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2008-08-31 15:25:07

『ONE PIECE (3) 偽れぬもの』

テーマ:冒険・アクション
究極の財宝ワンピースを追い求める海賊が向かう、それがグランドライン。
それをたどるために、ルフィはいまだ、仲間集めの最中だ。
面白いことに、これは民話に登場する英雄のパターンと似ている。
すなわち、(王女に象徴される)最高の宝を求める、異常な能力を身につけた主人公(または、異常な生まれの主人公)が、旅立って、途中、これまた異常な才能を備えた仲間を一人ずつ一行に加えていく、というものだ。

この物語そのものが、いろいろとツッコミどころが満載ではある。
刀口にくわえて操るのはどう考えてもムリだろとか、
船の形がそれじゃ沈むんじゃ? とか、
航海術云々より前にそのための道具がみあたらねーぞこら、とか、
ちょっと待て、南北に貫くその大陸、朝夕力はどうなってるよおい、とか、
枚挙にいとまがないのだが、
いいんですよこれは民話なんです(きっぱり)。
もう、そういう世界だと思って受け容れて読まない限り、絶対にこの世界を楽しむ事はできない。
科学には目をつぶってもらおう。

まずは、剣豪ゾロ。
そして今回が海賊相手の盗賊ナミ。
いずれも、海賊王をめざすルフィが仲間とするのに、本来、海賊を敵としている者だというところが面白い。
つまるところ、理想の海賊を追い求めるためには、現実の海賊を否定するところから始まらなくてはならない。
そして、それを乗り越えてなおかつ、海賊の道を突き進まなくてはならない。
そういうパワーの表現が、キャラクターの背景にあるものと思われる。

敵は海賊(作品が違う?)。
しかし、我もまた海賊なのだ。
汚ねぇ海賊ども、おまえらなんかほんとの海賊じゃねえよ。
本物は俺たちだ。
そういう気概が、主人公には、溢れている。
本作は海賊の物語であって、実は海賊の否定がテーマにもなっている。
なかなか、秀逸なスタンスではないだろうか。


One piece (巻3) (ジャンプ・コミックス)/尾田 栄一郎
1998年6月9日初版
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2008-08-31 15:11:28

『ONE PIECE (2) VERSUS!!バギー海賊団』

テーマ:冒険・アクション
さて、この大海賊時代の世界には、ちょっと面白いアイテムがあるらしい。
それが「悪魔の実」と言われるやつで、そのうち、ゴムゴムの実を食ってしまった我等が主人公は、ゴム人間になってしまうのだが、今回登場する敵は同じく悪魔の実を食べたため、体をバラバラにして操る事ができるという。
ゴム人間VSバラバラ人間!
なんといいますかね、このあたりは、少年ジャンプならではのアクション。
まあよく、両方の特性を活かした闘いを描いたなあ、と思う。
ルフィがゴムの実を食べたのはほんの子供の頃だから、それによる体の変化をわりかしすんなり受け容れてしまったのは、それほど不思議ではないが、バギーは成人してからの話だから、一応、それなりの悩み(?)や苦しみ(!)も、あったようだ。
んー。こういう「体の変化」はやっぱり、大人になってから経験するものじゃないな。
子供のうちですよ、子供のうち。
良かったねルフィ(良くないっ!)

しかし、ここで注目すべきは、ルフィがシャンクスから受け継いだ、海賊の理想の姿、というやつだろう。
物語の中では、バギーとシャンクスの因縁についても語られていくが、それはそのまま、海賊というものに対する理想と現実の対決でもある。
悪魔の実を食べた時期の差と同様に、少年の理想と、大人の現実の差と言ってもいい。

読者がもしも大人ならば、作品に問われるだろう。
理想と現実、どちらを取りますか?
大抵の大人は、たくさんの言い訳を抱えているから、ルフィたちについていく事はできない。
実際、彼等についていく事は、おそろしく大変だ。
しかし、町長や犬のシュシュのように、「その町に残らなくては」ならないとしても、ルフィたちの側に立つ事は、まだ、できるのかもしれない。

そう、夢を忘れた瞬間、言い訳を始めた瞬間、人は、バギーになってしまうのだ。


One piece (巻2) (ジャンプ・コミックス)/尾田 栄一郎
1998年4月8日初版
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2008-08-31 14:55:30

