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2007-06-30 22:03:39

『竜の歌』〈パーンの竜騎士4〉

テーマ:海外SF・ファンタジイ
まずは、懐かしい画像をご覧あれ。
メノリですよ。
ロビントン師の愛弟子、メノリ。
新刊『パーンの竪琴師』で、またしてもメノリの物語を読みたくなったというわけだ。
なにしろ、両方とも、竪琴師ノ工舎の話だからな。

そして、『~竪琴師』の方に、次世代をになうはずの竪琴師がたくさん登場しているからには、当然、メノリの物語も再発見がいろいろ、あるわけだ。
といっても、メノリの物語(竪琴師ノ工舎三部作)の最初の巻は、まだ、工舎にたどりついていないんだけどね。

しかし、冒頭で、「おっ」というのがあった。
皆さん覚えておられますかね?
この物語、ペティロンの葬儀から始まるのだよ。

どうやら、ペティロンは、ロビントン師が竪琴師ノ長になった時、半円海ノ城砦に、望んで赴任した、という事になっているわけだが>『~竪琴師』のラスト
その城砦に、死ぬまでいたようなのだ。
晩年の頃の(唯一の?)弟子が、メノリという事になるわけなんだけど、再三、メノリの歌声がきれいだと繰り返される他、さりげなーく、城砦民の女の言葉で、ペティロンの晩年は、過去にこだわっていた、と語られていた。

ということは、ペティロンは、メノリに、メレランの姿を映し見ていたのかもしれない。
それに、メノリが、「一般の人にわかりやすい歌を作る才能がある」というところは、若き日の息子や、息子に対してしてしまった事を重ねてしまってたのかもなあ。
そしてまた、女であるから、竪琴師になれないとされているような(いや、男であっても、音楽にうつつをぬかすとは何事だ的な)半円海ノ城砦で、ペティロンがいかにメノリを慎重に扱ったかというのも、『~竪琴師』を読めばこそ、よけいに推察できる。


アン マキャフリイ, 小尾 芙佐, 小尾 芙佐
竜の歌
ハヤカワ文庫SF
1986年10月30日初版
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2007-06-29 21:08:21

『ローゼン メイデン (8) 』

テーマ:日本SF・ファンタジイ
いよいよ完結! なのだそうだ。
まあ、確かに、主人公のひきこもりには、それなりの回答が与えられ、それなりの展望も見え、 物語は「語り終えられた」と言っても良い。
少なくとも、区切りがつき、彼が当初かかえていた問題は、おおむね解決した。

しかし、薔薇乙女たちのアリス/ゲームはまだ決着がついておらず、
新たに登場した敵のような人形の正体も判然としていない。
それどころか、彼女らの戦いは、これからクライマックス、というところで物語が途切れている。

うーん、この状態で「完結!」と銘打たれてしまうと、濃厚にもやもやしたものを感じてしまうのだが(笑)。

まあそこは、いろいろと「大人の事情」があるのだと思われるが。
単行本のみ追いかける読者に対しては、ちと不親切ではないかと思う。

さて、主人公の方に話を戻すと、ジュンはそもそも、引きこもりの少年として登場した。
ゆえに、彼自身については、引きこもりではなくなり、不登校をやめる事が、問題解決なのは明らかだ。
しかも、その設定自体は、物語の本筋を支える「バックボーン」の役割しか持っていない。
(彼の不登校が物語のメインテーマというわけではない)。
だから、この問題は、
「ジュンが真紅たちとのつきあいを通じてだんだんと心を開き、学校に通う決意を固めました」
というシンプルなものでも、なんら問題はなかったと思う。

しかし、そこのところで、真紅や翠星石にとっては、
「絆をむすんだ人間が、成長(変化)してしまう事によって、自分たちが再びただの人形に戻ってしまうこと」
という問題が提起され、
人間と人形の絆とはほんとうはなんなのかという事を、再度問いかける事になるのだ。

また、ラプラスの魔が、いったい何を企んでいるのかも、見えてこない状態だ。

つか、
「さあ! 物語は第2部に続くよーっ」
という気まんまん、な終わり方なんだよなあ(笑)。

いや、だからさ。
「完結」って書くなって( ‥)/


PEACH-PIT
ローゼンメイデン 8 (8)
2007年6月24日初版
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2007-06-28 21:18:36

『竜と竪琴師』〈パーンの竜騎士10〉

テーマ:海外SF・ファンタジイ
5~6年前に、ペーパーバックで出たのをざっと読んでしまってたのだが、やはり日本語で読むのは良いだろうなあ、と待望していた訳がこのたび出た。
シリーズでも人気のキャラ、竪琴師ノ長、ロビントンの半生記である。
そこで歓声を上げている君!
……いくらでも歓声をあげたまえ。
読んで後悔する事は、絶対にないはずだ。

