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2008-09-30 21:52:22

『封殺鬼 鵺子ドリ鳴イタ (3) 』〈封殺鬼〉

テーマ:冒険・アクション
まだ続くか……!(笑)
〈封殺鬼シリーズ〉の中で、おそらくこれが最長になるだろう(もちろん、後の事はわからないが)。既に3巻、しかもまだ続くようだ。

日本の「闇」が、明治維新によって消失し、あるいは変質した事は、何人もの作家が描いているが、確かに、西洋の思想がどっと入ってきたその時期、オカルトな面も、大きな影響を受けた事は、明治時代に発生したさまざまな宗教活動・新興宗教活動が示していると思われる。

そこにからめて、日本とヨーロッパのオカルトをない交ぜにし、光と闇の混沌を、作者はこのあと、どう織りなしていこうとしているのだろう。

そんなシリアスなテーマでは、作品そのものがめちゃくちゃ重くなりそうだが、それをきっちり、ライトに保っているのが、勿論、猪突猛進な鬼、聖だろう。
稚気にあふれたこの鬼がいるからこそ、本編は、楽しい物語でいられるのだ。


封殺鬼鵺子ドリ鳴イタ 3 (3) (小学館ルルル文庫 し 2-5)/霜島 ケイ
2008年4月6日初版
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2008-09-29 22:08:14

[『水晶砦の攻防』〈ドラル国戦史5〉

テーマ:海外SF・ファンタジイ
第二の侵攻が食い止められれば、残る方面は、ふたつ。
ダレイネの統べる北の国と、アラシアの統べる東の……というか、神殿の国か。
どちらともつかぬまま、辺境人の軍隊は、とりあえず二手に分かれる事となる。
もちろん、現地で軍隊を編成する意向はそのままなのだが、アラシアの国では、どうにもうまくいかない。
この国では、怠け者の神官しかいないし、兵士がいるどころか、どの居住地にも、城壁というものが、ないらしい!

ああ、そういえば。
人間が住むところ、古今東西、村でも町でも、たいてい、「防御壁」というものがあるのだ。
もちろん、日本のように、ほんとにそういうものが建てられなかった国もある(もっとも、日本は、平地の城の場合、堀を巡らせて城壁のかわりにしてはいたけれど)。

この、平和惚けしてあまりにも無防備な国を辺境人の視点で見ると、なんかこう、日本と重なる気がして、背中が痒くなってくるが、それはそれとして(笑)。
惚けに惚けまくった神官の長を、トログ人の将校がやりこめるところは、なかなか楽しい。
胴回りがあまりにも立派な相手に、餓死か、生きながら喰われるかというステキな未来をちらつかせるのだ。
またその描写力といったら、グロテスクとか言うまえに、笑ってしまうのがエディングス作品の真骨頂。

一方、北の国はどうかというと、こちらは、アメリカ大陸の北端~シベリアあたりの民族を彷彿とさせるような人々が暮らしているところらしい。
かの長弓とは友達の狩人も登場するし、この世界では初めて、馬を駆る種族も登場する。
しかし、物語の新たな舞台が、冒頭で定まっていないため、まだまだストーリーが動いておらず、今はまだ、物語の中でのエキゾティックさを楽しむほかはない。


水晶砦の攻防 (ハヤカワ文庫 FT エ 1-54 ドラル国戦史 5)/デイヴィッド・エディングス
2008年9月15日初版
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2008-09-28 22:37:42

『密林の骨』〈スケルトン探偵8〉

テーマ:ミステリ
密林……!
秘境探検もののブームははるか遠い過去のものになってしまったようではあるが、それでも、密林には人を魅惑する響きがある。
たとえば、それが、人跡未踏という要素ひとつをとってみても、魅惑的という事になる。
実際、海底などと同じく、人が踏み入るのは難しい密林の中の事は、あまりよくわかっていないらしい。
とくにそれが、アマゾンときたならば!

