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2007-09-30 19:43:23

『日本絶賛語録』

テーマ:人文・社会・ノンフィクション
なに、日本を絶賛なのか?
でも誰が?
どうして?

30年近くも、中国や半島の言いがかりに近い難癖の報道ばかりを耳目にしてきた日本人にとって、「は?」となるようなタイトルだ。
実際、本書には、外国人が日本を讃えた文章が、いろいろ集められているのだ。

そう、実は、日本を賞賛した外国人は、決して少なくないのだ。
ただ、マスコミがその点であまりにも偏向した報道をしてきたために、あたかも日本という国が、「世界中の嫌われ者」であるかのように思えていた、というわけだ。

とはいえ、近年、いろいろな理由で、また、ネットはもとより、テレビや新聞をはなれた出版物として、違う傾向の情報が流れてくるようになった。
但し、当然ながら、それらの出版物も、さまざまな意図のもとに出版されており、そのためのフィルターがかかっているのは確か。

本書の場合は、
「最近の日本人はなんなのだ、日本ってこんなにひどい国だったのかっ?」
親が子を虐待したり、子供が親を殺したり、バラバラ殺人事件が起こったり、まあ、いろいろと……。
そういう世相を憂えながら、
「いやっ。本来の日本は、こんなすばらしい国であり民族であったはずだっ」
と主張すべく、著されたもののようだ。

実際、本書に引用されている諸人が讃えているものは、ほとんど、幕末~昭和初期についての日本がテーマとなっているのだ。
ネットの反韓・反中サイトでは有名なイザベラ・バードの旅行記をはじめ、
貝塚の発見で名高いモース博士や、インドの有名な詩人タゴール、トロイアの発掘で名高いシュリーマン、日本の近代医学の父ベルツ博士など、錚々たる名前があがっている。

いずれも、戦前までの日本が、いかに素晴らしい「文化」(あるいは「道徳」)をもった国であったかという事がつづられている。

もとはこんなに素晴らしかったんだから、今のひどい状態をなんとかしようよ、という著者の気持ちがひしひしと伝わってくる。

もちろん、実際には、当時の日本をけなしたり嫌った文章も、探せばみつかるやもしれないし、
逆に、戦後の日本について、褒め称えた文章だってみつける事ができるし、
そのつもりなら、実は(著者が愚行と断罪している)太平洋戦争を評価している外国人の文章とて、みつける事はできるのだ。
そういう意味では、本書は思い切り、著者のフィルターがかかった本だ。

しかし、それもまた善きかな、と思う。

現在の日本が、明治大正の頃の日本とはいろんな意味で大きく変わってしまい、悪いところもたくさん生じているのは事実であるし、全く明治時代の道徳に復帰する事は無理としても(時代的な背景などもあるから、そのまま明治の道徳観を持ち込んでもミスマッチなところもあるはず)、振り返って見る事は決して損ではない。

まあ、本書の文章をそっくり鵜呑みにして、「日本はスゴイ」と鼻高々になるのだけは、避けなくちゃいけないけど、日本の美点を再発見するにも、ちと面白い本だろう。


日本絶賛語録/村岡 正明
2007年10月1日初版
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2007-09-29 22:30:30

[『ダレン・シャン (5) ~バンパイアの試練~』

テーマ:海外SF・ファンタジイ

漫画版もとうとう5巻まで来た。
といっても、物語としては、4巻とダイレクトにつながっているのだ。
いよいよ、主人公がバンパイアの試練を受ける事になる。

しかし、少年漫画として描かれているだけに、どうも漫画になると、この部分が物足りなく感じる。
おそらくそれは、作者が悪いのではなく、むしろあまりにも、この「試練」が少年漫画向きであるため、描写があっさりしすぎているように感じられるというのが、問題点なのだろう。
たとえば、これが週刊少年ジャンプ連載でオリジナルの漫画であるなら、ひとつの試練の克服に、3~4回分かけるんじゃないかなあ、などと想像してみるわけだ。

……ある意味残念だが、作者はよく誘惑に耐え(そうなのか?)、物語の本筋を見失わなかった、と思う(笑)。

さて。
バンパイア・マウンテンに向かう時からちらついていた問題、パンパニーズの事が、改めて、物語の本流に躍り出てくる。
ダレンの試練は、実はその前菜にすぎないのだ。
今は、ダレンもその一員であるバンパイアの仲間内について、幾つかわかる事もあり、かつ、その一方でハーキャットについては謎が深まってしまったり、いろいろあるが……。
物語は、前巻ほど引かないものの、今回も思い切り、「次に続く」。

