンドレ・ノートンが試みたように、ネイティヴ・アメリカン(のもの)を取り入れたわけでもない。
では、まるっきり完全に架空のものなのかといえば、おそらくそうというのでもなく、
どうやら、作者の生活に密接に関わりのあるものごとをバックボーンにして作られているらしいというのがひとつ。
このため、非常に「地に足の着いたファンタジイ」と思える。
大げさに聞こえるかもしれないが、アメリカ人が産んだ、「ほんとのアメリカ人のファンタジイ」と感じられるのだ。

そして、もうひとつ、大きな魅力となっているのは、主人公の片割れが所属する、シン=エイ=インという遊牧民が、実にリアルなエキゾチックさで描かれているというのがあげられるだろう。
面白いことに、アメリカで一大人気をとってきた作品には、同じ要素を持つものが他に二作品ある。
ひとつは、エドガー・ライス・バロウズの〈火星シリーズ〉であり、
もうひとつは、フランク・ハーバートの〈デューン〉だ。
いずれも、架空の民族をリアルに描いただけでなく、その民族が使う「言葉」を構築し、作品中で多用している。
まさしく、読者が「はまる」大切な要素なのだ。
うまくできていさえすれば……!
そしてまさしく、本作もそこに該当するというわけ。


女神の誓い (創元推理文庫)/マーセデス ラッキー
1995年11月17日初版
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