2005-10-31 21:49:39

『三半球物語』と『その他の物語』

テーマ:海外SF・ファンタジイ
本書には、ペガーナの他、もう2つの短編集が収録されているのだ。
それが、『三半球物語』と『その他の物語』だ。
(その他の物語、は短編集ではなく、作品群と言うべきか)。

こちらは、ペガーナのような神話風物語ではないけれども、それぞれ、独特の雰囲気を持っていて楽しい。

『三半球物語』、これ、タイトルが面白いよな。
三半球って、なに?
推測だが、「ヨーロッパ」でも「アメリカ合衆国」でもない、第三の世界。
これを表したかったのじゃないかなあ。

事実、ここには、アフリカなどに着想を得た短編が幾つも収録されているのだ。
とはいえ、アフリカの泥臭さ、おそろしさ、理解できない異文化、というようなものがとりあげられているのではない。
ここでも、『ペガーナの神々』にあらわされているとおり、エキゾティックな美しさのなかに、
キリスト教あるいは白人の文明に圧迫される側の、そうだなあ、日本人好みの
「滅び行くものの美しさ」
これが描かれている。
ゆえに、アフリカを舞台にした短編も、他の作家には全く見られない、独特の美しさが感じられる。

そして、『その他の物語』におさめられた短編は、うってかわって、都会的であり、なかなか洒落たものが多いのだ(笑)。
幽霊譚である『谷間の幽霊』は、いろいろなアンソロジーにおさめられていて、有名な作品だけれども、
幽霊となった名プレイヤーたちが演じるクリケットを毎晩見に出かける老人の物語、『秋のクリケット』も同じくらい味わい深いし、
アイルランド人としてのダンセイニ卿が、そこはかとない皮肉と誇りをこめて描いた『もらい手のない〈国の種〉がヴァルハラから持ち去られた事の次第』や『白鳥の王子』などもある。
(白鳥の王子は、おそらく、リール王の子供たちの伝説をネタにしているのだと思う)。

だが、私が一番好きなのは、ちょっと変わった幽霊譚である『電離層の幽霊』だ。
SFといっても良さそうなこの短編、いろんな有名人の幽霊が、わらわら、わらわら、登場するもので、なんとも楽しいのだ(笑)。
そうだなあ、ハロウィーンには、この短編、きっとぴったりだ。
科学万能主義が、まだまだウブだった頃の、微笑ましい科学者像も登場する。


ロード・ダンセイニ, 中野 善夫, 中村 融, 安野 玲, 吉村 満美子
時と神々の物語
河出文庫
2005年9月20日新刊
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