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2006-11-30 21:10:34

『他人を見下す若者たち』

テーマ:人文・社会・ノンフィクション
しばらく前から、あちこちの書店で平積みになっている本書が、ちょっと気になっていたのだ。
タイトルがすごいからね。
『他人を見下す若者たち』。
インパクトあるだろ?

いったい、それは、どういう意味なのか。

さて、昨今、「いじめ」関連のニュースがマスコミをにぎわしている。
もちろん、ひとつ大きな話題となった事件があれば、普段は埋もれているような同種の事件を、次々に、これみよがしに掘り出すのが日本のマスコミなのであって、決して、いじめが急増したわけではないと思う。
まあ、それを言うならば、別にいじめなんてものは現代特有のものというのですら、ないだろう。
もちろん、時代ごと、社会ごとの特徴はあるだろうけどね。

すなわち、本書は、子供や若者が持つ現代的歪みを分析している本なのだ。
読んでみると、なるほど、周囲で見聞きしていること、伝聞したことにあてはまる事例も多く、納得しやすい。
それらについての、興味深い分析もある。

たとえば、子供や若者の問題行動を発生させる原因のひとつが、「親の問題行動である」というところ。
本書の中では、学校に対する親の問題行動を幾つか例としてあげているが、なに、学校に関連せずとも、公共の場所でそういう例はいくらでもみつける事ができそうだ。
ほんとは、子供に注意しなければならないような迷惑行為を、親が子供の前でしてるのだ!
(通行路をふさいでたむろする、売り場のものを散らかす、食堂で騒ぐ、などなど)。

もうひとつは、努力というものが、目に見える結果(または、報償)となって見えない現状。
これも少し前にニュースなどで話題になったが、小学校の徒競走で、ゴール前に児童を一列に並べ、いっせいにゴールさせる、なんてのはそのひとつだろうな。
どんなにがんばって一所懸命走り、先頭になっても……「いちばーん!」の声はかからない。
走るのが苦手な子への配慮だという話があるが、それなら、学力テストも、そうすりゃいいのでは?
全員が正解できるように、採点前に面倒みてあげて、結果、全員、満点! とすれば平和じゃないか?
どんなにがんばって勉強した子でも満点。
勉強ができない子でも満点。
平等だよねえ……(笑)。

もちろん、徒競走の例は、日本のそういった教育方針の、末期的な症状が出ているのだと思うが、そもそも、日本の教育現場は、この手の悪平等の温床なのだ。
たとえば、日本の学校は、現在、「飛び級」を認めていない。
高校や大学も、それぞれ、中学卒業・高校卒業の年齢を入学年齢の下限としており、どれほど頭が良くとも、それ以下の年齢での入学を許していない。
つまり、どれほど頭が良く、授業に退屈してしまっても、仲間より「上に進む」ことが許されない。
ちと言い方はキツイかもしれないが、「自分より明らかにできない子たち」と同レヴェルである事を強要されるのだ。
そうするとどうなるかといえば、努力ってことを、しなくなっちゃうのな。
なぜなら、自分のレヴェルより低いところでOKな状態が続くから、努力する必要性がなくなってしまうから。
努力すれば結果が出る、という実感を得る事は、できないのだ。
そういう構造的歪みが、進みに進んで、「徒競走全員ゴール」になるんだろうなあ、と思う。

そして、日本の若者は、「自分より下を見て満足する」という傾向が強くなっているのだそうな。
たとえば、アメリカの高校生が、将来の自分をイメージする時、「起業している、または大企業の従業員となっている」という回答が多いのに対し、日本の場合は「中小企業の従業員となっている」が最も多いんだって。
さて、これは、日本の高校生の方が現実的、と見るべきなのか?

