2005-12-02 21:28:26

『レイジング・アトランティス』 寒いです流されます死にます謎がいっぱいです!

テーマ:冒険・アクション
アトランティス。
そいつは、昔から人の心を魅了してきた。
そう、プラトンが『対話篇』の中で触れている、あの伝説だ。
太古の昔、高度な文明を誇り、オリハルコンを使用し、太陽を崇めたその国は、海の底に沈んだという。
理由は、火山の噴火だというのだが。

でも、そいつはいったい、どこにある?

日本における、邪馬台国がそうであるとおり、アトランティスの位置は、そりゃもう、地球上のありとあらゆるところが
「ここです!」
と名乗りをあげさせられている。

そりゃね。邪馬台国もアトランティスもそうですが、文献が皆無ではないが、圧倒的に少ない。
だから、いろんな場所が候補地になってしまうのだ。

しかし、アトランティスは。
存在したかどうか、邪馬台国よりはるかに疑問視されもする。
そりゃあねえ(‥
邪馬台国なら一応歴史の内だが、アトランティスは1万年以上も昔の話だと言うのだからな。

でも、そんなおそろしく昔に、現代よりも高度な文明が、もしほんとに実在したとしたら?
そして、それが人類の文明の祖型だったとするなら?
そこにロマンを感じる人は少なからず、いる。
いや、「たくさん」いるので、なまじっかのネタでは、手垢がつきすぎていて、全くつまらないものになってしまうだろう。

そういう条件を考えてみると、本作は実によく出来ている。
NASAの宇宙計画、エジプトのピラミッド、メソアメリカの古代文明、南極などに関する最新の知識を駆使して、血湧き肉躍る冒険小説に仕立ててあるのだが、なんとこれ、「処女作」なんだって。
発表された場は、Amazon.com。すなわち、オンライン小説だったのだ。
ベストセラーになり、その後発売されたペーパーバックも同じくベストセラーになった、という。

アトランティス。
まず、そいつが南極にありました、とする。
今の南極って、日本ではあまり話題にならないけれど、漠然と、
「どこの領土でもなく、各国が協力して自然観測などを行っている場所」
っていうイメージ、ない?

ところがどっこい、南極という、「不可侵」のはずの土地。
まず、そこを、国際政治の最前線として扱う生臭さ。
いや、それだけではない。
同じく、夢と理想に満ちていそうな、宇宙開発。
そいつのヒーローとして名高いNASAも、南極同様、容赦なく描かれる。
なんつっても、主人公の養父であるイェーツ将軍は、元火星宇宙飛行士。
ニクソンが「宇宙開発なんかやめやめ」と横やりを入れるまで、火星に行くトレーニングをしていた、という人物。
これがもう、悪人なんですよ(‥
冷酷で、極悪で、おまけにタフでクールなコマンドーで、いいトシのくせに息子より凄い大活躍をしちゃうのだ。
言ってみれば、息子が頭脳労働、養父が肉体労働でございます。
いいのか!(笑)
(しかも、重ねて言うが、悪人です)。

そう、息子は頭脳労働担当だ。
性格的には、やや甘な正義漢かもしれないが、考古学者としては、「人間の屑」。
というのは、古代の遺物を、丁寧に保存研究するという、考古学に必須の姿勢が、根本的に欠けているのだ。
そういうとこ、ある意味インディ・ジョーンズに似ているのだが、インディ以上に、過去の遺物を「単なる謎」(およびそれを解読するための生データ)とみなし、容赦なく使う。
血はつながっていなくても(そして、悪人かどうかは別としても)、親子ですねー。
しかし、こういう人物だからこそ、氷上(というか氷中)に姿をあらわしたアトランティスの謎を解くには、適しているというわけだ。

この親子が、バチカン及び国連から送りこまれた手勢と、きったはったを繰り返しながら、そしてお互いに対立しながらアトランティスの核心に迫っていくのだ。

舞台は南極です。
言っておきますが、零下30度をこえる、むちゃ寒い環境だよ。
そこで、まず、アトランティス出現のせいで、氷がとけるのだ。
とけるったって気温は上がらないのだよ?
(いや、上がるかしれないが、温帯以南の夏になるわけじゃーない)。
主人公は流されまくる!(ああ、冷たそう。てか絶対寒いよね)。
怪我もしまくる!
考古学者ってのはアウトドアでやる仕事だったりするので、もとから基礎体力はあるのかもしれないが、なまじなコマンドーより大変。

そして、名無しのキャラどころか、ちゃんと名前を与えられ、それなりに肉付けもされたキャラも含め、
死にます、
死にます、
死にます、
死にます、
惜しげもなく、どんどん、どんどん、キャラが死ぬ。
しかもあっさり死ぬ。
(当然、名無しのキャラは、ごっそりまとめて、サクッと殺されます)。

謎から謎、
トラブルからトラブル、
登場人物は銃をつきつけられ、銃をつきつけ、
爆発物をしかけ、
拷問され、
割れ目などに落ち込んだり奔流に流されたり、
なにかに押しつぶされそうになったり、
はっきり言って、行き着く暇は、ない。

じゃあ、すごいジェットコースターノヴェルなのかと言うと、まあ確かにそういう側面もないわけではないけれど、それ以前に、
「容赦ない」
としか、言いようがない。
キャラの扱いだけでなく、
前述のとおり、ふつう、ひとが理想だ、夢だ、ロマンだと思うようなものが次から次へと、「化けの皮」をはがされてしまうのだ。

スタートからクライマックスまで、全てその調子。

そういう点では、この小説、
「好き?」
と言われると、
「う~ん」
と言わざるを得ない。

面白いけどねえ。
酷薄すぎる。


トマス・グレニーアス, 嶋田 洋一
レイジング・アトランティス
ハヤカワ文庫NV
2005年11月30日新刊
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コメント

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6 ■後半は

>tujigiriさん
やや説明的になるのがいかんのかなあ(笑)。どうしても「謎解き」が入る分、仕方がないのかもしれないが。

5 ■読みましたー

前半のほうが緊張感ありましたね~。
まずまずでした。

4 ■本の縁

>tujigiriさん
うん、それはまさしく、縁があったとしか言いようがないですね。
そもそも小さな書店でハヤカワ文庫をうまく見つける事ができるというのが、今、大変確率低くなっているのですから。
とりあえず……寒い時に読むのがお奨めです。

3 ■うまづら

買ってきました。
と言っても魚じゃないですよ。

小さい書店だったのにドンピシャで見つかりました。縁があったんでしょうね。
今年中には読めるかな?

2 ■かわはぎ

tujigiriさん、いらっしゃいませ。
おー、そういや、tujigiriさんむきかもしれません(笑)。
ほんとに容赦がないですよ、これ。
まさしく、甘っちょろいイメージには、背後からばっさり斬りつけてます。

1 ■うーむ

こいつはソソられますね。アトランティスに悪人に化けの皮はぎ(笑)。
夢のコンボかもしれない。

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