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2008-03-31 20:09:16

『神曲奏界ポリフォニカ メモワーズ・ブラック』

テーマ:日本SF・ファンタジイ
ライトノベル、しかも基本ファンタジイという条件の中で、本シリーズは果敢に本格をめざしたライトミステリ……という位置づけになるのではないかと思う。
もちろん、うるさ型のミステリファンには(ミステリとして)お奨めするわけではないが……。

我々の世界にはない、「精霊」という存在の特性を、うまくミステリに盛り込んでいるという点で、毎度、
「あー、今回もがんばってるな!」
そう思ってしまう。

今回は、とくに、そういう工夫のみられる作品だ。
すなわち、真犯人をあぶり出すための検証などは本格風、
そこに用いられた仕掛けや、真犯人が陥る罠には、「精霊の特性」が深く関わってくる。

これは勿論、ポリフォニカにおける「精霊」が、何でできているのか、どういう存在なのか、何ができるのか、そしてどういう限界を持っているのかという事が、あらかじめきちんと決められているからできる事で、そういう条件が、複数シリーズをかかえるポリフォニカの魅力を支える要因になっているだろう。

さて。
それはそれとして、本巻は、マティアとマナガの、過去にさかのぼった話となる。
マティアが警察官となり、驚くべき速さで昇進した、その背景についても触れられる。
さらには、他人とつきあったことがなかったマティアが、どのようにして、「他の人間とつきあう」事への一歩を踏みだしたのか、についても。

それは微笑ましくもあり、ちょっと切なくもある。
懐かしい想い出が、全てそうであるように。

それにしても、本巻の少女たちの魅力的であることよ。


神曲奏界ポリフォニカ メモワーズ・ブラック (GA文庫 (お-02-10))/大迫 純一
2008年2月29日初版
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2008-03-30 21:06:30

『神曲奏界ポリフォニカ まぁぶる2』

テーマ:日本SF・ファンタジイ
凍りつくようにさむ~い季節には、温泉に入りたい。
いや、別に凍りつくほどでなくても冷え込む日にはやっぱ温泉。
これが、日本人の人情なのであるが……。

ポリ白、ポリ黒、レオン、ポリ赤とそろい踏みした今回は連作短編、テーマは温泉。
鳳都ヴィレニスのシラホネ温泉。
ここに温泉ができた(とんでもない)きっかけから、
温泉で繰り広げられるちと怪しげな事件の数々……。

はっきり言って、抱腹絶倒。
旅の恥はかきすてなんていう言葉があるが、もうほんとに、みんなはめをはずしている。
シリーズの「普段」とは違う顔も見せてくれる。
なんともそこらへん、贅沢だ。

もっとも、それぞれのシリーズの近況と、一部連動したところなどもあるし、ポリフォニカにいきなり入る人にはお勧めできないが、従来からの読者には、思い切り、楽しめるはず。

あ、でも、ポリ青がないのでは、と思う人は、口絵をご覧あれ。
ポリ青の4コマ漫画が5本収録されているからだ。

疲れた時、ちょっとウツな時、なんか面白い事を探している時には、本巻を読もう!

ただし、温泉にむちゃくちゃ行きたくなっても知りません。


神曲奏界ポリフォニカ まぁぶる2 神曲奏界ポリフォニカシリーズ (GA文庫 (さ-01-07))/榊 一郎
2008年1月31日初版
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2008-03-29 20:46:07

『あなたに不利な証拠として』

テーマ:ミステリ
タイトルがまず、いいね。
"Anything You say can and will be used against you."
海外ミステリファンなら、即座にわかるはず。
そう、例の、ミランダだ。
合衆国の警官が犯人を逮捕した時に、読み上げなければならないとされている文言だ。

ゆえに、ここで読者が即わくわくしちゃうというだけでなく、
「ああ、これ、警察小説なんだね」
と、すぐ推測がつくだろう?

