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2007-04-30 21:21:17

『サライ (17) 』

テーマ:日本SF・ファンタジイ
サライ 17 柴田昌弘の漫画は、長編になると、どうしても中盤から話が進みにくくなる。
まあ、だんだんとストーリーが壮大になって、その分、描写すべきものが増え、ストーリーの進展が遅くなるという事なのだと思うが、今回もまさにそれ。

ジスカールの惨劇がどのようにして起こったのか。
幼いサライは、どのように関わっていたのか。
……というのが、語られる。

この感触だと、
「ジスカールに行くまで」
「ジスカールの惨劇まで」
「ジスカールからの脱出」
で、だいたい3冊使うのかな。
……もっとかかったりして……(笑)。

ともあれ、サライの世界で、サライの道筋にかかわってくる「謎」は、結局全てジスカールに集約されていきそうだ。
それはそれで、いいのか悪いのか(笑)。


柴田 昌弘
サライ 17 (17)
2007年5月15日初版(発売中)
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2007-04-29 22:53:54

『ねこのばば』〈しゃばけ3〉

テーマ:歴史・時代小説
「ねこばば」という言葉がある。
こっそりとかすめとる、まあ、そういう意味だね。
私はこの言葉を、子供のころ、「猫の婆」だと思ってたんだけど、もちろんそうではなくて(笑)。
猫が、糞(ばば)をしたら、砂をかけてかくすところから来た言葉なのだという事を、後に知った。

ゆえに、このタイトルも、
「猫」と、「こっそりかすめとる」というところが、キモになっている。
舞台は、前に一太郎がまよけのお札を受けにいった上野のお寺なわけだが、寛朝和尚がなかなか喰えない人物で、面白い。

一方、(画像にはないが)腰帯のキャッチとなっている「於りんちゃんが殺される? わ、わ、若だんな、どうしましょう!!!」 は、『花かんざし』というタイトルの物語。
これは、ひょんな事から、素性のわからない迷子を若だんながひろってしまうという話なんだけど、謎解きの妙より、むしろ、若だんなの母親をはじめとする、主人公の周囲の人間もようが面白い。

さて、これはシリーズ3作目にあたるわけで、そうなると、良い意味でも、悪い意味でも、マンネリになるかどうか? このあたりが、読者に問われるところだろう。
相変わらずの、若だんなの病弱ぶり、それを過剰に心配する兄やたちのふるまいなどは、もう思い切り「マンネリ」になっているとして、それ以外の部分は、どうだろう?
人間関係的には、庶出の兄、松之助を加えて、少し複雑になり、より発展しているように見える。
謎といえば、となりの菓子屋の栄吉の、菓子作りの腕がどんどん悪くなるというのは、いったい何なのだろう。
これもなにかの伏線なのか(笑)。
あるいは、想像をこえた、「いきつくところまで」いくのか!(笑)
(え。興味をもつところが違う?)

話の仕掛け自体は、連作短編ということもあるのか、いろいろバラエティに富んでおり、一気に読んでも、1篇ずつ間をおいて読んでも、楽しめるものと思う。
そのうち、短編ではない、1冊まるごとの長編も読んでみたいものだ。


畠中 恵
ねこのばば
新潮文庫
2006年12月1日初版
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2007-04-28 23:11:47

『仮面ライダーSpirits (12) 』

テーマ:日本SF・ファンタジイ
仮面ライダー(昭和)というと、 言うまでもなく、ウルトラマンと双璧をなす人気特撮ドラマだったわけなのだが、単にウルトラマンが巨大、仮面ライダーが等身大というだけでなく、「人体改造を受けているため、二度と普通の人間に戻る事はできない」という悲劇的要素から来る、ストイックな面も、大きな特徴ではなかったかと思う。

それを具体的に象徴するのが、お約束の「特訓」。
ガオガイガーにおける勇者の条件ではないが、仮面ライダーにおける「特訓」は、本巻でおやっさんが言っているとおり、「改造された人体のスペックを超えた能力を身につけるため」という、ストレートに受け取るなら、非科学的とも思えるもの。

