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2010-05-31 20:47:05

『半七捕物帳 (6) 』

テーマ:歴史・時代小説

表紙を見て、おや、と思った事がある。
これは、雷門の反対側にある方の門だよな。
東京でも名にしおう観光地なので、この界隈はいつも大にぎわいだけれど、江戸時代もやっぱり大にぎわいだっただろう。
もっとも、江戸時代の人々は、物見遊山の気持ちもあっただろうが、現代人よりはるかに、信心があったものと思われる。

まあ、江戸時代の寺社参詣は、じっさい、「遊び」の要素もかなりあったというけれども、あくまでそれは二の次。
現世利益を願うものであれ、そこには確かに、神々に対する信心の心があったと思う。
そして、イワシの頭であろうとも、信じる者は救われる(ということもある)。

本巻は、光文社(新装)版の半七最終巻にあたるが、そのせいなのかどうか、不思議と、神社仏閣に縁のある話が多めになっている気がする。
その中でちょっと変わり種なのは、「川越次郎兵衛」。
江戸城にいきなり出現した謎の男、すぐさま天下を自分に渡せと大音声を発して人々を驚かせるのだが、世間を騒がせたあといきなりかき消えてしまうという事件で、いろいろな事情から、それは天狗の仕業みたいに言われてしまうのだ!

江戸時代といえば近世になるのだが、実はこの時代に天狗譚、とっても多いんだ。
都下西郊は秩父や高尾があるためか、天狗の話がすごく多く、松谷みよ子の現代民座に集められたものなどを見ても、なんと昭和に至るまで、天狗がなになにした、という話が噂話として存在した事がわかる。
とくに、江戸などの人口集中地には、天狗がリアルにあらわれるというより、「神隠し」という現象として発生する事が多かったようだ。
それが、この話にも投影されているんだな。

しかし、さすがに平安時代のように神さびた信心ではなく、「コレラにかかりませんように!」というtことで、「どこそこのなんとかいう地蔵がいいらしいぞ!」(それ~)とばかりに人が押しかける。
かなり軽佻浮薄だが、それも時代のカラーというものなのだろう。


半七捕物帳〈6〉 (光文社時代小説文庫)/岡本 綺堂
2011年12月20日初版
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2010-05-30 19:33:37

『宗像教授異考録 (13) 』

テーマ:ミステリ

本巻に収録されたエピソードは2つ。
1つは、『源氏物語』にまつわる謎、これは事実上、以前にとりあげられた浦島伝説と『竹取物語』に関するエピソードの続篇になるようだ。
そして、もう1つは火山(火山湖)の女神をめぐる伝説に関するエピソード、『赤神 黒神』だ。

これは個人的な好みになるとも思うが、古典文学の中の仕掛けに着目した源氏物語の謎解きよりも、やはり『赤神 黒神』が面白い。
日本の伝説として、まず、東北地方、十和田湖と八郎潟の伝説が紹介される。
ここに、噴火の徴候があらわれ、噴火した場合に大きな被害が予測される長白山をかかえた中国の研究チームが日本を訪れる。
しかし、長白山は別名白頭山、北朝鮮との関わりが深い。
このため、チームには北朝鮮の学者も混じっていた。

中国・朝鮮半島・日本は、その地理的な関係からいろいろと関わりが深い。
しかも、今、関係がいまいち(どころではなく?)ぎくしゃくしている。
日本の古代において、十和田の火山が大噴火した記録とあわせ、ほぼ同じ時期に長白山の大噴火があり、先日のアイスランドの火山噴火ではないが、山麓の王国だけでなく、遠く日本まで大きな影響を与えたという記録がある、と説明される。

ここに、現在ただいまの、海を越えたロマンスがからみ、古代と現代が実にうまくミステリアスにからみあっていて、大変面白かった。
北朝鮮の学者が、政治色の濃い、自国優位性に立脚した主張をするのも「ありそう、ありそう」。
いろいろな事情から、宗像教授の反論は、あまりストレートとはいえず、かなり「ギリギリ」な部分があるのだが、女神を守るために戦った存在である日本の八郎が、変身に先立って水を33日間飲み、朝鮮の白将軍が100日飲んだという、その言い伝えがそれぞれ確かならば、物語が電波する時、伝えられた側の方がこういった数字は大きくなるのではないかと思った。

