2011-10-30 16:55:50

『失われた都 (下)』〈イサークの図書館1〉

テーマ:海外SF・ファンタジイ


女性というものは、最大の謎(ミステリイ)である、という言葉がある。
もちろん、これは、主に男の視点から語るものなのだが、これは「女性は子宮でものを考える」という言葉と、アル点で趣旨をひとつにしている。
子宮、つまり男にはない機能が女性の根本である、という考え方だ。
すなわち、この機能があるため、女性は自分の最優先的な行動は、子供を守るためのものとする。
行動だけでなく、思考も、同じである。
そのため、「論理」をこえたところで決断し、行動する可能性がある。
しかし、男には子宮というものがないため、このような突飛な行動は理解できない、というわけだ。

さて、本作でも、ふたりの女性(うち一人が、ジン)がミステリイを解く鍵としておかれている。
本作の中で繰り広げられる謀略は、ほぼ全て、男の手によるものなのだが、なぜかその鍵となるのが女性なのだ。
そして、このため、男が仕切っていると思われる謀略に、微妙なゆらぎが生じてしまい、物事が「運命的に」思わぬ方向へと転じていく。
なかなか、面白い構図であると思う。
まあ、この女性的部分というのが、すなわち「女性的な(神秘)力」であり、古代は「(女性の)智慧」とみなされたものに通じるのだから、男がかなうわけはないのだが。

一方、そのよおうな要素とかかわりのない部分もある。
それが、教皇ペトロヌスに関する部分だ。
策略によって一度は教皇の位をしりぞき、故郷で漁夫をしていた老人、聖書に語られる使徒ペテロもまた、漁夫をであったこと、中世の聖杯伝説で、パルシファルが現れるまで、聖杯を護持していた老王も同じ名を負っていた事を思うと、なかなか面白い。
そういう名を持つ「教皇」であるペトロヌスは、やむなく教皇として復位するのだが、彼がなんのために復位し、どのような結末を選んだかというのは、過酷でもあるし、おそらくシリーズの先につながる重要な要素でもあるのだろう。
実は、彼の決断も、ある重大な「喪失」にかかわるものであって、巨大な図書館の喪失と重ねられるべきものだからだ。
一軒、マイナスのようにみえる決断だが、実は、「再生のための喪失」である事をにおわせており、ここもまた面白いところ。


失われた都 (下) (イサークの図書館)/ケン・スコールズ
2011年9月25日初版
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2011-10-29 08:25:43

『失われた都 (上)』〈イサークの図書館1〉

テーマ:海外SF・ファンタジイ

本を読むのが好き、という人であるなら、やはり、図書館には格別の思い入れがあるだろう。
ペーパーバックスだの、文庫本だの、という廉価な本が巷にあふれるようになっていても、ハードカヴァーの本が並ぶ場所というのは、なにか格別の雰囲気があるようだ。

さて、世界で最も有名な図書館といえば、焼き滅ぼされたアレクサンドリアの大図書館ではないかと思うが、たとえどれほど昔の話だろうと、「図書館が焼かれた」というエピソードは、ショッキングではなかろうか。
これを異世界で再現したところから始まるのが本作。

この世界では、かつてロボットやコンピュータのようなものを使用する文明があった。
ところが、人為的な災害により、その文明は失われてしまい、はるか過去の者となってしまった。
災害が単独なのか、複数あったのかはまだよくわからないのだが、歴史に残されている最も近い災厄は、非常に強力で破壊的な呪文によって引き起こされたとされている。
これが、世界観の前提。

そして、物語の当代においては、それら過去の技術的・魔法的遺物を発掘し、人類がかつて・そして今持っている知識や技術情報の全てを、ひとつの宗教組織が巨大な図書館に集積していたというわけ。
まあ、宗教組織であって、支配者は「教皇」と呼ばれているのだけれども、信仰の話はほとんど出てこない。
まあ、ローマ教皇庁に似たものが、人類の知的遺産を一カ所に集めて管理していた、ということだ。
この図書館が、図書館のあった都ごと、いきなり滅ぼされてしまう!

何者がその破壊を引き起こしたのか?
なんのために?
知的遺産をどのよういして再サルベージするのか?

もちろん、自然災害で滅びたのではないから、そこには、人間の欲望が関与しており、暴力が用いられたという事であれば、それは戦争に発展する。
図書館を中心に据えながら、非常に複雑で何重にもかさなりあった謀略の物語なのだ。
ミステリではないが「誰がどのようにして何をした」が、次々どんでん返しのようにあらわれてきて、スリリングだし、面白い。


失われた都 (上) (イサークの図書館)/ケン・スコールズ
2012年9月25日初版
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2011-10-28 16:25:58

