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2009-07-31 19:29:23

『ミストボーン (2) 赤き血の太陽』

テーマ:海外SF・ファンタジイ

いよいよ貴族社会に乗り込むヴィン。
田舎から出てきてデビューしたばかりの小貴族、ヴァレット嬢としての役柄にだんだんと馴染みながらも、彼女の不安は、路上の盗賊としての感覚が鈍ってしまうのではないか、ということ。
しかし、感覚に快く感じるものに慣れるのは、たやすい。
最初は不快感すらおぼえた、香水入りの風呂すら、すでに心地よく感じられてしまう。

一方、反乱軍の備えは次第に整いつつあり、いよいよ、敵の旗本部隊である義務官の中に、手先を潜り込ませる事も実現するはこびとなった。
おそろしいほど長きにわたる、支配王の統治に、とうとう刃向かう事ができるようになるのか?

だが、ヴィンは舞踏会で出会った風変わりな貴公子エレンドに強い興味を惹かれていく。
この貴公子は舞踏会に大量の本を持ち込んで読書に没頭する変わり者だが、どうやら単なる変わり者ではなく、現体制をくつがえそうとしている反抗的な若者達のリーダー格であるらしい……。
エレンドの事を気にしているうちに、ヴィンは別の深みにはまりそうになる。

終(つい)の帝国と、叛乱スカーの群れ。
どちらも、ドラマティックに、しかしまだ抑えた動きで、胎動している。
「緑豊かな肥沃なる地」という言葉が、奇異の目をもって見られるほど、花ひとつ咲かない不毛の地である、黒灰色の灰が降り注ぐ国。
そのグロテスクな魅力のある舞台に展開されるのも、グロテスクな魅力を伴う人間関係なのかもしれない。

うん、この物語は、確かに面白い!


ミストボーン―霧の落とし子〈2〉赤き血の太陽 (ハヤカワ文庫FT)/ブランドン サンダースン
2009年7月25日初版
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2009-07-30 19:14:47

『現代民話考 (12) 写真の怪・文明開化』

テーマ:神話・伝説・民話

唐傘お化けに一つ目小僧、べろを出して笑う提灯……。
そんなお化けは、もはや過去の遺物と思うと、
「お化けだの幽霊だの、現代にそんなもの……」
と、苦笑したくなるだろうか?

いやいや、とんでもない。
幽霊だ、回帰スポットだ、(怖い)都市伝説だ、なんて話は枚挙にいとまがなく、曖昧で不気味な話はなくなるという事がないのだ。

しかも、大変面白い事に、実はこういった「あやかし」は、最新機器が大好きだったりするのだ!

えーとか言わない。
ほんとなんだからね。

たとえば、幽霊は、カメラがそりゃあもう大好き。
心霊写真なんてものを考えればよくわかるはずだ。
肉眼で見えなくとも、カメラにはうつる、
(なんでだ!)

白黒でもカラーでも同じこと。
雑誌に投稿された写真だと、あまりカラーで載らなかったりするから、どうも色のついたイメージは少ないかもしれないが(いや、今はそんなこともないのか?)、私は小学生の頃、級友に、カラーでうつっている華厳の滝の心霊写真を見せられた事があるぞ。

もちろん、今はビデオカメラにも写るし、むか~しレコードやテープレコーダに怪異があったとするなら、当然CDやヴィデオにも怪異が発生し、となると、今は絶対、USBメモリとか、携帯音楽プレイヤーが狙われているぞ。
あ、携帯電話なんて当然そのひとつ。
パソコンは既にお化けの媒体になっているので新しい取り憑き先にカウントするまでもない。

本巻におさめられているのは、サブタイトルにもあるとおり、まずは、写真。
どういうものが写る、あるいは、カメラにどんな事が起こる、あるいは(紙焼きされた)写真にこんな事が起こった、などなど。
墓場や葬式の場面で写したものに怪異が起こるのは当然のようだが、水にかかわるところも、滝といい、海といい、心霊写真が出来やすいようだ。
自殺の名所とかあるわけだが、それだけではないようにも思う。
これら水に関係した心霊写真には、強烈な共通項があるが、それは……読んでのお楽しみ。
但し、水遊びに出かける前には絶対に読まないでおくことをお奨めする。
ある意味、なまじなホラー小説よりよっぽど怖いから。

