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2008-10-31 22:28:31

『ABC殺人事件』

テーマ:ミステリ
名探偵エルキュール・ポアロ氏が活躍するクリスティ作品は、30作余に及ぶが、おそらく本巻はその中でもかなりの率でベスト3に入ってくるものと思う。
幸か不幸か、児童向けのリライトで読んでしまうケースも多いと思うけれど、もともと大人向けの作品なのだし、小中学生の頃に読んだよ、という人も、ぜひ、また手にしていただきたいものだ(笑)。

タイトルがふるっている。
ABC。
「いろは」や「あいうえお」同様、物事の基本、初歩の初歩というような意味合いにも使われるが、ABCといえば、ものをカウントする時にも使われるし、
あと、これは日本人にはどうしたって馴染みがないが、作中重要なアイテムとして登場する、イギリスのメジャーな「鉄道案内」の名前でもあるそうだ。

で、それらの「ABC」に関わる要素をふんだんに盛り込んだ上で、この殺人は、「まずAの頭文字を持っている人が、次にBの人が……」殺されていく。
しかも、それがいちいち、ポアロへの挑戦という形をとっているという仕掛け。

アクションシーンのひとつとてなく、ポアロが「灰色の脳細胞」を働かせて、犯人像を割り出していこうとするその方法は、後年、アメリカのFBIの手法として有名になったプロファイリングのはしりと言えそうな気がする。
また、そうやってプロファイリングしていくことで、思いもかけぬ犯人像が、
「すべての証拠はこの男が犯人だと語っている。いるはずっ」
という男の影に潜む、とんでもない「もの」を浮き彫りにしていくさまは、終盤にかけて、どんどんスリリングになっていく。

で、それが、再読を何度しても毎回そう感じるというのは、クリスティの筆も、この頃、最高潮にのっていたという事かもしれない。


ABC殺人事件 (クリスティー文庫)/アガサ・クリスティー
2003年11月15日初版
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2008-10-30 21:47:16

『ガンマンの伝説』

テーマ:冒険・アクション
日本では、ウェスタンがあまり受けないのだそうだ。
まあ、確かに……。
和製のものというと、メジャーどころでは漫画で松本零士が描いているくらいかもしれないし、あとはライトノベルでいくらかある、それくらいか。

それも道理で、いかに魅力を感じる人がいようとも、所詮、ウェスタンの文化というのは「異文化」であり、日本人が自家薬籠中のものにできるかというと、疑問だ。
なんつっても、背景の生活空間がまるっきり違うし!
一例を挙げるなら、日本では、ぐるりと見える地平線なんて、まずのぞめない。

それでも、ある程度知られているガンマンの名前がいくつかある。
そのひとつが、ワイアット・アープであり、ドク・ホリディ。
映画で有名な『OK牧場の決闘』の、彼等のことだ。

そうそう、映画が名作だから、映画の中の彼等がともかく有名で、彼等が実在の人物だったと知識として知ってはいても、映画の話がほんとのように思えてしまう。
なんといっても、あの映画はかっこいいからなあ……!
しかし、「それだけに」、そこにはかなりの虚構が盛り込まれている。
ならば、その虚構はどこからどこまで?

いやいや、本書は、確かにワイアット・アープはじめ、アープ兄弟の事を描いているが、べつだん、真実暴露小説というわけではないのだ。
ハードボイルドの巨匠の一人、パーカーが、それこそ、余計な虚飾を交えずに、淡々とアープ兄弟の全盛期を描く。
とうぜん、それは、彼等のトゥームストーン時代の物語だ。

従って、有名な「対決」についても詳しく描かれていくのだけれど、
フィルムの長さが決まっている映画では描ききれない、「対決」の背景にあるものが、非常に複雑である事に驚かされる。
単なる私怨だけではない。
町のものと、カウボーイたち。
土地のものと、よそもの。
共和党と、民主党。
そう、そんな政治的な要素までも、実はたっぷりとからんでいたのだという。

そしてまた、対立あるところには、人間の絆というものも、ある。
もろいものも、強いものも。
男と女。
あるいは、友情。
状況から、否応なく敵味方に分かれるものもあれば、裏切りをはたらくもの、生涯をともに過ごすもの……。
そこに描かれる、負の感情をも含めた「人の情」は、淡々と書きつづられているからこそ、じわりと沁みてくるかのようだ。