『防衛戦隊、出撃!』〈海軍士官クリス・ロングナイフ3〉

テーマ:海外SF・ファンタジイ

本巻では、中盤から始まる戦闘シーンに、(ある目的で)延々とバグパイプにあわせて歌われる勇壮な歌が軍事ネットワーク上に流されるということになっている。
これは、主人公クリスの友人にして有能な同僚(というか、一応、部下か)が、アイルランドの文化を受け継ぐバックボーンを持っているというところに由来するのだが、本作以外にも、アメリカのミリタリーSFには、バグパイプで軍楽が演奏されるシーンが時折登場する。
まあ、アイルランド系移民は多いからね。(そして、アメリカはなのちっても、植民地からできた国なので、ある程度多くを占めるアイルランド系移民がもたらしたものが、代替として、「祖国愛」に結びつくのかもしれない)。

そう、この音楽は、複数の意味で効果的な役割を果たしている。
人は、誰も戦争など心から望んでいたりはしない。
ならば、どういう時に人はみずから銃を取るのか?
それは、何かを切実に守りたい時。
まず第一に、自分の家族、そして愛するもの。
それを広い意味にとった時、「国を守る」ことにつながる。
アメリカのミリタリーものは、だいたい、この考えをベースにしているかと思う。

本巻は、まさしくそういう考え方が根底にある。
なぜなら、クリスの所属するウォードヘヴンは、ロングナイフ家に敵対するピーターウォルド家と、彼らが支配するグリーンフェルド同盟の巧みな政治的罠により、本拠地そのものにナイフをつきつけられる事になるからだ。
単に、軍艦が攻め込んでくるというのではない。
政治的な陥穽によって主星がほとんどまるはだかにされるだけでなく、クリスもまた、卑劣な政治的罠にかけられ、窮地に追い込まれてしまう、そこへ敵が来る、というわけ。

そういう死地にあって、彼女と仲間たちが、どのように故郷を守り抜くか、勿論、圧倒的な劣勢で立ち向かわざるをえないのだが、そういう燃える展開を助長するのが、冒頭に述べたバグパイプによる歌なのだ。
実在の歌なのかどうかは、残念ながらみつからなかったのだけれども、バグパイプによるミリタリーマーチの典型をひとつ貼っておく。

戦いそのものは、本島に壮絶だし、今までにおなじみになった人も、本巻ではじめて登場した人も、何人もが戦場で命を落とす事になる。
現在本国では9巻まで出ているというこのシリーズ、最初の3巻(つまり本巻まで)が、三部作的扱いなのだそうだ。
すなわちここで一区切りというわけで、窮地を脱して(敵を撃退するための)死地にのりこむところから、実際の宇宙戦まで、掛け値なしに凄い盛り上がりだ。
そして、この先もシリーズが続くため、完全なものではないが、最後は台風一過の空が見え、クリス自身にもどうやら新しい展開が待っていそうなラストになっている。


防衛戦隊、出陣!: 海軍士官クリス・ロングナイフ (ハヤカワ文庫SF)/マイク シェパード
2011年10月25日初版
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2011-10-26 19:10:30

『百年の呪い』〈新・古着屋総兵衛2〉

テーマ:歴史・時代小説

当代の総兵衛は、今風に言うと、日経ヴェトナム人であり、今回あらためて日本に帰化したということになる。
もちろん、日本人とヴェトナム人の両方の血が流れているのだけれど、写真などでヴェトナムの人々を見る限り、いわゆる、日本の「南方系」の顔立ちと、そう違っているとは思われない。
ゆえに、本巻で、襲名したばかりの総兵衛に、一部の人々が、どことなく異国の香りを感じるとしたら、それは彼が生まれ育った異国の文化の影響であろうかと思う。
長らく食べてきた異国の料理がかもしだす微妙なにおい、立ち居振る舞い、これらのために、観察眼の鋭い人などは、通常の日本人との違いを感じるのだろう。

そして、ヴェトナムから率いてきた一族には、一日もはやく日本人となる事を求めながらも、総兵衛、裏の顔を見せる時は、加齢な異国的ないでたちなのだ。
前シリーズでは、いさあか歌舞伎的な味わいがあったけれども、今回は同じけれん味でも、異国趣味がうまく塚wれてりう。
また、こういう派手な演出が、この作者は得意だ。
すがすがしく、かつ派手やか、ヒーローの名にふさわしい。

一方、彼がまず対決しなくてはならないものが、百年かけた呪いというのも、ちょっと面白い。
中国から伝わった風水をベースにした呪術のようだけれど、それをつきとめるのが、ヴェトナムの……というか、中華系下と名無人の占術師だ。
当然、こちらも風水などは心得ている人物だろうけれど、同じ中国系呪術を用いて、日本人とヴェトナム人が対決するという絵なのだ。
同じ源流であっても、発展方向は少しずつずれているだろう。
そういう違いが、おそらくこのシリーズでも、巧みな木細工を作っていくに違いない。

まさしく、時代小説でありながら、「国際的」。
江戸時代以前が舞台ならいざしらず、鎖国をしていた時代のものであるのに、国際色豊かというのも、ユニークだ。


百年の呪い―新・古着屋総兵衛〈第2巻〉 (新潮文庫)/佐伯 泰英
2011年10月1日初版
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