それにしても、心霊写真って日本だけのものなのだろうか。
外国の状況を知りたいものだ。

後半は文明開化となっているが、そのほとんどは、江戸から明治、明治から大正にかけての話で、要するに、はじめて電気が引かれた時とか、電信(電報)・電話が登場した時に、こんな笑える話がありましたよ、というものが中心。
巻末のあたりには、少数ながら、パソコンものなども収録されているが、(できれば前半も踏まえた上で)流れをおっていくと、いわゆる都市伝説にはあたらないものなのに、これらの怪異には一定のパターンがある事に気づく。

まあ、「あやかし」も、新しいもの好きかもしれないが、人間同様、やる事は基本的に変わりないって事なんだろうな。

もともと、このシリーズは、ちくま文庫におさまる前、立風書房からハードカヴァーとして1996年までに出されている。従って、残念ながら、携帯などのように、その後爆発的に普及したものや、新たに登場したものは、当然扱われていない。
今なら、これらの媒体についても、それなりの数の話が集まりそうだけれど。


現代民話考 12 写真の怪・文明開化/松谷 みよ子
2004年3月10日初版
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2009-07-29 19:19:05

『侘助ノ白』〈居眠り磐音江戸双紙30〉

テーマ:歴史・時代小説

冒頭はいきなり土佐の風景から始まる。
つまり、とうとう、利次郎が土佐に辿り着いた、というわけ。
タイトルの侘助は、土佐で愛される花として紹介され、その後利次郎についてまわるようになる。
このシリーズのタイトルで、これほど、巻の全体にわたり、明確に顔を出したモチーフはそれほどないかもしれない。
まあ、もともと、佐伯泰英作品は、とても映像的ではあるのだけれど。

とはいえ、それ以外にはあまり土佐の風物が紹介される事がない。
しばしば旅に身を置く佐伯泰英の物語にしては、ちょっと珍しい気がするが、その分、相棒におくれをとっていた利次郎に、大きく活躍のチャンスを与えた形。
痩せ軍鶏につづき、でぶ軍鶏も主役の場を得たわけで、ここまでシリーズを読み通してきた読者には、ほほえましく、嬉しい事だ。

一方、江戸の方は、さしたる進展がないものの、なかなか剽げた武芸者が登場し、佐々木道場に加わる事になる。
別シリーズの小籐次を見てもわかるが、佐伯泰英って、こういう男を描くのがうまい。
いかにも剣客らしい美丈夫もいいけれど、風雪に鍛えつくされた、士分というより、郷士の生まれの武芸者、そこにはもしかして、長年カメラマンとして異国を渡り歩き、老境に入る頃、時代小説家として華々しい脚光を浴びた作者の姿が、多少重ね合わせられているのではなかろうか。
また、女武芸者として成長しつつある霧子もいい味わいを見せはじめ、たとえ大きな展開がなくとも、ちゃんと江戸のシーンも読ませてくれるので、安心。


侘助ノ白―居眠り磐音 江戸双紙〈30〉 (双葉文庫)/佐伯 泰英
2009年7月19日初版
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2009-07-28 19:08:51

『メイド刑事 (9) 』

テーマ:冒険・アクション

ドラマ(テレビ朝日系)の方はまだ放送中だが、小説は本巻をもって終了。
2桁目前にして……! 残念。しかし打ち切りではなく予定通り、という事だ。

本作については、もともと、少女アクションドラマとして製作された『スケバン刑事』と、その原作漫画である方の『スケバン刑事』へのオマージュである、という事だ。
そのためだろうか、ドラマの方のスケバン刑事を思わせるところもあれば、漫画の和田慎二作品を思わせるところもある。
本巻のラストなどは、まさしく、そうだろう。
『スケバン刑事』よりは『超少女明日香』テイストに近いかもしれないけれど。
(あ、いや、葵はあくまでもご主人様の味方であって、大自然の味方ではない。うん)。

そのあたりを踏まえた上で、「あの方」の存在が、描写としてちょっと弱いと思うのだが、それでも、真善美三姉妹の確執と、葵の苦しみと喜び、警察庁と警視庁のぶつかりあいと、それが転じて「あの方」との闘争に転じていくあたり、実に楽しんで最後まで読めた。
とくに、敵方の最後の計画の着目点とスケールが、実に和田慎二作品風だった。

もちろん、真似という事では、全くない。
ではなく、オマージュとして、非常に成功した作品になっているのではないかと思う。
だからこそ、面白い。

それは幸い、ドラマの方にも受け継がれているようで、こちらは舞台が京都になっていたりとか、設定に変更はあるものの、意気込みの感じられる面白いドラマだと思う。
メイドの一里塚がでてこないのは残念だったけれど(笑)。


