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2007-07-31 23:53:39

『荒海ノ津』〈居眠り磐音江戸双紙22〉

テーマ:歴史・時代小説
ようやく関前を出発した磐音とおこんは、招かれるまま、博多へ!
この博多行きが、磐音たちの将来にどう影響してくるかは全くわからないので、現時点では、脇エピソードみたいな扱いになろうかと思うが、
博多/福岡といえば、「黒田節」もとい「黒田武士」なのだそうだ。
名槍「日本号」も出てくるあたり、読者サービス満点(なのか?)。

尚武の気風があるところって話で、商人に招かれて行ったわりには、藩の道場で藩士たちと意気投合しちゃう磐音だが、そこはそれ磐音のことなので、今回も厄介事に巻き込まれてしまう。

背景に、この藩特有の事情があるものの、身分違いの恋にかかわるトラブルという事で、事件そのものは、今後の磐音に影響はなさそうだが、磐音たちを博多に招いた商人一家は、今津屋とのつながりもあり、今後再登場してくるだろうと予想される。
あるいは、この藩の若手達も、また顔を出してくるのかも。

さて、一方、磐音たちから視点をずらして、江戸での様子も語られる。
今津屋の再婚からこのかた、春めいていたシリーズだが、最後のメインキャラクターと言うべき、柳次郎にもようやく良い事が巡ってくるようだ。
もっとも、それが、御伽噺的にすばらしくめでたいとは到底言えないあたり、柳次郎らしいのだが(笑)。

ところで、佐々木道場の後継になる事が決まった頃、磐音は師父から、活人剣を使えるようになれ、と諭されるのな。
そのためか、磐音は、真剣ではなく、木刀やそれに準じたもので真剣に立ち向かう事が、次第に多くなってきた。
勿論、実際にやろうとすれば危険このうえないし、当然、相当の技量が必要なわけだが、普通のチャンバラより、これが格段に面白いのだ(笑)。
もちろん、スリリングな度合いも高い。
シリーズの中、変化をつけるのに、面白い方法だと思う。


荒海ノ津/佐伯 泰英
双葉文庫
2007年4月20日初版
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2007-07-30 20:58:02

『鯖雲ノ城』〈居眠り磐音江戸双紙21〉

テーマ:歴史・時代小説
磐音一行が関前に到着したのは、ちょうど萩の咲く季節ということで、坂崎家の菩提寺は、崖の向こうに海を臨むところにあり、石段を埋め尽くすように、白い萩が満開なのだ。
佐伯康英は、風情のある情景を描く作家だと思うが、作者の出身地である九州が舞台となる時は、ことさら、それが情緒豊かになるようだ。

夏が終わり、季節が秋に移り変わろうという、日本の四季の中でも、桜の頃と並んで、過ごしやすく美しい季節に、磐音とおこんは関前の地を踏んだのだ。

この旅行、坂崎家のご先祖に、養子縁組のこと、そしておこんとの祝言を報告するためのもので、そのためか、風景を含め、全体に華やいだ、めでたい情景が連なる。また、いろいろな事情があるとはいえ、嫁姑の確執なども一切ない。
本シリーズ、主人公の身辺に、その手のどろどろがない事は、大変爽やかで気持ちが良い。実を言えば、いささか鼻につくくらい、爽やかなのだが……(笑)。

とはいえ、磐音の身辺のこと、関前藩にはまたまた頭の黒い鼠が徘徊し、藩の財政を窮地に陥れようとしており、磐音は否応もなく、その事件をおさめるために立ち働くこととなる。まあ、いくら、もう関前半紙ではないし、坂崎家は継がないのだといったところで、磐音が坂崎家の血を引くことにかわりはなく、実の父が命を狙われる立場であれば、動かざるを得ないのは、当然の話だろう。(これがあるから、前述の爽やかさとうまくバランスが取れているのだ)。

ともあれ、磐音はおこんを伴い、シリーズの冒頭で喪った友らに、今までの一切を報告する。
巻数は21。
これをもって、磐音とおこんは、まさしく、「新たな一歩」を踏み出す事になりそうだ。


鯖雲ノ城/佐伯 泰英
双葉文庫
2007年1月20日初版
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2007-07-29 19:37:24

