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2007-03-31 21:34:57

『大久保町の決闘』 COLLECTOR’S EDITION

テーマ:冒険・アクション
大久保町。
大久保。
そういえばあのあたりは特定アジアな地域になっていて、噂によると(場合によって)歌舞伎町より危ないとかいう話があって……。
さぞかし、決闘騒ぎなども、ある事だろう(妄想)。

……だが、それは、新宿駅と池袋駅の間に位置するところの「大久保~新大久保」界隈であり、本作の大久保町は、全く別方面の、「播州赤穂」の近くにある。
かろうじて地面と同じ高さにあるプラットフォーム(というのか、この場合?)には、かろうじて駅名を記した表示板が風雨に色あせながらも駅名を表示しており、そこには、OK(???)と、最低限、町の名の頭のところはアルファベットでも記されているのだ。

OK(ubo-cho)。
ここからなんとなーく連想されるのは、『OK牧場の決闘』である。
ちなみにここでいう牧場とは、「こーらる」であり、牛などを追い込む囲いとか柵という意味合いであって、ほんとは牧場とは違うもんらしい。
単に、「こーらる」に相当する日本語がないのであった。
いや、そんな事は、どうでもいい。

ともかく、微妙に『OK牧場の決闘』とまぎらわしいタイトルの本作は、
なんとな~く冒頭あたりの雰囲気とか、一部のキャラクターが、微妙に『OK牧場の決闘』をイメージさせたりするのだが、
実は、ほんとにストーリーも何もかも、全く無関係なのだ。

どのくらい違うかというと、主人公笠置光則は、一にも二にも三にも、「運」というパラメータが突出して高く、そこからだいぶ下がって「回避」が高い。
それ以外は、「知性(頭の良さ)」も「精神(根性)」も「体力(打たれ強さ)」もめちゃ低、という凄いキャラクターだ。

これは、とんでもないことだよ。

実は、〈女神転生〉という、主人公のパラメータをプレイヤーが好きなようにのばせるというゲームで、私は3度、挑戦した事があるのだ。
力も体力も俊敏さも知性も魔力もどうでもいいから、ともかく「運」だけ突出したキャラを作って戦い抜けるかどうか、というのを。
しかしですな、これは非常に難しい。
ともかく「運」だけで全てのイベントを切り抜けようというのなら、ほんとに、むちゃくちゃ、突出して「運」が高くなければ、絶対に無理なのだ。
つまり、「運だけはいいやつ」というのは、めちゃくちゃ決定的に「運」がぐぐぐぐぐっと突出していなければ、はっきり言って、何の役にも立たないのだ。
ちょっとやそっと運がいいくらいでは、物語を生き抜けない。

だが、本作の主人公、笠置光則は、まさしくそれを体現している。
ともかく運が良い。
しかも、本人がいまひとつ、その事に気がついていない(笑)。
冷静に見ると、笠置光則は、九死に一生を1章につき3度くらい、得ているのだが、(つまり章あたり3×9で27死に1生)、そういう、むちゃくちゃ手に汗握るアクションストーリーでありながら、最初から最後まで、なぜかのほほ~んとしているという、あり得ないような、「かるーい」小説が本作。

かつて、メディアワークスから作者のデビュー作として発表された頃から、知る人ぞ知る「迷作」であった。
それが、あたかも「DVD特別版としてニューリリース!」てな感じで、COLLECTOR'S EDITION なのである。
作りが……凝っております(笑)。
(いいのかね、ほんとに)。

さて、もう下手すると火浦功より作品が出ない!
と噂される田中哲弥の旧作リニューアルがハヤカワ文庫にて行われるのはこれが3作目となるわけだが、驚くなかれ、実は三部作であるこのシリーズ、続きも順次ハヤカワ文庫におさまるらしいぞ。
『大久保町は燃えているか』が、6月(今年のだよ)。
『さらば愛しき大久保町』が9月(今年のだよ)。
それぞれリリースされるという腰帯での予告なのだ。
これらも、どことなく、ある名画のタイトルを連想させるが、まあなんというか……。
のほほ~んと刮目して待て(としか、言えない)。


田中 哲弥
大久保町の決闘
ハヤカワ文庫JA
2007年3月31日新刊
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2007-03-30 21:39:16