『ONE PIECE (1) ROMNCE DAWN 冒険の夜明け』

テーマ:冒険・アクション
1巻の表紙折返しには、作者の言葉として、こうある。
「”海賊もの”を描くにあたって海賊に関するいろんな資料をかき集め読んでいたが、少年の日に憧れた海賊達は過去の記録書には記されていない。」
100%同感だ。

……そう。
少年の日に憧れた海賊の姿は、資料の中には、どこを探しても、見あたらないのだ。

おそらく、少年にとって憧れの海賊というのは、まず第一に『宝島』の海賊シルバーではなかろうか。
そう、スティーヴンスンのあの名作だ。
これはイギリスの物語なのだが、そもそもイギリスというのは、大航海時代あたりから、大海洋帝国スペインを相手にまわして闘う途上、海賊を大いに活用したという歴史的な事実がある。
まあ、当時はイギリスならずともなのだが……。
letter of the mark と呼ばれる許可証を発行して、敵船の略奪を公式に認めているという背景があった。
(このため、どこの国のとは言わないが、正式な海軍の船が海賊行為を働いたなどという事もあったようだ)。
いわゆる、私略船 privateer というやつがそれだ。
つまり、海賊というやつは、イギリスの少年にとって、敵をやっつける正義のヒーローたり得たのだ。
しかも、本来的には海上の犯罪者、れっきとした無法者。
で、無法者というのは、政府(これがまた、必ずしも、というかほとんどの場合民衆の味方ではない。全然ない!)に楯を突く「民衆のヒーロー」という側面もあるわけで、そんな風に考えていくと、憧れない方が、ムリムリ。

そして、大航海時代の燦然たるステージが南北アメリカであることから、次第に、海賊というと、カリブ海はじめ、アチラ方面を舞台とする連中が中心的イメージとなっていったようだ。
そうそう、ぱいれーつ・おぶ・かりびあ~ん。
そこっ。
ジョニー・デップを思い出したね?
まあ、あれは映画だしかっこよすぎな感じはする。
事実はもっと、汚くてクサくていろいろ大変だったみたいだが(基本、犯罪者ですからっ!)
でもね。
法に縛られない海を我が物とする海の英雄というイメージは、やはり、一部残っているのではないかな。

そこらへんのイメージが、現実(史実)をはなれてどんどん一人歩きしていった結果、むちゃかっこいい「海賊」が共通イメージ上に誕生してしまい、それが現実と思い切りかけ離れてしまったところに、本作の作者の述懐がつながると思うのだが、そのイメージの方の海賊を、ジャンプ誌上で描いてしまえーっ。
というのが、本作ってこと。
なにしろ、大航海時代ならぬ、大海賊時代だというのだから、その意気込みは伊達じゃなかろう。


One piece (巻1)/尾田 栄一郎
1997年12月29日初版
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2008-08-30 20:26:06

『容疑者Xの献身』

テーマ:ミステリ
映画化にあわせ(予想通り)文庫化された、今のところシリーズ唯一の長編である本作。
装幀も、題字が縦から横になってる以外は、単行本と全く一緒。黒の地に、薔薇一輪。なかなか、しゃれている。
そう。
薔薇といえば、愛の象徴。
花言葉なんて興味がなくても、薔薇の花言葉だけは大抵の人が「愛?」と答えられそうなくらい。
しかし。
本作で描かれる「愛」は、あまりにも純粋でせつない。
しかも、ミステリとしては驚くべき仕掛けがほどこされている。

と、いうかだ。
ガリレオ先生の物語は短編だと、仕掛けに目がいってしまって、それはそれで面白くはあるし、東野圭吾作品に初めて入るには良いという気がするんだが、このくらいの長編になると、当然のことながら、より東野圭吾らしさが出ていて、ミステリ読みには面白いと思う。
誰が犯人なのかを最初に提示しておいて、それをどのように隠蔽していくかという試み、しかしその試み自体にあるトリックが隠されていて……。

本作で、探偵役であるガリレオ先生湯川と、、ワトソン役である草薙刑事の敵役となるのは数学者石神。
風采のあがらないこの男が、生涯ただ一度の恋のため、ある犯罪に手を染める事になるのだが、ガリレオ先生が実験好きな、物理学者的スタンスで犯罪に挑むとすれば、石神は数学者らしい論理の積み重ねで犯罪に挑むという、同じ理数系の学者でも全く異なるスタンスを見せてくれる。
このあたりの積み重ねぶりが、こう、なかなかたまらないものがあるのだが、数学はてんからダメですという読者にとってはどうなのかは……知らない。<をい
まあ、勉強するためにではなければ、楽しく読めるのではないかと思う(笑)。