ね。
アメリカの警察ドラマなども日本で見るチャンスはけっこうあるので、犯人逮捕の瞬間ってのがすぐに連想できる。

しかし、なんと本書で活躍する警官たちは、少なくともその主人公は、全て、女性だ。
ここで、ちょっと肩すかしとなる。
もちろん、日本の警察小説を含むミステリで、女性の警官だの検事だのが主人公のものはあるのだけれども、米軍と自衛隊での差を見てもわかるように、こういった「めっちゃ男の世界」とされていた組織における、女性の扱いの差は、日米でいささか違いがある。
ざっぱな言い方になるが、アメリカでの方が、悪平等なくらいに、男女の別なく、同じ仕事を与えられているということ。

ゆえに、本書で活躍する女性警官たちは、腰のホルスターに入れた拳銃で日々青あざを作り、あるいはトイレで苦労し(なるほど、男はそのまますればいいけど、女性は拳銃のホルスターをはずして、ベルトもほどいてなど、手間がかかると……)、日々男にはちょっと想像できぬ困難を克服しつつ、男と同じ仕事をこなしているのだ。

あー、なんかセクシャルハラスメントすれすれかもしれないが……。<もちろんそういうつもりはない!
男が、男向けに作った組織で、それをまったく改変せずに、女が男と全く同じ事をするのは、男以上の苦労があるという事なんだな。

まあ、そんな事が、最初から、ずしんと落ちてくる。

じゃあ、そういう苦労を描いた作品なのかといえば、それもまた、全然違うのだ。

警官というものが直面しなければならない、肉体的な、あるいは精神的な危機と、彼女らは向き合いながら生きていく。
一応、連作短編的な構成なのだが、数名の主人公を経て、そのうちのある者は殉職するし、ある者は停職となって家族もばらばらになり、またある者は見逃さざるべき殺人のもみ消しに巻き込まれ……。

徹底的に、そこにいるのはヒーローではなく、等身大の人間としての警察官、なのだ。
女性の警察官であるための苦労は語られていても、そこには気負いも恨みもなく、そういった困難も、ただ、淡々と述べられているにすぎない。
あるいはむしろ、男の警察官が、警察官という職業に、ある種マッチョな誇りを無意識に持っているとするならば、それを全く排除しているというところに、主人公たちが女性である事の意味と価値があるのだろうと思う。

すなわち、女性を通して描いているからこそ、警察の日常を、より赤裸々に描き出しているとも言える。

しかも、その描写が尋常ではない。

人間というのは、そもそも、五官の中では、異常なほど、視覚に頼った生物なので、小説の描写も、しばしば、視覚に偏った描写になりがちだ。
しかし、これをやられると、読者は、あたかもテレビや映画を見ているかのような、距離感を感じる事になってしまう。
たいていは、その空隙は、キャラクターの心理描写や心情吐露によって埋められるのだが、本作では、そうではない。
いや、もちろん、心情の描写あるが、それ以上に、五官のほとんど全てが、描写に登場するのだ。
(実際、最初の主人公は、視覚だけではなく、五官や、第六感までをも捜査に利用する事を主張するというキャラクターだ)。
これは、作者に、よほどのセンスと記憶力がなければできない事だと思う。
実際、そこまで読者に追体験させてくれる小説は、文学作品も含めて、非常に稀だ。

そう、本作は、この秀逸な描写力があるために、読者がキャラクターとも作品そのものとも、全く距離感を感じずに読める小説なのだ。
中に入り込むのがあまりにもたやすいという事に、読み始めたらきっと驚くに違いない。

ミステリファンならば、決してこの作品にはずれは感じないだろうと確信する。
面白いぞ!!


あなたに不利な証拠として (ハヤカワ・ミステリ文庫 ト 5-1)/ローリー・リン・ドラモンド
2008年3月15日初版
アメリカ探偵作家クラブ賞
このミステリーがすごい!1位(2007年)
週刊文春ミステリーベスト10(2006年)
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2008-03-28 20:56:22

『骨の城』〈スケルトン探偵7〉

テーマ:ミステリ
我等が愛すべきスケルトン探偵こと、ギデオン・オリヴァー博士は、人類学者として、そもそも、アウトドア系の人だ。
また、彼の妻、ジュリーは、国立公園に勤務するレンジャーなので、夫に輪を掛けてアウトドア系の人。
もちろん、自然保護に対する興味は、職業的なものも含めて、高い意識を持っている。

さて、以前は、オリヴァーが参加する学会だの発掘調査だのに、ジュリーがつきあうというパターンだったのだが、今回はなんと、ジュリーが招聘されている自然保護関連の集まりに、オリヴァーがついていく、という逆パターン。
会場は、招待主の住む小さな城を中心とした島で、この群島を所轄とする警察署は、トップが巡査部長というささやかさ。
風光明媚だし、のどかだし、こんなとこでは惨い殺人事件など起こるまい……!