『裁判官の爆笑お言葉集』

テーマ:人文・社会・ノンフィクション
日本では従来、欧米ほど、法廷ドラマが楽しまれる事はなかったと思うが、 陪審員制度の導入に向けて、以前よりも、裁判とか、裁判官というものに対する興味が大きくなってきているように思う。
本書もさしづめ、そういう雰囲気の中で発行された本のひとつなのかもしれないし、著者自身、本書を「軽い気持ちで面白く読んでもらってもOK」と述べている。
しかし、そもそも著者が本書をあらわす動機となった、いろいろな裁判と、そこで語られた裁判官の言葉は、決して、単に面白いというだけのものではない。

本来、法律というのは、融通がきかないものであるし、たやすく融通がきいてもらっては困るものでもある。
ゆえに、裁判に携わる人、とくに、判決を下す裁判官ともなれば、そこで使う言葉は、あだやおろそかにできるものではないだろう。
まあ、理想としては、「人」ではなく「法律」の代弁者として、感情を伴わぬ、無色透明なトーンである事が望ましいのかもしれない。

しかし、言葉とか文章というものは、制限があればあるほど、すぐれたものになるという面白い傾向がある。
全ての裁判官がそうだというのではないだろうけど、ここでもその法則があてはまっているようで、本書に掲載されたさまざまな裁判官の言葉は、実に含蓄がある。

興味深いことに、本書では、裁判官の「失言」にあたるようなものも、掲載されているのだが、それらを含めて、裁判官の、人としての素顔が見られるのだ。

はなから血も涙もない、無機的な無色透明よりも、
本来、いろいろな色があるはずだし、秘めてもいるのだけれども、そこをあえて無色透明にする、という裁判官の努力が、本書のキモである。

幻冬舎新書では、意図的なものかはしらず、本書と同時に、『狂った裁判官』というタイトルで、日本の法曹界告発の書も刊行しているが、本書を読む限りにおいては、日本の裁判所は、捨てたものではないなと感じられる。

また、扱われているそれぞれのケースについては、著者はむしろ、「私情ゆたかに」感想を述べる方向で書いているようだ。
この事に毀誉褒貶はあるかもしれないが、裁判官たちの無色透明たるべき横顔を、人間らしく多彩なものにしている事は、疑いない。


裁判官の爆笑お言葉集/長嶺 超輝>
¥756
Amazon.co.jp
幻冬舎新書
2007年3月30日初版
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2007-03-29 22:33:21

『超妹大戦シスマゲドン (2) 』

テーマ:日本SF・ファンタジイ
古来、「魔術」とは女性の領域に属するものであり、
とくに「血のつながり」という発想から、ある男にとって最も力の強い魔術は、母または姉妹から授かるものであり、
それゆえに、最強の力を手に入れんとして男は自らの母とか姉妹とか娘と結婚したのだ、とされている。

そう考えると、「妹」を武器として用いる、このワールド、あながち、間違った世界観とも、言えないのだ。

男が戦うため、
その妹が最大の戦力となる!
戦力単位は「妹オーラ」。
そして、世界最強の妹を決定するS-1グランプリ、最大のダークホース烏山ソラの戦力=妹強度は、ざっと95万シスター!

実は、決勝リーグに進出した8人の「妹」は、特徴こそばらばらであっても、妹強度はいずれも90万シスター以上。
この本戦の様子は、お見事なまでに、「読む少年漫画」そのもの。
まのあたりにばちっと浮かぶ戦闘シーンは、ほんと、見事というほかない。
ある意味、リアルな格闘シーンなら、ある程度格闘技に詳しければ誰にだって書ける。
荒唐無稽なアクションシーンをリアルに描く事こそ、才能が必要なのだよ。
その点、歯切れも良くかつわかりやすい、作者の文章力は、物語そのものの「ぶっとび度」もあわせて、
「これぞライトノベル」。

そして、熾烈な本戦のさなか、主催側のCOMPの宿敵であるプリオンの、おそるべき正体(!)まで明らかになるのだが、話は全然、そんなところでは終わらないのだ。

シスマゲドンと言うからには、戦いははるか銀河の彼方まで、壮大に続いていくのであった。

最終的な、ソラの妹強度は、どこまで伸びるのか。
最後の最後まで、抱腹絶倒。
個人的に、本作を、今年のライトノベルベスト3に推す!