話に尾ひれがつく、という言葉もある。
もし、100日間水を飲んだ白将軍の伝説が日本に伝わったとするなら、その期間が33日に短縮される事は考えにくいんじゃないか?
実際、人や文物、文化などが、全く一方的に伝わるという事など、私はあり得ないと思っている。
お互いに影響しあうところが、面白いとも思う。

実際、どちらが古いかに関わりなく、八郎潟の伝説も、白将軍の伝説も、趣深いものがあるじゃないか。


宗像教授異考録 13 (ビッグコミックススペシャル)/星野 之宣
2010年6月2日初版
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2010-05-29 20:19:01

『半七捕物帳 (5) 』

テーマ:歴史・時代小説

幕末というと、どうも主役は新撰組だの志士だのが目立ってしかたがない。
対して、捕物帳の舞台ならば、やはり元禄以降文化文政……そんなイメージがあるようだ。
つまいr、町人生活が背景なのだから、町人生活最も華やかなりし頃、という事だよな。

しかし、本作は、語り手たる半七老人が作者に物語をするのが命じ後半であることからも明らかであるように、幕末が舞台の捕物帳、なのだ。
実際、本巻には異人が登場するものもあれば、西洋式の教練を受けた幕府の歩兵も登場する。
写真師のような仕事も登場する。

しかし、それほど「幕末的」な風景があらわされていようとも、不思議にそこには濃厚な江戸情緒が感じられる。
当然、それは、町方に働くものが描かれているからで、いかに志士だの新撰組だのが跋扈していようとも、庶民の生活はそれなりに続いていたはずだったんだよな。
そして、いかに「維新」といえど、何もかも一夜にしてすっかり「洋式」になったわけでもない。
激動の時代といったところで、それは政治とか、それにかかわる者たちの話であって、江戸情緒もまだ確かに、そこにはあったのだ。

----------
新カチカチ山
唐人飴
かむろ蛇
河豚太鼓
幽霊の観世物
菊人形の昔
蟹のお角
青山の仇討
吉良の脇指
歩兵の髪切り


半七捕物帳〈5〉 (光文社時代小説文庫)/岡本 綺堂
2001年12月20日初版
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2010-05-28 20:37:59

追悼のポリ黒とレオン

テーマ:冒険・アクション

すでにツイッターではあちこちに書かれている事だが、先日、大迫純一氏が亡くなられた。
死因は癌であるという。
享年47歳。
若いうちほど、癌の進行は速いというけれど、それにしても若すぎる。
だって、人生50年にまだ到達してないではないですか。

作家としても、きっと、脂がのりきってきたころかと思う。
今まで、ここで紹介してきた作品を見ても、ポリ黒といい、レオンといい、面白かったよなあ。

最近は、ライトノベル作家がハヤカワで面白いSFを書いてくれるというのが増えていて、そろそろ大迫純一は? と内心思っていた。
もちろんライトノベルが悪いなどというつもりはない(だって面白いからね!)。
しかし、大阪純一の、ライトノベルではない作品を読みたかったのは掛け値無しに事実だ。
実現されなかった事が、とても残念だ。

わずかな慰めは、ポリ黒が一応の決着を見た事だろうか。
もっとも、レオンはこれからというところだったんだけど。
ほんとに、これからもっとたくさん、読みたかった。

謹んでご冥福をお祈りいたします。


神曲奏界ポリフォニカ アドヴェント・ブラック (GA文庫)/大迫 純一
神曲奏界ポリフォニカ レオン・ザ・ゴールド (GA文庫)/大迫 純一

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2010-05-27 19:04:03

『半七捕物帳 (4) 』

テーマ:歴史・時代小説

実際の歴史とはとくに関係のない、江戸時代の町人の世界を描いたもの……私が考える「時代小説」とはそういうものだ。
剣客ものあり、人情ものあり、お家騒動に絡んだ武士の物語あり、時代小説といってもいろいろなスタイルがあるのだが、やはり、一番人気は「捕物帳:」であろうか。
これは、テレビ時代劇の影響するところが大きいのかもしれない。
なんといっても、あの銭形平次が問答無用の人気を誇っていたりするしね。