さて、若きレサを主人公とする三部作、及びメノリの三部作(竪琴師の工舎)を別とすれば、パーンのシリーズは、おおむね、1作1話であり、そこだけ独立して読んでも楽しめる作りとなっている。
本巻もそうなのだが、それでもやっぱり、もともとのパーンのシリーズ、とくにメノリの三部作が好きな人には、めちゃくちゃ嬉しい内容だ。
というのは、レサやメノリと、ロビントンとの、年の差を考えればわかる話で、レサが小娘だった時、すでに竪琴師ノ長だったロビントンなのだ。
当然、当のロビントンが若い頃というのは……。
今までシリーズで語られてきた時代より、ちょうど一世代前の話という事になるんだな。

たとえば、あのグロギ太守の若い頃なんて想像できますか。
(なんか、かっこいいんだぜ。信じられるか?)
メノリの師匠だったペティロン、彼はロビントンの父である事がわかってるのだが、父子の確執の大きさにもびっくりするだろう。
そしてもちろん、ロビントンが若ければ、メノリの時代に竪琴師として工舎で教えていたような、あの先生、この先生の若い頃も、た~っぷりと登場するぞ。
グロギ太守だけでなく、ショナガー師の若き日の姿にも、絶対びっくりするはずだ!

また、メノリから見たメノリの時代の竪琴師の工舎が、その一世代前を見る事で、ますます深く、理解できるようになる。
人間関係に深みが増しちゃうのだ。
今まで語られなかった人間関係も、ばしばしと登場するので、ある意味スリリングですら、ある。
えー、あのキャラが実は!
……なんてのが、山ほどあるのだぞ(ぼそ)。

いやもう、シリーズが好きであればあるほど、おいしい話だと思う(笑)。

さて、その中で、ひとつ面白い事があった。
それは、ペティロンが、メノリから見たドミックのように(いやそれ以上に)作曲コアな人、としつこいくらいに描写されているのだが、その中でぽつりと、
実はペティロンも良いバリトンの声なのだけど、独唱はしない。合唱ではバリトンの中で歌っている、というのがある。
どうやら、ペティロンは、自分の声が、独唱向きではない、と諦めたようなのだ。

ペティロンにも挫折の瞬間があったということで、そこが、今回語られる息子との確執にも影響していそうだし、
あるいは、後に、メノリを後押しした要素のひとつにもなっているようだが(勿論、彼女を後押しした主要素は別)、
マキャフリイのファンならば、もう一人の人物を連想しないわけには、いかないだろう。
シリーズは全く接点のない、別のものだが、そう、クリスタルシンガーのキラシャンドラだ。
彼女もまた、ソリストをめざしていたのに、「声に瑕があり、合唱のパートリーダーにしかなれないだろう」と冒頭で宣告されてしまうんだよな。
ペティロンの若い頃の話というのは、もちろん、まだ語られていないわけだけれど、なんか、キラと共通のとこがありそうな気がしている。


アン・マキャフリイ, 小尾 芙佐
竜と竪琴師
ハヤカワ文庫SF
2007年6月25日初版
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2007-06-27 22:33:04

『敵は海賊 正義の眼』

テーマ:日本SF・ファンタジイ
なんと、10年ぶりのシリーズ7作目、なのだそうだ。うおー!
しかし、相変わらずのアプロで、
相変わらずのラテルで、
相変わらずのヨウメイなのだった。

うん、雰囲気的には、まさしくそうだ。
しかし、内容はあちこち、微妙に、時代(書かれた時代/作品内での時間の流れ)を反映しているところもある。
どこがどうとは言えないほど、些末な枝葉の部分だが(笑)。

しかしそれが気にならないのは、今回、物語が、事件の発生したタイタンの警察官の目から、語られるからかもしれない。
広域宇宙警察から来ている実習生を指導するという役どころで、この人物と、当の実習生ペアが話の中心になっているのだが、その凸凹ぶりが、うまいこと「敵は海賊」世界にはまりながら、かつ新鮮なので、微妙な差異がそこに隠れてしまい、違和感なく読めるのだと思う。

もっとも、もうちょっとアプロに活躍してもらいたかったというのは、本音だけれどもな。



神林 長平
敵は海賊・正義の眼
ハヤカワ文庫JA
2007年6月25日初版
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2007-06-26 22:06:04

