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2007-10-31 21:38:04

『扉をあける風』〈うるわしの英国シリーズ5〉

テーマ:その他
波津彬子の〈うるわしの英国シリーズ〉が、本巻をもって、とうとう完結なのだ。
とびとびに描かれていたシリーズらしいので、スタートから完結まで、相当の年月を経ており、今、1巻を開くと、なるほど最新巻とはかなり絵の雰囲気などが違っているところもある。
しかし、あとがきで作者が気にするほど変わっているとも思えず、実在の人間や猫とて、何年かたてば、多少は変わるだろう、という、その範囲内ではないかな。

さて、このシリーズだが、表向きには、
美青年にして子爵でもある、コーネリアス・エヴァディーン卿を主人公とする、ロマンスとなっている。
時代背景は日本でいえば明治から大正あたりの、あの時代。
馬車もあれば、自動車も走ってるぜ、という、現代人の目からみれば美化されがちな時代にあたる。
そこもってきて、主人公が「美青年」であるから、シリーズタイトルも、むべなるかな。

しかし、読んだ人は皆知っている、これ、真の主人公(または裏のフィクサー)は、主人公が預かっている猫、ヴィルヘルムなのだ。
彼は黒白のツートンカラーで、長毛種で、決して品評会で優勝するような美猫ではないが、めちゃくちゃ風格があり、たまに、どう考えてもあり得ない不思議を発生させ、本来の飼い主のお父さんには猛烈な猫アレルギーを発生させ、一方主人公のお父さんには、「あの面白い生物」として気に入られている、そういう猫だ。
たぶん、重そう。

そもそも、波津彬子描くところの猫は、和猫だろうと、外国の猫だろうと、短毛だろうと、長毛だろうと、すんなり美猫というのがほとんどいない。
たいてい、ずっしり重そうで風格があるか、不細工なのに奇妙に魅力的という、そういう猫どもだ。
なかでも、本シリーズのヴィルヘルムは、その最右翼であるといえよう。

シリーズ完結、どのキャラクターもおさまるべきところへおさまり、見事に大団円なのだが、……。
その全てに、びみょ~にヴィルヘルムがかかわっているように思えるのは、きっと、全然、気のせいではない。
まあ、ね、主人公も思っているとおり、「猫とは不思議な生き物」という事なのだろう。

猫好きにはぜひともお勧めしたい漫画なのだ。
完結を機に、ぜひ(笑)。


扉をあける風 (フラワーコミックス)/波津 彬子
2007年10月31日初版
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2007-10-30 22:30:46

『BLACK LAGOON (7) 』

テーマ:冒険・アクション
復讐に燃える狂女中ロベルタ……!

……の、はずなのだが……。

実は本巻は、むしろ、そのロベルタを追う、坊ちゃんたちの話だ。

そして、それをサポートする(ことになる)ロックたちの話だ。
(まあ、それは当然、ロックが主人公だし)。

だが、ロベルタと、坊ちゃんと、ラグーン商会の面々と……。
どう考えても混ざり合わないような断片をつづりあわせるのは、今回、三合会の張大哥なのだ。
表だっては全く動かないが、ロアナプラの裏で動く、それが張大哥である。
……う~ん、かっこいいねえ。

まあそうは言っても、それなりに、ロベルタのマッドな姿がはしばしで見られるのだが(それでこそアウトローコミック)。
ロベルタの、そしていずれはロアナプラが、敵に回したのは、今回、ほんとにとんでもない相手だ。
先行きどうなるのか、
張大哥はどう立ち回るのか、実に楽しみだ。


ブラック・ラグーン 7 (7) (サンデーGXコミックス)/広江 礼威
2007年10月24日初版
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2007-10-29 22:43:17

『御鎗拝借』〈酔いどれ小藤次留書1〉

テーマ:歴史・時代小説
思えば、磐音はいかにも「いいとこの若様」っぽい好男子で、今は貧しくとも実家はそれなりに上流の家の出身。
鳶沢総兵衛は古着問屋の旦那で、当然裕福だし、やはり美男であるという形容だったと記憶する。

しかし、今回の主人公、小藤次は違う!
何よりもまず、矮躯である。つまり、背が低い。
現代日本でいうと、たいていの女子中学生より、多分、低い。

であるのに、頭がでかい!

