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2011-01-31 19:35:41

『ムーミンママのお料理の本』 要するに北欧の料理

テーマ:グルメ・料理・ドリンク

日本ではたぶん、アニメの方がだんぜん有名なムーミンなのであるが、関連書としてこんな本があるのをご存じだろうか。
ムーミンママのお料理の本!
おおー。

といっても、かれらが冬眠の時に食べる松葉の料理ではない。
さすがにそれは、人間は食べられないからねえ。
そう、内容は、北欧の家庭料理の本なのだ。
実際、ムーミン(アニメではなく本の方ね)に、どれほど料理のシーンが出てきたかはあまり印象になく、実は一番記憶に強く残っているのが、前述の松葉になってしまうのだけれど、
ムーミンママがいかに家庭的なひと(?)かは、言うまでもないだろう。
ゆえに、彼女が日々家族に出している料理はこんなかなあ、とイメージしてもいいと思うのだ。

だがしかし、レシピ通りに作って日本人の口にあうかというと、疑問な部分もある。
もちろん、美味しいものもたくさんあるんだけど、これは~? というものもあるのだ。

そもそも、本日なにゆえこの本を思い出したかといえば、ちと、この頃ケルトものなどを続けて読んでいて、ケルトの神にはダグザという太鼓腹の御仁がいるのだが、この神が大変おかゆ好きだという事になっているのですな。
一方、北欧の児童文学ではえてして(いや、イギリスとかもか)、子供はお粥がきらい!(でも朝食に出てくる)というシーンがある。
シリアルではなく、あくまでも、おかゆ。

日本でも、朝粥を食べたりするので、別に不自然ではないんだけど、日本のと同じお粥だろうか?
いや、そもそも、米なのか?
……違うんですな。
わかりやすいところでいうと、オートミールなのだ。
米ではありません。
そして。

牛乳で煮た方がおいしい、ということになっているようだ。
さらに、本書にあるレシピのひとつは、「すりおろした林檎を入れる」。
そう、果物とかナッツを入れたりするレシピが、あちらにはいろいろあるらしい。
日本の林檎はだいたい甘いので、そのせいもあるだろうけど、一度試したところ、家族には超不評だったのを思い出す。自分でもあまり美味しいとは思えなかった。
味覚文化の差なのだろう、と家内では結論したのだが。

もちろん、本書に載っているほとんどの料理は、家庭料理という事もあって、作り方が簡単だし、美味しいもの、美味しそうなものがたくさんある。
欧米のファンタジイに登場するような料理もいろいろあるので、興味のあるむきには一読をお勧めしたいところ。
そしてできれば、林檎いりのオートミールも一度お試しいただいて、口にあったかどうか聞きたいのだが、だめ?


ムーミンママのお料理の本/サミ マリラ
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2011-01-30 20:24:26

『ケルトの神話』〈世界の神話9〉

テーマ:神話・伝説・民話

筑摩書房が80年代に出した世界の神話シリーズ、これは比較的図書館などにも収蔵率が高いのではないかと思う。
ダーナ神族の神話、アルスターの神話(赤枝の騎士団)、フィアナ騎士団の物語、と分けられているので、わかりやすくまとまっている。
しかし、惜しむらくは物語りがややダイジェストされている感があることだ。
まあ、たかだか240ページの中にこれだけ詰め込んであるのだから仕方がないとも言えるか。
(だからこそ、ケルトの神話ってどんなの、というむきには好適とも言えるわけだ)。

しかし、このダイジェスト感、雰囲気が薄まる結果にもなってしまう。
たとえば、トゥレンの三兄弟の物語については、昨日紹介した『ケルト魔法民話集』の方が詳しく語っている。
こちらでは、なぜルーグ(ルーフ)が三兄弟を途中で呪文により呼び戻したのか理由が書かれていないのだが、これ、「残る焼き串と三度の叫びをあげるという償いは、きたる戦いでは不必要なものだから」という事になっている。
すなわち、残る二つの償いを果たす途上で、三兄弟が死ぬことをルーグはもくろんでいたわけだ。

とはいえ、一方本書の方には、銀の腕のヌァザに関して、ディアン・ケヒトとその息子の相克が語られている。
ディアン・ケヒトは医術の神であるが、実は息子の方が技に巧みで、父ディアンが、断ち切られたヌァザの腕に銀の腕、つまり義手しかつける事ができなかったのに比べ、息子は元の腕をもとどおりにつける事ができた。
このため、父は息子に嫉妬し、息子が自分を完全にしのぐ事をふせぐため、ついに息子を殺してしまうのだ。