『雨ふりの本』

テーマ:その他
雨が降る。または、降りそうで降らない。
空気が湿っているというより、もう「濡れてる」。
梅雨の時って、そういう感じだ。
体はなんとなく重くてだるくなったり、どうも気分も調子も出ないな、なんて話がちらほら。
雨はきらい、と、皆がのたまう。

でもなあ、雨が降らないと、紫陽花はきれいに見えない。
ムラサキツユクサだって、なんとなく疲れたように見えてしまう。
雨が降れば、いきいきするのに。

雨は良いよ。
そりゃ毎日雨だと、うっとうしいかもしれないけど、雨には、やっぱり、雨の良さがある。
この本は、そんな雨の日を楽しく過ごす本だ。
雨の日にはこんな事を感じて、
雨の日にはこんな事をしてみてはどうかな?

提案というほどでもなく、まさしく「雑貨店」のように、そこに並べてみたような。
そういう感じ。
惜しむらくは(?)、内容がやや女性寄りに思えるのだが、もちろん、男でも楽しめる。


「十一月、空想雑貨店。」
雨ふりの本。
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2007-06-25 21:27:32

『王狼たちの戦旗 IV」〈氷と炎の歌2〉

テーマ:海外SF・ファンタジイ
開幕当初から、ひとつの島国の玉座をめぐる群像劇、あるいは戦記ファンタジイというような展開を見せてきた本作だが、ここにきて、がぜん、魔法的要素が強くなってきたように思われる。

もちろん、そういう要素が、はなからなかったというのではない。
「立ち上がって歩く死人」をはじめ、はるかなる時をへだて、卵から孵化を果たした竜のような存在もある。
そして、今度は、新来の一神教にかぶれたスタンニス王の向かうところ、敵のトップが謎の死を遂げるようになってしまったのだ。
その一方、デーナリスは「不死なるもの」と関わりを持とうとして、魔法的な試練に身を投じたり、
ブランは自分の狼に乗り移れるという事を自覚したり、
アリアの不思議な助け手であるジャゲンが、さらに不思議な力を見せたり。
今までとは段違いに、本巻は魔法的な要素オンパレードという感じだ。

並行して、政治的・軍事的な動きも、ちゃんとある。
今や複数乱立している王たち、そのひとりの故地が奪われたり、
強大な要塞として知られる城が落ちたり、
ある王に対して民衆が叛乱を始めようとしていたり。
いろいろと、目が離せない要素満載であると言えよう。

さて、今回は分冊4つめという事で、次で『王狼~』は完結するのだが、それぞれの物語に、ある程度の区切りはつくのだろうか?


ジョージ R.R.マーティン, 岡部 宏之
王狼たちの戦旗 4 (4)
ハヤカワ文庫SF
2007年6月25日初版
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2007-06-24 20:47:25

『さみしさの周波数』

テーマ:その他
ふぅん、ライトノベルにもこういう小説があったのか。
というのは、ライトノベルというと、SFやファンタジイよりな作品が、今まで目立っていたと思うからだ。

本書は、4つの短編から構成されており、なかにはややSF味を感じさせるものや、強いていうとホラーに分類されるだろうものを含むのだが、それでも、全体的にみると、むしろ若者向けの「文学」であり、うち3本の掲載誌が「The Sneaker」でさえなければ、普通の角川文庫に入っていても、なんらおかしくないんじゃないかな。ま、そう思う。

『未来予報 あした、晴れればいい』
あたかも車に乗っていて通り過ぎる看板をふと目にする事があるように、未来がかいま見えるのだと主張する友人を持った少年の話。
そんな、超能力のようなものを友達が持っているといえば、小学生ならかなり興奮するんじゃないかとか、そんなのはもう一昔か二昔も前の反応になっちゃうんだろうな。
主人公も、むしろクールに受け止めていて、そんな力、いんちきだと思っている。
でも、結局は、それにふりまわされてしまうのだが。
この「能力」のちょっとしたしかけは、うまく話に色をのせているが、勘所は、むしろ、「負け犬」としての主人公の半生だろう。
引きこもりまではいかなくとも、これといったゴールをどうしても見つける事ができず、流されるままに、就職も、進学もできず、フリーターでいる。そういう自分に嫌気もさしてしまう。
まさしく、現代の典型的なハイティーン像と言ったら大げさだろうか?
これまで、なにかと頑張りすぎてきた日本人に、ようやく最近、
「いや、そんながんばらなくてもいいんだよ」
という認識が生まれ始めてはいるが、若者にとって、やはりそれは、単なる足踏みにしかならない。たぶんな。
つか、足踏みをしてはいけないって事は、確かに、ないのだ。
しかし、また、一歩踏み出す事ができる勇気を持ちたいよなあ。
そういう話だ。
ラストの「感動」も、非常に現代的だと思う。