な~んて事にはならないのは、シリーズの読者なら深くうなずくところ。

都会だろうと、田舎だろうと、人里離れた秘境だろうと、起こるものは起こってしまうのだ!

しかし、その発端は、いかにも、島らしいものだ。
つまり、島といえば水面に囲まれているものであり、
大量の水は、何かを岸辺に打ち寄せたり、
あるいは水域に近すぎる事を刻々と主張する事で、人が住む事を妨げたりするわけで……
(逆に、通りかかる人を呼び寄せたりもするのだが)、

そういう、ひとけのない砂浜で、何年も前に、散歩中の犬が掘り出しちゃった、人骨。
暇をもてあましていたオリヴァーが、骨をもてあましていた博物館の女性館長に頼まれて、渡りに舟とばかり、鑑定を始めたのが事件のきっかけだったのだ。
(まったくもう、オリヴァーときては、骨には目がないのだ)。

「なにか、わかりそうですか?」
「う~ん、たいしてわかる事はないと思いますよ。たとえば……この人物が、殺されたという事くらいしか……」
「え゛」
(まったkもう、司法人類学者ときたら、TPOなんてどうでもいいのだ)。

シーンをあえて作者の文章とは関係なく描写するなら、だいたいこんな感じで、オリヴァーは、掘り出された骨に、殺人の証拠をみつけてしまうというわけ。
その事件が、ころころと転がっていくうちに、島で会合を持つジュリーたちのグループとも関連してしまうし、
はては、一度アル中で挫折したかつての名刑事(!)が、昔を思い出して大活躍しちゃったり、
さらに、名調教師と優秀な犬が、すばらしい働きをしたりして、
のどかで風光明媚な島は、たちまち、賑やかな場所となってしまうのだった。
本土からヘリがばりばりと飛んできたりするからね。

ミステリとしての読後感といえば、シリーズ中、突出して面白いわけではないけど、つまらないわけでもなく、安心して読めるというところか。
むしろ、骨の鑑定に、スゴイ熱の入れようがない分(いやいや、普通に比べたらスゴイのだが)、
犬のシーンがめだっちゃうくらい。
ボーダーコリーがナイスなのだ。


骨の城 (ハヤカワ・ミステリ文庫 エ 3-8)/アーロン・エルキンズ
2008年3月15日初版
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2008-03-27 21:42:39

『ドラゴンがいっぱい! -アゴールニン家の遺産相続奮闘記-』

テーマ:海外SF・ファンタジイ
表紙のドラゴンを、まずは見てほしい。
ピンクなのだ。
紅茶飲んでるのだ。
どうだ?

……かわいい?
うん、かわいいといえばかわいい。
何といっても、彼女は、お嬢さんドラゴンであるのだからして。

そういうドラゴンが出てくる話なら、別に怖くないだろうと思うかな。
んー。
いや、なんつっても、巨大な爬虫類らしく、それなりに「コワイ」シーンも、ちゃんとあるのだ。
とくに、ある食事風景など、一部の文化的背景を負った人間(たとえば作者の属するキリスト教文化圏)では、「ぎゃー」と言いたくなるようなものかも。

種明かしをしよう。
作者は、ヴィクトリア朝の小説が大好きなのだそうだ。
ゆえに、ある程度、人間とは全く違う、でかい爬虫類らしき特徴をこのドラゴンたちに与えてはいるものの、実は、本作、ドラゴンたちが演じる、ヴィクトリア朝の物語と言っても良い。
ご領主様のために身を粉にして働くメイド(老若)がいたり、
雄にのしかかられただけで、結婚寸前の危機に陥る乙女がいたり、
決闘する紳士たちがいたりする。

実際、副題にあるとおり、物語そのものが、田舎貴族(なりあがり)の若い子弟が、
格上な貴族の義兄に、財産をかっさらわれてしまい、
おまけにふたごの姉妹は意に染まぬ結婚または意に染まぬオールドミスの道を歩まざるを得なくなりそうだったり、

これでもかっ!!

