2005-08-29 20:43:20
『フェイダーリンクの鯨』〈クレギオン2〉
テーマ:日本SF・ファンタジイ
鯨……クジラ。クジラは、宇宙に、なぜかよく似合う。
クジラが出てくる、宇宙を舞台としたSFは、けっこう、ある。
私は宇宙が好きだし、
クジラも好きだ。
でも、どういうわけかクジラが出てくるSFはあまり好きではない。
いや、どういうわけか、なんて言わなくても良いか(笑)。
それは、クジラなSFが、どれも欧米人の目を通して描かれており、それがまた、
「クジラを捕るのは悪いこと。クジラを捕るなんて野蛮人」
と言わんばかりの、いささか感情的なクジラ保護論者の影響が感じられるものだからだと思う。
なんつーか。
クジラは素晴らしいよ?
そりゃもう、素直に、クジラってのは凄いし、見ていて気持ちがいいし、ステキだとも思う。
でも、クジラをちやほやするのは、ちょっとゴメンかなあ。
ゆえに、クジラというもののすばらしさを投入しつつ、かつ、宇宙を舞台として、描きあげた日本人作家がいるっていうのは、嬉しい話じゃないか。
しかも、クレギオンである。
面白いんだよ(笑)。
さて、宇宙といっても、その環境はさまざま。
ここは、ちょっと太陽系内に範囲をせばめてみた場合、
水金地火木土天海冥。
天体望遠鏡で観測をするとしたら、どの惑星が好き?
そう問いかけた場合、たいてい、トップに躍り出るのが、土星。
なぜって、そりゃ壮麗な「輪」があるから!
単にガス巨星というなら木星もそうだし、木星は木星で大赤斑が人気(これ、好き)。
土星より外側の惑星にも、輪があることは、今では確認されている。
でもやっぱ、輪をもった惑星はどれ、と問われるならば、筆頭に上がるのは土星(大好き)。
現実、輪がどんなもので出来ていようが、なんだろうが、土星の輪というのは、それだけで、天体少年の心を、ぞっくりとえぐる魅力を持っているのだ。
そして、この物語は、土星でこそないものの、土星にとってもよく似ているガス巨星の、しかも、輪が舞台。
くぅぅぅぅぅぅ。
これだけでこたえられないよなー。
輪の上というか、中というか、そこで水素を集めて、売ることで生計をたてている、ハイドラー(水素商人)の家族の様子も魅力的。
0Gに適応した家族の動きは、統制のとれたバレエのようなのだそうだ。
運動エネルギーすら、保存し、リサイクルしなければならない、厳しい環境でこそ生まれる、美しさ。
0G。
そういえば、水中も0Gにかなり近い環境だ。
ということは、ハイドラーの動きは、水中にいる人の動きとも、近いのかね。
もちろん、そっくりそのままとは言わないけれど。
ところが、このハイドラー、立ち退きを迫られていたというわけだ。
どうしてかというと、なんと彼らのいるガス巨星を、太陽にして、その軌道上をめぐる衛星(当然、惑星サイズだ)を、人の住める環境にしようよ、という大計画が動き出しているため!
そこで注目されるのが、
「ガス巨星には生物がいるのかどうか?」
生物がいるならば、環境保護・生態保護の観点から、ガス巨星を太陽にかえる事は許されない!
でも、いるんですかね、ガス巨星なんぞに生物が。
いるとしたら……クラゲに似た、気嚢生物か?
それとも。
たとえば。
魚とか……。
クジラみたいな……!?
宇宙、クジラ、ガス巨星、ガス巨星の輪!
こんなにも魅力的なものを取りそろえておいて、淡い恋あり、アクションあり。
面白くないわけ、ないでしょう。
ぺたり、太鼓判。
野尻 抱介
フェイダーリンクの鯨―クレギオン〈2〉
ハヤカワ文庫JA