『手を握る泥棒の物語』
これまた、友人と一緒に始めた事業がうまくいかないばかりか、その友人にすら切られそうな男が主人公。
せっぱ詰まって、やらかそうとした盗みも、どうもうまくいかない。
全く、ツキに見放された状態なのだが、その追いつめられ加減というのも、たとえば、
「この○○万円がなければ、明日にも、いや今日にも首をくくらなければ……!」
というよなレベルではないんだな。
ある意味、ヌルいわけだ。
そういうところを含めて、主人公は非常に不器用で、アタマもなければ度胸もない。
しかし、その彼が、自分でも知らぬまに、ちょっとしたチャンスをものにしてしまうのだ。
負け犬がきっかけをつかむという点では、『未来予報』と同工異曲だが、こちらはややコミカルであり、どちらかというと、楽しい話。

『フィルムの中の少女』
本作は、ホラー系の特集によせて書かれたもののようだが、オーソドックスながら軽いホラー味と、少しのミステリ風味があるうえ、語り手のヒロイン(?)にちょっとした仕掛けもあり、仕掛けというより、そのミステリアスな雰囲気が楽しめるライトホラー。
怪談実話のツボもそれなりにおさえてあって、夏、ちょっとホラーっぽいのを読んでみようか、なんて場合には、かなりおすすめだと思う。

『失はれた物語』
本作のみは文庫書き下ろしだということだ。そのせいか、収録作の中で、もっとも「ハード」な作品であり、凄味もある。
そもそも、主人公が、物語を語り始めるのが、結婚して子供を得、しかし妻とは口論ばかりするようになったという、そういう頃合いの(いわば一人前の)男なのだ。
まあ、どこにでもいそうな、妻子ある勤め人。これから人生の盛りにさしかかろうかというところかな?
そんな「平凡な」人生が、一転してとんでもないものとなってしまう。
死んだ方がましだというような状況で展開される、不思議な夫婦の絆。
それが、「右の前腕にしか感覚が残っていない」、つまりそこしか周囲の情報をインプットできない状況の主人公の「視点」jから語られる。
盲目であったり、体のどこかが不自由であったりするキャラクターが主人公である物語は、数え上げればけっこうあるだろうけれども、ここまで過激な状況は、そうはないだろう。
むしろ『フィルムの中の~』より背筋が凍りつくような怖さを感じるし、文学の香り高い短編だと思う。


乙一
さみしさの周波数
スニーカー文庫
2003年1月1日初版
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2007-06-23 21:37:37

『もやしもん (5) 』

テーマ:自然と科学
今回の表紙はショッキングピンクで、ちょっと目が痛い。
しかし、オマケはオリゼーのストラップ(もちろん海洋堂)で、なかなかいい感じ。
そして中身は、まず前半が収穫祭なのだ。
なんとなく、東京にある某農大の学祭を思い出させる要素が、背景に濃厚なのだが……(実演3回/日の豚の丸焼きとか)。
うん、やっぱ、こういう祭は楽しいものだよな(笑)。
漫画の中であったとしても。

そして中盤から舞台はフランスへと移り、彼の地のワインやチーズやその他が登場してくるであろうと、かなりの期待をいだかせる。もっとも、今のところは観光レベルにとどまっているんだけどね。
まあ、渡仏したキャラの軍資金が底をついたようなので、次の巻あたりは、思い切り、醗酵サバイバルになるんじゃないかと、わくわくものなのであった。

そういや、
「この名前のチーズはフランスのこの地域だけ」とか、
フランスは発酵食品に対しての、商標管理が厳しいイメージgある。
ほら、シャンパンなども、シャンパーニュ地方でできた一定条件を満たすワインしか名乗れないわけだろ?
(それ以外のところでできたものは、味などに関係なく、スパークリングワインになっちゃうのな)。

こういったブランドというのは、お高くとまった悪いイメージもあるが、当然、そのブランドを支える技術力とプライドがあるはずなので、そこらへんの特徴をどう描いてくれるかが楽しみなのだ。



石川 雅之
もやしもん 5 おまけ付き―TALES OF AGRICULTURE (5)
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2007-06-22 22:24:39

『ゆらぎの森のシエラ』

テーマ:日本SF・ファンタジイ
森には、変容がつきものだ。
(民族によっては、森というより山だったり、荒野だったりするのかもしれないが)。
早い話、人を取り囲む手つかずの自然は、そこを支配するヌシがおり、彼らは変身するのだ。