という苦難の底から、大団円に向かって、ちょっとレトロで、ちょっとヘンなホームドラマを展開するのだ。
その分、大団円は、「真の大団円」であり、むかつく奴はまんべんなく不幸になり、それ以外の誰もが、みんな、とってもとってもしあわせになるという、にこにこしちゃうようなハッピーエンドなのだ。

ドラゴンの設定は、SFファン的に見れば物足りないし、
特に大きな秘密とか、仕掛けがあるわけでもないが、
ライトに楽しく読めるホームドラマ的ファンタジイであるというのは確か。


ドラゴンがいっぱい!―アゴールニン家の遺産相続奮闘記 (ハヤカワ文庫 FT ウ 4-1)/ジョー ウォルトン
2008年3月15日初版
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2008-03-26 21:49:45

『狼と香辛料 (7) 』

テーマ:冒険・アクション
最新巻であるが、本編の続きではなく、短編2つと中編1つで構成される、外伝的な巻だ。
しかし、3本というあたりは、やや中途半端にも思える。
短編集というには本数が足りず、外伝というには、長さが足りない。
むしろ、本編の穴を埋めるエピソード集と言うべきか。

『少年と少女と白い花』
本作のみ、ロレンスは登場しない。
ホロが神様となっていた村にたどりつく前の事なのか、あるいはロレンスと旅をした後なのかもさだかではない。
ごくごく田舎の領主館を、ある日突然追い出された、世間知らずの少年と少女を、ホロが見守る旅の話。
少年が「少し」成長する話としては、まあそれなりなのだろうが、いかにも、物語または旅の冒頭のみという感じで、あまりそそられない。

『林檎の赤、空の青』~『狼と琥珀色の憂鬱』
こちらは、本編のはざまのエピソードにあたる。
ホロの服を買い調えるシーン以外、とくにロレンスの商人としての才覚が発揮されるわけではないが、ひたすら、ホロの林檎好きがいろいろな面で発揮されているのが笑える。
本編でも登場する、ホロの林檎120個買い(大人買いよりスゴイ、狼買い?)、その顛末もここで読める。
そりゃいくら好きだって、一気に120個はな……きつかっただろう。
私も林檎は好きだが、1ヶ月に30個、がんばって50個がせいぜいかと……。
すごくがんばっても60個、ああ、ヨーロッパの小さい林檎ならもしかすると90個分くらいか。
それでも120個には届かない。
大変だ。

ところで、ホロが具合の悪い時に目を輝かせた、乳と林檎入りの粥、これは実在の料理だ。
もちろん、粥といっても米ではなくて、オートミールとかだな。
あちらの粥は、果物を入れたり甘くしたりするのが「おいしい」とみなされているらしい。
実は、『ムーミンママのお料理教室』のような北欧料理の本にはレシピが載っており、一度うちで試した事がある。
……家族全員不評であった。
個人差は、もちろんあると思うが、日本人は、「粥は塩味」(味噌も醤油も一応その系統ってことで)、という先入観が強いらしく、果物入りは良くて微妙に感じられるのだ。
ゆえに、ホロお気に入りの林檎入り粥は、おすすめはしない(笑)。


狼と香辛料 (7) (電撃文庫 (1553))/支倉 凍砂
2008年2月25日初版
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2008-03-25 22:10:58

『狼と香辛料 (6) 』

テーマ:冒険・アクション
ロレンスは行商人であり、生きていくためには商売をしていかなくてはならない。
一方、ホロは長い長い間はなれていた故郷に帰り、できることなら同胞と再会するのが目的。
ロレンスが店持ちの商人なら、一緒に旅をするためには全てをなげうたなくてはならないので、いっそ問題がないのだが、「行商人」であるから、旅をしながら商売ができるというあたりが、微妙といえば微妙。
ホロにあわせながら、なんとか商売も続ける事ができるからだ。

しかし、両者の目的が同じでない以上、どこかで齟齬が生じる事もあり得る。
今回は、まさしく、それ。
ロレンスが詐取されたカネをどこまで追いかけるのか。
ホロのめざすところと、行く方向がまるで違ってしまった場合はどうするのか?

いや、いずれにせよ、ホロが故郷に帰り着いたら、共に旅して、ホロの案内をする、という約束は、終わる。
ホロとロレンスの、別れの時は、近づいているという事になる。
しかし、そんな素直に別れる事はできるのか?