さて、そういう捕物帳は、当然、岡っ引きが主役だ。
この岡っ引きというのは、江戸での用語だと聞いた事がある。
髪型の方では、目明かしと言ったのかな。
実際には「手先」と呼ばれたともいうね。
しかし、時代ものの世界で圧倒的に「岡っ引き」が主流である事を考えると、やはり、捕物帳の主たる舞台は江戸であるのかもしれない。

探偵役が脚で稼ぐミステリは、時代や国を問わず、舞台となる街がいかにリアルに描かれているかというのが要であるわけだが、その点、本作は他の作品を一歩も二歩も引き離しているんじゃないかと思う。
決して、情景描写がくどいというのではない。むしろ、シンプルだ。
しかし、文章から、江戸の息づかいや匂いというものが、肌に感じられるのだ。

たとえば、何日か雪が降った翌朝の江戸を描く文章がある。
町中の事でも、、数日はぬかるんで足下が悪いという事がさらりと書かれている。
現代のように舗装されているのではないから、などという余計な断り書きはないのだ。
同じように、舞台が江戸の郊外であるエピソードの時は、江戸府内のように人通りが多いわけではないから、日和下駄を履いても脚をとられそう、と書かれている。
さりげない一文の中に、色も匂いも肌合いも感じられるような描写がなされているのだ。

実は、同じように完結かつ味わい深い文章は、池波正太郎の方が有名かと思う。
しかし、池波の文章の方がより心情的な色合いが強いのに対して、岡本綺堂は、よりビジュアル的だと思うのだ。
これは、舞台にかけるための作品も手がけたからなのだろうか。

いずれにせよ、饒舌でもなく、かつ、単なる視覚だけではない、五官そのものを刺激する文章で江戸の情景を詠めるというのは、とても幸せな事だ。

とkろおで、これは余談だけれど、なぜ、捕物帳の主役は七のつく人が多いのだろう。
本作の主役は半七。他に、電子地親分、佐七親分、文七親分などがいるよな。
ちょっと面白い「不思議」だ。

----------
仮面(めん)
柳原堤(やなぎわらどて)の女
むらさき鯉
三つの声
十五夜御用心
金の蝋燭
ズウフラ怪談
大阪屋花鳥
正雪の絵馬
大森の鶏
妖狐伝


半七捕物帳〈4〉 (光文社時代小説文庫)/岡本 綺堂
2001年12月20日初版
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2010-05-26 20:58:48

『対訳 バイロン詩集』〈イギリス詩人選8〉

テーマ:詩・叙事詩・戯曲
バイロンのように人気のある詩人の詩集となると、日本でもさまざまな出版社から出ているのだけれど、それでも、対訳は少ない。
これはとても残念な事だ。
というのは、詩ほど、言葉のリズムと密接に関係する文学はない。
どれほどの名訳であったとしても、違う言語であるからには、原詩のリズムは再現できないのだ。

ゆえに、意味はわからなくともリズムを楽しむためには、原詩を見なくてはならない。

しかし、それではその言語に堪能な者でもない限り、意味がわからず、内容を楽しむ事ができない。
したがって、ここは、訳文もほしいわけだ。

ゆえに、詩だけは対訳がいいというのが、私の持論だ。

でも、対訳というのは片側に原文、反対側に訳文が必要で、
あたりまえだが、1つの作品に対してページ数は倍かかってしまう。
なので、そうそう出版してくれる出版社はmないのが実情だ。