北欧神話に比べ、ケルト神話はなにやら「滅び去るものの美しさ」があるように言われるのだが、こうしてみると、けっこう根深く暗いものが漂っているね。

後半、赤枝やフィアナ騎士団の話になると、アーサー王伝説に通じる雰囲気が濃厚になっていく。
実際、アーサー王の宮廷は、これらの騎士団物語が影響していると言われている。
アーサー王の騎士たちも何かというと誓いを立てるのだが、その原型が、フィアナの騎士たちがしばしば課したり課されたり自らたてたりする、ゲッシュ(ギアス、ギース)と呼ばれる誓言ではないかと思う。
ただの誓言とか誓約と違うのは、たとえ不可抗力であれ、これに違背すると、とんでもない結果になるという事だ。
ともかく、そのペナルティが凄いのだ。
ただ、本書はこのあたりもあまり詳細には語られていないのがちょっと残念。


ケルトの神話 女神と英雄と妖精と(世界の神話 9)/井村 君江
1983年3月25日初版
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2011-01-29 23:57:31

『ケルト魔法民話集』

テーマ:神話・伝説・民話
思えば、社会思想社の現代教養文庫は、早い時期にマイナーな神話や伝説の本を文庫で出すという事をしていて、中南米のものなどもいくつかあったのだが、ケルトものはそれを上回って収録されていた。
これはケルトの民話集では3番目に出たものだが、但し、内容はどちらかというと、民話ではなく伝説と言った方がいいかも。

収録されているのは、
・ 長腕のルーグに関する伝説
・ フィアナ騎士団に関する伝説
・ 海の伝説
主に以上の3つだが、フィアナ騎士団に関する伝説では、ノルウェー王の遺児が復讐する物語である「ナナカマドの妖精宮」と「ギラ・ダッカーの物語」が入っていて、これはちょっとめずらしいように思う。
今ではケルト神話の本も幾つか出ているのだが、本書はその中でも多少毛色が変わっているのだ。
もっとも、固有名詞の表記が、現在一般的なものとはちょっと違っているので、そこは注意なのだが。

逆に言うと、本書の中で最もメジャーなのは、ルーグにまつわる物語だと思うが、これまたモイトゥラの野の戦いの方ではなく、トゥレンの三人兄弟の物語の方が入っている。
これって、ルーグが父を殺された代償として、とんでもない難題を課す話なのだが、誇り高く鷹揚であることが美徳とされるアイルランドの英雄としては、この物語におけるルーグ、「それはどうか」と思うところがある。
もっとも、彼の血の半分はフォモール族であるので、過度な冷酷さは、そこに起因すると考えられるのかもしれないのだが。

これに比べると、フィン・マックールの寛容さは、時として行き過ぎなくらいなのだが、ルーグとフィンを対比するのも、もしかすると面白いかも。


ケルト魔法民話集 (現代教養文庫)/著者不明
1995年6月30日初版
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2011-01-28 21:41:08

『ふらんす小咄大全』

テーマ:その他
ジョークとか小咄とかいうものには、やはり国民性が出るものかな、と思う。
まあ、必ずしもそうだとは言えないのかもしれないが、それでも、なにがしか、「雰囲気」のようなものが伝わってくるから、面白いのだろう。
もちろん、笑いと文化と言語は直結しているわけだから、単に訳して紹介するだけでは、外国の読者に伝わらないだろうことは想像できる。
また、本来、小咄というのは、耳で聞くものなのかもしれない。
そう考えると、このような本を作るのは、けっこう難しいよね。

さて、本書は、フランスの小咄を集めたものだということは、タイトルからストレートにわかってしまう。
フランスというと……。

アヴァンチュールであるとか、
エスプリであるとか、
そういうものが連想される。
いや、今のフランスがどうなのかはわからないが、少なくともかつてのフランスにはそういうイメージがあった。

本書の中の小咄は、なるほど、そういった雰囲気が味わえるものが多いように感じられる。
わりと艶な話が多いが、そればかりではない。
また、比較的、性の趣味が、幅広いかもしれない。
フランスではなく、あくまでも「ふらんす」と題したい、そんな小咄がたくさん詰まっている楽しい本なのだが、それも、載せられているのが下ネタというより、あくまでも、「粋な」、艶笑譚が多いからなのだろう。