ところで、東野圭吾作品というと、思わぬ仕掛けをほどこしたミステリミステリした作品の他に、
ぽろぽろと涙が出て止まりません、という売り文句の作品と、
大まかにいって、二種類あるように思う。
たとえば、『手紙』などは後者に当たるのだろう。
本作の場合は、その両方の要素がうまくミクスチュアされている。


容疑者Xの献身 (文春文庫 ひ 13-7)/東野 圭吾
2008年8月10日初版(文庫版)
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2008-08-29 23:54:21

『ドレスデン・ファイル2 狂った月』

テーマ:海外SF・ファンタジイ
バフィーがヒットしたせいなのか知らないが、どうもアメリカでは、この手のファンタジイがすっかり定着したみたいで、いろいろな作品が登場している。
同じハードボイルドを持ち込んだファンタジイでも、〈魔法探偵スラクサス〉のように、舞台そのものがファンタジイらしい異世界というのもあり、私としてはそちらも大変好きなのだが(でも、続きでないんだよなあ、スラクサス)、まあ、こういうのはこういうので、楽しいと思う。
ドレスデンが活躍するのは、シカゴ。
シカゴというと、昔のギャング映画の舞台というイメージがあるけれど、本シリーズにも勿論ギャングが登場する。
イタリア系のその人の名は、ジョン・マルコーネ。
前作でもちらちら登場していたこのギャング、「紳士」という渾名があるのだが、今回はその特徴をうまく発揮して、なかなか味のあるキャラに。
また、主人公のドレスデンは、前作のあおりで周辺の女性たち(とくにマーフィー警部補)と、ぎくしゃくした関係になっちゃっていて、それが最後の最後まで尾を曳いてしまう。
その原因というのが、なかなかふるっている。
女性を危険なめに遭わせたくない、自分が守らなくてはーっっ。
……という、古風な騎士道精神が、裏目裏目にまわってしまうというわけ。
一方の女性たちは、ドレスデンがそういった過保護な態度に出て、必要な情報を教えてくれない事に、いらいら、いらいら、いらいらしちゃう。

なんかドレスデンのそういう気持ちが、しみじみわかってしまう(笑)。
こう、親しみのある女性なら、守ってやりたい! 守ってあげなくては!
それが俺のプライドだーっ。
というのが……原題女性には、ウケない。
ちょっとは男らしいとこ、発揮させてくれてもいいじゃん。
それができないせつない気持ち。ああ、わかるよ、うんうんっ。

しかし、ハードボイルドとはいえ、ドレスデン自身は別にマッチョとかではなく、あくまでも魔術師だ。
従って、肉体的な強さというのはそれほどないわけで、今回も銃撃されたりするのだけれど、そういう時は、わりかし、弱い。
また、そういう危地には無理矢理魔法を使ったりしなくてはならず、それは体力気力を削るものであるから、その後にぶっ倒れたりとかもする。
で、どういうわけか必ず、そういうドレスデンを助けに現れるのは、じょ・せ・い。
女性なんですな!
物語は基本、ハードボイルドなのだが、こういう主人公のへたれぶりが、もしかすると、世の女性たちにはウケている……?
なんかそんな気がするぞ(笑)。
そんな事でいいのかドレスデン。
がんばれドレスデン!
来月にはDVDボックスも出る事だしね。<関係ない

さて、それはそれとして、今回の話は、人狼がテーマ。
ドレスデン自身が作中で述懐しているごとく、ヨーロッパ「以外」の人狼(または動物に変身する人間)は出てこないが、そのかわり、西ヨーロッパの人狼については、かなり詳しく網羅されていて、しかもそこに網羅された全種類が登場し、バトルロイヤルしちゃうのだ。
おおお。これは凄いぞ。
呪いにかけられたやつ、魂を売ったやつ、人間の皮をかぶった狼、そして人間になれる狼まで。
ばうわう(いや、狼は吠えないけど)。
人狼好きにはこんな楽しい物語はなかなか、ない。

あ、網羅してると言ったが、実は漏れているものもあったりするのだが……(笑)。
それは、教会が深くからむパターンで、しかも本シリーズではあまり(いや、全然?)宗教の関係者は出てこないようなので、そのためはずしたのかもしれない。


ドレスデン・ファイル 2 〔狂った月〕 (ハヤカワ文庫 FT フ 14-2) (ハヤカワ文庫 FT フ 14-2)/ジム・ブッチャー
2008年8月25日初版
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2008-08-28 20:29:09