実際のところは、おそらく、「マニュアル通りの使い方では得られない」、アドバンス的テクニックを身につけるためという事なのだろうと思う。

今回は、とうとう、ゼクロスがその「特訓」を経験する事になる。

一方、すでに数々(?)の特訓を過去に経験しているV3は、変身ベルトの「限界を超えて」戦う。
その凄まじさは、ある意味残念なことだが、ゼクロスを遥かに上回る。
単にそれは、V3が「先輩」であるからなのか、それとも、やはり、実際に放送されたドラマの主人公として輝いていたからなのか。
「人気番組として放送された」という実績が、キャラクターへの思い入れをより深くし、またキャラ固有の悲劇性が内面からもそれを盛り上げるという事は、ありそうだ。

ところで、物語に含まれる悲劇性は、ウルトラマンシリーズにも、当然、存在する。
しかし、全体的な印象として、ウルトラマンの方が、それらは、淡々と語られているように思う。
ウルトラマン(兄弟)と協力して戦うのが、しばしば、「科学」に特化したチームであったりする事からも、より理知的なカラーが強いのかもしれない。

一方、仮面ライダーの方は、「悲しみを怒りにかえて」熱血ドラマへと持っていく傾向が強いのかもしれない。

双方人気シリーズでありながら、非常に違うカラーを持っているのは、比べてみて面白いと思う。


石ノ森 章太郎, 村枝 賢一
仮面ライダーSPIRITS 12 (12)
2007年4月23日初版
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2007-04-27 21:37:30

『神曲奏界ポリフォニカ ミッシング・ホワイト』

テーマ:日本SF・ファンタジイ
プリムローズお嬢様にお仕えするメイド、スノウことスノウドロップの夢にも思わぬ学院入学から、かれこれ1年。
ブランカとすったもんだしたり、
クラスでいじめを受けたり、
赤い竜につけ狙われたり、
ジョッシュ・ユウナギがストーキングされたり、
ミノティアスが二足歩行で踊ろうとしたり、
そりゃあいろいろな事があったわけだが、
学年末試験をもって、そのどれにも、一応の……「一段落」がついた。

そう、一段落なのだ。
けっして、決着がついたわけではない(笑)。
しかし、全員そろって無事に進級し、それと同時に、それぞれの「イベント」も、次の段階に進むのではないかと思われる。

今のところ、赤、黒、白、青とそろっているポリフォニカのうち、この白が、2番目にパワフルなんじゃないかと思うが、そのどちらも、主に女の子キャラ(人間、精霊を問わず)が、パワフルなのだというのは面白い。
今回はとくに、紫の髪の精霊リシュリー、だいばくは~つ!
そこに、コーティカルテも加わって、かの、おどろおどろしい赤い竜エリュトロンくんも、まったく形なしと言う他はない(いや、彼女らが出てくるまでは、すごーく善戦するというか、優勢なのだがねえ)。
リシュリーのはじけぶり、本シリーズでいうと、私はプリムローズお嬢様の次に、好きだ。

しかし、いかにエリュトロン戦が派手で凄かろうとも、その後に控えていた試験におけるプリムローズお嬢様が、い・ち・ば・ん、素晴らしく弾けている(笑)。
いやあ。
たまりません。
この、人間離れした(かつ、精霊ばなれした?)彼女の感覚。
思い切り脱力してしまうシーンだが、その気分にジャストミートしたイラストもついているというおまけつき。
いやあ。
たまりません。

しかし、ひとつだけつっこんでおくぞ。
今や有名な曲となってしまった、オルフの『カルミナ・ブラーナ』は、フル・オーケストラと、大合唱で演奏される曲だ。
単独の楽器で演奏してはいけない、とは言わないが、低音で迫力のある音を出す事も可能なコントラバスはまだしも、ハープシコードはなあ。
迫力出ませんから!
せめて、ピアノにしておけよ。
(ちなみに、ピアノとハープシコードは、一見似ているが、音を出す構造が全然違う)。