ガンマンの伝説 (ハヤカワ・ミステリ文庫 ハ 1-48)/ロバート B.パーカー
2008年10月15日初版
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2008-10-29 20:55:08

『空中飯店飲茶 (下) 』

テーマ:日本SF・ファンタジイ
後半、物語はちょっときなくさくなってくる。それというのも、クリーンな新エネルギーの実現を前に、政治的な状況が切迫し、それに伴って、人質となっている「客人」たちへの冷遇が問題になりつつあるからだ。

意図的に「客人」たちの心を壊してきた者たちの企ては、ほとんど成功しそうになっていたのだが、そこに、新米の茶運師である空也が登場した事で、陰謀が破れていくというわけ。
もちろん、彼等の心をほどくのに、お茶そのものも一役買うわけだけれど、新米というだけでなく、いろいろな意味でイレギュラーな空也という「異分子」による、一種の変成が、この物語の要であるから、「客人」たちがひとりひとり、心を取り戻していくところこそ、後半の読みどころになっていると言えるだろう。

しかし、そういった、物語そのものよりも、読了後心に残るのは、空を翔ける茶運師の翼ではないだろうか。
工学的にはあり得ないような気がするが(まあしかし、どんな材料が今後出てきて、どんな翼が作れるようになるかは未知の話)、あたかも鳥の翼のようなこれを身につけて、空を飛びたくなってしまう。

かりに、この世界の行く先で、実際に、新エネルギーが実現し、お茶によるパワーゲームがなくなったとしても、こんなに魅力的な翼ならば、消える事はないんじゃないか。
だとすれば、空中飯店も復活するかもしれない。
そして、そこには、呪縛から解き放たれた「客人」たちがいるといい。

後半の物語はいささか重苦しさもあるのだけれど、清々しいお茶の香りと、大空をゆく翼の夢は、やはり爽快だと思う。


空中飲茶飯店 下 (眠れぬ夜の奇妙な話コミックス) (眠れぬ夜の奇妙な話コミックス)/かまた きみこ
2007年12月30日初版
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2008-10-28 21:18:33

『空中飲茶飯店 (上) 』

テーマ:日本SF・ファンタジイ
大空を舞う、不思議なグライダーの群れ。
彼等がめざすその先には、空中に浮かぶ、奇妙な岩の島がある。
それこそが、空中飯店、つまり、グライダーの旅人たちのための、空中旅館なのだ。
(半天というと、レストランのように思えるが、本来は階下がレストランになった旅籠、すなわち、インに近いものだ)。
そして、グライダーの旅人たちは、単なる観光客でもスポーツマンでもない。
実は、貴重な茶(中国茶)を運び、取引する、特殊な職業の男女なのだ。
彼等が集まる空中旅館には、喫茶室のようなところがあって、美しい娘が、絶妙な手腕で、茶を淹れてくれる。
ただでさえ貴重な茶が、彼女によって、さらに素晴らしいものになる……。

このイメージだけでも、非常に素晴らしいと思うのだが、実はこの世界、悪化する環境汚染からの回復をめざして、「茶を大事にする」という奇抜なアイデアを実施した、近未来または並行世界であり、これが施行されている土地では、化石燃料を使うものは厳禁。
だからこそのグライダーなわけ。
ゆえに、「茶」はその世界では、重要な政治的パワーとなっている。
しかも、その裏で、石油燃料にかわる新エネルギーの実用が鍵になっているという設定があるので、むしろそのあたりはSFファンの方が心惹かれる世界作りになっているかも。

但し、作者の本意は、そういうSFを描く事ではないから、そのあたりを深く突っ込んでいるわけではにのだけれど、それでも、着想は凄く面白いじゃないか。

そういう世界観を背景にして、物語の主人公は新米の「茶運師」、空也だ。
なんと彼は、初めての仕事であやうく墜落しそうになり、かろうじて飯店のはしっこにひっかかるという登場のしかたをする。
労連な茶運師の中では驚くほど若い彼、その身の上にも、本人すら知らないちょっとした秘密があるのだけれど、まずは、この新米の目を通して、この世界をゆっくりとかいま見ていくところから、話が始まるわけだ。