ふらんす小咄大全 (ちくま文庫)/河盛 好蔵
1991年3月26日初版
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2011-01-27 20:01:14

『ケルト幻想物語』

テーマ:神話・伝説・民話

これは先日紹介した『ケルト妖精物語』の対になるものだ。
というのは、イェイツによる原書2冊から妖精物語を抜き出したものが『ケルト妖精物語』であり、それ以外のものを収めたのが本書である、と編・訳を勤めた井村君江が記しているからだ。
従って、本書は、魔女や悪魔、聖人、あるいは巨人、幽霊といったようなものが主に扱われているが、それとて妖精とそれなりに縁が深いものもあり、やはりアイルランドは妖精の国なのだなあ、と思う。

さて、今回たまたま、『ドイツ怪異集』を先に再読していた事で、気付いた事が一つあった。
『ドイツ怪異集』では、妖精の国が死者と縁が深いという考察を述べており、その類例をいくつもあげていたのだが、なぜそうであるのかという理由については書いていなかった。

しかし、本書の方では、次のような見解が記されている。
まず、妖精というものが、天国にとどまるほど良くはないが(罪はあるが)、地獄へ落とされるほどではない者なのだと信じられているということ。
そして、天国へ行くほどの徳はないが、地獄へ落とされるほどでもない死者は、妖精に連れ去られる事がある、という話だ。
つまり、地獄へ落とされるほど悪いわけではないが天国へ入れてもらえる事のないものたちは、何によらず、地上をさまよう運命にある、とケルト・ゲルマンの人々は考えているのではないだろうか。

そういえば、アイルランドの妖精は、地上の人々と同じく、教会を持っている事もあるらしい。
ブルターニュ沿岸では、神の怒りをかった街が沈められてしまうけれど、アイルランドの沿岸では、そもそも水中に住んでいる人ならぬものたちが、自分自身の教会を持っているというパターンもあるのだ。
水中から聞こえる鐘の音も、いささかことなるおもむきがあるようだ。
彼らが、「地獄へ落ちるほどでもないものたち」である証拠のひとつともなるだろうか。


ケルト幻想物語 (ちくま文庫)/井村 君江
1987年8月25日初版
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2011-01-26 20:17:34

『妖魔夜行』 あるいは妖怪が求められる時代

テーマ:ホラー

ここ数年、乱立してきた感のあるPBW(Play By Web の頭文字。ブラウザさえあればできるタイプのゲーム)を見ていると、剣と魔法のファンタジイと同じくらい、現代を舞台にしたホラーアクション的な設定のものがあるように思う。

そういった世界の嚆矢となるのが、この『妖魔夜行』シリーズではないかと思うわけだ。
TRPGと同時展開したライトノベルだが、現代日本で、人間にいりまじり、妖怪たちが存在するという設定で、妖怪たちの間にネットワークがあったり、事件を引き起こして人間との共存を危うくさせるような妖怪に対処したり、そういう物語。
たとえば濡れ女のように、日本古来の妖怪もいれば、格闘ゲームの中に誕生したポリゴンベースの新しい妖怪も登場した。

ふと思うに、かつてアメリカでは植民者たちが「(植民者の)アメリカ独自の神話や英雄」を持たなかったがために、ヒロイックファンタジイのようなものが隆盛したと言われるように、あまりにも現代日本が一見不夜城のような明るさを保ちながら、その実鬱屈したものをどこかに抱えていて、それをうまく言い表す新しい妖怪が、求められていたのではなかろうか。

世界で一番怖いのは、人間(の心)だという。
しかし、人間そのものが怖いとするならば、まわりじゅうに人間がいる事はとても恐ろしい。恐ろしすぎる。
であればこそ、人間とか、人間社会を「恐ろしいもの」にする「なにか」がほしくなるのではないか。

たとえば、路上でいきなり無差別殺人が行われるのは、「通り魔」のせいなのだ……!