それにしても、毎度ながら、裏表紙折返しの次回予告のイラストはかっこいいな。うん。


ダレン・シャン VOLUME5 (5) (少年サンデーコミックス)/新井 隆広
2007年9月23日初版
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2007-09-28 20:45:34

『黒博物館 スプリンガルド』 バネ足ジャックを知ってるかい

テーマ:ホラー
クロス装を思わせる装幀、しかも背表紙含め、タイトルと飾り枠は箔押し。
昔の本を思わせるイメージだが、漫画の単行本なのだ。
描いているのは、藤田和日郎、かつて一世を風靡した『うしおととら』 の作者だ。
題材は、バネ足ジャック。

え。なにそれ、と思った人は、多分たくさんいるだろう。

うん、そうなのだ。
これ、日本人には、ほとんど馴染みがない。
実は、イギリスでは切り裂きジャックに並ぶほど、有名な「怪人」なのだそうだよ。
燃えるような眼をして、ぴょ~んぴょ~んと空中高く飛び上がり、夕暮れ時などに若い女性を襲撃(?)したと言われている。

都市伝説に数えられる事もある。
日本でいえば、口裂け女のようなものだな。
イギリス、しかもロンドン近郊ローカルの怪人であるから、日本人には馴染みがない、そういうわけだ。

そういうものをあえて使って、バネ足ジャックが活躍(?)したと言われる時代を背景に、活劇を描こうというのだからふるっている。
で、単行本がこの装幀ね。
……やるな、講談社。

いや、なんつか、ほんとに凝ってるのだ。
装幀だけではなく、中身も凝っている(笑)。
バネ足ジャックという、かなりきわものっぽい存在をうまく使いつつ、なんとこれが、正統的な少年漫画にできあがっているのだな。
バネ足ジャックを追う刑事も、バネ足ジャックを演じていた人物も、いやもうほんとに、少年漫画していながら、彼らが活躍する世界は、これまたきっちり、19世紀ロンドンなのだ。

ゆえに、これはホラーというより「恐怖譚」であり、
アクションものというより「活劇」なのだ!

しかも、日本では切り裂きジャック研究家かつ英米の恐怖小説の翻訳家としても知られる(つまり、斯界にその人ありと知られた)仁賀克雄氏が随所にコラムをよせているという美味しい仕掛け。
(そもそも、バネ足ジャックについて、日本で本を書いている人といえば、この仁賀氏)。

いや、なんつうかね、こういうゴシックなものが好きなら、買うっきゃないだろう。
事実、飛ぶように売れているもよう。
少年漫画さえ苦手でなければ、これは面白いよ。
とくに、ゴシックホラー好きと都市伝説好きは、買うべし。
絶対に、損はしない。


黒博物館スプリンガルド (モーニングKC)/藤田 和日郎
2007年9月21日初版
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2007-09-27 20:03:26

『帰還!』〈古着屋総兵衛影始末11〉

テーマ:歴史・時代小説
江戸ではいよいよ、綱吉が息を引き取り、それと同時に、柳沢吉保が凋落する。
これを最後! とばかりに、当然、鳶沢一族への総攻撃が企まれるのだが、まさしくそのタイミングで、総兵衛は大黒丸で江戸に帰ってくるのだ。

こればかりは、歴史上の、実在の人物を登場させている弱みというべきか、
鳶沢一族の仇敵であった柳沢吉保の衰退は、すでに決まっている事なので、同時に、読者にとっては、鳶沢一族の勝利も、自明の理となってしまう。

とはいえ、アイルランドなどにあるような、革張りの軽い小舟による、剽悍な戦闘シーンは、わくわくするし、総兵衛と吉保の直接の対決も、(結果がわかっているとはいえ)物語のクライマックスと呼ぶにふさわしいものだ。

さて、鳶沢一族は大黒丸を得て、さらにこれまでとは違った働きをする方向に動いていく。
鳶沢一族と「影」との関係は絶たれてしまったわけではないが、富沢町の大黒屋は、ある意味、非常に大きな転換をする事となり、物語は、新たなる展望をかいま見せつつ、とりあえずの幕を閉じるのだ。

