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2009-06-30 19:38:01

『銀河乞食軍団 (1) 謎の故郷消失事件』

テーマ:日本SF・ファンタジイ

ハミルトンの〈キャプテン・フューチャー〉をはじめ、名だたるスペオペのほとんどを日本に紹介し続けてきた、野田昌弘。
その人が抱いていた夢のひとつは、日本初のスペオペを世に送り出す事だったのだという。
残念ながらその夢は、高千穂遙の〈クラッシャー・ジョウ〉によってあえなく破れてしまったのだが(そういや高千穂遙は、日本初のヒロイック・ファンタジイを世に送り出すという栗本薫の夢も、〈魔獣ハリディール〉によってさえぎっている!)、私は、断言しよう。

真に日本的なスペオペを書いた最初の人は、やはり、野田昌弘なのだと。

それが、この〈銀河乞食軍団〉なのだ。

厳密に言えば、その世界観の一部は、先に、映画『宇宙からのメッセージ』のノヴェライズに、翻案して使われている。
そのあたりの、やむを得ないツラ~イ事情は、いろいろあったらしいのだが(文庫版第1巻の作者あとがきに詳しい)、まあ、こちらは翻案なので……。
とはいえ、野田昌弘による、翻訳ではないオリジナルのスペオペが、「面白い!」と感じたのは、そのノヴェライズであるのだけれども。

さて、どこらへんが、日本のスペオペなのだろうか。
本来、スペースオペラという言葉は、「宇宙を舞台にした西部劇」という意味の悪口として、ホースオペラをスペースオペラと言い換えたものだ、と言われている。
つまり、アメリカ人にとっては、スペオペの基本精神って西部劇なのだ。
孤高のヒーローが、時には僅かな仲間とともに、未知の荒野である異星世界での冒険に飛び出すという物語だ。
あるいはその荒野で、悪と戦う正義のヒーローになるのだ。
そこにあるのは、個人の自由を尊重する世界であり、荒々しいフロンティアの精神でもあるだろう。

では、本作は?
時代劇ならぬ、宇宙劇だろう、というのが私の印象だ。
そこには、未知の荒野はない。
遠い遠い時間と空間のどこかで……今日も展開されている、下町の物語なのだ。
ゆえに、我々の目から見て、いかに凄い技術であろうと、それらは、登場人物にとってなにげない日常。
電車のかわりに磁發鉄道(リニアですかね)があり、海をいく船のかわりに宇宙戦が星系間を行き来し、港のかわりに宇宙港があるのならば、人工島の錨地は、軌道上の小惑星をつなげた錨地だ。

そこへもってきて、たとえば星系や惑星などの名前は、漢字表記。
たとえば主役の銀河乞食軍団こと星海企業の本拠地があるのは、星涯(ほしのはて)星系の惑星白沙(しろきすな)、という具合。
先に磁發鉄道という用語を出したけれども、これに代表されるとおり、用語も、漢字表記寄りだ。
人名も、西洋名と日本名が混在している。
銀河乞食軍団の頭目がジェリコ・ムックホッファであり、副頭目が熊倉松五郎である、というように。
だからといって、ジェリコが白人で松五郎が東洋人、というような区別は一切出て来ないのだ。
この混淆ぶりも、ある意味、日本そのものと言えるのかもしれない。

そんなキャラクターが、職人気質と義理人情を両手の武器にして、独立独歩、宇宙という名の「世間」を渡り、不思議な事件に協力して立ち向かっていくというのがこの物語というわけ。


発動! タンポポ村救出作戦 (銀河乞食軍団 合本版1)/野田 昌宏
2009年6月25日合本版(1~6巻)
『謎の故郷消失事件』1982年6月30日初版(文庫第1巻)
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2009-06-29 20:06:08

『〈蒼橋〉義勇軍、出撃!』〈銀河乞食軍団黎明篇1〉

テーマ:日本SF・ファンタジイ

銀河乞食軍団の新作が登場!
えええーっ?