そういえば、「通り魔」は江戸時代の『耳嚢』に、幾つか語られていて、胆力とか心得がありさえすれば、通り魔にはとりつかれずにすむ。
そのような対処ができなかった者が、これにとりつかれて惨劇を起こすのだ、と説明されている。


妖魔夜行 幻の巻―シェアード・ワールド・ノベルズ (角川スニーカー文庫)/山本 弘
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2011-01-25 20:47:05

『パイレーツ・オブ・カリビアン デッドマンズ・チェスト』

テーマ:ホラー

デッドマンズ・チェストとは、要するに「しびとの箱」(より具体的にはシーチェストすなわち船員が身の回りの品を入れる箱で、いわゆる海賊の宝箱でもある)であり、かの有名な『宝島』でうたわれる不気味な歌の歌詞にある、あれだ。
『宝島』では、宝にかかわる海賊が殺されたというような状況を暗示しているわけだけれども、本作では文字通り、死人(ただしアンデッド)とふか~い関係があるという事になっている。

その他に、クラーケンだのデイヴィ・ジョーンズといった、英米の海の伝説では超有名な化け物が登場するので、うん、ここらへん、まさしくエンタテイメントだよなあ、と思う。
映画の方でみると、クラーケンはあきらかに大蛸だけど、頭足類らしいというだけでクラーケンの正体はあまりわかっていない。
デイヴィ・ジョーンズは、海底にいる悪魔の事だけれど、映画での造形は烏賊男!
烏賊も蛸も日本では人気のある食べ物なんだが、英米では基本的に海の嫌われ者という立場を、踏襲している感じ。(知ってのとおり、クトゥルー神話でも頭足類は悪の人気者だ)。

しかし、海のエンタテイメントという他に、もうひとつ、本作は、ゾンビの物語という一面も持っている。
もともと、ゾンビが有名になったのは、ロメロの映画によるとされているわけで、やはりゾンビは映画と相性がいいのだろうか。なんつってもあの醜悪さにはグロテスクな魅力があるのだろう。
とはいえ多くのゾンビ好きを作ったことはいなめず、ホラー小説にもたくさんのゾンビものがあるし、ゾンビもののアンソロジーだって幾つも出ているほどだ。
その中でもやはり、海のゾンビものというのは異彩を放っているように思う。

本書はある意味、映画のかなり忠実なノヴェライズなので、小説のみで読んだ時には随所に不満が残るのだが、映画を補完する立ち位置としては充分だろうと思う。
まあ、また、それだけディズニーの実写映画がすばらしいというのもあるのだが。
特にアクションなどは学ぶべき部分が実に多い。
あれをうまく文章にできたら凄いのだが、なまじ映画での演出と動きがいいだけに、文章であれに匹敵する演出をするのはなかなか難しそうだ。(本書で不満に思うのも、そういうところが多い)。

しかしそのあたりを踏まえた上で、やはり、海のゾンビものというめずらしいホラーには数えておきたいのだ。


パイレーツ・オブ・カリビアン/デッドマンズ・チェスト (竹書房文庫)/テッド エリオット
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2011-01-24 20:11:49

『砂塵の魔門 2』〈マラザン斃れし者の書2〉

テーマ:海外SF・ファンタジイ

女帝のおさめる帝都があるのとは違う大陸、七都市の大陸なのだが、都市文明が華開くというより、部族社会が主体の大陸というような気がする。
まあ、もしかすると、中世~近世のアラビア半島からティグリスあたりをイメージすると近いのだろうか。
華やかな都市がいくつもある一方、周辺の荒野には多くの部族があって、互いに戦いあったりしていたような。
たぶん、そんな感じだ。
先帝の時代に、帝国に征服された七都市の大陸は、皮肉にも、帝国という敵を得て、ある程度ひとつにまとまったという事になる(このあたりは白人の「植民」と、アメリカ先住民の対決を思わせるところもある)。

翻訳が四分冊なので、2巻にあたる本巻は、状況が混沌としているが、各視点となる登場人物が、ルートこそ違え、すべて砂漠の困難な旅をしているので、全体的に、飢え、渇き、苦しみ、逃走する様子が断片的にコラージュされているようなイメージだ。
特にそのなかの誰が中心という事はないが、会えそうで会えない二人の歴史家と、それぞれの一行が、ちょっと面白い。

ただ、第2部になって冒頭から目立ったフェリシンの状況がなかなかつらく、先がどうなるのか読者としては非常に心配だ。
まだミドルティーンである彼女、もちろん現代の日米のミドルティーンとは年齢の重さが違うだろうけれど、いったい彼女は姉にほんとに復讐するのか、それまで生き延びられるのか?
征服や叛乱に伴う戦闘がリアルに描写されている本巻だけに、ちと心配。