その一方で、本書は、日本の若者が、他国に比べ、「自信を持たない」というリポートも紹介している。
自身を持たないのか、それとも、自信を持てないのか?
これらは、児童の間にも蔓延しつつある、「鬱」の問題にも、つながっていくようだ。

なるほどなあ。
他人を見下すということは、上を見ないという事でもあるのだな。
自分以外は全部バカである、と感じる感覚は、いわゆる「ジコチュー」の世界だ。
共感能力が低いと言っても、良いのかもしれない。
(他人と共感する能力が欠けていれば、そりゃ、いじめに罪悪感も感じないよなあ)。

現代の病巣のひとつについて、鋭いところをえぐりこむように突いた、興味深い本だ。


速水 敏彦
他人を見下す若者たち
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2006-11-29 22:42:32

『リサとガスパールのクリスマス』

テーマ:絵本・児童文学
『ペネロペ』が今話題になっているこの人の絵本だが、季節的には、こちらも推しておきたい。
『リサとガスパールのクリスマス』。
謎の生物(なんだそうな)、リサとガスパールを主人公にした絵本は、そりゃもうたくさん出ているようなのだが、私は、この、リサの性格が好きなのだ。

はっきり言って、リサは「よい子ではない」。
しかし、「不良ではない」(笑)。
要するに、時々悪い子になってしまう、ふつうの子供なのだ。
しかも、その「悪いこと」が、たいていは、勝手な善意に基づいてたりして、なかなかお茶目だ。

さて、ここでは……。
学校に通っているリサとガスパールは、クリスマスになったので、先生になにかプレゼントをしよう!
と、思いつくのだ。
うん、このあたりは、「やさしいよい子」と言えるよね。
ところが、そのプレゼントを作るために、おうちの中のあるものを、勝手に改造しちゃう。
おまけに、その改造に、みごと失敗してしまう!
でも、「こうしたらいいよね」と、最初の予定とは全く違う「もの」として、先生にプレゼントしちゃうのだ(笑)。
このちゃっかりさ加減が、たまらない。

絵本の主人公は、最初からよい子か、あるいは、悪い事をしちゃっても、反省してよい子になるパターンがふつうなので、こういう、ちょっとおいたをしちゃうけど、ちゃっかりごまかしちゃうような子、というのはとても珍しい。
とはいえ、そういう子って、まわりには普通にいるでしょう(笑)。
まさしくそういう、まわりを見回せばいそうな子である、というところが、人気の秘密なんだろうと思う。


アン グットマン, Anne Gutman, Georg Hallensleben, 石津 ちひろ, ゲオルグ ハレンスレーベン
リサとガスパールのクリスマス
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2006-11-28 22:08:33

『亡者を哀れむ詩』〈密偵ファルコ〉

テーマ:ミステリ
例によって、帝国時代のローマを舞台とするミステリだ。
主人公は「密偵」なのだが、これは、はやいはなしが、私立探偵と同じようなもの。そう考えれば良い。
すなわち、本シリーズは、古代ローマを舞台とする、ハードボイルドなのだ。

とはいえ、ローマ市民として、一家の家長にふさわしく、貧民街で生まれ育ちながらも、彼なりに努力をして、とうとう、騎士階級に昇格したファルコは、相変わらず……生活には、苦労している(笑)。
ハングリーでなければ、ハードボイルドにはなれないのだ(たいていは)。
しかし、この主人公、「密偵」という職業には似つかわしくもなく、時々、詩を書いたりしているんだよねえ。
そして、ちょっとばかりほほえましい事に、仕事上知り合った貴族と共同で、オリジナルの詩の、「朗唱会」をする、というところから本巻はスタートするのだ。

ファルコは、決してマッチョではないけれども、密偵というからには、それなりに強面だ。
なのに、詩の朗唱会だよ。
もちろん、家族や友人が聞きに来るので、非常に居心地が悪そう!
しかも、余計なお世話ぽく、仲の悪い皇子その人まで、来場するという(事実、やって来る)。
「なんかいやすぎ」
というシチュエーションは、いきなり、壇上にあがりこんで、勝手に朗唱者(もちろんその片割れはファルコ)を紹介しだした闖入者のせいで、よけいにうっとうしくなってしまう。

実際、古代ローマに、そういうディレッタントがいたのかどうか、私は知らない。
ともあれ、物語中では、現代でいうと、コミケに行ってなにしていそうな集団が、プロの物書きとしてなんとかやっていこうと、十人十色ながら、四苦八苦しているというのが背景。
壇上への闖入者は、なーんと中小規模の出版業者で、(現代でもよくある事だが)売れない作家たちを搾取しているのだ。
有り体にいうと、ファルコも、「将来性のある詩人」として、そのカモにされそうになったのだけど、こいつがいきなし、猟奇な殺され方……鼻腔にある種の棒をねじこまれる!……をしたため、その真相解明に、乗り出す事になったわけだ。