うん、いろんな意味で、「えええーっ」なのだ。
何しろ、作者が亡くなってはや何年……。
当然、別の人が引き継いで書くわけだし、
そもそも、毎月どっさりと出る小説を読み続けているであろう、当時のファンが、これだけのブランクをあけて手に取るものなのか?

ハヤカワ文庫も凄い決断をしたものだな。

正直、読む事をためらった。
野田昌弘の、あの独特の文体と、独特のスペオペ世界観は、はたしてどうなってしまうのか。
だからといって、模作というのもちょっと。

しかし、読み始めて、安心した。
そこには、確かに、銀河乞食軍団の世界があったからだ。
といって、文体は、引き継いだ鷹見一幸のものであり、しかもそれが、この世界にちょうど合っている。

物語自体、黎明篇となっている通り、かの第1巻『謎の故郷消失事件!』より、20年以上も昔の話となっている。
そう、ムックホッファとロケ松が、現役の連邦軍士官だった頃の話だ。
うん……。
うん……。
ロケ松なんだよ。
当時の読者は、憶えているだろう。
挿絵の加藤直之による、野田昌弘そっくりに描かれたロケ松のあの姿。

まあ、それより20年以上若い、30代のロケ松なんだけどね。

舞台となるのが、自治星系蒼橋(あおのはし)。
星涯と同じく、辺境の星系であり、しかもそこを開発した紅天星系にがっちりと手綱を握られた、鉱山星系という設定だ。
そして、ここの人々が、後の銀河乞食軍団を彷彿とさせるような、職人揃いなのだ。
うぅん、いいねえ!
もちろん、ムックホッファとロケ松以外にも、懐かしい顔が出てきたりするし、それ以外に、SFファンには嬉しいちょっとしたお遊びもちりばめられているので、いろんな意味で楽しい作品だ。


〈蒼橋〉義勇軍、出撃! (銀河乞食軍団 黎明篇1) (ハヤカワ文庫 JA タ 10-1 銀河乞食軍団 黎明編 1)/鷹見 一幸 2009年5月25日初版
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2009-06-28 19:33:07

『黄金の幻影都市 (5) 仮想都市テミルン』

テーマ:海外SF・ファンタジイ

この部分では、オーランドとフレデリックスのぺがレニーたちに追いつく活躍ぶりをみせる。
いや、活躍ぶりというよりは、苦闘ぶりと言うべきだろうか。
というのは、ここで、オーランドの持っている秘密がひとつ、明らかになるからだ。
彼の現実の体がかかえる欠点が、なぜか如実に仮想人格に投影されてしまう。
これは、ちょっと怖い。
というのは、ネット上の仮想人格というものが、現実の自分を補完できるものである以上、
「現実の自分にはかなえられない要素を持つ人物」
を得る事ができるわけで、それはネットで活動するなかでの、最大のメリットのひとつとも言える。
また、ストーリーとは直接関係はなさそうだが、オーランドの相棒フレデリックスも、仮想人格とは全く違う現実の自分を持っていて、それがオーランドとフレデリックスの人間関係をより成熟したものにさせつつあるようだ。

一方、レニーの側は、ようやく放棄された軍事施設内の、高度なシステムを利用できるようになるが、生身の体とその周辺の人々が暗殺者に狙われている事もあって、その隠れ家から出る事ができなくなる。
亡くなった恩師の執事であった、ちょっと気むずかしい老人ジェレマイアと、レニーの父とが、ログオンしている間のレニーと!Xザップの体をモニタする事になる。
レニーの父親は、愛する妻を失ってから、男でひとつで娘と息子を育て、その悲しみと重荷に、とうとう挫折してしまった男として描かれている。
娘も息子も愛しているのだが、彼にはもはや、ストレートに愛情を表現する余力がない。
アル中でもある彼が、実はどのように家族を愛しているかという部分が、ここで少しずつ出てくる事になる。