古橋 秀之, 内藤隆
超妹大戦シスマゲドン2
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2007-03-28 22:19:57

『反逆者の月』 月よ、おまえは何者だ?

テーマ:海外SF・ファンタジイ
「地球の空に燦然と輝くあの月は、実は宇宙船だった!」
「地球人は、古代、太陽系に到来した異星人の子孫だった!」
……なーんて話は、もうSFでは使い古されたネタであって、今更驚くべきものではない。
SFファンなら、たぶん、そう思ってしまうだろう。

本作は、確かに、そういう前提の設定をたてているのだが、
まず第一に、地球人は、余すところなく全員が異星人の子孫であり、かつ、当時地球を来訪した異星人の一部は、「まだ生き残っている」。
さらに、彼らのほとんどは、実は反逆者である。
しかも、本来彼らが戦うべきであった外敵が、21世紀の今、とうとう太陽系に接近しつつある(らしい)。

そんな時、自分を含む地球人が、そんな素性であるとは全く知らない宇宙パイロット、マッキンタイア少佐は、偶然、「月」……というより、太古、月とすりかわって地球の衛星軌道上をずぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅっとへ巡っていた宇宙船「ダハク」の内部に「拉致」され、いやおうなく、その艦長に就任する事となってしまった。

とはいえ、宇宙でのドンパチがあるわけではなk、物語は三部作の第一部。
ダハクの反逆者と、正規の乗組員が、まずは主導権を争うところから物語が始まるのだ。
しかし、その戦闘は全て地球上で行われ、しかも、この手のものには珍しく、
「地球人の目から隠されていない」。

お互い、一般の地球人の目からは隠れていたはずなのだが、ここに及んで、堂々と地上でドンパチ始めるのだ(笑)。
そこらへんの駆け引きもなかなか面白い。
作者がオナー・ハリントンシリーズの作者であるためもあってか、腰帯では「ミリタリーSF」と歌っているが、むしろ冒険SFのテイストと言った方が良さそうだ。
少なくとも本巻に関しては。

巨大宇宙船ダハクの艦載コンピュータが、いかにして自我を持ち、「人間らしさ」を育てていくかというのも、一方でひとつのテーマになっているようで、これもこれでなかなか微笑ましい出来になっていると思う。

まだまだ「先に期待」ではあるのだが、現時点では、かなり読み応えのありそうな、面白いSFだ。


デイヴィッド・ウェーバー, 中村 仁美
反逆者の月
ハヤカワ文庫SF
2007年2月28日初版
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2007-03-27 22:14:08

『水晶の栓』

テーマ:ミステリ
ハヤカワ文庫から新訳で刊行されているルパンのシリーズ、4本目が『水晶の栓』、本書だ。
子供時代、ポプラ社から出ている子供向けのルパン・シリーズをひととおり読んだ時、おそらく、『水晶の栓』はだいぶあとに読んだのだっただろうと思う。
いまひとつ、強い印象がなかったのだが、改めてひもといてみると、これが『奇岩城』に劣らぬほど面白いのだ。

なんといっても、タイトルにもある水晶の栓の奇抜さが、良い。
水晶(といっても天然ものではなくて、いわゆるクリスタル・ガラス)といえば、その特徴の第一は、無色透明であるということだ。
だから、水晶(クリスタル・ガラス)で作られた容器に何か入っていれば、その形は、容器を透過して見えるはず、である。

ところが、職人の妙技をもって製作されたこの栓は、申し分のない透明な水晶であるにもかかわらず、中に入っているものが見えない、らしい!
光の屈折の加減によるのか。
いったい、そこには何が隠されているのか。
もう、このシチュエーションからして、胸がわくわくしてしまうだろう。

しかも、そこに隠された秘密をなんとかして手に入れなければ、ルパンは、むざむざと、大切な部下の命が処刑台の露となるのを傍観しなくてはならないのだ!