『野分ノ灘』《〈居眠り磐音江戸双紙20〉

テーマ:歴史・時代小説
磐音、いよいよおこんを連れて関前に里帰りをする!
物語の中の二人も感無量だろうが、読者も感無量になるほど、この二人の関係は、長い時間をかけて結ばれるというものだった。
作中言及されているところによると、出会ってからここまで、6年の歳月が流れているのだ。
いくら、現代よりゆっくりした時間の流れだっただろうとはいっても、長い(笑)。

とはいえ、それを穴埋めするかのように、この二人はほんと、誰にもかれにも祝福されている。関前の殿様にもお目にかかるし、そのお声掛かりで、御用船の特別席で里帰りするんだからスゴイ。

しかし、今でいう8月か9月頃というと、台風の季節まっさかり、ゆえにこのタイトルとなるわけだ。
そういえば、関前藩の物産を積み込んだ最初の船も、嵐で難儀をしたのだが、磐音の里帰りも嵐で難儀をするという事だね。
おまけに、そういった天災だけでなく、時の権力者という「敵」が、行く先々に人災を送りこんで来たりもするし、国元に帰ってみればみたで、そこにも腹黒いやつがいるという仕掛け。

磐音の身の回りの誰もが言う事だが、ご本人が春風駘蕩の人柄であるにもかかわらず、一緒にいると、ほんと退屈しなさそうだ。

また、本巻に限っては、江戸出立から関前到着まで、全篇を海の旅が占めているので、いつもとは一風変わっているだけでなく、時代小説としてもちと異色な一編になっていると思う。
日本の商人が海に乗り出したり、倭寇が活躍していた時代の小説はそれなりにあるけれども、江戸時代の千石船による旅行の話って、あんまり聞かないからなあ。

倭寇ではないが、瀬戸内では海賊なども出現し、アクションシーンもいつもとはひと味違う。


野分ノ灘―書き下ろし長編時代小説/佐伯 泰英
双葉文庫
2007年1月20日初版
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2007-07-28 22:00:33

『梅雨ノ蝶』〈居眠り磐音江戸双紙19〉

テーマ:歴史・時代小説
本巻では、改築成った佐々木道場改め尚武館佐々木道場のこけら落としが行われる事となる。
これが、江戸中からすぐれた剣術家を集めて勝ち抜き戦を行うという大がかりなものだ。
当然、道場の代表選手の一人として磐音が期待されるわけだが、それを前に、ある事件のため、どうしても出場はできない、それどころか一時は命にかかわるというような怪我をしてしまうのだ。

しかし、思えばこれまでも、磐音はいろいろ重要な行事に、やむを得ない事情で参加する事ができない、というケースが続いている。
たとえば、お艶の法事とか。

もちろん、全てに出席できなかったというのではないが、磐音は、なかなか表舞台に立てないという星巡りなのではないか(笑)。
せっかく父親が国家老になったのに、坂崎家を継ぐ事ができないなんてのもそのひとつだろう。

また、今回に関していうと、大試合そのものは、磐音にとって、非常にラッキーな結末に終わるので、「損して得取れ」という星巡りでも、あるのかもしれない。

ところで、あの将軍家(そして将軍家後継)日光参拝あたりから、明確に田沼意次が、磐音に対する「ラスボス」として顕れてきたのだが、そもそも、磐音が今津屋と関わった事件が、逆に、田沼政治を応援する立場のものであった事を考えると、ちと感慨深い。
作者のスタンスも、その前後からぐっとエンタテイメント性を高めてきたようにも思われる。

まあ、読んで楽しめればそれで良いのだけどな。


梅雨ノ蝶―居眠り磐音江戸双紙 (双葉文庫)/佐伯 泰英
双葉文庫
2006年9月20日初版
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2007-07-27 20:30:02

『捨雛ノ川』〈居眠り磐音江戸双紙18〉

テーマ:歴史・時代小説
今津屋の再婚からこのかた、本シリーズでは、ほんとーに、次々と「春」が生まれている。いささか、いきすぎじゃあないのか、とすら思える。

そう、今回もだ!(笑)。

じゃあ、今回春を迎えたのは一体誰かというと、佐々木道場の師範、鐘四郎だ。
常連キャラクターの中でも、最も無骨で磊落な部類に入りそうな、そんな人物が、まさかの恋に陥る。
それだけでなく、鐘四郎の初恋の人まで、登場してしまうのだ。