ほんと惜しむらくは、ポリフォニカに参加している作家って、全員、音楽のセンスに欠けるんだよなあ……。
それでも、面白いんだけどね(笑)。


高殿 円, きなこ ひろ
神曲奏界ポリフォニカ ミッシング・ホワイト 神曲奏界ポリフォニカ ホワイト シリーズ3
GA文庫
2007年4月30日初版(発売中)
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2007-04-26 22:44:47

『前巷説百物語』 又市、いかに御行となりしか

テーマ:歴史・時代小説
「御行奉為-」
思えば、巷説百物語は、各話とも、又市の、この言葉で閉じられたのであった。
又市らがもはやおおむねこの世の人ではなくなった(死んだり、この世と縁を切ったり)、『後巷説百物語』ですら、ラストにはその声が響いてきた。
しかし、又市は、生まれながらに、願人坊主だったのか?
……いやあ。
そうではないという事は、かなり最初から、判明している。
ならば、 願人坊主のかっこうをする前の又市は、どういう男だったのか。
ていうか、神も仏も信じていないくせに、なんだってああいうふりをするのか。

全ては、本作に語られているのだ。

そう、これは、又市がまだああいうかっこうをするようになる前の、若い時代の物語だ。
それは、じわりじわりと(あるいは、どんどんと?)、道をふみはずしていった又市という無宿人が、大阪まで落ちてゆき
(方角的には、東海道か中山道を上った事になるのだろうけど、気分的にはやはり「落ちた」という感じだろう)
そこで一文字狸の仁蔵の世話になり、しかもそこで、相棒の林蔵に巻き込まれ、大阪からも逃げるはめになって、結局江戸へ舞い戻ってきた。
そのあたりから、始まる。

要するに、本人の言葉を借りても、まだまだ「ケツが青い」のであり、
赤貧洗うが如しの小悪党なのであり、
渡世は何をしているのかというと、この当時は、双六売りをしていた。
風呂敷をかぶる風体で、双六を売り歩く、というやつ。
しかし、こいつは、ナマモノではないし、季節ものというのでもない。
つまるところ、全く売り急ぐ必要のないものなのであって、事実、又市は、ろくに双六なんか売って歩いちゃいない、というわけだ。
貧乏ひまなしどころか、これはもう、好きで貧乏しているようなものだ(笑)。

しかし、ひょんなことから、損料屋の裏仕事を手伝う事になっていく。
損料屋というのは、主に布団などを貸し出す、リースショップな。
しかし、裏では何をやっているかというと、(いや、ほとんどの損料屋は表の顔しか持っていないけど)、
だまされたとか、泣かされたとか、弱みを握られたとか、そういう不定型な「損」を買い取り、穴埋めをするという仕事をしてるんだな。

……わかりにくい?
たしかに。

まあ、よろず困り事を解決してあげようというような事だ。
ただし、敵討ちとか、仕返しとか、暗殺などをするわけではない。
あくまでも、困り事をなんとかしてやる、それだけ。

そういう意味では、盗賊でも刺客でもなく、「素人集団」だ。

このころから又市は、仕掛けを考えるのが得手だったようだが、人目を惑わすネタに、妖怪を使うようになったのは、どうもこの時の仲間内に、そういう事に詳しい学者崩れの老人がいたかららしい。
(そりゃあ、この当時は、まだ、百介が仲間になっているわけもなし)。

まあ、巷説本編とは一世代前の話になるので、そのまんま登場するキャラクターもいれば、そうでないものもいるし、名前だけ出てくる者もいる。
かわりに、本作にのみ登場するキャラクターもある。
そこらへんの重なり具合は、いかにも京極作品。

とはいえ、本作後半は、『巷説百物語』でもふれられた、稲荷坂の祇右衛門を相手にまわした事件が語られるのだ。
相当に厄介で大きな事件だった、と又市一党が振り返るのだから、いったいそれがどういうものだったのか、読者としては気になるところだったわけだが、とうとう、それは、今作で詳しく語られる事になるのだ。

そして、又市が「あの又市」になった経緯もな。

そう、まさしく、本作が百物語の始まりというわけで、巷説シリーズが好きな人は、必読と言ってよさそうだ。


京極 夏彦
前巷説百物語
2007年4月30日初版(発売中)
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2007-04-25 16:23:20

『あかちゃんのドレイ』

テーマ:その他


「子供が生まれたらドレイになるって育児書に書いといてよ!」
と、主人公であるドレイ=新米お母さん は、叫ぶのである。
うおお、そうなのかっ?