実は一枚岩ではなかった事が明らかになってきた敵側の方にも動きがあり、結社内のパワーゲームが次第に露骨になってくる。
レニーやオーランドが見た黄金都市が、最初の結合点となり、レニーとオーランドが巡り会う他、敵とも正面きってぶつかる事になるけれども、残念ながら、ここで登場する敵は末端の者でしかない。
しかし、彼らを操る者たちが、単に暗殺部隊を持っているというだけでなく、どれほど残忍な連中であるかという事も、もう少し突っ込んで語られる。


『黄金の幻影都市 (5) 仮想都市テルミン』(タッド・ウィリアムズ作 野田昌弘訳)
ハヤカワ文庫SF1374
2001年10月15日初版

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2009-06-27 20:10:58

『黄金の幻影都市 (4) 闇の中の宇宙

テーマ:海外SF・ファンタジイ
ポールは、鑑の国のアリス的世界から、川を通じて、ほんとは渡れないはずの境界を越え、赤い沙が広がる世界の運河の中に現れた!

訳者は、あたかもエドガー・ライス・バロウズの火星のような……と述べているが、まさしく然り。
運河の走る赤い沙漠というイメージが、そもそも前世紀前半のスペオペにおける火星のイメージだけれど、そこに中世と近未来が入り交じったような都市があり……というより、そういう世界で、囚われの娘を救うべく、地球出身の元士官がロマンティックにも奮闘するというのが、バロウズ的という所以だろう。
まあ、翼の生えた王女といえば、バロウズの作品でいうと、月シリーズにそういう種族が出てくるけれども。

しかし、そのさなか、この冒険に巻き込まれたポールに、同行者の一人が、
「君は市民なのか?」
という問いを発する事で、これもまた、電脳世界の仮想空間である事が察せられる。

まあ、そもそも、仮想空間で展開される物語なのだから、ポールが第一次大戦の戦場からそこに迷い込んだとしても、迷い込んだ先が仮想空間であるのはいわば理の当然。
しかし、そうと決まったところで、改めて、
「じゃあ、ポールって何者だよ?」
という疑問が生じる。

彼の過去も、断片的に夢の中で出てくるのだけれど、まだまだ、その正体はなんとも知れないのだ。
どうやら、彼の存在は、この物語のおけるジョーカーのようなものだと思われる。
そういえば、トランプのジョーカーの札は、タロットにおける「0.愚者」に相当するのだそうで、大アルカナ中の愚者とは、旅する、あるいはより正確にはさまよう者という示唆がある。
その放浪により、真実をめざすのだそうだが、だとすると、ポールこそは、この物語の真の主人公なのかもしれない。

『黄金の幻影都市 (4) 闇の中の宇宙』(タッド・ウィリアムズ作 野田昌弘訳)
ハヤカワ文庫SF1369
2001年9月15日初版
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2009-06-26 20:07:36

『黄金の幻影都市 (3) 青い犬の導師』

テーマ:海外SF・ファンタジイ
『謎の異世界をさまようポールを別にすると、レニーとオーランドは、それぞれ別の方面から、謎の核心に接近しつつある。
そして、その二組の航跡が一瞬交わるのが、「ツリーハウス」。
ネットを構築した初期の人々が集う一種のフリーエリア(もちろん、仮想空間のどこか)なのだが、このツリーハウスという概念には、かなり露骨に、ハックルベリー・フィン的なイメージが付与あれていると思う。

スレた大人の世界とは違う、ナイーヴで理想的で自由な「少年の」世界。
うん、そういう事だね。
それゆえ、集っている人々は、ほとんどが苔のはえたようなヴェテラン(つか場合によってはロートル?)であるにも関わらず、そこで重要な役割を果たすのは、中身が子供か、非常に子供っぽい人々であるらしい、黄色い猿の疑似人格をまとったワル乗り族と呼ばれる連中だ。
もっとも、レニーたちを手助けする「ロートル」の一人が、ソーセージとスクランブルエッグたっぷりの「朝食メニュー」というぶっとんだ姿で登場するのは、とても面白い。
ツリーハウスの、無秩序さをあらわしているのだろうが、映像的に、空中をひらひら飛び回る朝食って凄く楽しいじゃないか。
ふふふ……食べちゃいたいよ。