しかも、搾取されている(芽のでない)作家グループの他に、だんだん、ローマとギリシアにそれぞれ特有の、銀行業が見え隠れしてくる。
さらにそこへもってきて、ファルコを近頃悩ませている、アナクリテスと家族との関係が、最高潮、じゃないな、最悪潮に発展し、いやがうえにも、ファルコを苛立たせてしまうのだ。
(おまけに、買い入れた家の浴場改築は、遅々として進まない)。

古代ローマの実生活を楽しみながら、見事に組み立てられたミステリも楽しめる、二度美味しい小説だよ。


L・ディヴィス
亡者を哀れむ詩 密偵ファルコシリーズ
光文社文庫
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2006-11-27 21:21:20

『マンホール』 それは日常に潜む陥穽である

テーマ:ミステリ


マンホールというものを、普段、意識した事はあるかい?
それは、路上のあちこちにあるありふれたものだ。
実際は、地中に向けて掘られた縦穴で、おそらく内部は(灯りなんかないのだから)真っ暗で、湿っていて、言いたくはないが、気味の悪い虫などもたくさん……。(まあそれは、マンホールが何につながっているかによるのかもしれないけど)。

普段はふたがされているので、全く気にもとめずにいる、それ。
では、もしふたがなかったなら?
それは、あるはずのないところにぽっかりと口を開いた「落とし穴」となる。
平穏な日常にいきなり口を開いた恐怖とも、言えるのかもしれない。

さて、本作は、あるバイオテロの物語だ。
ある体験をきっかけにした男が、人生の全てをなげうち、個人的な復讐をこえる、
「世の中の屑は、一掃されなくてはならない」
という信念のもとに、それを決行するのだ。
キーワードは、血液と、虫。

こういった、病気および病気をもたらすなにかをテーマにした作品というと、海外ではロビン・クックなどがまっさきに頭に浮かぶのだが、そういえば今まで日本を舞台にした日本人の作品は、あまり見られなかったと思う。
ひとつには、日本が、非常に治安の良い国で、内部の民族抗争なども、目立ったものがなく、これまで「テロ」といえば、国内ではまず起こらないもの……と、思われていたからなのかもしれない。
実際、オウムのサリン事件などは、ごくごく特殊な部類になるわけで、日本人がテロにはしる動機というのを想定するのが、非常に難しい。
(物語の中でリアリティを追求するためには、皮肉にも、現実より厳しく、現実的にならなければならない)。

また、テロによらない、とんでもない感染症の拡大というと、あのSARS騒ぎの時も、結局日本国内では、それが爆発的に広まるなどという事態にはならず、島国という地理的好条件もあって、水際で食い止める事が、わりとしやすいっていう事情もある。

本作はそういうハードルをのりこえ、また、現代の日本の「問題点」をいろいろと織り込みつつ、気味悪く、おそろしい物語としてつづっているのだ。
なるほど確かに。
作者が指摘するとおり、日本は、意外にも、「水際で食い止められる」という環境であるためか、もし内部でこういう事が発生したら、意外に「もろい」ところがありそうだ。

物語の中では、実際のマンホールの「中」も、舞台の一部となるのだけれども、実際には、日常にひそむ「落とし穴」、そして「暗く、恐怖と汚穢に満ちた孔」の象徴として、「マンホール」をタイトルに使っているのではないかと思う。

気味悪く、怖い。
だが、この物語は、とても面白い。
スリリングで、一気に読めてしまう。
しかも、心温まるハッピーエンドもある。

でも、日常にひそむ、暗い落とし穴には、どうかご注意を……。


筒井 哲也
マンホール 1 (1)
マンホール 2 (2)
マンホール 3 (3)
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2006-11-26 22:25:24

『閃光のハサウェイ』 惜しい、別の人が書いていれば!