『アタゴオルは猫の森』(波動王海談記)

テーマ:日本SF・ファンタジイ
ますむらひろしが最初の頃から愛していたモチーフのひとつが、海賊。
アタゴオルを擁する銀しぶき海には、名鑑があるほど、さまざまな海賊の有名人(または有名な船)がいる。
「マンガ少年」に発表された最初のアタゴオルにも、帆のかわりに時計の文字盤を掲げた船に乗る海賊が登場したが、海動王編には、ぜいたくにも二人の有名な海賊が登場する事になっている。
ひとりは霊となってヒデヨシやテマリにとりつく異断銀であり、もうひとりは現役の海賊モズマだ。
ますむらひろしが持つ海賊のイメージは、どうもカリブの海賊がモデルのように思えるが、そういや銀しぶき海ってカリブ海とちょっと似ているかもしれない。

実は、これらの海賊たちが、常人には計り知れぬ大きな野望を持ち、とんでもない秘宝(というか、秘法)を追い求め、その傍らには必ず、一種の超能力を操る人(猫)がつき従うというのはパターンなのだが……。
今回はいささか違いが出ていて、モズマの正体が海賊ならぬ、ちょっととんでもないものであったり、奇妙な裏切り者がいたりと、それなりに趣向が凝らされていて、テルウテの話より面白くなっているように思う。
(なんだかんだ言っても、テルウテだって好きなんだけどね)。

そして、オチがいい。
いわば、自然への回帰がアタゴオルのパターン的エンディングではあるとしても、
そして、猫の森になってからのアタゴオルが、憎しみを透徹する喜びの象徴としてヒデヨシをとらえているとしても、
イメージ的に今回のラストは壮大だし、爽快でもある。


アタゴオルは猫の森 8 (8) (MFコミックス)/ますむら ひろし
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2008-08-27 20:33:32

『姫百合たちの放課後』

テーマ:その他
ハヤカワ文庫JAが、日本SFだけでなく、ミステリやその他の分野まで裾野を広げてからずいぶんたつが、そういう懐の深さがなかったら、もしかするとこの文庫本は出なかったかもしれない。
なぜなら、これは、森奈津子による、レズビアン小説の短編集だからだ。

しかし、不思議と、森奈津子のその筋の作品は、全く隠微な感じがしない。
つまり、セックス、わけても、同性間でのそれという、普通は秘め隠したい、ちょっと、いや、かなり後ろめたさを感じるようなテーマを、あっけらかんと描いてしまっている。
実際、最後のエッセイで、森奈津子自身が、セックスにまつわるマイナスな言葉が嫌いだという事を書いている。
そのため、小説の中ではことさらに、「恥」と「陰」のつく用語は避けているのだそうだ。
セックスとは決して、はずかしい事ではない。
楽しくて気持ちのいいものなんです!
本巻に収録された全ての作品が、そう語っている。

そういえば、レズビアン小説と書いたものの、今回はかなりの部分に、オナニーが登場する。
これはちょっと興味深い。
なかには、オナニーそのものをテーマにした短編まであるのだ。
単なる「エロ」でなら、そういうものを扱った作品もあるのだろうが、文学ではどうか。
これが「初」なんじゃないかと思うのだが(笑)。
また、それがなかなか、綺麗なのであります。
さすがだ。

振り返ってみれば、オナニズムや、女の性、また同性愛などを「罪」としたのは、旧約聖書が主たるソースであって、実際には、それ以外の文化圏で罪となっているわけではない。
あえて言うならば、セックスを陰のもの、罪と結びつけるのは、西洋文化の影響が強いと言えるのかもしれない。
それをぶち破る森奈津子の作品は、なんともファンタスティックで、爽快なのだ。


姫百合たちの放課後 (ハヤカワ文庫 JA モ 3-3)/森 奈津子
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2008-08-26 22:13:03

『GOTH 僕の章』

テーマ:ホラー
前半にあたる「夜の章」は、自然現象としての「夜」という意味もあるだろうし、もちろん、ヒロインの名でもある。
実際、前半は、主に、彼女の周辺について語られている。

さして長い物語ではないのに、2分冊され、かつ表紙が対であるという構成からも、物語の前後が対になっている事は創造できるわけだが、サブタイトルも後半は「僕の章」であり、最後まで名前を明かされる事のない主人公が、自分について語り始める。