後書きでも、作者は、これが第一部の終わりであり、いずれは第二部を書きたいと述べているが、想像するに、鳶沢一族は、ますます海上交易中心の貿易商へと成長し、それに応じて、拠点は琉球となり、従って、次の大敵は「薩摩」という事になるんじゃないかなあ。

もしそうなるなら、これまでの時代小説にはない、壮大なスケールのものになりそうで、大いに期待する。


帰還!―古着屋総兵衛影始末 (徳間文庫)/佐伯 泰英
2004年12月15日初版
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2007-09-26 13:10:12

『チーズスイートホーム (4) 』

テーマ:その他
ペットOKのマンションに引っ越してきた山田家。
チーにとっても、新生活の始まりであり、それは、猫であるチーにとって、改めて「おうち」を認識するプロセスの始まりでもある。

なぜなら、チーは、最初のマンションしか「おうち」を知らない。
山田家の人々と、あのマンションの部屋をあわせて「おうち」と認識できたはずなのに、建物の方が、かわってしまったからだ。

1巻の、最初の最初から始まっていた、チーの「おうち探し」は、ある意味、ここからが本番だとも言える。

しかも、今度はペットOKのマンションであるだけに、猫だけでなく、インコもいれば犬もいる。
おとなりの犬、デイビッドくんなどは、庭を通じて、「チーの領分(である庭)」に顔をつきだすほどの、近いところにいるわけだ。
もともと、チーにとって、犬はとっても怖い存在なのだが、さて、今後、デイビッドくんとの関係はどうなっていくのだろう(笑)。
お隣との行き来については、断然チーの方が有利だし、どうもデイビッドくんはフレンドリーな犬らしいので、これから、チーの、犬についての感覚も、変わってくるのかもしれない。


チーズスイートホーム (4)/こなみ かなた
2007年4月23日初版
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2007-09-25 19:53:15

『チーズスイートホーム (3) 』

テーマ:その他
チーと山田家の人々が住むマンションは、大騒ぎ!
というのも、ペット禁止のマンションだからね。
例のヒグマ猫の所在がいよいよ明らかになりかかってきたのと、チーの存在も確認されてしまって、管理人のおばさんは虎視眈々、山田家の人々は警戒レベルレッドで、チーはもちろん、外には行かれない。

結局ヒグマ猫を飼っていた家族はよそへ引っ越す事になり、山田家も(チーの飼い主である事は露見していないものの)、決断をせまられる事になるのだ。

チーを手放して、北海道の親戚の家にやるのか?
それとも引越?(でも、どこへ)。

ここで浮き彫りになるのは、当然、「家か、家族か」という問題だ。
人が漠然と「うち」と言う時、そのどちらをさしていると思う?
迷うことなく、「家族」と言い切れるか?
今住んでいるその家に、なんら思い残す事はないか?

そりゃあ、究極の選択をするなら、「家族」かもしれないけれど、単なる物質であるはずの「家」も、実は単なる建築物ではない。
もしかすると、「うち」というのは、住んでいる家と、そこにつまった「想い」と、住む人々全てをひっくるめたものなのではなかろうか。

それゆえ、ペット禁止のマンションでチーと暮らす事になってしまった山田家の人々は、夫婦げんかをしそうなくらいに、悩み抜くわけだ。


チーズスイートホーム (3)/こなみ かなた
2006年4月21日初版
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2007-09-25 14:04:20

『チーズスイートホーム (2) 』

テーマ:その他
自分と同種の動物と一緒に育たず、最初から人間だけの家庭に入ったペットは、自分も人間だと思う……という話は、聞いた事がある。

はやい話が、「みにくいアヒルの子」状態というわけで、それは確かに、あり得る事だろう。

ゆえに、チーもまた、お父さんやお母さんやヨウヘイと、同じ生き物であると信じているふしがある。
猫と人間という区別は、ついていないのだ。

そのチーの前に、本巻では、おとなの猫が出現する!
黒くてでかくてふてぶてしく、マンションのお尋ね者になっている、通称ヒグマ猫。
「彼」なのか「彼女」なのかすらわからないこの猫は、チーを猫かわいがりするわけではないが、猫と人間のかかわりというものを含め、「猫の基本」をチーに教えてくれる。