レニーたちが探し当てた、青い犬の導師と呼ばれる老ハッカーも、このツリーハウスにいるわけだが、さて。
彼の登場により、さらにもうちょっと敵の姿が見えてくる。
そして、まさしく、敵が殺人も辞さない危険な集団である事がわかってくるのだ。
もっとも、その「敵」も一枚岩ではなく、首領の奇矯さと、それに対する反発に関する描写が目についてくる。


『黄金の幻影都市 (3) 青い犬の導師』(タッド・ウィリアムズ作 野田昌弘訳)
ハヤカワ文庫SF1365
2001年8月15日初版
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2009-06-26 19:54:28

ゾンビは大群であらわれる。映画でも、小説でも、音楽でも。

テーマ:ホラー


ゾンビものといえば、まあ、普通は映画。
なんだけれども、小説もけっこう、いろいろある。
専門のアンソロジーなども、組まれたりしている。
残念ながら、あまりメジャーなものがないんだけれどね。
(その証拠に、幾つか日本で翻訳刊行されたものもあるけど、年月がたってしまったせいかAmazon.comででてこない。残念)。

しかしだ。
その小説の、たぶん、半分近くが、ゾンビを「群れ」として扱っているのだ。
うん、確かに、腐れ崩れた死体がわらわらと群がってくるというのは、凄いインパクト。
そして、その原型的なイメージは、たいていの解説で、ロメロの映画『Night of the Living Dead』にある、とされていた。

そうそう、ゾンビがわらわら……わらわら!
日本でかつて一世を風靡した、ゾンビシューティングゲームも、ここに原イメージがあるだろう事は疑いをいれない。

だが、もうひとつ、同じ時代に有名なゾンビテーマのエンタテイメント作品がある。
それが、マイクル・ジャクソンの「スリラー」。
プロモーション・ヴィデオ全盛期に登場したこの曲、歌詞も凄くドラマチックなホラーなのだが、映像がね。
ゾンビ、ゾンビ、ゾンビの群が、ダンスダンスダンス~。
マイクル・ジャクソンの代表的なヒットソングである事はもちろんだが、その、凄い映像に魅入られた少年少女は、世界中にたくさんいたはずだ。

そして、実際、その映像へのオマージュととれるようなゾンビ小説にもお目にかかった事がある。
まあ、ストレートにそうでなくとも、ゾンビが大群であらわれる小説ならば、「スリラー」を聞きながら読みたいかもしれない。
少なくとも、あの曲は、ゾンビ(大群)が面白い、という世界をたくさんの人に開いてくれたのだ。

惜しくも、50歳にして世を去る事になったマイクル・ジャクソンの冥福を祈る。


ナイト・オブ・ザ・リビング・デッド スペシャル・エディション [DVD
スリラー 25周年記念リミテッド・エディション(DVD付)/マイケル・ジャクソン

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2009-06-25 20:00:00

『黄金の幻影都市 (2) 赤き王の夢』

テーマ:海外SF・ファンタジイ

赤き王とは何か!
実は、ひとつの領土を、赤と白、二組の女王と王が試合によってとりあっているのだ。
こう言えばピンとくるかと思うが、要するに、試合とはチェスの試合であり、
仮想世界でこれをやっているといえば、もちろん、『鑑の国のアリス』というわけ。
第一次大戦の塹壕から異様な世界に紛れ込んだポールが、その世界の中でさらに迷い込んだのが、こういう世界だ。
もちろん、『鑑の国のアリス』そのままではないのだが。

一方、レニーたちはどんどんと、危険な状況に追い込まれていく。
といっても、不思議な人物であるブッシュマンの!Xザップは、すばらしい速さでネットの技術を身につけつつ、ブッシュマンとしてのアイデンティティも保とうとしているのだが、あまりに急速に新しい「都会の」技術を身につけすぎたのか、彼の精神にも次第に危機が訪れようとしている。
しかし、当初の、教師と生徒という枠をこえて二人が友情を育てていく様子は、この物語の中でほっとする部分だ。