暗黒につながる存在でも、そのありようはふたつ。
いずれも暗黒に魅入られているのではあるけれども、暗黒を引き寄せるものと、暗黒を生み出すものとに分かれてしまう。

夜が、暗黒を引き寄せるとするならば(実際彼女は何度も狙われている)、
僕は……?
当然、暗黒を生み出すものでなければならない。
そのカラーは、ページを追うごとにどんどんと濃さを増していく。

思うに、暗黒というのは人間にとって根源的な恐怖だが、それは、自分の外側に見る時よりも、自分の中に抱えているのがわかった時の方が怖ろしい。
従って、通して読んでいけば、ミステリからどんどんホラーへと風味が変わり、次第に背筋が寒くなり、しかも周囲にあった暗黒が、いつのまにか自分の中にあるという恐怖が待ち受けているというわけだ。

わかりやすいが、しかし、巧みな構成だと思う。


GOTH 僕の章 (角川文庫)/乙一
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2008-08-25 21:21:05

『GOTH 夜の章』

テーマ:ミステリ
GOTH……それはGOTHICの略だ、と本章の終わりの方に解説されている。
つまり、gothic という言葉から派生して、goth という表現があるという事なのだけれど、まあそれでも、おおもとは gothic という事か。

ゴシックといえば、なんだかおどろおどろしいものを想像するが。

gothic、すなわち、ゴート族風という事で、
それは、ヨーロッパの文化の中心(ローマだ)を侵略し、暴れまくったゴート族っぽいという事で、そこには、
野蛮で、
残酷で、
冷酷で、
破壊的で、
異教的で、
暗黒の、
異形のもの……。

gothic という言葉にはそういうニュアンスが詰まっている。

そして、まさにそういう要素が、この物語には詰まっている。
何しろ、暗黒系というところから物語が始まるし、とんでもなく猟奇的な殺人事件や、破壊的な家族などが読者の目の前を通り過ぎていくのだが……。
しかし、どんな猟奇的な事件であっても、事件そのものより、それを淡々と観察する「だけ」の主人公たちが、一番の異形だ。
そして実際、彼等自身が「GOTH」、タイトル通りの「もの」なのだ。


GOTH 夜の章 (角川文庫)/乙一
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2008-08-24 16:16:54

『アタゴオルは猫の森』(テルウテ編)

テーマ:日本SF・ファンタジイ
アタゴオルの物語では、時々一話完結ではない連続の長編が挿入される。
そういう場合は、たいてい、ヒデヨシやその周辺の人・猫たちが、桃色リンゴ丸に乗って旅に出るのだ。
行き先は、銀しぶき海のどこかの島である事もあれば、別の大陸の都市である事もある。

「猫の森」になってから挿入されたテルウテの話では、絶対鉱物テルウテを巡って、ヒデヨシたちと、別大陸の鉄砂一味が争うはめになる。
下手に使うと、世界が滅びるほどのもの、それがテルウテで、こういった仕掛けは、「玉手箱」でも同じような事があった。
実際、アタゴオルの世界というのは、決して、単にスローで穏やかなだけではなく、こういった危険なものも、それなりに存在するというわけだ。

従って、長編ではない短編の、日常の物語のみの方がいいという人もいるだろうし、たまにはこういった、とんでもない冒険をヒデヨシたちと楽しむのがいい、という人もいそうに思う。
テルウテ編では、途中からギルバルス(かっこいいあのキャラ!)も大いに関わってくるし、なかなか楽しい。
姉妹編である『ジャリア!』の主人公、時王も、ゲストとして全篇に登場する。
そういった、オールスター的な魅力もある。

とはいえ、「玉手箱」の時の話から数えて、二番目の、似た構成の物語であったり、敵の鉄砂たちにしても、二番煎じ的なところがあるため、残念ながら、テルウテ編は、印象が薄く、ストーリー的にもいまひとつ、見るべきところがないように思えるのだが、しかし。

この物語全体に登場する、さまざまな、アタゴオル世界の鉱物が、とても面白い。
植物同様、「えっ?」というような、ファンタスティックなものがたくさんあり、どんな鉱物なのか、漫画を見て、さらにそこから想像が広がるのが、楽しい。
およそファンタジイといえば、作られた国や、発表されたメディアを問わず、ユニークな動植物などに事欠かないものではあるけれど、これほどたくさんの架空のものが登場するのは、他の作家には、ない事ではないか。


アタゴオルは猫の森 5 (5) (MFコミックス)/ますむら ひろし
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