メイド刑事 9 (GA文庫)/早見 裕司
2009年7月31日初版(発売中)
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2009-07-27 19:29:00

『京伝怪異帖』

テーマ:歴史・時代小説

京伝といえば、そう、山東京伝。
この京伝が、心の師と仰ぐ平賀源内に巻き込まれるかのように、幾つもの奇怪な事件を解決(?)していくというのが本作で、5篇の短編から成る。

タイトルに「怪異」とあるように、天狗の髑髏だとか、行ったら最期戻って来られない地獄宿とか、さる大物政治家の生霊があらわれるとか、愛妻の人格が死霊に取り憑かれて一変してしまうとか、神隠しとか、いかにもホラーっぽいのだが、最初に言明しておくと、ホラーではない。
まあ、それなりに、気味の悪いシーンはあるけれど、実はこれらの怪異、9割が人間の企みによるものという仕掛けなのだ(但し、最後の1割は、主人公らにもわからない、ほんとの怪異)。

まあ、京伝や源内という実在の人物が登場するわけで、時代も当然、特定される。
田沼時代末期からその直後という、町人をとりまく環境が激変した時代だ!
うん、だからこそ、「怪異」が起きちゃうわけなんだ。

だいたい、物語の冒頭で、まず、「平賀源内獄死!」という報がもたらされるのが、人を食っている。
しかし、その幽霊みたいな源内と、主人公京伝、絵師の安兵衛に(元)陰間の蘭陽など、気心の知れた仲間が、時代のはざまに湧き出た怪異に取り組んでいく様子は実に面白い。

作者のもうひとつのシリーズ、〈だましゑ〉に、歌麿など、本作にも登場する浮世絵師が登場するそうで、この町人文化華やかなりし時代の面白さ、作者はよく心得ているからこそ、こんな怪異譚が生み出せたのだろうと想像する。

なお、5篇のうちでもっともホラー色が濃いのは、『生霊変化』と『悪魂』。
いずれも死霊や生霊といった、人間の「魂」に関する話で、だからこそ生臭く、だからこそ哀感が強く漂う。とくに、京伝の女房がとんでもない目に遭う『悪魂』は、現代社会の人間関係の悩みにも通じるような部分もあり、読者が容易に共感できそうに思う。


京伝怪異帖 (文春文庫)/高橋 克彦
2009年7月10日初版(文庫版)
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2009-07-26 21:00:51

『艦長の子』

テーマ:海外SF・ファンタジイ

前巻にあたる『戦いの子』から、ほぼ1年ぶりの続刊!
長かった……前巻の内容、ほとんど忘れてるぞおーい!

なので、まずざっと前巻の概要から。
地球を中心とする世界と、人類版図の辺境にあたる星区、このふたつでは、もののとらえかたも考え方も違う。
主人公ジョスは、辺境の生まれだが、そこは、異星人や海賊が跳梁し、戦いが絶えない宙域でもある。
ジョスもまた海賊船にさらわれ、そこで名高い海賊の後継と黙される事になるが、運良く途中で軍艦に救出された。
しかし、それは、地球ではなく、異星の艦。
異星艦の艦長の、養い子のような立場となったジョスは、一人の戦士として育っていく事となる……。

さて、本巻は、人類の(いや、辺境の)英雄とも言うべきひとりの艦長、カイロ・アザーコンの、息子の物語となる。
謎めいた過去を持つ、しかし抜群の戦歴を誇るアザーコン。
しかし、息子にとって、父は、6~7年に一度くらいしか会う事のない遠い存在。
むしろ、同居している「有名人」の母、ソングの方が身近だし、鬱陶しい存在だ。
彼自身はそれなりに際だった美貌を持っているとしても、格別の功績も、能力もない。
ただ、「あの艦長」の子として有名で、在住するコロニー、オーストロで最も有名でチャーミングな独身貴族とみなされているのだ。

なんだか、ジョスとは正反対のプロフィールだ。
有名人を親に持つ、どちらかというとむしろ平凡なキャラクターは、苦労するものなんだよな。
親も平凡な家族には考えられないようなトラブルで。
たとえば、望みもしないのに、四六時中マスコミにつきまとわれるといったような。
親が多くの敵を持っているなら、ついでに、暴力の標的にされるというオマケもつく。
今回の主人公、ライアンが、まさしくそれだ。
物語の冒頭で、彼はすでに、そういうテロの標的になった過去をかかえており、そのせいで麻薬に手を出しており、しかも再びテロの標的とされる。
いや、一度じゃないぞ。
複数回!