また、ネットゲーム内で思わぬ罠にはまったオーランドも、相棒とともにレニーたちとは全く別のアプローチで、核心に迫ろうとしている。
ゲーム内では無敵の戦士を誇ったオーランドなのだが、彼が便利ツールとして使っている虫型エージェント(バグ? ぷぷ)、ビーズルがほほえましい。
どうやら、物語の示唆するところによると、このビーズル、幼児用の代物らしいし、実際、オーランドは長年これを使っているらしい。
小さい頃から愛用している品物って、いいよね。

ところで、このあたりから、敵方の組織もだんだんと姿が見えるようになってくる(読者にだけ)。
それが、聖杯結社と名乗っているのだ。
うむむむ(笑)。西欧人って、ほんっとに、聖杯伝説好きだね。
しかし、ここで求める聖杯がどんなものかはまだ不明。
また、各章の頭にはりつけられている「ネットニュース」も、微妙に、犯罪と、宗教的な要素がいりまじり、レニーがネットの中でみつけたインドのカーリーなどなど、世界各地の古い宗教が顔を出す。
「聖杯」となんらかの関わりがあるのだろうか。

主要な三つの主人公グループが、それぞれ別ルートで謎に迫っていく過程は、実に面白い。


『黄金の幻影都市 (3) 赤き王の夢』(タッド・ウィリアムズ作 野田昌弘訳)
ハヤカワ部子SF1361
2001年7月15日初版

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2009-06-24 19:58:47

『黄金の幻影都市 (1) 電脳世界の罠』

テーマ:海外SF・ファンタジイ
ネットといえば今はインターネットだが、15年くらい前は、まだパソ通が主流。そのパソ通が使われるようになったのは、さらに遡って……6~7年、だろうか。
まあ、正確でなくてもいいんだ。
つまり、20年ちょい前に誕生した「ネットの世界」だけれど、既にその頃から、ネット空間に潜む幽霊のハナシはあった。

24時間、いつアクセスしても、会える人がいる。
かれは本当に、生身の人間なのだろうか?

昨日チャットで、誰それさんに会ったよ。
え。先日かれのお葬式に出たんだけど。
じゃあ、ネットにいたのはっ……?

まあ、バリエーションはいろいろだ。
しかし、それが「リアル」ではない、「電脳世界」だからこそ、いるはずのない幻影に出会ったというハナシは、生まれたのだろう。
そもそも、「リアル」でないのだから、そこで出会ったものが、ほんとうに「現実」の世界に由来しているのかどうかは、わからないのだ!

さて、この物語、96年に刊行されたのだが(原著)、
高度なヴァーチャルリアリティにより、五官の全てに感覚がフィードバックされるようなネット世界が舞台となっている。
イメージ的には、セカンドライフみたいな場所が全地球的になった感じだろうか。
(もっとも、これで料金が従量制っぽいってのは凄く怖いが……)。

とはいえ、どれほど高度に、高機能になろうとも、ネットはネット。
VRと「リアル」は違う。
多少の差はあっても、「作り物」には、常に、疑念がつきまとう。
そんな疑念が生み出す最大のゴーストが、この「黄金の都市」なのかもしれない。

しかし、1巻では、まだ、その世界観が、複数の主人公格キャラクターを通じて、提示されるだけだ。
つまり、仮想空間に見え隠れする謎の「もの」に、
仮想工学の教師とその生徒であるブッシュマンの若者が、
ネットゲームのチャンピオンである少年が、
第一次大戦のさなか、塹壕の泥濘の中で苦しんでいた兵士が……
それぞれ、全く違う形で遭遇するのだ。


『黄金の幻影都市 (1) 電脳世界の罠』(タッド・ウィリアムズ作 野田昌弘訳)
ハヤカワ文庫SF1358
2001年6月15日初版
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2009-06-23 19:31:18

『ダヤンとパリのこねこ会議』

テーマ:絵本・児童文学

猫。
うんうん、猫。
猫はいいよ~、どんな不細工な猫でもいいっ!