さらに、年齢だって、もう50代の親父で、しかも老け顔なのだそうだ。
自分でも、おのれの事を、「じじい」だと思っているのだ。

それだけにとどまらず、小藤次は身分がとても低い。
侍とは名ばかりの「厩番」、もらっている扶持、つまり給料は、なんと「女中の給金以下」なのだ。
小藤次というキャラは、風采も上がらなければ身分もなく、カネもない。ないない尽くしというわけ。

だいたい、冒頭からして、全然かっこよくない。
大酒くらって、一歩間違えば乞食ですかというような感じで、草むらに寝てるのだ。
通りがかった町人の親子に、呆れられてしまうのだ。
しかも、そのせいで、お勤めをすっぽかしてしまい、とうとうお屋敷から放逐されてしまうというていたらく。
いいのかこんなことで!

しかし、このあまりにもなさけないキャラが、
大恩ある殿様がこうむった恥辱をはらすため、なんとも、とんでもない偉業を成し遂げてしまうというのが本巻の物語。
ふつう、シリーズものだと、1巻だけではなんとも面白さの判断がつきかねるようなものが多いが、本シリーズは違う。
本巻は、存分に面白い。
めちゃくちゃ爽快だ。
とことんなさけな系の主人公なのに、剣の強さは天下一品、それだけを頼りに、殿様の怨敵を成敗しちゃうのだ。

読了した時には、冒頭のなさけなさがまるっきり逆転して、すごいカッコイイ、と見えてしまうのが不思議。
面白いぞ~。


御鑓拝借―酔いどれ小籐次留書 (幻冬舎文庫)/佐伯 泰英
2004年2月10日初版
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2007-10-28 20:50:36

『魔帝の血脈 (2) 沼地の呪術師』〈真実の剣第7部〉

テーマ:海外SF・ファンタジイ
もともと1冊のものを分冊してるという事情があるとはいえ、2巻になってもまだ、本来の主人公であるカーランとリチャードは出てこない。
真面目な話、おそらく、最後の最後(今回は4分冊らしいので、4巻目の『宿命の邂逅』)あたりまで、出てこないんじゃないかと危ぶまれる。

なぜって、原書第8巻(日本の文庫版だと第8部)の冒頭って、ほとんど第6部の終わりとつながってるも同然なんだもんなあ……。

はっきりきっぱり、第7部って、「外伝」同然だと思うのだが。

ともあれ、ジェンセン・ラールの冒険は、まだまだ続くのであった。

まあ、ジェンセンが主人公の外伝みたいなもの、と思えば、それはそれで楽しいし、彼女が、日一日と成長していくさまは、それなりにめざましく、かつ、前向きないい娘なので、読んでいてもほだされるのだけどな。

しかし、当然、それだけではすまさないのが大河ファンタジイの(そしてこの作者の)お約束なので、
そろそろ、ジェンセンの存在にまつわる「謎」がちらちら見え始めてきている。
そりゃ、彼女もラール家の血を引いているわけで、しかも、今の今まで、殺されずにすんだわけで、そこには、ただならぬ秘密が隠されていたのだった。

ところで今回のサブタイトルになっている、沼地の呪術師なのだが。
すぐに想像されるとおり、ジェンセンが探し求めていたアリシアその人のこと。
腕のいい職人と結婚している彼女であるが、ジェンセンの前に現れるおkの夫婦、やはり、アリシアの方がいきいきとして魅力的で、テリー・グッドカインドという人は、女性キャラが魅力的だなあ、と思う。
男はむしろ、普通すぎるきらいがある(笑)。


魔帝の血脈 2 沼地の呪術師 (ハヤカワ文庫 FT ク 5-33) (ハヤカワ文庫 FT ク 5-33 真実の剣 第 7部)/テリー・グッドカインド
2007年10月25日初版
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2007-10-27 22:26:09

『夢見る黄金地球儀』

テーマ:冒険・アクション
海堂尊、またまた新刊なのだ。
今回は、東京創元社から。
またしても違う出版社か、ということはそれだけ注目の作家という事だが、
東京創元社は、今、日本のミステリ作家に力を入れているので、その動きに沿ったものでもあるらしい。
本書は、東京創元社の「ミステリ・フロンティア」という、俊英ミステリ作家のラインナップに属するものなのだ。