このシリーズのこととて、悲劇にはならないのだが、それでも、珍しくもほろ苦いエピソードがはさまれる。

とはいえ、そういう「春」続きに食傷しなくてすむのも、それ以外の要素がいろいろあるからで、その一つは、佐々木道場の改築だ。
改築の間は、近くの藩邸の道場に仮住まいするなど、楽しい枝葉があるのだが、なんと、改築中、地下からいろいろなものを詰め込んだ甕が出土するという事件が起こるのだ。
どれも、江戸開府より前に埋められたのではないかという古さのため、相当に傷んでいるのだが、ひどく錆び付いてしまっている刀などは、そのままの状態でも、形の優美さがうかがえるなどと描かれていて、手入れされた後の事が期待される(笑)。
もちろん、この刀は、磐音が交友を持つ事になった名研ぎ師、鵜飼老人に預けられる事となるわけ。

さらにまた、磐音の深川生活をいろどってきた、年少の者たちのうち、おそめがいよいよ、縫箔職人となるために、親方のもとに弟子入りする事になる。
しかし、今津屋に一年間つとめて、奥向きでは大変気に入られていたおそめのこと。
おこんもじきに今津屋をやめなくてはならないし、さあ、あとをどうしようという話に、おそめの妹がかわって奉公にあがってはどうかと水が向けられる。
この話を巡って、おそめの幼なじみである幸吉もまじえ、貧しくとも、まっすぐ、力強く生きる子供の姿という、心温まるエピソードが、物語をなごませてくれるのだ。

最後は、流し雛で子供達が、心機一転、新たな道を歩み出そうとするのだけれども、「それまでのけがれを祓う」という意味のある流し雛、実は、物語の中心人物たち、全員の節目となっているのかもしれない。


捨雛ノ川―居眠り磐音江戸双紙/佐伯 泰英
双葉文庫
2006年6月20日初版
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2007-07-26 20:49:35

『紅椿ノ谷』〈居眠り磐音江戸双紙17〉

テーマ:歴史・時代小説
今津屋に、花嫁が無事輿入れし、磐音とおこんも、いわば婚約中、桜子姫は桂川家へ嫁ぐ予感、いろいろと春めいている物語だが、今津屋の内儀となったお佐紀が梅なら、おこんは……?(桜子姫はやっぱ桜だろう?)

残る春の名花は、桃が思い浮かぶけれども、おこんにはちょっとあわない。
そこで登場したのが、この椿だ。
お佐紀登場の巻のように梅尽くしではないが、本巻の椿も実にいい味を出している。

さて、今までにも何度か、このシリーズは確信犯的にテレビ時代劇的な要素を入れているのではないか、と書いてきた。
それと同じくらい、マニアックに江戸な部分もあると思うのだが、ただそれだけではなく、現代人の読者が入りやすいような工夫がいろいろなところに見られる。

今回は、それが、おこんの「気の病」だ。
お艶の三回忌、お佐紀の輿入れと、今津屋にとっては大きな行事が続いたうえに、いよいよ、奥を取り仕切ってきたおこんの大役も終わりに近づくかという時、おこん自身も気づかぬままに、「気鬱」の状態になっていった、というのだ。
(現代風に言うならば、軽い鬱病になった、ということのようだ)。

そこで、磐音の友である二人の医師が、おこんに転地療養を勧め、
江戸時代としては非情にレアな、婚前旅行というかハネムーンというか、そんなシチュエーションが作られるのだ。

その途中、旅慣れぬ、そして気鬱であるおこんを、温かくいたわる磐音というのが、読者の心情に、非常に訴えてくるキャラクターだと思うのだが、どうだろう。

また、それを経て、雪の降る三国峠や、山間に湧き出ずる湯の情景、雪の中の紅椿と、舞台効果をいやがうえにも盛り上げて、おこんと磐音はあらためて、夫婦の契りをかわすのだ。
時代劇として、なんともロマンティックだ。

もちろん、そういう物語の流れの中でも、磐音の剣が鞘におさまったきりという事はないわけだが、今回は、大きく、ロマンティック度が突出した巻であるのは間違いない。


紅椿ノ谷―居眠り磐音江戸双紙/佐伯 泰英
双葉文庫
2006年3月20日初版
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2007-07-25 20:16:33

『螢火ノ宿』〈居眠り磐音江戸双紙16〉

テーマ:歴史・時代小説
本巻のあたりから、坂崎磐音の身辺は、大きく動く事となる。
なぜなら、本巻は、「白鶴太夫の身請け」が物語の中心だからだ。

思えば、主人公磐音が江戸の暮らしを始める事になった原因は、関前藩における大がかりな汚職事件であり、その際、当時の国家老一派の陰謀で、磐音は二人の親友とその妻を喪い、許嫁小林奈緒を遊里に奪われてしまう結果を招いたのだ。