お茶がテーマであるから、これでもかというほど、次々、中国茶の銘柄が登場し、その道が好きな人にはわくわくするだろうし、逆に、蘊蓄が滔々と語られているわけではないから、その道に詳しくない人でも、全然気にしないで読めると思う。
(まあ、早い話が、中華ファンタジイとして、漢字名前のアイテムがたくさん登場すると思えばよし。たまたま、それらのお茶が、実際に存在する銘柄だったりするだけのこと)。

こう書くと、なんだか、良い香り漂う陶酔境のように見えてしまうかもしれないが、そこに、「客人」と呼ばれる不思議な囚われ人を何人か配する事で、ただの「お茶好き話」ではない、面白味が生まれているのだ。
これがまた、同時に、主人公の冒険心とロマンスにもつながっていくので、物語作りの上でも、絶妙な要素となっているのが良い。


空中飲茶飯店 上 (眠れぬ夜の奇妙な話コミックス) (眠れぬ夜の奇妙な話コミックス)/かまた きみこ
2007年12月30日初版
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2008-10-27 20:27:04

『チェンジリング・シー』

テーマ:海外SF・ファンタジイ
マキリップ、なのである。
世評に高いのは『妖女サイベルンの呼び声』であるが、私にとってはマキリップの代表作といえば、なんといっても〈イルスの竪琴〉であって、本書の訳者が、同様に〈イルスの竪琴〉をトップに挙げているのは、非常な共感を呼んだ。
そういや、読んだ順番が、先にイルスでその後にサイベルというのは、私と同じか。

んー。
どちらに、先にめぐりあったかっていう話なのかもしれないが……。

ともあれ、ハヤカワ文庫FTで燦然たる光を放った幾多の海外ファンタジイのうち、マキリップといえば、その独特な色彩感覚が特徴的であったと記憶する。
決して華麗なものではない。
むしろ、全体的には地味かもしれないのだが、その中に、ぴかりと光る、鮮烈な色が見えるというのが、マキリップの作品だ。
本書もまさしくそういう雰囲気に富んでいて、たとえば、海から浮かび上がる海竜の首に、まばゆい黄金の鎖が巻き付いている様など、マキリップの本領発揮というシーンだろう。

さて、このタイトル、The Changeling Sea だが。
思い切りストレートに、changeling とは「取り替え子」の事で、イギリス諸島の民話にしばしば登場するように、妖精が自分たちの仲間と人間の子供を取り替えてしまい、人間の子はそのまま妖精の国で育てられるという、そういう伝説のこと。

しかし、この言葉には、古語として、「移ろいゆく」という意味もあるそうだ。
事実、物語の中で、海から来た子供は、しょっちゅう表情を変え、気分も変える。
移ろいゆく国のものであるために、海に由来するものは、その姿も移ろわせる。
それこそが、マキリップの描く、「海の魔法」でもある。

ハヤカワ文庫以来の読者にとっては、この、いかにも少女小説めいた体裁は、手に取るに気恥ずかしい事もあるかもしれないが、大丈夫、文章はマキリップのものだし、訳文も、マキリップのファンである訳者が丹精したものだろうから。


チェンジリング・シー (小学館ルルル文庫 マ 2-1)/パトリシア A.マキリップ
2008年9月3日初版
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2008-10-26 20:34:15

『空の中』

テーマ:日本SF・ファンタジイ
人間には探求心というものがあり、そのため、まだ誰も行った事のないところへ行きたいと思い、まだ知らぬものを知りたいと思い、かくして「冒険」というものが行われる。
とはいえ、この「冒険」というものが、なまなかな事では行えないため(智慧も力も勇気も資力も必要!)、代償行為として、冒険を描いたエンタテイメントが好まれる。

もちろん、文字通りの冒険小説もあれば、誰も行った事のない土地を探検するという秘境小説もあり、人類が通常の方法では到達できないところをめざすような、SFに分類されるような小説もあるわけだね。

しかし、この最後のジャンルだが、あまり描かれる事のない地底をめざすもの、そこそこ舞台となり得る海底をめざすものを別にすると、圧倒的に多いのが地球の「外」あるいは通常では到達できない「時空」が舞台であって、実は、「空」というのは、SFを含むあらゆる冒険的エンタテイメントにおいて、「探検すべき場所、未知の領域」として扱われる事がほとんど、なかった。
地上か? 地底(海底)か? 宇宙か?
……空は、地上と宇宙の間にあって、いわば、無視された領域だったのだ。

従って、まさしくその「空」(つか、成層圏か)がポイントとなる小説というのは、それだけで、目新しいものと言える!

