2005-11-26 21:59:12

『世界の涯の物語』 または、驚異の書

テーマ:海外SF・ファンタジイ
ダンセイニ。
思えば、なんと不思議な語感であることか。
Dunsany とつづるこの名前は、アイルランドの地名であるそうだ。
すなわち、Lord Dunsany は、その地の、世襲の領主というわけだ。

実際、ダンセイニ卿の物語は、どこかアイルランド風(または、ケルト風)の色彩が感じられる。それはときとして、『ペガーナの神々』のように、冷たい黄昏光の中を跳ね動く影絵のようなイメージでもあるけれど、一方、人間と親しむ類の妖精のように、意地悪さと剽軽さが半々の、不思議な物語であることもある。

本書におさめられた短編は、いずれも、後者に近いものだ。

世間を、日の当たるところと日陰の二つにわけたとするなら、体の2/3を日陰に置いているような、「罪のない」盗賊や、ロマンスの中の海賊、あるいは不思議な運命に見舞われた水夫、これら「さまようものたち」が、聞き手のもとに、ちらり、ちらりと「不思議」の断片を放って寄越す。

それは、世界一のチェス名人をものともしない水晶球であるかと思えば、
海の上も陸の上も走る船(しかも牡牛の群れにひかれて疾走する)かもしれないし、
蜘蛛の神が膝に抱いた、人間の頭くらいもあるダイヤモンドであることもあり、
あるいはまた、アメリカ原住民に襲われた謎の都の神官がしたためた呪いの文言なのかも。

自らも旅行家であったダンセイニ卿が、見聞きしたこと、
聞き知ったこと、
あるいは想像の翼をはためかせたことなどから、
気ままに紡ぎ出した幻想的な「ホラ話」。

どれも、とても短いので、気軽にぽつぽつ読むもよし。
最初から一心不乱に読みふけるのも良いだろう。
しかも、この河出文庫版は、シームによる幻想的な挿絵がもとのまま全て収録されているということなので、挿絵の方もたっぷりと楽しむ事ができる。

いやあ、ダンセイニといえばシームだからねえ……!


ロード・ダンセイニ, 中野 善夫, 中村 融, 安野 玲, 吉村 満美子
世界の涯の物語
河出文庫
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コメント

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2 ■今更短編全部

しのぶさんいらっしゃいませ。
そうなんですよ、ダンセイニ。
今まで、ちょこちょこ、いろんな文庫から少しずつ出ていたわけですが、それを、なんつか一気に。河出文庫から出るのかとびっくりしたのです。
しかも、短編集、どれも完訳というじゃないですか。いやー感涙。
シームの絵まで満載で、手にした時はびっくりでした。

1 ■いやもうこの本は

好きでしょうがないものが集まっているので、もう好きとしか言いようがない(笑。
すぐ読めてしまう長さでいて、読み終わるのがもったいないような世界が、たしかにこの本の中にはあるからだ。
文庫化と聞いて、ゆっくり、楽しんでくれる人が増えるといいなと思ったのは憶えている。いや自分としては、まだ読んでないダンセイニがあるなんて、と、わくわくしたわけですがね(笑。

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