四六時中忙しかったり、遠くにいる両親を持つという事で、ライアンもまた、家族とは縁が薄い。
もっとも、いなくなったわけではないので、むしろ複雑な家族関係の中、親の「七光り」をめちゃくちゃ迷惑に思いながら、ライアンは、父や母との関係を模索していく、というのが、本巻の面白味でもある。
また、そういう立場の少年が主人公となる事で、前巻の辺境に比べ、今回は地球を中心とする、人類の「中央」の政治ゲームを見る事ができる。

そんな中、異星人との和平交渉がなし崩し的に始まるのだが、それすらも、パワーゲームの「駒」とされる。
そして、両親とも有名人であり、片方が軍人であるために、ライアンは、自身も家族も、否応なく、政治の「駒」とされている事を見せつけられる事にもなる。

そういう意味では、前巻とは全く別の意味で、ハードな物語だ。

さて、次巻ははやくも10月に刊行予定とのこと。
実質、本巻の続きとなるが、主人公はまたまた違う人物に。
いやあ、このシリーズ、構成が面白い。


艦長の子 (ハワカヤ文庫SF)/カリン・ロワチー
2009年7月15日初版
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2009-07-25 21:05:56

『クシエルの矢 (1) 天使の王国』

テーマ:海外SF・ファンタジイ

版元の売り文句は「刺激に満ちた歴史ファンタジイ・シリーズ開幕」というものだが、別段、現実の歴史と関係しているわけではない。
どことなく、ヨーロッパあたりの歴史的展開に類似しているところもあるけれど、これは、あくまでも、独自の世界と思った方が良いだろう。
並行世界としてみた場合は、我々の歴史からかなり遠いところにある。

とはいえ、欧米(キリスト教圏)の読者にとって衝撃的なのは、ここに登場する天使たちと、その子孫が、全て、官能の世界の住人である事かもしれない。
そう、天使というイメージ通り、大変美しい事で名高いが、キリスト教の天使のように無性ではなく、むしろ性的な存在であり、その政敵能力というか、いわば「女の武器」を使って、国の祖である、「拒まれた神の子」(但し、アンチクリストとか、そういうものではないようだ)を、守った事が、その国の宗教の、根幹となっている。

であるからこそ、その祖先たる天使を神として使える者たちは、「神娼」と呼ばれる、高等娼妓なのだ。
タイプによって、それぞれの「館」に分かれ、高度な教養とマナー、そして勿論、性技を身につけているとされる。

むむ?
ということは、かなりエロティックなファンタジイなのか?
いえいえ、それがどうして。
確かに、セクシュアルなシーンは出てくるが、決してあからさまとは言えない。
前世紀の中頃ならいざしらず、現代のエンタテイメントとしては、相当に大人しい。
文学的なエロスとしか言いようがない。
それゆえ、あまり露骨な表現は苦手な人も、官能的なシーンを楽しむ事ができるんじゃないかな。

しかも、こういう設定で、まさしく神娼の子として生まれ、その館で幼少時を過ごしながら、ヒロインが十歳となって引き取られた先は、政界の黒幕(それとも、ロビイスト?)とでもいう人物の手元だったので、彼女は、「寝台の中のスパイ」としてスタートを切るのだ。
つまり、彼女の視点を通して、その国及び周辺諸国の歴史がこれから語られていく、という展開になるのだろう。

うん、これは、世界観といい、ストーリー展開といい、面白いよ。


クシエルの矢〈1〉八天使の王国 (ハヤカワ文庫FT)/ジャクリーン ケアリー
2009年6月25日初版
ローカス賞長編部門受賞
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2009-07-24 20:13:23

『神曲奏界ポリフォニカ メモリーズ・ホワイト』

テーマ:冒険・アクション

音楽とは、誰かのために奏でられるものだ。
神のためかもしれず、
恋人のためかもしれず、
我が子のためかもしれず、
自分自身のためかもしれない。
たまたま、精霊のために奏でられるものがここでは「神曲」と呼ばれているのだけれど、
それらが真に「音楽」となるためには、迷いがあってはならないのだ。

しかし、その音楽からなんらかの力を得ようと思うのならば、受け容れる側にも、迷いがあってはならないだろう。

常々思っているのだが、神曲を与える楽士の演奏方法は、我々の世界でいうと、伴奏にかなり近い技術を必要とするのではないか。
伴奏では、正確に、上手に演奏する事は当然として、主たる演奏家の演奏をある時は導き、ある時は寄り添い、その旋律と描き出す世界を豊かにし、支えることが、「ケース・バイ・ケースで」必要とされる。
主たる演奏家のかわりに、なんらかの行動を起こす精霊がそこにいるというだけの違いのように思われる。
いずれにせよ、両者の息がぴったりと合い、互いをある程度理解し、信頼がなくてはならない。