ほとんどの航空機が飛ぶことのなかった高空。
宇宙をめざすヴィークルにとっては、単なる通過点。
ああ、もちろん、成層圏をめざすという物語は、ある。
しかしそれはあくまでも、「めざす」行為がテーマなのであって、成層圏に何かがいる、なんて考えた作家はいなかったのでは?

ま、少なくとも、メジャーな作品にはなかったと思う(笑)。

これは、いわゆる「ファースト・コンタクトもの」にも分類されるし、そういうSF的な視点でいうと、
過度にマニアックではないが、充分にセンス・オブ・ワンダーを感じさせ、
かつ、それほどご都合主義に流れているところもなく、
SFファンも、SFファンでない人も、その不思議さを魅力と感じられる、名作であると思う。

でもね、なんつっても、楽しいのは、だ……。
見上げた空の遥か、遥か上空に、とてつもない、「存在」がいて、
それは地上から発信される電波を長年にわたって「受け取る」事で、人間の言葉を覚えていて……。
うん、だから意思の疎通は一見たやすいのだけれど、それは単に「憶えていた」だけであるから、実はちゃんと意味がわかっていない。
ある意味、最初からまるっきり言葉がわからない相手とやりとりするより、それは相互理解が難しいという事でもある。
というのは、「言葉がわかる」ことは、「その言葉の意味を共有している」という幻想を抱かせるという事でもあるからだ。
相手が異文化に属しているなら、決してそういう事はないんだけれど。
それは、最初に人間に向かって発する、
「こんにちは。お昼のニュースの時間です」
という定型文(ぷぷ)、何故か必ず「お昼の~」がくっついてしまう、その状況に、ユーモラスにも表されている。

素晴らしいSFであるとともに、「それ」の一部と偶然にも、関わりをもってしまった高校生の成長を描くストーリーとしても、名作だと思う。


空の中 (角川文庫 あ 48-1)/有川 浩
2008年6月25日初版
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2008-10-25 17:53:13

『七つの時計』

テーマ:冒険・アクション
七つの時計……The Seven Dials.
ダイヤルというのは要するに操作盤または表示盤のことだけれど、元来は「日時計」に由来するらしく、ここでも、「時計の文字盤」を指しているわけだ。
邦題は『七つの時計』だけれど、The Seven Clockではなく、あくまでも、dial、というわけ。

実際、物語は、
「あいつなっかなか起きてこねーから、ちょっといたずらしてやろうぜっ」
という、若いもんの悪戯で、たくさんの時計を友達の寝ている部屋にしかけるというところから、話が始まる。
うんうん、就寝の時刻にかかわらず、いつまでたっても起きてこない奴ってどこにでもいるよなあ。
今の目覚まし時計には、スヌーズ機能なんてのがついているけど、この物語の時代にはそれはないので、たくさんの時計を……という事になったわけだな。
順番に鳴らすのがいいか、いちどに鳴らすのがいいか、と悩むところなど微笑ましい。

しかし、このいたずらの直後、思わぬ殺人事件(?)が発生し、男女とりまぜて5人の若者が、ちょっとスリリングな冒険を始める事になるのだ。
うん、そう、クリスティの作品だけれど、これはミステリとhちょっと呼べない。
確かに、謎はいろいろ出てくるけれども、それを解き明かす明確な探偵役はいないし、最後の、謎の解き明かしも、「どんでん返し」のようなもので、読みようによっては、
「まてまて、それはないだろ」
と言いたくすら、なるようなものだ。

しかし、全体的に見て、チムニー館のお転婆娘、バンドルが遭遇するちょっとスリリングな冒険ととらえれば、なかなかミステリアスでステキな展開と言える。
いささか芝居がかった「秘密結社」の存在も、そこに花を添えるというわけ。
この秘密結社も、それが本拠を置く場所も、dials なのだけれど、そういや、dial という語には、イギリスの俗語で「人間の顔」という意味もあるのだそうな。
終盤にさしかかった時に思い出すと、これまた面白い語呂合わせかも。


七つの時計 (クリスティー文庫)/アガサ・クリスティー
2004年2月15日初版
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2008-10-24 23:36:25

