2007-05-12 23:12:59

『チェーザレ 破壊の創造者 (3) 』

テーマ:歴史・時代小説
最新巻にあたる第3巻では、またしても興味深い人物がカミングアウトする。
あえて「登場」と言わない理由は、実はこのキャラ、1巻でもすでにちょっと顔を見せているからなのだ。
もちろん、その時点では、何者なのかわかるすべはないのだが。
それは、誰あろうマキアヴェッリその人。
『君主論』の著者であり、今後チェーザレの人生と深い関わり合いを持つ事になる男だ。

ここらへんの経緯をある程度知っているならば(たとえば、『君主論』そのものを読んでいなくても、『チェーザレ・ボルジア-優雅なる冷酷』あたりをおさえてあればOK)、この物語におけるマキアヴェッリに、興味をおぼえずにはいられないと思う。

しかし、そういう、ある意味内輪受け的興味の他に、本巻は演出上実に面白いクライマックスがある(笑)。
それは、チェーザレがピサを離れている間、大学で我が物顔にふるまっていたフランス団のアンリとの対決だ。
実を言えば、大学内での、学生団どうしのせめぎ合いも、当時のヨーロッパ社会を反映していてなかなか面白いと思うのだが、それ以上に、このシーンはダイレクトに面白い(笑)。
ガリアの大男、アンリを雄牛に見立てて、作者は、実に爽快な演出をしてのける。
すなわち、雄牛アンリに対し、チェーザレに闘牛士の役割を振っているのだが、「優雅なる冷酷」さを持つチェーザレに、なるほど、これほど似合う役どころは、ない!

余談ながら、アンリを最初に牛と見立てたアンジェロは、ミノタウロスを連想しているのだけれど、ミノアやクレタでも、闘牛は行われていたらしい。もっとも、スペイン風のそれとは、いささかおもむきが異なるもののようだが。突進してくる牛の角をつかんで、飛び越えるというアクロバティックなものだという話だからね。

闘牛の演出は、スペイン風に、華麗に展開するが、チェーザレが裏で操る企みは、むしろクレタ風にアクロバティックに思える。
しかし、無謀さのなかに緻密さがあるところもまた、チェーザレの魅力ある側面と言えるのだろう。


惣領 冬実
チェーザレ 3―破壊の創造者 (3)
2007年4月23日初版

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