人を、「イヌ派とネコ派」に分類するのと同じように、ミステリファンは「ホームズ派とルパン派」に分けられるような気がするのだが、この両者の魅力がどこで大きく違うかというと、ルパンjは、ホームズより直情的な「義侠心の徒」に見えるというところだろう。
ホームズが冷たいというのではないが、私立探偵という職業柄もあってか、どうしても、
「他人に依頼されて事件の解決に乗り出す」
という、受動的かつ第三者的な関わり方になるのがホームズであるとするなら、
困ったり悲しんでいる女性のために、騎士道精神を発揮して事件の解決に乗り出すのがルパン。
今回も、ルパンの動機は、窮地に立たされた部下を救出するというところから、
不運な女性が息子を助け出すのに手を貸すという第二の動機を得て、物語が大いに盛り上がるのだ。

しかも、『奇岩城』のレイモンドもそうだが、ルパンに助けられる女性は、決して、単に弱々しいだけではない。
むしろ、しっかりとした、芯の強い、女戦士のようですらある事が多いと思う。
だからこそ、怪盗紳士たるもの、一臂の力を貸さずにはいられなくなるのだろう。

物語はハッピーエンドに終わるが、水晶の栓そのものの落ちが、また実に見事だ。
透明でありながら見えない隠し場所。
その二重三重の意味が、登場人物も、読者も、煙に巻いているのだ。

部下の死刑執行までもうあとわずか!
そのカウントダウンもあいまって、物語の盛り上がりも拍車がかかり、一気に最後まで読んでしまう事請け合い。


モーリス・ルブラン, 平岡 敦
水晶の栓
ハヤカワ文庫HM
2007年2月28日初版
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2007-03-26 21:44:03

『神曲奏界ポリフォニカ トライアングル・ブラック』

テーマ:日本SF・ファンタジイ
ポリ黒も早いもので4巻目。
いちおう、1巻1話形式になっているのだが、前巻は主人公の警官コンビが、公式に関わる事件ではなく、休暇中の話という事で、いささか幕間的な雰囲気が強かった事を考えると、今回は本筋に戻り、しかも、今後常連になりそうな面白い新キャラ登場というおまけがついている。

私立探偵である。
二枚目である。
なんかヤクザである。

こうくくってみると、いかにもな定番キャラという感じだが、ポリフォニカというワールドの中でのセオリー、
「神曲楽士と精霊が、神曲を介して契約する」
という事のうち、
「一度楽士と精霊が契約を結ぶと、その関係は一生モノとなる」
という不文律を、みごとに蹴飛ばしているのが今回のキャラ。

今までにも、特定の精霊と契約を結ばない楽士とか、
楽士と契約を結ばない精霊とか、
まあ、そういう存在は登場した。
しかし、楽士と精霊の「短期契約」というのは、あり得るのだろうか。
あり得るとしたら、どういうシチュエーションで、どうやって。

実のところ、そこまではまだ物語られておらず、今回の新キャラは、そこを含めて、まだまだ謎の多い存在なのだ。

それを言えば、マナガの過去も秘密のままなんだけどね。

さあ、新キャラ、レオンを得て、ポリ黒は今後ますます面白くなるのだろうか?
(見守り中~)


大迫 純一, BUNBUN
神曲奏界ポリフォニカ トライアングル・ブラック GA文庫
GA文庫
2007年3月31日初版(発売中)
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2007-03-25 20:14:15

『メイド刑事 (4) 』

テーマ:冒険・アクション
メイド刑事第4巻は、予告通りの長編……というか「ドラマスペシャル」だ。
異常なほど 犯罪のない街、姉尾におもむいた若槻葵は、なんと警官殺しの犯人の濡れ衣を着せられてしまう!
日本の中とは思えないほど、街に溢れた警官により監視された「警察国家」姉尾県から、葵は脱出する事ができるのか?
また、姉尾県警本部長の企みを阻むことはできるのか?
はたまた、暗殺者集団黄金の剣とはいったい?