さて、今までの海堂尊作品は、病院を舞台とするものに限られていた。
作者がなんといっても、「現役勤務医」という売りでの、デビュー作、『チーム・バチスタの栄光』から始まる流れ。
そりゃあ、作者が専門の分野を、作者が良く知っている舞台で描くわけだから、迫真的であり、読者には興味深くもあるわけだな。

しかし、今回は初めて、病院から別の場所へ舞台が移るのだ。
医者も出てこない。

ゆえに、本作をもって、
「海堂尊作品は、小説として本当に面白いのか」
という試金石になる、とも言えると思う。

主人公は家族経営の鉄工所で営業部長をつとめる、30代の男。
物理学を学んでいたが、大学院で修士号をとる前にドロップアウトしており、かといって工場の営業をやりたいわけでもなく、なにかこう、割り切れない日常を送っている。

そこに、学生時代の悪友がふらりと現れる。
なんと、この男が持ちかけてきた話というのは、とんでもない窃盗の計画だったのだ!
それも、公衆の面前に展示してある、「黄金の地球儀」を、ごろんごろんとボールのように転がして、盗みだそうという、大胆というか、華麗というか、バカというか、まあどれをとっても、どぎもを抜くような話なんだな。

実行に移そうとするのは、前述の主人公とその悪友、
力を貸すのは、怪力の美人バーテンダー、
サポートするのは美しいジャズシンガーとサックス奏者。

地球儀とメンバーをめぐって、物語は二転三転し、まあるい地球儀よりも速く、(そして加速度的に)どんどんと思わぬ方向へ転がっていくのだ。
はっきり言って、面白い。

なお、物語はおなじみの桜宮市、ただし2013年の事、となっている。
そういえば、『ブラック・ペアン』に、水族館に展示されている場違いな地球儀の事がちらっと出てきた気がするし、
物語中に登場するシンガーとサックス奏者は、『ナイチンゲール~』を読んだ人なら、「あ」と言う事だろう。
全ての作品が、同じ架空の町を舞台に展開されるのはいかがなものかとも思うが、
他の話を知らなくても全く問題なく読めるうえ、他の話を読んだ人にはそれなりにおいしい仕掛けになっているので、それはそれで良いのかも(笑)。

そういえば、『チーム・バチスタの栄光』は、来月上旬、文庫上下巻で発売されるらしい。


夢見る黄金地球儀 (ミステリ・フロンティア 38)/海堂 尊
2007年10月25日初版
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2007-10-26 21:14:35

『神曲奏界ポリフォニカ ペイシェント・ブラック』

テーマ:日本SF・ファンタジイ
疾走するバイク。
トラックと、スポーツカーと、ミニヴァンを抜いて……。
何かが視野に入る!
素早く減速操作をする!
しかし……。

物語は、いきなり、「首なしライダー製造」現場から、始まってしまうのだった。
そしてもちろん、この「首なしライダー事件」に遭遇し、担当する事になるのが、マティアとマナガの二人組、という事になるわけだ。

さて、首なしライダーを造ったのはどこのどなたか。

まあ、ミステリファンにはわりとすぐに犯人は知れると思うが、それでも、なかなかうまくミステリ仕立てになっており、ポリフォニカの各シリーズの中でも、独特の風合いを醸し出していると言えよう。
(ライトノベルとしては充分、ミステリだ)。
検死前後の死体を見せてもらうあたりは、X-Filesっぽいところもあるか。

今のところ、ポリフォニカには、精霊が軍隊に協力した戦争の時代は、描かれていない。
ゆえに、精霊が一種の兵器として参加した戦争の様子は、ところどころで断片的に登場する回想シーンからうかがうしかないのだが……。
今回は、このあたりも絡む。
そういや、ポリ黒は、精霊犯罪を扱う物語であるだけに、戦争と精霊という特殊なシチュエーションに、一番関わりの深いシリーズかもしれない。
今回の精霊も、ちょっと哀しい。
人間にも、ベトナム戦争症候群だの湾岸戦争症候群だのっていう話があるけれども、寿命が途方もなく長い精霊がそういうものを煩ったら、どうなるのだろう?