だいたい、テレオ村で、カップルの姿と自分たちを、引き比べていた事からしても、実はこのふたり、意識せずに「カップル化」しているわけなんだよな。
そして、近い将来の別れが目前となった今、追いかけているカネ(そしてそれを詐取した雌狐ことエーブ)よりも、むしろ彼らの曖昧な「関係」が、メインとなっているようだ。

なので、商人らしい(経済的な)冒険というよりは、ちょっとばかり、ラブコメが色濃くなっていて、長らく読んできた読者には、ほほえましくもあるけれど、ちと物足りないところもある。

ともあれ、ここで一行が三人になったという事は、その「曖昧な関係」に変化をもたせ、マンネリと、単なるラブコメ化を防ぐ働きも予測されるので、次の巻に乞うご期待というところか。

一方、エーブの行方も、見逃すにはもったいないと思うので、いずれそちらのラインがどのように顔を出すかも、今後楽しみ。


狼と香辛料 6 (6) (電撃文庫 は 8-6)/支倉 凍砂
2007年12月25日初版
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2008-03-24 21:18:33

『狼と香辛料 (5) 』

テーマ:冒険・アクション
川の港町、レノス……。
これは、あまり日本ではなじみのない光景だ。
というのも、日本の川は、地理的な条件から、それほどの長さがない。
もちろん、川が交通に使われなかったという事はないし、往来する舟のための船着場として、にぎわった土地もあるのだが、あくまでもそれは「舟」レベル。
船着場も、「港」と呼べるランクのものはなかったと思う。

近代以前の文明で、川船が重要な運送ルートというと、やはり連想するのはヨーロッパの主要河川だろうか。
まあ、もともと、本シリーズの背景は、近代以前のヨーロッパというイメージだしなあ。

架空の世界であるのを承知の上で、さらに比べちゃうならば、現実のヨーロッパで麦狼がメジャーだったのは、ドイツとかポーランドとかそのへんかな。
そこから北上しているとして、レノスのあるあたりは、北ドイツの沿岸地方ちょい手前とか、そんな感じなんだろうか。海を渡ってはいないから、北欧までいかないよなあ、などと思ってみる。

ヨーロッパの地図を下敷きにしてるわけではないと思うので、そういう比べ方はナンセンスなのだが、それでも、「風景」のイメージとしては、そんなとこだろうと……。
ドイツの田舎みたいな景色を思い浮かべてみる。

さて、今回の舞台となるレノスだが、材木と毛皮の交易中心地であり、川でみれば、上流の方から銅も運ばれて来るんだそうだ。
いきおい、ロレンスが手を出すのも毛皮取引だが、例年、この地方を通る団体様が今回は来ないというのが理由で、レノスの毛皮取引は、ピンチ!
街全体が経済危機にピリピリしているというところへ飛び込む事になる。

そういう状況は投機のチャンスだが、もちろんそういう話にはリスクも大きい。

そこへさらに、塩の専売などもからんで、なかなかスリリングに展開するのだが(扱われる物産の幾つかには、ちとつっこみどころもあるとはいえ)、やっぱ、かわった小説だよなあ……などと思う。
ホロの正体のこともあり、いつ、ロレンスが商人の本道から大幅に道を踏み外すかと思っているのだが、今のところ、ほんとにそういう徴候がかけらもないからだ。

冒険商人を主人公にした物語、SFなら多少思い浮かばない事もないのだが、ファンタジイだと、ほんとにないからねえ……。(アスプリンのマジカルランドはわりかしビジネスも扱うが、物語の中の「やつら」、本業は探偵だし)。
まあ、他に例を見ないタイプの小説というのは確実だ。


狼と香辛料 5 (5) (電撃文庫 は 8-5)/支倉 凍砂
2007年8月25日初版
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2008-03-23 21:18:22

『狼と香辛料 (4) 』

テーマ:冒険・アクション
だんだんと、ホロの故郷とおぼしき場所へ近づきつつあるロレンスの荷馬車。
そのため、「いつもの行商ルート」からはずれた道を行くわけで、その分冒険もある、という仕掛けなのだが、今回は手がかりを求めて行く先が教会/修道院という事で、まっすぐに、教会と地方政治のトラブルに飛び込んでしまう事となる。

すでに広く信仰されている土着の神(たいてい、獲物となる獣の数が増えることや、農地の豊作と結びついている、豊饒神)と、
そういった現世利益的な機能は持たないが、政治権力と(ある程度)結びついた宗教組織=教会との対立という構図があり、
もうひとつ、封建社会の中での、町や村の領主権や自治権がどうなっているかという複雑な背景があり、
そこでは必ずしも、どちらが善でどちらが悪とは言い切れない、曖昧でグレイな状況が出現する。