当然、1~3巻で、敵役を裏から操っていた人物も顔を出すし、
姉尾中に、3000人のレディースが改造スクーターを走らせたり、
実写ドラマとして目の前に浮かんできそうな面白さなのだが、
原題という世の中で、こういった「陸の孤島」を作り出す事がいかに難しいかも、よくわかる。

早い話、全国どこからでも、パソコンまたは携帯電話でネットに接続し、掲示板などに書き込みが出来る現在、真に情報統制をすることはできるだろうか?
作中では、県下からインターネットにつなぐには、必ず、県の指定するプロヴァイダを通さなくてはならず、従って勝手な内容を発信する事ができない(プロヴァイダのサーバで検閲が行われる)、としているのだけど、別にプロヴァイダベースのサイトやブログを開設せずとも、意見を書き込む場はネット上にたくさんあるし、
携帯電話で参加する場合、そもそもプロヴァイダは関係なくなってしまうのだ。
この点にはあえて目をつぶっているわけだが、あまりにも、「携帯でのネット書き込み/読み込み」が日常的である以上、苦しいなあ……と思う。

むしろ、そこを逆手にとって、物語を動かせれば良かったのにな。

とはいえ、今までの常連キャラはみんな大活躍だし、白メイドNo.2もなかなかふるっているキャラになっているので、エンタテイメントとしては充分、とも言える。
いや、この白メイド。
No.1よりいけてるかもしれないぞ。


早見 裕司, はいむらきよたか
メイド刑事4
GA文庫
2007年3月31日初版(発売中)
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2007-03-24 21:39:28

『装甲騎兵ボトムズ クエント編』

テーマ:日本SF・ファンタジイ
装甲騎兵ボトムズ、最後の舞台は、惑星クエント。
今は砂漠の地下に部族ごとにわかれて住み、必要に応じて傭兵として他星へ出ていくだけのクエント人なのだが、かつては偉大な文明を誇る民だった、という。
そして、PSとキリコ自身の謎も、このクエントの古代文明に大きな関わりがあるのだ、ともいう。

実は、この展開が、私にはいささか、鼻についてしまう。
古代に栄え、今は影も形もない(ように見える)、超文明とか、あるいは神(それに類したもの)を登場させて物語が抱える問題を解決させてしまうのは、まさしく、デウス・エクス・マキナ方式だからだ。
つまり、逆らいがたいほど大きな力(万能の力)が人々や人類の歴史を上から操っていました、としてしまうと、物語はつじつまが合おうが合うまいが、「何でもありあり」になっちゃうからだ。

もちろん、クエント編の鍵を握る超越者「ワイズマン」は、本物の神ではないし、ワイズマンがいなくなっても、結局のところ、アストラギウス銀河が平和になるわけではない、という結びはある。
それでも、過去のものならばいざしらず、物語の「今現在」に、こういったものがしゃしゃり出てしまう事が、非常に残念だ。
SFファンならずとも、もっと別のひねりをきかせてほしかったのではないかと思える。

こんな奴が登場して、キリコとのかかわりを主張されたらば、サンサ編で命を落としたイプシロンは、ほんと、死ぬに死ねないではないか。

また、こいつの登場のせいで、フィアナの存在すら、物語の中での重要性が、一気に希薄なものとなってしまうのだ。

クエント編は、クエント編で、それなりの面白さはあるが、ウド編~クメン編のテイストを最後まで保っていてくれたならば、もっとのめりこめたのではないかと思う。
クエント編は、むしろ、独立した別の話とすべきだったんじゃなかろうか。

とはいえ、作品をトータルで見ると、他に類を見ないミリタリーSFとしての醍醐味、
ハードボイルドな演出、
正義のヒーローぶりを徹底的に廃し、とくに兵器が実用兵器の枠を超えていないこと。
これが、ファンの心をがっちりとつかむ要素である事は、疑いをいれない。

全4巻とも、各章の冒頭に、番組放送当時の予告編が掲載されている。
これだけひろって読んでいっても、テレビシリーズの「あの雰囲気」がまざまざとよみがえってくるだろう。

やはり、かっこいいよな。
ボトムズ。


高橋 良輔
装甲騎兵ボトムズ〈4〉クエント編
スニーカー文庫
2003年10月1日初版
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2007-03-23 19:36:37

『装甲騎兵ボトムズ サンサ編』

テーマ:日本SF・ファンタジイ
ボトムズというテレビアニメーションは、明確な4部構成となっていて、それがみごとに、起承転結にあてはまる。当然、完全ノヴェライズをうたっている本作も、3巻が「転」にあたる。

たとえば、このサンサでは、軍事・民間を問わぬ複数のグループによる熾烈な闘争は、水面下のものとなり、逆に、キリコ自身のサヴァイヴァルと、キリコとフィアナのロマンスというプライヴェートな部分が表に出てきているからだ。