読後感は、それを思うと、非常にしんみりとしてしまうのだ。


神曲奏界ポリフォニカ ペイシェント・ブラック 神曲奏界ポリフォニカシリーズ (GA文庫 お 2-7) (GA文庫 お 2-7)/大迫 純一
2007年10月31日初版(発売中)
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2007-10-25 21:28:27

『神曲奏界ポリフォニカ レゾリューション・ブラック』

テーマ:日本SF・ファンタジイ
先月最新巻が出たばかりのポリ黒だが、その1冊前についてまだ書いていなかった。
レゾリューション・ブラック、なのである。

今回は、単身楽団の展示に出品された、「全てガラスで造られた単身楽団」を中心に織りなされる、一風かわった恋物語というか、精霊と人間の絆にまつわる、いかんともしがたい宿命に関する物語だ。

それは、ポリフォニカならずとも、人外のものと人間の間の恋にはつきものの宿命でもある。
すなわち、人外のものの寿命が非常に長い……または、人間の寿命が非常に短い、という事。

その事に一番こだわっているポリフォニカが、ポリ黒であるかもしれない。

とくに、今回は、「精霊であるがゆえにわからない、短命な人間の脆弱な肉体」が前面に押し出されている。
ガラスの単身楽団の元の持ち主である女性と、
17歳の若さにして、過労で倒れるほどの激務をこなすマティア。
マナガは、その二人をどうしても重ねずにはいられなくなる。

それにしても、この巻でも良い役をさらっているレオン、とうとう来月、独立したシリーズの主役としてスタートするそうだ。
作者は同じ大迫純一。
楽しみではあるが、執筆ペース速いですな!



神曲奏界ポリフォニカ レゾリューション・ブラック 神曲奏界ポリフォニカ ブラック シリーズ5 [GA文庫] (GA文庫 お 2-5)/大迫 純一
2007年7月31日初版
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2007-10-24 22:12:52

『探偵ガリレオ』~『予知夢』

テーマ:ミステリ


本作の主人公は、刑事草薙(ドラマの方ではなぜか女刑事に変身、設定も変わっている)と、その大学時代の同窓生である物理学助教授湯川、という事になっている。
年格好からすると、この二人組、おそらく、昭和の半ばちょい過ぎくらいに子供時代を過ごしているだろうと思われるのだが、
ということは、
少年漫画雑誌のグラビアとか、学研の「○年生の科学」には、すばらしい科学技術にあふれた夢の未来が描かれていた、そういう時代にあたるわけだな。

で、これ、もちろん、基本的には、真面目にほんとの科学の発展を理想化した未来社会の想像図だったりするが、それ以外に、超能力なんぞも大流行だった。
エドガー・ケイシー、ユリ・ゲラーなどの有名な超能力者がいた時代でもあったんだ。
もちろん、その他に、テレビに登場していた「スプーン曲げのできる」超能力者とか、いっぱいいたらしい。

もちろん、今では、当時想像された科学技術の一部は現実のものとなり、一部は夢物語と消え、
「あの頃」のように、科学は決して万能ではなく、害ももたらす存在だというクールな認識がより一般的となり、
そして、超能力は……「すばらしい」←→「うさんくさい」という両端を結ぶ線上で、ずっと「うさんくさい」に近いものとなりはててしまった。

草薙と湯川は、そういう変遷を肌で感じてきた世代、という事になる。

そういうコンビが次々に遭遇するケースが、
一見超常現象に見えるようなものなのだが、実は科学的にきちんと解明ができる、犯罪にかかわる現象。
と、いうものなのだ。

たとえば、発火現象とか、幽体離脱とか、そんな風な。

連作短編として綴られるこのシリーズは、一見、そんな風に、「絶対にちゃんとした説明があるはず」の「超常現象」を、科学的に解き明かし、犯罪解明に役立てる、そういうミステリのように思える。
しかし、その奥底には、いちまつの、
「ではあるが、どこかに、ほんとのほんとに不思議な、真のオカルトが存在していてほしい」
という気持ちも、隠れているようだ。

この二人の活躍を見る時、科学は、そのものがある種の「ロマン」でもあり、それは、神秘を解き明かしたいという人間の欲求から発したものであり、すなわち、実は「神秘に恋する」心がベースにあるのだ、という事が、不思議と想起されるのだ。

まあ、ちょっと二律背反的でもあるのだけれど、それこそが、矛盾をはらんだ人間にぴったりの、本作の魅力であるのだろうと思う。


探偵ガリレオ (文春文庫)/東野 圭吾
予知夢 (文春文庫)/東野 圭吾
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2007-10-23 23:05:19

『柳田國男集 幽冥談』

テーマ:古典・文学
柳田國男といえば、日本の民俗学草分けの一人であり、かつ、文学者でもある。
さて、では、どちらの柳田國男が好き?
民俗学者として?
それとも、文学者として?