もちろん、その小林奈緒が、白鶴というわけで、 結局は千金の価の太夫として高嶺の花となってしまった彼女を、市井から見守るという立場であったわけだな。
一方白鶴太夫こと奈緒の方も、遊女になったとしても誰かの囲い者になったりはしない、体は遊里の物であっても、心だけは磐音のもの、という態度を貫いていたはずなのだ。

しかし、いまやその白鶴太夫に身請けの話が決まった。
それも、江戸を遠く北に離れた遠国に、囲い者ではなく、裕福な町家の内儀として旅立つのだという。

ここで、奈緒と磐音の儚い恋物語は、双方の側から終わりを告げ、二人とも、ほんとうに別々の道を歩み出す事になるわけだ。

もちろん、吉原で全盛を誇る白鶴太夫であるから、この身請け話にもトラブルがつきまとい、それを解決して彼女の身を守るという、もうそのためだけに、本巻では磐音が活躍する事になる。

何しろ、「これまでの磐音と決別する」一巻であるから、今までの巻のように、ちょこちょこといろいろな事件で話がつながったりはしない。
どこをどうとっても、ひとつながりの、ひとつのテーマのもとにまとまった話となっているのだ。
ある意味、磐音のシリーズでは、珍しいのかもしれない。
それだけ、シリーズの要となる巻とも言えるだろう。

もちろん、恋情緒も非情に豊かなのだが、剣戟の方も全く手抜きなく楽しめるのが、このシリーズの良いところ。
いやなんというか、ほんと、男女とも楽しめる物語(または、インドア派でもアウトドア派でも楽しめる)、と言おうか。

物語のラストは、しっとりとして味わい深い。


螢火ノ宿―居眠り磐音江戸双紙/佐伯 泰英
双葉文庫
2006年3月20日初版
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2007-07-24 22:30:53

『驟雨ノ町』〈居眠り磐音江戸双紙15〉

テーマ:歴史・時代小説
本巻の仕掛けは、主に2つ。
ひとつは、宮戸川の小僧となった幸吉の「家出」だ。
鰻取りの名人と言われた幸吉だが、どうも鰻割きの方はなかなかうまくいかず、今では先輩である鰻割き職人たちや、親方に叱られてばかり。
まだ十代半ばなのに、天狗の鼻をへし折られたわけで、ああ、たしかにな、これはつらいよなあ。
無断で宮戸川を出てしまうのだが、、ひょんなことから、それが単なる家出ではなく、30日の願掛けである事がわかるのだ。

まあ、本来は、寒い時期にやる習慣らしいのだが、それを真夏にやろうというのが、幸吉らしいといえば幸吉らしい。

常連とはいえ脇役の幸吉に、多感な年頃の少年像がうまく投影されているのだが、幸吉の事をあれこれ心配する幼なじみのおそめ、この二人の子供らしい純情が、主人公磐音の純情さとはまた全然違うカラーになっていて、引き立て合っているように思う。

もうひとつの仕掛けは、磐音ら三人組が、南町奉行所の依頼をうけて、同心一郎太とともに、甲斐の富士川あたりまで、咎人を引き取りに行く事になるという話だ。
今で言うなら「怪盗」とも言うべきその老人の身柄をめぐって、二つに割れた一味が争い合う事になるが、磐音らも、その渦中に巻き込まれてしまうのだ。
こちらは、心情の動きより、アクション主体であって、とくに荒れた富士川を舞台にしての、川船チェイスは見物。
クライマックスもはなばなしいし、なかなか読ませてくれる。

盗賊一味のさばき方も、なかなか乙だ。


驟雨ノ町―居眠り磐音江戸双紙/佐伯 泰英
双葉文庫
2005年11月20日初版
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2007-07-23 21:51:23

『夏燕ノ道』〈居眠り磐音江戸双紙14〉

テーマ:歴史・時代小説
浪人者を別として、日本中の武家が上から下まで大騒ぎとなる、将軍家の日光参拝。
それがようやく実施される事になったのだが、磐音はなんとも面白い立場に立つ事となる。
元、九州の小藩の家臣でありながら、浪人として両替商の「後見」であるというその身で、「今津屋(町人)側の者」として随行する事を求められる。
そのため、幕臣でもなければ町人のなりをするでもなく、かといって浪人のままでもまずいということで、勘定奉行の用人という臨時の肩書きを得るのだ。