ヒグマ猫が、人間なんて信用しちゃだめなんだ、と教えておきつつ、しかし「ご飯を食べに帰る(もちろん、飼い主である人間のところへ)」とあっさり言うのは、一見、ダブルスタンダードであるように見えるが、実は大切な事だ。
人間と猫は、しょせん、種の違う生き物なのだから、そこは人間も猫も、心得ておかなくてはならない。
しかし、その別をこえて、チーと山田家の人々は、「家族」である、ということを、チーは学ぶ。
まあ……子猫のことだし、「学びつつある」のが正確なところだろうが。


チーズスイートホーム (2) (モーニングKCDX (2050))/こなみ かなた
2005年8月23日初版
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2007-09-25 10:53:27

『チーズスイートホーム (1) 』

テーマ:その他
子供は、はぐれやすい。
聖書にも迷える仔羊の話が書いてあるかと思えば、
デパートや遊園地に迷子のお知らせはつきもので、
だからお母さんは子供の手をはなすなと言いたいわけだが(危ないですからほんとに)、
いちどに多数の子猫を産むお母さん猫は手のつなぎようもなく、
かくして、子猫は、お母さんからはぐれてしまったり、するということだ。

高校の頃だったか、公園のかなたからまっしぐらに走ってきて、私の肩にかけのぼり、必死に鳴いていた子猫を思い出す。
かわいい茶虎だった。
飼えなくてごめんよ><

さて、これは「チー」という名前の(そういう名前に、なしくずしになってしまった)、子猫の物語だ。
チーはこれまたみごとに、親猫とはぐれてしまい、幸運にも、小さい子を含む3人家族と遭遇したのだ。
ところが、なんとその家族が住むマンションは、ペット禁止だったのだった!

若いお父さんお母さん、そしてちびっこのヨウヘイからなるこの家族、
チーをかくまいつつ、まずはなんとかもらい手を探そうと苦労する。
一方のチーは、まだほんとにちっちゃい子猫で、家族が最初に苦労するのも、もらい手探しとは別に、チーのトイレなんだな。
これが、いかにも「あー、あるある」と室内でペットを飼った事のある人がうなずきそうなシチュエーション。

……微笑ましい<今、ペットを飼っていないから言えることか!

ともかくも、ヨウヘイとチーは、がんばってトイレをおぼえるのであった。

それにしても、この作品、全ページ、カラーなのだよ。
連載→単行本化、というプロセスを考えても、なかなか凄いことだ。
色彩も目にやさしく、休日向きのコミックスと言える。
もっとも、この1巻は、「おうち」を探すチーが、なんともいえず……ほだされちゃいそうになるのだが。


チーズスイートホーム (1) (モーニングKCDX (1943))/こなみ かなた
2004年11月22日初版
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2007-09-24 20:18:09

『ブラックペアン1988』 チーム・バチスタの栄光さかのぼること……

テーマ:ミステリ
『ジェネラル・ルージュ~』の刊行からさほど時をおかずして、はやくも、海堂尊の最新作が上梓された。

『ブラックペアン1988』。
Amazonの表紙画像は腰帯を写していないが、表紙と同色の黒い帯には、
「黒い器具の謎」とか、
「驚愕手術の結末!」
というキャッチコピーが並んでいる。

装幀も、『チーム・バチスタ~』などと同じコンセプトだし、今までに4作上梓されたことになる海堂作品、いずれも1680円。
しかし……。
『チーム・バチスタ~』に始まるシリーズの本筋が宝島社から出ており、そのサブエピソードである『螺鈿迷宮』が角川からであるのに続き、本作は講談社から。
物語の位置づけとしてはどうかというと、本筋で主役をはる田口らの時代から、20年をさかのぼっているのだ。

高階院長は新任の講師であり、
藤原看護師は現役バリバリの師長(いや、当時の言い方では、まだ「婦長」)であり、
器械出しの名手と言われた花房看護師もまだまだ新米だし、
グチ外来の田口はじめ、島津や、ジェネラル速水の三人組は、なんと学部の学生。

いやあ、こういうのって、最初から読んできた読者にはなんかすごいお得な感じがする一方、
本作から手にとって読み始めた人がいるとしても、それは全然、問題にならないだろう、と思われる。
本作を先に読み、後で『チーム・バチスタ~』を読んでも、
「ああ、あの人が20年後にこうなっているわけか」
と納得するだろう。

但し、本作に限り、殺人はひとつもない。
ないのだが、しかし、立派にミステリなのだ。
謎はどこにあるのかというと、たまに大きなニュースネタになる、
「手術した時、体内になにか置き忘れてきちゃった?」
という、あれだ。
しかしそれは、本当に単なる置き忘れなのか。
それが、本作の謎の中心であり、何人もの人生を狂わせるもととなる。