そう、今回は、アマゾンが舞台だ。
緑の魔境と呼ばれるアマゾンの大密林。
いくつものの国にわたって広がるその世界には、現地の人は別として、世界が知らないものが、たくさん詰まっているのだそうだ。

しかし……。
そもそも、人があまり踏み入らない土地というのは、古今東西、無法者のはびこるところでもあり、アマゾンは、麻薬業者がはびこる土地としても、現在、知られている。
白い三角地帯。それは、コカインを生み出す土地を意味しているとか。

なんと、そのアマゾンをゆく旅行にコネで実費参加したギデオンとジョンは、(おっと、今回はジュリーの出番がない)、その旅行のメインのメンバーが、なかなか複雑な問題をかかえている事に、すぐに気づいた。
主催者である民族植物学者がなかなかクセのある人物で、参加メンバーのほとんどに、恨まれる理由があったのだ。
うおお(笑)。
見回せばあの人もこの人もみーんな殺人の動機を持ってるんですよ、きみ!
いやはや、これって、クリスティがやったみたいに、
「実はその船に乗り合わせた乗客全員が犯人だったのです」
と、持っていっても不思議じゃないぞー、というくらい。
恨まれてますな、おっさん!

いやもう、旅行の面子だけじゃないんだ、このおっさん、ツアーを支えるスタッフのあの人この人にも恨まれてるんですぜ。
よくもまあ……(笑)。

いやあどうなるんだろうと思ってみると、いなくなった人が複数名、出てしまうわけなんだな。
しかも、泳げない人が川に落ちたり、
麻薬がらみで一部の人がかなり危うい目にあったり、
この豪華絢爛に絡み合った糸を、(もちろん、愛する骨の助けを借りつつ)、ギデオンが解き明かしていこうというのだ。

あまりにも犯人候補が多いため、それだけで、真犯人を隠すミスディレクションの集積になっている事は言うまでもない。
密林という、原始と悪の魅惑がたっぷりと詰まった舞台で、アマゾンの有名人(いや生物)、ピラニアまでも大活躍、う~んやっぱり、オトコノコは冒険しなくちゃねー。

もちろん、その間、ジュリーとマーティ(ジョンの奥さん)は、リゾート地のぜいたくなスパですてきな休暇を過ごすわけで、そこらへんの落差も笑える。


密林の骨 (ハヤカワ・ミステリ文庫 エ 3-9)/アーロン・エルキンズ
2008年7月25日初版
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2008-09-27 23:43:00

『シルバーレインRPGサプリメント 人狼VS吸血鬼』

テーマ:ゲーム
タイトルに思い切り肩すかしをくらったサプリメント。

このゲーム内では、「人狼」と「吸血鬼」がそれぞれ独自の組織(のようなもの)を持ち、対立しているというオリジナルな設定があるのだが、その全貌は、先行しているサイトでの展開でもいまひとつつかみにくく、全てが明らかにされているわけではないようだ。
であればこそ、このサブタイトルを見れば、それが詳しく書いてあるかと期待するというものなのでは……!(笑)

しかし、実際には『シルバーレインRPG』の後に登場したジョブの紹介(もちろん、サイトでの展開には追いついていない。これは仕方がない)と、TRPGにおける「キャンペーン」の説明に終わっており、
そのサンプルとして使われているのが、「人狼VS吸血鬼」のキャンペーンというわけ。

まあ、もともと、『シルバーレインRPG』の構成が、はじめてTRPGをする人向けの内容になっていたのだから、続くサプリメントでキャンペーンの説明をするのはわかる!
わかるが……(笑)。
やはり、人狼と吸血鬼を含む、「来訪者」と呼ばれる「人外のもの」たちについては、ゲーム独自の設定がある以上、もうちょっと詳しく整理したテキストを希望したい。


シルバーレインRPGサプリメント 人狼VS吸血鬼 (ログインテーブルトークRPGシリーズ)/安道 やすみち&グループSNE
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2008-09-26 23:14:27

