『竹の民俗誌』 日本のいたるところにある、竹
テーマ:人文・社会・ノンフィクション
『竹の民俗誌』。
この本を、喜八さん のブログで紹介 されているのを見た時に、なんだか面白そうだ、と思ったわけだ。
それにしても、竹か。
どうでしょう、竹って?
本を読む前に、竹と民俗というキーワードでどんなものが出てくるか、ブレーンストーミング風に言葉をあげてみることにした。
たとえば、地鎮祭の竹のかこい。
四方にたてた四本の竹にしめ縄をはっている、あれは竹で結界を作ってるんだよな?
たとえば、門松。
言うまでもなく、正月に門先へゆわえつける縁起物だが、あれも真中に三本の竹が入ってる。
たとえば、七夕。
子供の時は、誰でもやった事があるだろう。
星を祀る行事だけれど、その際、いろいろな飾りを「笹(竹)に」結びつける事になっている。
たとえば、出産時の古い習俗。
私は実際に見た事はないが、安産となるように、米を「竹の筒に入れて」、産婦の枕元で揺り動かしたという。ふつう、これは、米の持つ呪力という視点から語られるのだが、容器としては、必ず「竹筒」が用いられる事は、重要ではないか?
そして、竹取物語。
光る竹の中からあらわれた小さい女の子が、みるみる大きくなって……という、日本で最初の「物語」(あるいは、小説)だと言われている。
不思議なものでなくても良い。
竹で作られたものは、じつにたくさん、身の回りに満ちている。
もっとも、そのかなりの部分が、ビニールだのプラスチックだのステンレスにおきかえられてしまったけれど、たとえばザルとか、せいろとか。
みんな、竹で作られてたのだ。
昔の生活用具は、竹で作られたり、竹が使われたりしていたものが、やけにたくさんあった。
そして、考えてみると、竹って、葉っぱも皮も、根っこも、何もかもまるごと、使用されていたように思える。
じゃあ、今はだんだん姿を消してしまい、もっと現代的なマテリアルにおきかえられてしまって、竹は忘れられた素材になったかというと、さにあらず。
最近、竹炭ってやつが、いろんな意味で注目を浴びているんだそうな。
もともと、いろいろな薬効とか有用な成分もあるという竹なのだが、喧伝される「竹炭の効用」は、化学的または薬学的に信じられそうな感じのものから、
「いやーそれは現代の迷信だろう!」
と言いたくなるようなものまで、幅広くあるようだ(笑)。
そして、ともかく、日本の里山はどこへいっても、竹が見られない場所はない。
という気がする。
それほど竹藪も竹林もポピュラーだ。
ああ、日本って、昔から、竹、竹、竹の国だったんだな?
ところが!
この本のページをめくって、まず最初に驚かされるのは、こう書かれている事だ。
「古代の日本には、今のようには、竹がありませんでした」
……はい?
じゃあ、あのおそろしく種々さまざまの、数多の竹器はなんなのだ。
竹って。
そもそもは、熱帯または亜熱帯の植物なんだそうだ。
日本列島では、暖かい南西部にしか、竹はなかった。
それより北にはえていたのは、竹の仲間ではあるが、竹とはいえない、笹だけだったんだって。
あーなるほどね、そういや、熊が出そうな山の中って下生えは全部熊笹だったりするな。
あれは山歩きする時すごくうっとうしくてさ……って、違う、そういう話じゃない!(笑)
では、いったい、竹はどうやって日本に広がっていったのか。
竹器は、どうやってポピュラーになっていったのか?
いったい何者が、竹とか竹器をもたらしたのか?
日本人の源流に関する話とあいまって、これがなかなか面白いんだな。
そして、当然、『竹取物語』についても大きく紙数が費やされているのだが。
ええっと。
『竹取物語』って、ものすごい量の注釈書が、近代から現代に至るまで、出されているんだそうな。
(まあ、そうだろうな)。
でも、そういう「注釈書」を読んでいるかって言われたら、ふつー、そういうのに手を出すのは、国文の人くらいだろう。
正直、私だって、読んだ事がない。
川端康成が竹取物語マニアだったなんてのも、これっぽっちも知らなかった!
と、まあ、そういう事を前置きにしながら、『竹取物語』についても、非常に面白い切り口で、いろいろと解釈してくれる。
不詳である作者の人物像や、竹取物語で語られている事の意味などは、それこそ、大学の国文科でそういうものを研究した人ならば、常識として知っているのかもしれないけれども、
「かぐや姫の物語」
としてしか読んだ事のない者にとっては、新鮮で、非常に興味がわきます。
なぜって。
竹取の翁が、田畑すら持つことのできなかった、貧しい庶民であった、まあこのあたりは、単純に読んでいても、想像がつくことだ。
しかし、竹取りをする階層の人が、いったいどういう人々であったのか。
ここまでは考えなかったなあ。
それが、サンカ、あるいは古代の「隼人」に連なる人々、あるいは文化であるという見方を、著者は説得力あふれる筆致で、書き表している。
いやあ、これを読んでいると、『竹取物語』がミステリに思えてくるから不思議だ。
『竹取物語』に含まれるいろいろな伝説と、その素晴らしい構成力についても語られているが、
どうして、竹の伝来、竹器の技術を伝える人々の正体、そして竹取物語を通過して、竹、海洋民、月……ともっていくところは、著者の構成力も『竹取物語』に劣らないではないか(笑)。
新書なので、こういった内容であるにもかかわらず、比較的あっさりと通読できるところも良い。
旧七夕を控えて、ひとつ、この本はいかがですか。
沖浦 和光- 竹の民俗誌―日本文化の深層を探る
岩波新書










1 ■やっぱり竹?
自分の恩師が、以前『子育ての知恵は竹林にあった』という本を出しました。
なんで、日本人=竹という繋がり方はなんだかうさんくさくて(笑)これもどうなのかなぁって思ってしまいます(爆)
読んでみて、確かめてみないとですね。
ちなみに、恩師のこの本は、読まなくていいです・・・(先生ごめんなさい)