その一方で、何者ともわからぬ存在により、キリコは痛烈なまでに、「自らの過去」と直面させられるはめになる。
実際には、キリコ自身というより、キリコが所属したレッドショルダーの、と言うべきものなのだが。
そうやって、何者かの意図により、心身をずたずたにされながら、キリコは、「戦いの中にのみ、活力をみいだせる自分」に気づくよう、仕向けられていくのだ。

手前のクメン編が、ヴェトナム戦争を彷彿とさせるものであるなら、
サンサ編は、ヴェトナム症候群を思わせるものでもある。
全体的に重苦しい雰囲気であり、爽快感がない。

レッドショルダーによって完膚無きまでに破壊されたという、惑星サンサ。
当然、そこに生き残る者たちにとって、レッドショルダーはかたきと言うべき存在だ。
なかでも、レッドショルダーに憎悪を燃やす女、ゾフィーの存在は、強烈ではあるが、その一直線さは、むしろ、物語の全般的な重苦しく沈んだ雰囲気を改善しているとすら、言える。

もっとも、彼女の執拗さは、サンサ編の最後まで貫かれるため、物語のこの部分は、ほんとうに何一つとして救いがなく、苦しいものになっている。


高橋 良輔
装甲騎兵ボトムズ〈3〉サンサ編
スニーカー文庫
2003年6月1日初版
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2007-03-22 19:33:56

『装甲騎兵ボトムズ クメン編』

テーマ:日本SF・ファンタジイ
ボトムズの2クール目(最近の言い方では2シーズン目?)は、舞台をメルキア南方に位置する密林の王国、クメンに移す。
冒頭の、川をさかのぼるボートとそれを襲撃するゲリラのシーンからして、思い切り「ベトナム戦争」っぽい展開だが、密林の中に寺院が散見される舞台の雰囲気などなどから、モデルはカンボジアと言った方が良いのかもしれない。

ウド編の紹介記事にgoldiusさんからいただいたコメントで
「ボトムズは大人のアニメ」
とあるが、まさしくその通りで、主人公がここでは傭兵部隊に参加しているという点も、斬新だ。
戦争を食い物にしている傭兵部隊は、決してイメージの良いものではなく、従って、ここでは、
「主人公が正義の側にいる」のではない事が、ウド編よりさらに強調されているからだ。
いや、ウド編では、なりゆきから、逃げ回り、反撃するだけの立場だった主人公が、明確に、「正義とは全く呼ぶ事ができない団体」に身を置いているというわけ。

すなわち、ボトムズという作品の根底にあるのは、勧善懲悪から遠くはなれた、原初的な「サヴァイヴァル」であり、戦争というものの、「どうしようもなさ」なのだ。
人間誰しも、基本的に、戦争は悪い事だとわかっているはず。
しかし、それは、時に発生してしまうものであって、
なおかつ、戦争の中では、いろいろと醜い事が起こる。
それを、かなりのところ、克明に描こうとしているのがクメン編であると思うのだ。

この、「醜いものを淡々と描いているがゆえにかっこいい」というスタンスは、ハードボイルド小説か、イギリスの冒険小説に近いセンスと言えるだろう。
私が、ボトムズという作品が大人向けのものであると感じる理由は、ここにある。
また、実際に、本作がアニメーションとして制作された時代は、日本のアニメ史上でごく短期間ながら、対象年齢層を従来より大きくアップした作品が地上波で流れた時代だという事も、付け加えておこう。

さて、こういった背景の中で、PSに関するストーリーも大きく展開する。
プロトワン=フィアナの他に、今度は男性のPS、イプシロンが登場するからだ。
男女1組しかいないはずのPS、しかしプロトワンの方がキリコに惹かれているという状況を得て、イプシロンは、逆に、キリコへの憎悪を燃やす。
このへんの描き方は、アニメより、ノヴェライズ版の方がうまくできていると思う。
アニメの方では、イプシロンが感情まかせの行動が、PSの名にいまひとつふさわしくない、浮いたものに見えてしまうのだが、本巻では、その行動の裏付けが、文章で補われていると感じられるからだ。
また、イプシロンの「憎悪」については、後続の巻でも補足される。


高橋 良輔
装甲騎兵ボトムズ〈2〉クメン編
スニーカー文庫
2003年2月1日初版
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