と、ベタ甘な顔で漏らす猫好きは巷にたくさんいそうなのだが、ごくごく世間一般的に考えれば、なんといっても、かわいいっ かわいくてたまらないっ
というのは、仔猫であろう。

もちろん、猫に限らず、小さい子供は愛らしいものなのだが、
猫は格別なのだ。
たぶん。

なので、事あるごとに、ダヤンも仔猫になってしまうんだよなあ……(笑)。
最初にダヤンがベビィになってしまったのは、ダヤンの誕生日を探すエピソードの時だった。
うっかり、誕生日を突き止めてくれたはずの魔女を、パーティーに招待するのを忘れて、「年齢」を奪われちゃったんだね。

しかし、今回はちょっと違う。
なんと、アルス(我々の地球の事だ)にある、パリ(!)で、こねこの会議が開かれる、という。
それに、ダヤンとあともういっぴきが「こねこ」として招待されたのだ。
うぅん、普段のダヤンはおとなの猫なのに、どうやって?

まあ、そこはそれ。
地球各地のいろいろな仔猫が登場し、そこにダヤンとバニラがまじっての、こねこ会議。
ふふふ。
仔猫の体は、とくに、太陽の力をよく伝えるらしいよ。

わちふぃーるどのねこ会議とちょっと共通するところもあるような、不思議なこねこ会議。
もちろん、美麗なフルカラー。


ダヤンとパリのこねこ会議/池田 あきこ
2009年6月17日初版
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2009-06-22 19:31:32

『ゲルマン神話 (下) 英雄伝説』

テーマ:神話・伝説・民話

下巻は英雄伝説、となっており、『ニーベルンゲンの伝説』、『鍛冶屋ヴィーランドの伝説』、『ベルンのディートリッヒの伝説』が収録されている。
スタイルはもちろん、上巻同様、幾つかの版をもとに著者がまとめあげたもの、となっている。
神話の方がおおむね北欧神話であるのに比べ、伝説の方はまさしくドイツ……というか、ゲルマンのもの。
もっとも、ヴィーランドの話はヴァリエーションがもうちょっと広い地域に伝わっているようではあるんだけれど。

しかし、ジークフリートとクリームヒルトとブリュンヒルデを中心とするニーベルンゲンの物語と、
鍛冶屋のヴィーランドと、
ベルンのディートリッヒの伝説が、実は相互につながっていたとは思わなかった。

この3つの関係は、たとえて言うなら、アーサー王と円卓の騎士にまつわる物語と、トリスタンとイズーの物語と、パーシヴァルの伝説の関係のようなものだ。
主人公が別だが、世界観が同一であり、登場人物が一部、だぶるのだ。

本書におさめられた3つの伝説でいうと、まず、ニーベルンゲンではジークフリートが暗殺されたあと、クリームヒルトがフン族の王に嫁ぐ。
ここで、クリームヒルトの側と、ハーゲンの側が激しい流血の争いをする事になるが、その場にはベルンのディートリッヒがフン族の客として滞在しており、半ば以上ハーゲンの(つまり、ブルグンド王国の)側に立つ。
鍛冶屋ヴィーランドは、神業を持つ鍛冶屋で、その技のために囚われたり、そこから翼を作って逃げ出したりと、ギリシアのダイダロスに比肩しうる人物だが、その息子は、ベルンのディートリッヒに仕える事になるし、彼の鍛えた名剣も、息子によってベルンに運ばれる。

なるほど、この3つを並べてあるのは、とっても興味深い事だ。

惜しむらくは、日本語の文章がとっても読みづらいということ。
訳者もさることながら、青土社の編集部、何してた?
文章の癖はまだしも、最低限、上下巻を通して、固有名詞や用語の表記は統一されるべきと思う。
それと、文章の癖以前の問題として、主語の混乱もなんとかならないものですかねえ……。
はっきり言うが、本書は訳文でもの凄く損をしているぞ。
そこさえ忍耐して読むなら、ほんとに興味深くて面白いんだけどね。


ゲルマン神話〈下〉英雄伝説/ライナー テッツナー
1998年12月20日初版
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