『神曲奏界ポリフォニカ ジェラス・クリムゾン』

テーマ:冒険・アクション
「好き」と「嫌い」。
どちらが、より、エネルギーを必要とするだろうか。

私感だが、何かを、人を、(あるいは精霊を)、好きになるというのはたやすい。
好きになるのに理由はいらないのだ。
しかし、嫌いになるのは、どうだろう?
もちろん、生理的嫌悪感というものもあるが、まあたいていは、嫌いになるには理由がいるし、嫌いでいるためにはその理由が存在し続けなくてはならない。
嫌い、という気持ちを保ち続けるには、それなりのエネルギーも、いるのではないだろうか。

シェアードワールドであるポリフォニカの、柱ともなるポリ赤、今回は、実質上下巻構成で、その上巻にあたるんだそうだ。
そして、不思議なキャラクターがひとり登場する。
彼女、リュネアは、トルバス神曲学院に通いながら、なんとこう言ってのけるのだ。
「私は精霊が嫌い」

そんな彼女と、神曲をテーマとした一大イベント、トルバス全市あげてのお祭りを背景に、精霊排斥主義者たちの陰謀が蠢くという仕掛け。
おまけに、その陰謀。どうやらひとつではないらしい。
すでに、フォロンたちツゲ事務所の面々が関わり合った、創始曲も絡んで、なるほど大きな事件に展開しそうな物語だ。

といっても、基本、十代から二十代の、若者たちが(両方の世代にわかれて/協力し合って)織りなす物語である事にかわりはない。
ゆえに、少年少女の(そして元少年少女の)気持ちに響くのは、物語の中、
「キミらはなぜ、神曲楽士になろうとしているのか!」
という、問いと、そこに示されるひとつの回答であるかもしれない。
もちろん、それは万能の回答ではないだろうけれども、おそらく、胸に落ちる何かがある事だろう。

そして、そこに示された答えこそが、下巻につながるキーになると思われる。


神曲奏界ポリフォニカ ジェラス・クリムゾン 神曲奏界ポリフォニカシリーズ (GA文庫 さ 1-8)/榊 一郎
2008年7月31日初版
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2008-09-25 21:17:24

『神曲奏界ポリフォニカ リライアンス・ブラック』

テーマ:ミステリ
ポリ黒はますます絶好調。
今回はミステリとしても、それなりにイケている。
勿論、基本は、風変わりに見えるけど実はとても普通な女の子、マティアと、彼女のいわば同類であるシェリカ中心のジュヴナイルなのだが、
おおっと。
シェリカが制服を着ているぞ!
なんと今回は学園ものなのか?
(妙に期待!)

……ちょっと、違った(笑)。

シェリカの学校生活はある程度出てくるのだが、事件そのものは学校で起こるのではないからだ。
そのかわり、今回出てきたシェリカの友達は、将来も出てきそうだという事が、あとがきでちらりと述べられているので、読む時は注目。
今後学園もの的な展開が見られる事が、あるかもしれない!(そこか?)

や、まあ、ともあれ、女子高生(シェリカだ!)と、
インディーズの音楽祭、
それに絡むデビュー目前のミュージシャンという、なんか王道っぽい道具立てで、
舞台は音楽と精霊が中心となる異世界ポリフォニカ、であるにも関わらず、
ミステリとしての仕掛けは、これ、かなり正統的なところをいっていると思う。
ミスディレクションもカンペキ。
難を言えば、最初の証拠が、ある意味あまりにも「ミエミエ」なこと。
もちろん、それがストレートに殺人を証拠だてるわけではないのだけれども、それでもやっぱい、あざとい(笑)。

とはいえ、音楽祭という派手な舞台を使って、ライトながらも楽しいミステリになっているのは間違いない。


神曲奏界ポリフォニカ リライアンス・ブラック 神曲奏界ポリフォニカシリーズ (GA文庫 お 2-14)/大迫 純一
2008年7月31日初版
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2008-09-24 21:13:12