岩波文庫は、ずいぶん前に、イギリス、フランス、ドイツなどの名詞選を対訳で出してくれたが、なんと昨年、それらとは別途、幾つか、こんな対訳を出していたもよう。
ひとつがバイロンだ。
いいなあ、バイロン。

表紙に書かれた編者の言葉によると、
「本書ではバイロンの詩の本領を伝えるべく、短篇の叙情詩よりも長編の物語師と劇詩の比重を大きくし、それぞれのハイライト部分を幅広く収録した」
のだそうだ。

早い話がダイジェストなのだけれど、もーう、バイロンらしい部分が、ほんとにハイライト収録されてるんだな。

----------
1 旅する魂
『貴公子ハロルドの巡礼』より
2 東方ロマンスの世界
『アビュードスの花嫁』より
『海賊』より
『コリントスの包囲』より
3 内面世界の広がり
『ション城の囚われ人』より
4 自我意識の崇高と呪い
『日記』より
『マンフレッド』より
間奏曲-政治意識の芽生え
『ダンテの予言』より
5 ヴェネチア総督の「陰謀」
『マリノ・ファリエロ』より
6 古代アッシリア、伝説の王宮の最期
『サルダナパロス王より』
7 諷刺と諧謔
『イングランドの詩人とスコットランドの批評家』より
『ドン・ジュアンより』
8 叙情詩
ハロー遠望-村と学校をかなたに見て
野の羚羊
さようなら、元気で
〔オーガスタへの手紙〕
一八二四年一月二二日、メッサロンギにて この日、三六年目の歳を終えるにあたって


バイロン詩集 (世界の詩 7)/バイロン
2009年2月17日初版
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2010-05-25 20:25:24

『半七捕物帳 (3) 』

テーマ:歴史・時代小説

幽霊譚とか幻想譚のシーズンというのは、国と風土によって違うもので、日本においては、当然、夏。
しかし、柳の下の幽霊というシーンは、むしろ梅雨時がふさわしいような気がする。
むうっとした蒸し暑さも欠かせない。

さて、半七捕物帳にも、幽霊譚とまではいかなくても、ホラーがかった話が幾つかあって、たまたま本巻におさめられた話は、半分弱、そういうテイストのものではないかと思う。

----------
雪達磨
熊の死骸
あま酒売
針子の虎
海坊主
旅絵師
雷獣と蛇
半七先生
冬の金魚
松茸
人形使い
少年少女の死
異人の首
一つ目小僧
----------

どれが該当するかは、あえて言わない!
お化けがだましの種になっているもの、地方の不思議な言い伝えに由来するもの、江戸時代に信じられていたバケモノが関係するものなどがある、とだけ言っておこう。
そして、思う。
タイトルの中にある、一つ目小僧などは、今、信じる子供はいないだろう。
もしかすると「なにそれ?」と首をかしげられてしまうかもしれない。
まあ、私が子供の頃とて、唐傘お化けなんて現実味がなかったものなのだが……
(そのかわりに、口裂け女とかが怖かったわけだ)。

もちろん、江戸時代にもてはやされたお化けとかバケモノも、当時の社会風俗と密接な関係があるわけで、半七捕物帳は実にそのことをうまく使っているように思う。


半七捕物帳〈3〉 (光文社時代小説文庫)/岡本 綺堂
2001年11月20日初版
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2010-05-24 20:34:01

『とりぱん (9) 』

テーマ:自然と科学

言うまでもないことだが、本作は決して野鳥だけが主役なのではない。
今回はちょっと猫の出番が多いようだ。
ちっちゃい仔猫が、半年かそこらで、、でっぷりと貫禄のある猫になっていたというくだりは、笑った。
う~ん、ありがち。
かと思えば、ほほえましい犬が天に召される話もある。
人間を越える寿命を持ついきものは、あまりいない。
だから、それは、ペットの飼い主が必ず経験しなくてはならない事なのだろう。
だからって割り切れるものではないのだが、本作のエピソードは、とりぱん的にちょっと救われる感じがする。