出産経験などなく(あるわけない)、
残念ながら身近に赤ん坊がいた経験すらないのだが、それでも、本作には抱腹絶倒してしまうのだ。

これはおそらく、
「赤ちゃんといえば、天使のようにかわいらしいもの」
という強力な先入観、乃至「常識」が、読者の側に、まずあるというのが、キモだ。

だからこそ、本作に登場する赤ちゃんの暴君ぶりに笑ってしまうという仕掛け。
もっとも、実際に子育てをしている現役のママは、ひそかに共感するところが多々あるようで、私の身辺でも、こっそりとうなずきながら読んでいるママが何人か、いるようだ。


大久保 ヒロミ
あかちゃんのドレイ。 1 (1)
あかちゃんのドレイ。 2 (2)
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2007-04-24 23:26:59

『海軍提督ホーンブロワー』〈海の男/ホーンブロワー10〉

テーマ:冒険・アクション
今や功成り名を遂げたホーンブロワーは、れっきとした提督であり、男爵位を持つ貴族でもあり、ジャマイカに本拠を置く司令官として赴任している。
しかし、ホーンブロワー自身が海尉や、一介の艦長だった時代のように、提督が戦列艦を旗艦とする時代はもはや終わり、ここでも、ホーンブロワーの旗艦となっているのは、クロリンダ号というフリゲート艦だ。
しかも、旗艦艦長は、いまひとつホーンブロワーの気に入らない様子。
(ああ、ブッシュがフランスで爆死さえしていなければ……!)
その分、旧友の息子であるジェラードが副官として勤務していたり、スペンドラブという、なかなか才気煥発かつ愛すべき好青年な秘書がいたり、ホーンブロワーが父親的愛情をそそぐ相手は、ちゃんと確保もされているのだ。
懐かしのブラウンが出てこないのは、やはり前巻ラストでの示唆通り、フランス娘と結婚してどこかで旅籠を開いているのかと思われるのだが……。
ずうっと後に、ホーンブロワー家の執事として登場する事を思えば、これは一時の不在にすぎないのかもしれない。

まあ、ブッシュとブラウンの不在はジェラードとスペンドラブが補ってくれ、しかもこれまた懐かしのリディア号でのように、バーバラがホーンブロワーと航海をともにする部分もあり、なかなか楽しめる一巻だ。

趣向としても、ホーンブロワーが海賊の残党に拉致されたり、乗客として乗った船が難破しそうになったり。
それまでの海軍生活では見られなかったイベントが次々に起きるのだ(笑)。

とくに、物語終盤に起こる、台風との遭遇と、それに続く難破の危機は、スリリングだ。
そういえば、こういうのって、海洋冒険小説の定番って気がするのだが、不思議と、「海軍もの」の場合には、発生しないよなあ。
軍艦が民間船と違って難船しない、なんてはずもなし。
ちょっと不思議な気がする(笑)。
今回の物語でも、ホーンブロワーが、マストに体をしばりつけなくてはならないような状態になるのは、後任の提督に司令官の地位を譲って、一私人として英国に帰る途中。もちろん、民間船なのだ!