架空世界を舞台に、白黒はっきりとした対決を描く事になりがちな、 若者向けファンタジイとしては、本作が非常にユニークな立ち位置を持つ作品である理由は、そこにあるわけだ。

ホロが、そうした異教の神であるため、本巻以降、ますます、教会が問題にからむようになっていくので、本巻においても、終盤において、どのように教会勢力が顔を出してくるかは、注目すべきポイントだな。

一方、ホロの故郷が近づくにつれ、ホロとロレンスの関係が微妙に変化してくるのも、興味深い。
たとえば今回、村の牧師(女性)と、粉ひきの若者といううぶなカップルを見ながら、ホロもロレンスも、
(自分たちはどう見えているのか……?)
というところを、かなり気にしているようだ。
こういうカラーも今まではほとんどなかったので、そこらへんも踏まえて、本巻から、シリーズは第2段階に入ったと言えるのかもしれない。


狼と香辛料 (4) (電撃文庫 (1390))/支倉 凍砂
2007年2月25日初版
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2008-03-22 23:00:45

『ガーゴイルの誓い』〈魔法の国ザンス18〉

テーマ:海外SF・ファンタジイ
さて、再びザンス第18巻、現時点での、日本における最新刊の話だ。
本巻で、今まではあまり評価されてこなかったアイリスが、実はなかなか興味深いキャラである事が再発見されたという事は、初読した際の記事で語った。
また、前巻17巻といわばセットである事は、ひとつ前の記事で触れた。

しかし、本巻の主人公はなんといっても、ガーゴイルだ。
つごうにより、冒険の間は人間の姿を与えられるのだけど、本体は石の体をしたガーゴイルなので、うっかりその事を忘れそうになったり、やわくて食物を摂取したり眠ったり排泄したりする必要のある異種族の体に動転する事もある。
このあたりは、むしろSF作品〈クラスター・サーガ〉の読者の方が、深くうなずく事だろう。
人間とは全く似ていない異種生命体を主人公に描かせれば、ピアズ・アンソニイはまさに名人の一人と言えるからだ。
(まあ、ユーモア・ファンタジイのシリーズなので、SF作品ほど細かくリアルには描かれていないと思うけれどね)。

今更、ガーゴイルってなに、と言う人は、ファンタジイ読みには少ないと思うけれども、一応……。
これってもともとは、教会の屋根の樋のところに飾り付けられている奇怪な石像なのですな。
樋から水を落とす落とし口に据えられているので、、雨水はちょうどこの石像の口を通って、下に落ちる事になる。
本作の中で、ガーゴイルが自分の口を通して、マンダニアから来る水を浄化しているというのには、そんな背景があるわけ。

ヒンドゥ教の神々が仏教では服属したものとして取り扱われていたりするように、このガーゴイルも、土着の、異教の神が教会に服属した姿である、なんて話もある。
ともかく、樋のところにいるので、「樋鬼(はしおに)」なんて訳語を作ったケースもあるなあ。

以前はローカルな神だったかもということと、
半分爬虫類みたいな奇怪な外見の石像、というスタイルから、
幾つかのRPGには、モンスターのひとつとして登場する。
日本でメジャーどころをあげるなら、FFでも一部に登場していたはず。

ともあれ、そのガーゴイルがザンスでは、水の浄化を担っているんだけど、それはあるトラブルに起因しているというのが本巻で扱われる問題の中心にあるのな。
それを巡って、めくらましの世界の中とはいえ、一行はザンスの過去や未来をいったりきたりするわけだ。

しかし、もしかすると、ガーゴイルは、水に関する「ゲイッシュ」だけではなく、ザンスの古代ともっと深く結びついた怪物なのかもしれない。
今回、改めてアイリスに興味を持ち、シリーズ全巻を再読したわけなのだが、その際、今までにも2度3度、ザンスの「古代遺跡」らしき場所で、ガーゴイル像が見かけられているという事実に気がついたからだ。
そもそも、ザンスの今までの例からして、ガーゴイルのカップルが、これ以降の巻に登場しないとは思われない。
今までも、主要人物級のキャラが、そのまま忘れられた事ってないもんなあ。


ガーゴイルの誓い [魔法の国ザンス18] (ハヤカワ文庫 FT―魔法の国ザンス (459))/ピアズ アンソニイ
2008年1月25日初版
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