ともあれ、やはり、コミカルなエピソードの方が読んでいてリラックスできるのは事実!
あるいは、個人的な体験にてらして共感できるものがあると余計に楽しいよな。
本作の良いところは、野性の生物を観ながら、まったく同じように、人間の日常も観ていることで、そういう、ほほえましい人間観察のエピソードも幾つも含まれている。

そういう個人的共感があったのは、たとえばスズメバチの話。
hする異はわからんけど、学生の頃だったか。
部屋に迷い込んできたスズメバチに3日間ほど居座られた事がある。
ベッドサイドの壁に……。
誘導しようとしてもおそるおそるすぎたのか、スズメバチ退散せず。
結局、田舎出身でハチに慣れている人が来室した時、追い出してもらった(ほっ)。

鋭角的に飛ぶ蝙蝠ね。
UFOと見間違えるかどうかはわからんが、あれは都内にもいるので、その気になればわりと観る事ができる。
たまたま、低空飛行をしているやつを真下から見た事がある。
大きさを別にすると、私には、あれはジャージーデビルに見えた。
UFOじゃなく。
スーパーマンポーズで飛んでるヌードの(あたりまえだ)肉体は、なんかかなり生々しかった。

生きものなんかそんな注意して見てないもん!
という人も、身近な人間はなんとなく鑑札していたりするだろうから、きっと、何かしら、そういう個人的体験にもとづく共感が、本作のどこかにみつかるんじゃないかな。
まあ、たぶん、だが(しっぽゆら~ん)。


とりぱん(9) (ワイドKCモーニング)/とりの なん子
2010年5月21日初版
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2010-05-23 22:36:10

『氷上都市の秘宝』〈移動都市3〉

テーマ:海外SF・ファンタジイ

前巻の終わりから本巻冒頭までの時間的空隙は16年。
トムとヘスターの間には、レンという娘が生まれている。
当年とって15歳、難しい年頃の彼女が本巻の主人公となる。

親の保護下から抜け出し、世間に飛び立ってみたい彼女の不満はわかるのだが、その両親をはじめ、彼女の周囲の人々、そして冒険の途上めぐりあう人々は、いずれも、人生うまくいっていない事が多いようだ。
いや、むしろ、うまくいっているのは、詐欺師のペニーロイヤル教授とか、悪いやつばかりのようだ。
それが人生というものさ。
なーんて斜に構えられるのは、感受性が摩耗した大人くらいだろう。

しかし、この「うまくいかなさ」感が、本作の特徴と言えるのかも。
ロンドンがおっぱじめた移動都市群と反移動主義者の戦いは、反移動主義者側がグリーンストームという過激派の掌握するところとなり、それを更に、ストーカー・ファンが牛耳る事になって、ますますエスカレートしている。
そして、戦争に決着をつけるための、とある「もの」が世界の焦点となってしまった(しかし、その意味を知っているのは、ある特定の人物だけ)。
そのアイテム、「ブリキの本」をめぐって、ロストボーイやグリーンストームが暗躍し、本はアンカレッジの「冬の宮殿」の書庫から持ち出されるや、本の価値を、ただ「金目のもの」としかとらえていないペニーロイヤルや奴隷商人シュキンの間をいったりきたり。

冒険心から、本の持ち出しに一役買ってしまったレンは、もちろん、思い切りそれに巻き込まれ、捕虜になったり奴隷になったり、実にめまぐるしく忙しい。

その一方、レンの後を追ってアンカレッジを出たトムたち大人グループも、グリムズビーやブライトンなど、幾つかの都市がたどる運命にかかわる事となる。

そう、今回は視点が幾つかに分散している。
主役はレンなのだが、これに対してトムとヘスター、そしてストーカー・ファンの専属医師としてグリーンストーム側から物事を見る、ドクター・ゼロの視点が入ってくる。

このように視点が分散しているのは、もちろん、キャラクターがいくつかのグループに分かれて別々に行動しているためだが、それだけにストーリーも拡散傾向にあって、最後はおもいきり、引いた終わり方になっている。
何より、第1巻で登場して惨事をもたらしたメデューサを上回るとんでもない兵器の稼働が示唆されていて、移動都市の世界も、もしかしたら壊滅しちゃうのか? という危機がちらつかされている。

四部作もあと残り一冊となったわけだが、これは早いところ、続きを出してもらわないと!