ともあれ、本巻をもって、ホーンブロワーの物語は(短編を別にすると)幕を閉じる。
当代の英雄となったホーンブロワーであるが、それでも、一介の海軍軍人なわけで、人気が終われば司令官の任務を解かれるし、いつまでも海上生活をするわけにはいかないのだ、という、そこはかとない諦念。
読者としても、なんとはなしに、ほろりとしてしまう。


セシル・スコット・フォレスター, 高橋 泰邦
海軍提督ホーンブロワー
ハヤカワ文庫NV
1978年5月15日初版
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2007-04-23 22:02:58

『セーヌ湾の反乱』〈海の男/ホーンブロワー9〉

テーマ:冒険・アクション
本巻の原題は、"LORD HORNBLOWER" すなわちホーンブロワー卿であって、実際、ホーンブロワーは、とうとう、サー・ホレイショ(これは一代限りの身分)ではなく、ロード・ホーンブロワーと呼ばれる、世襲貴族に叙階される。

しかし、『セーヌ湾の反乱』という放題の方が、物語に関連して、趣は深いように思われる。

というのは、物語の端緒が、フランス沿岸で反乱を起こした艦への対応であり、
それだけではなく、ナポレオンのヨーロッパ支配がまさしく崩れんするそういう時代でもあり、
セーヌ湾(そしてフランス)は、幾つもの「反乱」で騒がしくなるのだ。

フランスというと、ホーンブロワーにとっては、因縁の深い土地になるわけで、『勇者の帰還』でホーンブロワー一行を援助したグラセー伯爵とその義理の娘マリーが、再登場する。
なんともほのぼのした、懐かしい情景も展開されるのだが、なにぶんにも、フランスそのものに、分厚く暗雲がたれこめているわけで、本巻では、ホーンブロワーにとって重要な人物が、なんとふたりも!
……命を落としてしまうのだ。

戦争は人が死ぬものであり、
わけても軍人は、命を賭してそれにたずさわるわけであり、
剣をとる者は剣によって倒れるなどと、聖書にも言われるわけだが……

ホーンブロワーの傷心は、実に大きなものである事が想像される。
また、美しい妻バーバラを伴って、マリーと再開したホーンブロワーは、可哀想な最初の妻、マリアの事も、思い出してしまう。これも、まだまだ、痛い古傷なわけだ。

ラストも、シリーズ中最もすっきりしない終わり方であり、物語としては面白いものの、どうも再読率が低くなってしまうようだ。


セシル・スコット・フォレスター, 高橋 泰邦
セーヌ湾の反乱 ハヤカワ文庫 NV 138 海の男ホーンブロワー・シリーズ 9
ハヤカワ文庫NV
1977年4月30日初版
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2007-04-22 20:17:14

『竜神飛翔 (5) 〈赤手〉軍出撃!』〈時の車輪〉

テーマ:海外SF・ファンタジイ
本シリーズにおける、闇王側エージェントの末路というのは、ややワンパターン気味なんじゃないかと感じる。 はっきりと、死ぬ、あるいは滅ぼされるというのではなくて、他者に奉仕する存在に貶められるという事だ。
今回も、ある人物が、まさしくそういう末路をたどる事になる。
まあ、職業に貴賤はない、なんていうのは現代社会的考えで、奴隷制やそれに類似したものが存在する、時の車輪世界では、それって、キャラにとってはともかく非常な屈辱という形であらわされるわけだね。

ところが、よくよく考えてみると、実は闇王に敵対する側のキャラも、しばしば、そういう目には、遭っているのだ。物語中の現時点でいうと、エグウェーンもそうだし、ファイールたちもそうだよなあ。
ただ、彼女らの場合は、屈辱に泣くのではなく、そこを乗り越えてなんとか事態を打開しようとする、と発展するわけだ。

なぜ、「悪」の側には、それがないのだろうか。
もちろん、さようなポジティブな行動は、似合わないというのもあるのかもしれないが、悪は悪なりに、自分をとらえている相手を誘惑し、堕落させ、悪の側に陥落させる事によって、隷従の身から脱出しようとしてもいいのでは?