これだけでも、なんか微妙~な立場なので、いろいろ面白い事が起こりそうなのに、
なんと本来は江戸でお城の留守を守らなければならない、将軍家世嗣家基が、微行で日光に行く事になるし、
しかもそれを田沼一派が狙っている!(おーっ)

というわけで、今津屋の後見(日光出張)だけでなく、磐音は、微行の若様を護る役目まで負わされる事になるのだ。
また、そのために、将軍家に使える鷹匠やら、
佐々木道場の面々やら、
謎の忍者(っぽい男)は出てくるは……。

テレビの時代劇で、おしのび道中ものってあるだろう。(一番有名なのは水戸黄門だね)。
たいてい、主従で身をやつしていて、さらに影からガードしたり情報活動にあたったりする忍者がサポートにあたってて、
かつ、行く先々で民百姓を苦しめる悪いやつをこらしめたりとかするよな?
そういうエンタテイメントな要素が、本巻にもたくさん詰まっている。


夏燕ノ道―居眠り磐音江戸双紙/佐伯 泰英
双葉文庫
2005年9月20日初版
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2007-07-22 13:30:19

『残花ノ庭』〈居眠り磐音江戸双紙13〉

テーマ:歴史・時代小説
磐音が浪人として江戸に出てきてから、はや数年が過ぎ、深川の日常はそのままのようでいて、やはり少しずつ変わっていくものがある。
たとえば、磐音の「深川暮らしの師匠」にあたる鰻取りの孝吉は、宮戸川に小僧として奉公する事になったし、このたびは、孝吉の幼なじみ、おそめに奉公の話が持ち上がる。

といっても、女中奉公や茶屋奉公など、かかっている口に乗るのではなく、
しっかり者のおそめが、子供で、しかも女ながら、「手に職をつければ一生困らない」と考えているところは微笑ましく、たくましい。
また、彼女が願っている、浴衣染めや縫箔(刺繍)の職人が、この時代男の世界である事も、同時にかいま見えるのだ。
あー、そういや、西洋や中近東でも、仕立て屋って男の仕事だよなあ。
日本の江戸時代でも、そういった外国と同様、縫子や、ちょっとした仕立物の内職を、女性がする事はあっても、「職人」となると、いきなり男の世界になってしまうものらしい。
とはいえ、今津屋のおこんの口添えもあって、おそめが縫箔の親方に才能を認められるところは、なかなかステキだ。
また、そこで、
「体がもっと出来てから奉公する方が良い」
という親方の言葉も含蓄がある。

しかし、おそめの事件は、本巻のイベントとしては、二番目だろうと思う。
一番は、やはり、阿蘭陀商館のカピタンと、ツェンベリー医師が江戸を訪れるところだろう。
時期はずれの将軍家拝謁は、将軍家のお姫様が、重篤の麻疹にかかっているのを診察するという企てもあり、ここに、またしても、蘭医を敵視する漢方医たちの思惑がちらついて(いや、露骨にたちふさがって)、磐音もいろいろと、苦労をする事になるわけだ。

途中、視点が来日しているカピタンたちに移る事があり、それは面白いには面白いとしても、やや違和感もあるのだが、江戸の日本情緒と、カピタンの異国情緒がほどよく混じり合い、一風変わった一巻となっているのは、シリーズものの中で、目新しく、良いものだと思う。

さて、この蘭医と漢方医の対決は、背景に次期将軍を巡る、現将軍位と、田沼家の確執を置いている。
そのあたりは、次の巻で華々しく展開される事になるが、近年、人物像が見直されつつある田沼意次を、あえて獣リア通りの悪役にもってくるあたり、狙っているなあ、という気がする。
この事だけではないのだが、リアルな江戸時代を小説の中に描くより、あえてテレビ時代劇風の要素をいろいろ背景などに持ち込む事で、読者がより親しみやすいエンタテイメント世界を構築しようとしているように思われるからだ。

まあ、田沼意次の人物像が実際にどのようなものだったのかはこれからも研究が待たれるのだろうが、はらの太い人物だったのは確かであるようだから、ここで「昔ながらの悪役」を振られても、田沼意次とて、笑って見ているように思われる(笑)。


残花ノ庭―居眠り磐音江戸双紙/佐伯 泰英
双葉文庫
2005年6月20日初版
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