砂塵の魔門2 (マラザン斃れし者の書2)/スティーヴン・エリクスン
2011年1月15日初版
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2011-01-23 20:16:00

『ケルト妖精物語』 W・B・イェイツ

テーマ:神話・伝説・民話

今ではわりとありがちなタイトルに思える本書は、Fairt and Folk Tales of the Irish Peasantry 及び Irish Fairy Tales という2冊の原書から、井村君江が妖精に関するものだけ抜き出した、と説明されている。ふたつの原題を見ても、うん、これはこれ以外つけようがないかもしれない。
なんといっても、イェイツにより編纂されたのが19世紀の話であり、つまりケルトの妖精について集めた本としては、嚆矢といっても良さそうなものなのだ。

ドイツのグリム兄弟がなしとげたものが、ヨーロッパ各地で、自国(またはおのが民族)の民話という文化的遺産を蒐集し、保存しようという一大ムーヴメントを作り出した事は周知の通りだが、ことイギリス諸島に関しては、もともと、古い修道院などに各地の民話や伝説が書き記されていたという背景のもと、アイルランドの国民的詩人であるW・B・イェイツがこのようなケルトの文化遺産を文字にして残し始めたわけだ。
(但し、ケルトといっても、原題からわかるとおり、本書におさめられているのはアイルランドの妖精たちについて)。

時代は異なるが、日本で松谷みよ子がテーマごとに「現代民話」を集めたように、もちろん、先達であるイェイツも、テーマごとに民話を蒐集したわけで、古くからいろいろな形で伝えられたものもあれば、イェイツや周辺の人々がじかに各地で聞き書きしたものもある。
つまり、イェイツの時代に個人が体験した事として語られた物語もあれば、各地の伝説もあり、また、地方に伝えられた民謡や、詩もあるという具合。
なかには、「白い鱒」や「ノックグラフトンの伝説」のように、多くの民話集に載せられている有名な物語も含まれる。

単なる民話集ではない。
妖精の性格ごとにグループ分けし、それぞれに1章をあてている。
また、個々の妖精については英語でのつづりと、アイルランド語でのつづりが両方とも載せられている。
それぞれの物語に関係する「まじない」について解説されていたりもする。
実際、訳者の解説によれば、前に紹介したキャサリン・ブリッグズも、ことアイルランドの妖精については、多くイェイツの分類や著作を参考にしているということだ。
つまるところ、ケルトの妖精いついて知るためには、絶対にはずせない1冊なのだ。


ケルト妖精物語 (ちくま文庫)/井村 君江
1986年4月24日初版
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2011-01-22 19:22:56

『妖精の国の住民』

テーマ:神話・伝説・民話
キャサリン・ブリッグズといえば、イギリス諸島の妖精については、第一人者といっても良さそうな学者なのだが、その名著『妖精事典』と対をなすのが本書だ。
『妖精事典』の方を読む、いや、少なくとも利用した事のある人ならば、記事の中にソースとなった民話などの梗概がかなりの量、おさめられているのを知っているはずだ。
このため、実は『妖精事典』、事典という名前になっているけれども、最初から最後まで読んでも面白い本になっているのだな。

そして、本書はその逆の配分になっている。
つまり、妖精譚が(かつてイェイツが著した本のように)妖精の種類別に集められており、巻末に妖精の小辞典が付されているというわけ。

もちろん、イギリス諸島の妖精譚といったら、それはそれはたくさんあるから、キャサリン・ブリッグズといえども、全てを網羅するわけにはいかなかったろうと思う。
しかし、妖精に連れ去られたという高名な詩人「正直トマス」の物語や、メロウの魂の魚籠の物語、常若の国へいったオシィン、妖精の騎士タムレイン(タムリン)、魔法の塚に眠るフィッツジェラルド伯爵ら英雄の物語など、かなりのところ、本書でおさえることができる。
物語も読みやすく、しかも童話のように脚色されていないので、イギリス諸島の妖精って実際のところどんなの、と思う人には、まさに好適な本ではなかろうか。


妖精の国の住民/キャサリン M.ブリッグズ
1981年10月30日初版

妖精の国の住民 (ちくま文庫)/キャサリン ブリッグズ
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