実にぞくぞくする話だが、一方、現役の勤務医を続けているという作者は、冒頭近くでこのように述べている。
「一九八八年当時、医学界では、現在ほど多くの知識が集積されていたわけではなかった。だが今振り返ると、そこには現在の医療問題の全ての萌芽が見られる。」(本書 序章 p7)
小説であるから、実際に、なにが今最も大きな医療問題であり、それをどうすべきなのかというような事は、述べられていないが、読者は、この物語を読み進むうちに、漠然と(あるいは明確に)、作者が言いたい事を受け止めているのではなかろうか。
まあ、その内容も、読者によって、千差万別であるかもしれないが。

そしてまた、「現在の医療問題」というその示唆がほんの2行、行われているだけで、物語全体のスリリング度が、いやましになっているのだ。
なぜってね、医療問題というのは、今、とてもトレンドだろう。
ゆえに、その示唆があり、かつ明確に解答や提案が示されていないだけに、
この人のこの行動?
いや、こちらの人のこんな考え?
医師や看護師にまつわるこの問題?
と、疑問は無数にわき起こり、さながら物語の内部は、「医療問題」の万華鏡となっていくからね。
(いかにも「ありそうなこと」が断片的に、連続しながらちりばめられていくところなどは、ほんと、万華鏡と言うしかない)。


ブラックペアン1988/海堂 尊
講談社
2007年9月20日初版
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2007-09-23 20:22:54

『交趾!』〈古着屋総兵衛影始末10〉

テーマ:歴史・時代小説
交趾、またまたふりがなが必要なタイトルで、実際、「こうち」とかなが振ってあるのだが、これがなにかといえば、現在のヴェトナムの事、なのだな。
前巻のラスト、カディス号と海戦を行い、双方傷付いた後に、大黒丸はなんと半年も、無人島で船の修理をする事になる。

このへん、とうのたった『十五少年漂流記』っぽいなあ、と思ったが、実際、作者のあとがきによれば、そのイメージが執筆中にあったようだ。
いいね~。
大海原、海、無人島!
……燃える。

もっとも、無人島でのサヴァイヴァルが克明に書かれているというほどではなく、彼らが流れ着いた島の、生き抜くにあたっての都合の良さも、ヴェルヌの縮小版程度。
なぜなら、本筋はタイトルにあるとおり、ヴェトナムにあるからなのだ。

もともと、総兵衛がめざしたのは、異国との直接交易で、幕府の禁令には背くものの、実際、自分の船で買い付けに行くのが一番っちゃ一番。
ここへもってきて、総兵衛は、鎖国以前の冒険商人が復活したかのような活躍をみせるというわけだ。
しかし、ここで、かつての日本人町があった国の中で、最も有名なシャム(タイ)ではなく、ヴェトナムを持ってきたのは、なかなか面白いと思う。

時代背景としても、日本人の子孫が、その言葉などを伝えたまま残っていたとしても、ぎりぎりおかしくない……と思うし(まあ、きついっちゃきついけれど)、なんといっても、物語として、途方もない夢と、リアリズムの間、ぎりぎりセーフのところを歩いている感じで、実に面白い。
めちゃめちゃ荒唐無稽でもなく、ガチガチのリアリズムでもない、いいバランス感覚で書かれていると思うのだ。

故国日本では、初子を出産したばかりの美雪が、大番頭笠蔵以下の鳶沢一族と必死にがんばっているところ、総兵衛ばかりが、ある意味、いい目をみていると言えなくもないが……(笑)。
まあ、旅先では、物語として、ロマンスのひとつもあっていいかも。

さらに、帰国の途についた総兵衛と大黒丸の面々は、琉球に立ち寄り、琉球王と交誼を結ぶ事になる。
その際、琉球を支配する薩摩の出先機関ともめたりもして、このへん、伏線になるかととれなくもなし。
実際、総兵衛の考え通り、今後鳶沢一族が琉球王と手を組んで、どんどん海外へ出て行くようになるならば、薩摩との確執は必至。

とはいえ、本巻は、大黒丸難破に続く無人島生活、ヴェトナム、琉球……と、海洋冒険もののカラー一色で、大いに盛り上がっている。


交趾!―古着屋総兵衛影始末 (徳間文庫)/佐伯 泰英
2004年6月15日初版
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