スノウとブランカは、紆余曲折を経て、次第にその領域へ足を踏み入れているかのようで、ますます、先が楽しみになってきた。

そして、もうひとつ、今後の展開を明確に示唆するものがラストに示された。
スノウ、プリムローズ、ジョッシュ、デイジー、いずれも欠ける事なく、素晴らしい音楽を紡ぎ出していく素敵な予想は、嬉しい。
もっとも、単に美しく嬉しいだけではなく、過去で巡り会ったとんでもない存在や、世界を監視する者の存在など、ポリフォニカという世界観に関わる重要な断片も顔を出している。

今のところ、このシリーズのみが、精霊島が空中に浮かんでいる過去の物語となっているだけに、ひときわユニークであり、目を離せない。


神曲奏界ポリフォニカ メモリーズ・ホワイト (GA文庫)/高殿 円
2009年6月30日初版
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2009-07-23 19:20:18

『神曲奏界ポリフォニカ クリムゾンS(4) 』

テーマ:冒険・アクション

信頼を育てる事は、ほんとに難しい。
漢と漢の間柄でも。
女と女の間柄でも。
人間と人間の間柄でも。
ならば、存在形態の異なる、人間と精霊ならば、なおさら難しいに違いない。

隠し事があっては、信頼関係はさらに育ちにくいものだろうけど、しかし……。
言うに言われぬ過去というやつも、あるよな。
フォロンとコーティでみるなら、まさしく、長い長い時を過ごしてきたコーティの側に、その分大きな問題があるというのは、否めない。
また、フォロンの側が、この物語の時点では、まだまだ未熟者なわけだし。

果たして、この二人はうまく信頼関係を築いていく事ができるのか?
(や、なにしろ前日譚だから、その答はわかっているようなものではあるが、プロセスが大事なんだよ。しっぽゆら~ん)。

そして、本巻は、それのみに尽きる。
だって、薄いんだもん……(笑)。
同時発売のポリ白と比べて明らかに薄い!

なので、続く巻に期待。
しかし、この「S」何巻で終わるのかな?


神曲奏界ポリフォニカ クリムゾンS 4 (GA文庫)/榊 一郎
2009年6月30日初版
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2009-07-22 20:11:14

『PULUTO (8) 』

テーマ:日本SF・ファンタジイ

見事な円環構造を形成して、『PULUTO』は幕を閉じた。
最初から提示されていた、ゲジヒトの記憶障害の謎が、ラストで明らかになる。
もっとも、「なぜ」そうなったのかは、特に説明されていない。
読者が、自ら、それについては解釈しなければならないわけだ。
SF的な説明をするもよし。
哲学的な説明をするもよし。
または、一切説明をせずに、ただラストを受け容れてもいいと思う。

とはいえ……。
本作は、手塚治虫の『鉄腕アトム』、その中の一編を、浦沢直樹が語り直したものだ。
しかし、当然ながら、テーマはひとつ。
「人間とロボットの境目はどこにあるのか?」
また、それを通じて、人間性という事を問うている。

ピノキオは、物語の最後に、人間になる事ができた。
ロボットは、科学技術が高度になればなるほど、人間に近いものを作る事ができるようになるだろう。
しかし、その時、人間とロボットの境目はどこになる?
……能力。
単なる肉体的・知的能力であるならば、ロボットは、人間を超える事ができる。
人間の持つファジー性ですら、いろいろな手段によって、それに近い効果を出す事が、できるという。
感性はどうか。
これもまた、分析とプログラミングが高度になれば、限りなく人間に近く、シミュレーションできるのかもしれない。
もしそうなったら、それはロボットか?

SFファンならとうに知っているとおり、実はこのテーマ、SFではずいぶんと長い間、世界中の、さまざまな作家によってテーマとされてきた。
そして、ほとんどの作家が、明解な答を出してはいない。

おそらく、それは、「わからない」からだ。
ただ、あり得べき未来を作家は描く。
自分なりの答を出すか、あるいは保留するかは、受け手の仕事だ。
なんのために?
臨むらくは、よりよい未来へ歩いていくために。

たとえ、その過程で、大きな憎悪を体験しなければならなかったとしても。


PLUTO 8 (ビッグコミックス)/浦沢 直樹・手塚 治虫
2009年7月5日初版
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