『ダレン・シャン (9) 夜明けの覇者』 漫画版

テーマ:海外SF・ファンタジイ
漫画版もとうとう9巻目を迎えた。物語、最後の山場に差し掛かろうとしている。
パンパニーズ大王との決着が間近というわけだ。

その正体は何となく察せられてしまうが、それでも、地下での手に汗を握る決闘の迫力が減じられるものではないし、かえって、大王の正体がちらついているだけに、余計そこのところが気になるという、チラリズム的な面白さも、醸し出している。

敢えて難を言えば、ここに至って、ヒロインの存在がかなり浮いてしまっているように思えるという事だろうか。
彼女の存在は、それなりに、ダレンに葛藤を呼び起こさせはするのだが、あくまでも、それはストーリーの色づけに過ぎず、ヒーローと対になるヒロインの存在感まではもっていないからだ。

もちろん、それは、少年漫画誌という媒体の影響もあるのだろうけれど。
ともあれ、いよいよ物語は完結を間近にしている。


ダレン・シャン VOLUME9 (9) (少年サンデーコミックス)/新井 隆広
2008年9月23日初版
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2008-10-23 21:40:50

『眠る絵』

テーマ:冒険・アクション
世の中に、男を狂わせるものは、いくつあるだろう?
カネ、権力、女、そして美というやつ。
それら全てが絡み合わさったところにあるのが、芸術作品、わけても、「絵画」というやつだろう。

絵は、カネになる。
絵は、唯一のものであればこそ、それを所有する事が権力につながる。
絵は、美しい女を描き、男の心を惑わす。
いや、女だけではなく、純粋な美を追究したものであるからこそ、人の心を魅了する。

もちろん、カネのために、
あるいは権力のために、
絵を追い求める者は、いくらでもいるだろうけれど、
結局は、誰もが、「絵」そのものにまとわりつく、魔力に操られてしまうのではないか。

この物語は、そんな絵画が、大戦のさなか、政治のかけひきに利用され、その後も、さまざまな思惑のもとに隠され、しまわれ、公開されながら、何人もの人の運命を狂わせていくというものだ。
ある者はテロリストとなり、
ある者は生涯を怯えながら暮らし、
ある者は命を落とし、あるいは肉親を喪い、
ある者は生涯の伴侶を得る。

佐伯泰英が自ら歩いたスペインという土地を、飾り気のない言葉で描写しながら、いっそ無味乾燥とも思えるその景色のなかに、正義とも悪ともつかぬ人物群を、それこそスペイン絵画のように、インパクトのある色遣いで描きだし、最後は壮大な洞窟の中のクライマックスへと持っていくのだ。

日本の冒険小説にありがちな泥臭さがなく、そのテイストは、むしろ、イギリスの冒険小説を読む感覚に似ていると思う。それは、物語が甲州の旧家を背景にしている時ですら、変わらない(たとえば、それが、ジャック・ヒギンズの描く、イギリスの田舎であっても不思議ではない)。


眠る絵 (祥伝社文庫 (さ6-43))/佐伯泰英
2008年10月20日初版
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2008-10-22 21:51:48

『BLEACH (35) 』 HIGHER THAN THE MOON

テーマ:冒険・アクション
BLEACH 35:月よりも高く

少年漫画、わけても少年ジャンプ掲載の漫画は、(ギャグや恋愛ものは除くとして)、いかにキャラクターをかっこよく見せるか、というのが重要なポイントになる。
それも、各作品が毎週人気を競う以上、単に、正統的なヒーローがかっこいいだけでは、飽きられてしまう。
「いかにユニークなキャラを、いかにかっこよく見せるか」
それが作者の、腕の見せ所となるわけだ。

この作者はそういうところが非常に巧みで、エキセントリックにも、マッドサイエンティスト路線を一直線に突っ走ってきた表紙のこの男が、今回、実に彼らしい路線の上でかっこよく演出されているのは、実に楽しい。
むしろ、正統派に近い剣八の戦いと、本巻では「あわせ」のような状態になっているだけに、余計に際だつのだ。
(そういう意味では、今回剣八はちょっと割を食ってるかもしれない)。

物語としては、いよいよ「大いなる陰謀」が終盤に向けて動き出すというところで、それもまた、目を惹く。


BLEACH 35 (35) (ジャンプコミックス)/久保 帯人
2008年10月8日初版
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