思うに、これは、キリスト教的な文化の影響というのも、あるのだろう。
悪魔は、本来、サタンに代表されるように、神に匹敵する力を持っていて、かつ、敵対した者とされる。(ゆえに、異教の神々なども、キリスト教に追い落とされると悪魔になってしまう)。
獄屋につながれ、呻吟する。
そこから逃れ出たとしても、かれが誘惑し、堕落させる事ができるのは、あくまでも、人間だけなのだ。
(イエスも荒野で悪魔の誘惑を受けているけれど、その時点では、イエスはまだ「人間」のうちに数えられていたと考える事ができると思う)。
真の敵であるはずの神を、悪魔は誘惑する事ができない。
また、悪魔としての能力が奪われてしまえば、それを取り戻す事ができないようだ。まあこれは、聖書ではなく、民話などで語られているものだけれども。
そして、最終的には、悪魔は全て、地獄から逃れきる事ができない。

この、一見二元論的でありながら、実は片方が決して勝つ事を許されず、もう片方の最終的勝利が揺らがないというシステムが、ここに影響しているのではないかと思うわけだ。

だが、闇王の封印がゆるんできているというこの時、闇王の手下が、こんな風に捕獲され、物語の中央から連れ出されてしまう(または、キャラとして死ぬのではなく抹殺されてしまう)というのは、日本人的考えでいくと、なんとも不自然な事なのだ。

それとも、少し前から生存を示唆されている「あの人」が、裏で何か画策をしているのか!
もしそうだとしたら、なかなか面白い仕掛けで、楽しみだと思うのだけどね。


ロバート・ジョーダン, 斉藤 伯好, 月岡 小穂
竜神飛翔 5 (5)
ハヤカワ文庫FT
207年4月15日初版
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2007-04-21 23:52:22

『決戦! バルト海』〈海の男/ホーンブロワー8〉

テーマ:冒険・アクション
思えば、ここまでホーンブロワーは、もっぱら南の海を航海して来たのだった。
海尉になるまでは、イギリス沿岸か地中海。
海尉になって、こんどはカリブ海など、ともかく南、南、南。
どうりで、ホーンブロワーが、海水をくみあげてるポンプの下で、行水できるわけだ。

いや。結局、寒い海でもやってるわけだが>行水

まあともかく、これはホーンブロワー初の北の海。
そして、初の指揮官旗。
再婚ではあるが、やはり新婚の家庭を残して、海へ出てしまうのだ。

ところで、ホーンブロワーとバルト海の組み合わせでピンと来た人は、かなり、西洋史のセンスがある人だろう。

今まで、ホーンブロワーは南の海で戦ってきているけど、その相手というか、背後に控えているのは、常に、ナポレオンだったわけだ。
イギリスは、連戦連勝のナポレオンを相手に、孤軍奮闘する、そのうちのひとりがホーンブロワー。
そういう図式だね。
では、ナポレオンがはじめて敗北した場所は?
これが、大甘な、ヒント(笑)。

ともあれ、ホーンブロワーは、決してメインの戦場ではなくとも(海なので、それはこの場合難しい)、イギリスの勝利に、かなり決定的な働きをしてのけるのだ。

さて、私が本シリーズを初めて読んだのは、高校~大学にかけての話。
その頃は、年上の先輩読書家連に、ホーンブロワーといえば艶福家で、なんて話されても、全然ピンと来なかったのな。
しかし、大人になって、結婚したり、連れ合いを亡くしたりとかしてみてから読むと、なるほど、確かにホーンブロワーは艶福家に思える。
新婚だというのに、ロシアの貴婦人(それも美人)に、きっちり、モーションをかけられている(笑)。
しかも、怪しいシーンがある……!
ホーンブロワー自身は、漁色家ではないのだけど、フランスで子爵夫人マリーが言ったように、もしかすると、ホーンブロワーは、「女に冷たい」のかもしれない。
一般的な意味で女に興味がもてないからこそ、いろんな女性にモーションをかけられるのであり、マリアのように愛情過多な女性が来ると、押し流されて結婚しちゃうのであり(ほんとに興味を持っていたなら逆に結婚しなかったのかも)。
一人の女性に、ぞっこんであるという状態にならないからこそ、だろう。
しかし、これ、実は、ホーンブロワーの最大の恋人が「海だから」というのは、詩的にすぎるだろうか?
つまり、ホーンブロワーにとって、全ての人類女性は、海の二の次、なのだ。


セシル・スコット・フォレスター, 高橋 泰邦
決戦バルト海
ハヤカワ文庫NV
1976年10月31日初版
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