『オドの魔法学校』

テーマ:海外SF・ファンタジイ
マキリップの作品で一番人気があるのはどれだろう?
絶大な人気を誇るのが、『妖女サイベルの呼び声』なのだそうだが、個人的に私が最高だと思っているのは〈イルスの竪琴〉三部作で、本作は、それにかなり近い世界観の物語だ。
もっとも、〈イルスの竪琴〉がある太古の力を求めて、世界中を主人公とヒロインが遍歴していったのに比べ、こちらは、世界の一隅にある、ひとつの都で物語のほとんどが終始する。
といって、『影のオンブリア』ほどエキセントリックではなく、ちょっと風変わりなものが集まる「黄昏区」と呼ばれる区域を中心に、適度なエキゾチックさに彩られ、そこへ魔法使いの学校とか、国の辺境に潜む古い力が関連して、心地よい混沌を作り出すのだ。

正直を言えば、姿を変えるものたちや、長く長く生きている伝説的な魔法使い、古い都に作られた魔法使いの学校、そこに現れた異質な田舎者など……。
道具立ては、かなり〈イルスの竪琴〉とかぶるところがあるのは事実だ。
しかし、決して、二番煎じとは言えぬ魅力があるのは、何よりその「黄昏区」という街にあるのだろう。

そこでは、ティラミンという、これもまた伝説的で正体不明の手品師が人気を呼んでいるのだけれど、ティラミンこそは、「黄昏区」の象徴みたいなものだ。
このティラミンと、都をしろしめす王の(注目されぬ)娘は、ルールにがんじがらめになった学校の魔法使いたちや、辺地に潜む古い力とはまた別の、「ありふれた身近なものを使う、目立たぬ魔法」(現代的な用語を使うなら、儀式魔法に対する魔女術、magic に対する witchcraft )が活躍する。

実はこの要素、〈イルスの竪琴〉でも登場はしていたが、ほとんど注目されぬままに終わっていた。
この、三つ目の要素が加わる事で、物語の重苦しさが薄れ、より幻惑的、いや、むしろ、蠱惑的なものになっているのではないか。

そして、そのきらびやかさが最高潮に達した時、いささか、デウス・エクス・マキナ的に登場する大魔法使いによって、物語は大団円を迎えるが、その登場のしかたすらも、高度な手品のように思われ、決して読者がうんざりするような事にはならないのだ。


オドの魔法学校 (創元推理文庫 F マ 9-1)/パトリシア A.マキリップ
2008年2月15日初版
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2008-09-23 19:37:18

『姫の恋わずらい』

テーマ:その他
〈うるわしの英国シリーズ〉が完了し、フラワーコミックススペシャルでの新刊となるのは、短編集なのだが……。
あえておさめられた作品の共通点をあげるとすれば、
・ 動物が重要な役割を果たす
・ イギリスと日本が同居している(比率は変動)
・ 女の子がちょっと風変わりな
ロマンスである、という事だ。

え。
それは、いつもの波津彬子作品だ?
……ごもっとも(笑)。
まあ、言うなれば、『お目にかかれて』などと同系統の波津彬子作品ということか。

登場する動物のほとんどは猫だけれど、しょっぱなはなぜかアマガエル。
や、かわいいでしょうアマガエル!
しかしやっぱり、年若いレディとアマガエルは、「カエルと王女」っぽくミスマッチで楽しい。

収録作品は次の通り。
----------
姫の恋わずらい
薔薇色のゆううつ
闇色の宝石
灰色の貴婦人
乙女の祈り
異国にて
遠い国から
----------

作品として一番気に入ったのは、ちょっとおかしな遺産相続争いにからむ『灰色の貴婦人』、
波津彬子お得意の、怖くない幽霊譚になっていて、実にいいムードなのだ。
一方、個人的にエジプト趣味のある私には楽しかったのが『闇色の宝石』。ああ、こういう猫がほしい……!
「あるふたつのシリーズ」が合体した上での外伝みたいな『異国にて』は、ファンには二度(ていうより、三度?)おいしい作品。もちろんこれ単体でも楽しめるが、独特の、さりげない幻想味は、とくに雨柳堂が好きな人にお勧めしたい。
しかし、やっぱり、コメディタッチのロマンスというある意味正統派的に面白いのは、タイトルにもなっている『姫の恋わずらい』だろうか。