実のところ、文学として書かれた作品にも、そこはかとなく民俗学の香があり、
民俗学の視点から著された文章にも、そこはかとなく文学の香がある。
それが、柳田國男の文章の魅力ではないかと思う。

さて、本巻に収録されているのは、

『怪談の研究』
『山人の研究』
『遠野物語』
『幽霊思想の変遷』
『魂の行くえ』
『幽冥談』
『熊谷弥惣左衛門の話』
『狸とデモノロジー』
『池袋の石打と飛騨の牛蒡種 『巫女考』より』
『魚王行古乞譚』
『念仏水由来』
『一目小僧』
『妖怪種目』
『かはたれ時』
『幻覚の実験』
『発見と埋没と』
『故郷七十年(抄)』
『『耳袋』とその著者』
『根岸守信綱編『耳袋』』
『鈴木鼓村著『耳の趣味』』
『岡田蒼溟著『動物界霊異誌』』
『這箇鏡花観』
『夢がたり』
『草もみじ』
『『金星奇談全集』序言』

以上の通り。
全てではないが、おおむね、怪異について書かれたものが集められているため、多少、相互に関係しあったり、内容が重複しているところもあるが、怪異譚として伝えられているものを、どのように柳田國男がとらえ、その正体を解明しようとしたか、その方法論は、とらえやすい。

面白いのは、広く文献を渉猟しつつも、まず第一にフィールドワークの重要性を唱えている事で(いや、学問上は当然の事なのであるが)、しかもその際、「現地で得た情報」も、鵜呑みにせず、検証していくプロセスが、目に見えることだ。

いや、学問としてあるべき基本的な姿勢であるがために、改めて、研究者の真摯な姿勢というのが、行間から伝わってくる気がするのだなあ。
そして、この、真摯さというのが、柳田國男の大きな魅力のひとつになってる、と思うのだがどうだろう。


柳田國男集―幽冥談 (ちくま文庫 ふ 36-6 文豪怪談傑作選)/柳田 國男
2007年8月10日初版
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2007-10-22 22:01:55

『墨攻』

テーマ:歴史・時代小説
これは、墨子教団の物語である。
そうだよなー、タイトルが『墨攻』だし。
しかし、じゃあ、墨子(教団)ってなんだ?

だいたい、高校の世界史あたりで出てくるんだよな?
中国の、春秋戦国時代に、ばらばらと出現した思想家のうちのひとりだ。
孔子に老子に荘子に孟子に……荀子に墨子。
まあ、こんくらいか。

さて、この中で、孔子は儒教を興した人だ。
誰でも知っている。
老子は道教と関係の深い人だ。
誰でも知っている。
孟子だ、荘子だ、このへんも、まあ教科書にちょこっとは書いてある……よな?

でも、墨子って、どうだっけ?

なんか印象が薄いんだよ。
つか、教科書、墨子についてどれくらい触れていた?
(ほとんどなかったような気がするのだが……気のせい?)

作者は、語る。
現在に残されている、墨子(教団)に関する資料は、非常に少ない。
しかし、断片的な記録からその実像に迫っていくと、それは……

その1 すんごい職人集団だった!
その2 清貧の労働者集団だった!
その3 めちゃすごい戦術家集団だった!

ただし、専守防衛。

そしえt、物語は始まる。
大国の争いのとばっちりを受け、今にも攻め込まれそうな、地方の小城を、墨子教団のある男が、たった一人で守りに逝くのだ。
そう、たった一人で。

その手段とは!

しかも、その城を獲りに来るのは、世にも聞こえた戦争の名手なのだった。

その妙手とは!

攻守とも、次々に見事な手際で戦を奨めていくのだが、しかし、いかに戦術の妙を凝らし、戦に用いる技術が巧みであったとしても、戦は所詮、人間が織りなすもの。
将軍も、墨者も、思わぬところで足をすくわれ、思わぬところで裏切られてしまう。

歴史の大きな流れの中では、ほんの泡沫にすぎないような攻城戦の物語だが、不思議と、その結末には、無常感とともに、一種の爽快感をおぼえるのだ。


墨攻 (新潮文庫)/酒見 賢一
1994年7月1日初版
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