氷上都市の秘宝 (創元SF文庫)/フィリップ・リーヴ
2010年3月12日初版
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2010-05-22 21:19:10

『略奪都市の黄金』〈移動都市2〉

テーマ:海外SF・ファンタジイ

この四部作、巻と巻の間は、それぞれ時間があいているというスタイルをとっているようで、前巻と切れ目泣くつながっているわけではない。
第2巻は『移動都市』からすでに2年ちょい経過していて、ロンドンが壊滅してから、トムとヘスターは、飛行船に乗って「鳥の道」を旅し続けていた、と示唆される。

2年って、ちょっと微妙な期間ではないだろうか。
一緒に暮らしていて、今後も一緒にいられるのかどうか、最初の見極めがつく期間。
恋人どうしであるならば、そろsろお結婚してもいいかな、とか思うかもしれない。
あるいは、その期間中子供が生まれなかったら、夫婦として今後どうしよう、と少し考える場合もあるのかもしれない。
幸せすぎて、これがずっと続くかなあ、と不安を感じ始める事もあるか?

ヘスターの場合が、これだ。
何しろ、彼女は、傷のために顔面が引き連れていて、見られたご面相ではない、というコンプレックスがある。
事実、その顔をさんざん、行く先々でからかわれたりするのであれば、どうしてもそう思っちゃうよな。
トムはいい人なのに、自分なんかといつまで一緒にいてくれるのだろう?
ありがちな不安なのかもしれないけど、これは辛い。凄く辛い!

そう感じたなら、この巻の終わりまで、ヘスターから目が離せなくなってしまうかも。
実際、本巻はヘスターの方が、主役だと言ってもいいのだ。
トムはいい人だし、ハンサムだし、なんて形容が出てくるのも、ヘスターの目を通しているからだね。

そんな時、トムの前には、移動都市アンカレッジの辺境伯である少女、フレイア・ラスムッセンが現れる。
アンカレッジは疫病その他で人口が激減し、フレイアも早くに疫病で両親を失ったため、幼くして辺境伯の役目を負わされたから、めちゃくちゃ世間知らずでとんちんかんなとこrごああるが、前巻のラストで命を落としたキャサリン同様、上流社会の美しいお嬢様というカテゴリに入るわけだ。
しかも、トムに惹かれている。
歴史の話など、興味の方向性も一緒。

冷静に客観的に見るならば、ヘスターはご面相だけでなく、その生い立ちなどからくる性格とか、行動様式も、ちょっとアレだ。
トゲトゲしかったり、すぐ憎まれ口をきいたりと、まあ要するに、かわいくない。
しかも、自分でそれを自覚してしまってるんだよね。

それだけではない!
ヘスターは、途中ある勢力によって捕虜とされてしまうのだが、その時、自分の出生の秘密を知らされてしまうのだ。
彼女がそれまでの半生をかけてかたきとつけ狙った(故)ヴァレンタインの娘であるという衝撃の事実。
泣きっ面に蜂とはこの事では?

前巻では、トムがいろいろ大変な目に遭ったけれど、今回はヘスターの方がいろいろと大変な経験をする事になる。その内容も、トムが慣れ親しんだ都市環境から外へ、というものであったとするなら、ヘスターは、生まれて初めて自分から愛した人を得て、彼を失う危険にさらされているという、感情面で全く新しい体験をするという、トムとは異なる内容となっているわけだ。

しかし、キャラクター構成は、前巻のものをある程度引き継ぎなら、半分くらいは新顔があるという事で、シリーズとしてのつながりを店ながらも、主事公をシフトして、物語の性格もそれに応じた変化を持たせるというところが、面白いし、うまいなと思う。


掠奪都市の黄金 (創元SF文庫)/フィリップ リーヴ
2007年12月14日初版
星雲賞
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