『姫の恋わずらい』 (波津彬子作 フラワーコミックススペシャル)
小学館
2008年7月1日初版
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2008-09-22 21:29:19

『獣の奏者 王獣編』

テーマ:日本SF・ファンタジイ
力ある獣、稀少な獣は、人がそれを求める時、政治的な意味合いを持ってしまう。
ドラゴンを登場させた多数の英米のファンタジイがそうだと言えるだろう。
SFでいうなら、マキャフリイの〈パーン〉シリーズなど、代表的。
そういえば、その〈パーン〉には、〈竪琴師ノ工舎〉三部作というのがあって、故郷を追われた少女メノリが、素晴らしい音楽の才能をもって、竪琴師の工舎ではじめての女徒弟として迎えられ、竪琴師として成長していく物語なのだが……。
下巻にあたる本巻は、まさしくその上橋菜穂子版という気がする。

もちろん、それは、本作がマキャフリイの作品に似ているという事を意味しない。
両者は、才能ある少女が男性優位社会で頭角を現していく成長物語という点こそ共通だけれども、背景にある文化的な状況などは、全く違うものだし、物語のテイストもまた違う。
何より違う点は、本作における「政治的な獣」が、王獣と闘蛇の二種類登場するということ。これによって、その政治的な意味合いと複雑さ、そこにまつわる歴史が、より深いものとなる。
また、一見、光と闇に擬せられそうなこの二種の獣だが、決してそうではない(そう見えるのはあくまでも政治的な演出)、ということが、主人公を通じてわかるというのが、マキャフリイ作品にはないところだ。

美しいものの背後にある醜さ、醜悪なものを担う者の真摯さなど、厳しいはずの現実を、透徹した目で描き出すのが、上橋菜穂子作品の良さではなかろうか。
また、本来児童文学であるだけに、それを、てらいもなく淡々と描いているところが、逆に大人の読者には心地よいのかもしれない。


獣の奏者 II 王獣編/上橋 菜穂子
2006年11月21日
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2008-09-21 21:54:56

『獣の奏者 闘蛇編』

テーマ:日本SF・ファンタジイ
獣の奏者とは、なかなかユニークなタイトルなのだが,それは何を意味しているのか?
その実体は、下巻にあたる「王獣編」にならないとわからないのだが、しかし、ひとつ確かなことは、特異な生まれの少女が、その事実にある不幸な出来事が重なった結果、生まれ故国をはなれて違う国へ至り、そこで己の運命と出会うという語りだしで始まる物語である、ということだ。

前半と後半で、彼女の歩む道は全く違う舞台でのものになるが、一貫して、彼女のスタンスは、生き物を理解したいというところにある。
それは、幼い頃に見た闘蛇という生き物に始まり、彼女を救出した養蜂家のもとで接したミツバチ、そして馬などに至り、後にはもっと違う獣へと向かっていく。

それだけをとるならば、まれに見る科学的好奇心とそれに関連した特質を持つ娘が、女はなかなか認められない社会で、自分の道を切り開くというものになるように思えるが、実は最初から、非常にシリアスな、政治的な問題というやつがついてまわる。
すなわち、そもそも彼女が故国を追われるもととなった「闘蛇」という生き物が、その国独特の戦闘用生物であるという点に起因する。

この、政治的に特殊な生物と、(男性優位社会で)自立の道をたどろうとする少女という図柄、ファンタジイのファンならば、マキャフリイを連想させるのではないか。
もちろん、上橋菜穂子の世界は、独特のアジア的世界だし、そこに描かれる政治構造も、アジア的な文化に属するものだとは思うが、物語の根幹が、マキャフリイ作品に通じるものがあると思うんだよな。

ゆえに、この本の腰帯には「ファンタジー嫌いの人にこそ読んでほしい!」というキャッチコピーがあるんだけど、海外ファンタジイのファンにも、非常に入りやすい世界だと思う。


獣の奏者 I 闘蛇編/上橋 菜穂子
2006年11月21日初版
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