神が動物や人間に変身する事もあり、
人間がなんらかの過程を経て、獣や一種の神に変身する事もある。

そこらへんをつきつめていくと、神(この場合、日本の風土的に「ヌシ」の方が良いかも)は天然自然の持つ「力」の体現であり、それは天然のあらゆるものと意識(?)を通じさせているものなのであり、人も最終的には、そこにとりこまれていくのだ、という物語だ。そういうことになりそうだ。

背景的にはSFだし、表面的にはファンタジイともとれるこの物語は、そのあたりの背骨が、なんともアジア的で、醜いものも美しいものも、ほんとに「清濁併せのむ」感じがする。また、不思議なことに、どのキャラクターも、醜い外見の時が、もっとも崇高に見えたりするのだ。
……不思議だ。

そこには、正邪のきっぱりした分割ラインなどはない。
なぜなら、自然は本来、正邪ではかれないものだろうから。
作者が女性だからといって、作品が女性的であるとは私は思わないが、「あらゆるものを受け容れていく」というアジア的、それもことに日本的な特徴は、そもそも「女性的」なものなのかもなあ。


菅 浩江
ゆらぎの森のシエラ
創元SF文庫
2007年3月23日初版
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2007-06-21 21:48:29

『娘に語る神話』〈密偵ファルコ〉

テーマ:ミステリ
ブリタニア、なのである。
ファルコとは因縁浅からぬこの属州、今のイギリスなわけなんだけども、去年かそこら。
CSのディスカバリーチャンネルで、女剣闘士の特集番組をやっていた。

そう、ローマの、有名なコロシアムがあるだろう。
映画の『グラディエーター』にも出てきたが、ローマ帝国は、辺境にまでも、コロシアムがあった。
もっとも、ローマのあの遺跡みたいに立派なわけではないけどな。
で、男だけでなく、女の剣闘士もいたのだということだ。
いろいろな理由で。

つか……。
現代でも、女子プロレスつぅものがあるよな。
女剣闘士の人気は、女子プロレスラーの人気と相通じるものがあったんじゃないかな。

奇しくも、その特集番組は、イギリスで女剣闘士の存在を語る遺跡(のようなもの)がみつかった、というオープニングだったと思うが、さてさて。

今回は、その女剣闘士(たち)が登場するのだ!
しかも、彼女らの頭をはっているのが、ファルコとペトロの古い知り合い。
若い時代の、な。
今や中流人となり、妻子もいるファルコが、若い頃の……うーん……恋人とか情婦というのとはちょっと違うようなんだが……ともかく、関係のあった、はすっぱな女性と巡り会う。
なんとも微妙で甘酸っぱいようなスパイシーなような。
ヘレナにも、一緒にいるとこ、見られちゃったりするしな(笑)。

一方のペトロは、ファルコの妹マイアと、相思相愛なんだかそうでないんだか、いまひとつ曖昧なまま、話が進む。
しかも、ペトロにはちょっと不幸な出来事も起こる。

こういった、ある意味ロマンチックな要素をまじえつつ、なんと今度は、「世界」の首都ローマからブリタニア(めいっぱい辺境)までのびてきた、悪の手とわたりあうという話なのだ!
今でいえばマフィアだな(なりたちは違うと思うが。どっちかっつうと、ヤクザ)。
組織的な犯罪集団が、ど田舎まで勢力をのばそうとしている、そういう状態なわけだ。
そこへ、おりしも王宮の事件から帰り道、ロンディニウム(後のロンドン)にいる、ヘレナの叔父のところへよったファルコ一行が、遭遇しちゃうというわけだ。

科学捜査法のない時代を舞台とするミステリに共通することだが、地道な聞き込み、それもなかなか成果が上がらないのから始まって、今回は地方政府がからむから、近代以前の常として「拷問官」なんてものまで登場。
犯罪者やその予備軍も、なかなかしたたかだ。

後半にはいると、もちろん、いきなり展開がスピードアップするだけでなく、田舎の闘技場で、次々、いろいろな勢力(なんと、サーカス用のクマまで!)が次々とあらわれてくんずほぐれつという、いささかスラップスティックなシーンもあるし、
ラストのラストでは、ペトロの命危うし! という、かなりクリフハンギングなシーンもあったりして、面白い。

また、ファルコとヘレナ(そして彼らの広義の家族)がおりなす、ファミリードラマも、実はこのシリーズの売りになっている、と思う。
いやあ、ほんとに、ヘレナは良い女だ。


リンゼイ・デイヴィス, 田代 泰子
娘に語る神話
光文社海外文庫
2007年6月20日初版
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