テーマ:日本SF・ファンタジイ
富野 由悠季は、天才である。
ただし、日本のアニメ界における天才。
決して、文才があるわけではない。
むしろ、文章は、むちゃくちゃ、下手だ。

そういう見地にたって見ると、本作は、面白くはあるのだが、どうも半端な印象が強い。
連邦軍の大佐であるケネス、
政府に対抗する集団のリーダーであるハサウェイ、
そして両者の間で揺れ動く不思議な少女ギギ。
個々に見れば、それぞれ、魅力的なキャラと思えるのだが、彼らのやりたい事が何なのか、どうもそれがぼけているのだ。

たとえば、ハサウェイが反政府活動に身を投じる理由というのが、どうもしっくりとこない。
地球の自然を回復するために、人類が宇宙へでていくという、ガンダムワールドの大きな「命題」、それに対して、自分たちだけ地球で暮らす権利を濫用する連邦政府のお歴々という存在あり、それに反発して、というのは、まあ良い。
しかし、それ「だけ」では、動機としてはかなり弱い、と言わなければなるまい。
女性の存在なのか(それをにおわせる話はあるのだが……)。
黒幕となる何者かのせいなのか(それをにおわせる話もあるのだが……)。
あるいは他に、強い動機となるものがあったのか?

ケネスにしても、有能な軍人として、対テロのため、地球に降りてくる、それは良いのだが、やけに、マスコットとしてのギギにこだわったり、ハサウェイに共感してみたり、感情的には首尾一貫していないように見える。
軍人としての行動は、一応、ちゃんと筋は通っているようなのだけれども(ギギ関連は別として)、ケネス自身の考えや気持ちは、一貫していないようなんだよなあ。

そして、ギギ。
ある程度、未来を見通す能力があるという、不思議な少女だが、なぜ彼女にそういう能力があるのか、なぜ、とある有力者の囲い者になっていたのか、どうしてケネスに接近したりハサウェイに接近したりするのか、彼女の心の動きも、現実の行動も、謎ばかりだ。
まるで都合のよい人形のように扱われている、とも読める。

これは、地球の自然を回復させるための、人類の宇宙移住という究極的手段をとる未来という、非常にシミュレーションとしては魅力的な未来世界があって、
さらにそこで、そういう理想と、それを損なう方向で汚職をする人々がどうしても出てくるという「現実」のギャップを描きたいという作者の強い欲求があり、
そのふたつがともかく前に前にと出てしまっているため、キャラクターがそこに沿ってうまく動いていないのではないかと思う。

ブライト・ノアの息子としてのハサウェイという側面もあるのだし、いろいろと掘り下げていくと、非常に面白い小説になり得たと思うんだけど、残念、筆と作者のシミュレーション能力が、そこについていっていない感じだ。


富野 由悠季
機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ〈上〉
機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ〈中〉
機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ〈下〉
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2006-11-25 22:41:57

『鋼の錬金術師 (15)』

テーマ:日本SF・ファンタジイ
戦争は、人類が人類としてスタートして以来、縁の切れないしろものだろうと思うが、それでも、「非日常」である事に違いはないだろう。
人は、生きていくために、平穏平凡である事を期待するので、良いものも悪いものも、非日常が連続する事には、耐えられない。
当然、悪い方の非日常である戦争は、基本、耐え難いものになるはずだ。

本巻は、主人公より半世代ほど前に起こった事になっている、イシュヴァール戦役についての物語。
職業軍人である「あの人たち」(物語の中ではすでに亡くなった人を含む)が、あの戦争をどう生き延びてきたのか、どう戦ったのかについて語られている。

今このときに、それを語るというのは、物語上の「現在」の原因を過去に探るという意味があるわけで、原因を明らかにしていくことで、さらに深く話を掘り下げていくための、準備段階になるわけだ。
もちろん、キャラにも(背景が語られる分の)深みが出るので、大変面白い。

とはいえ、先を楽しみにしていないとしんどいほど、重いテイストになっているので、疲れている時は読むのを避けた方が良いのかも。アクションの爽快感は、今回は、期待してはいけない。


荒川 弘
鋼の錬金術師 15 (15)
2006年12月22日初版(発売中)
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2006-11-24 21:32:33

『クトゥルー 6』 暗黒神話大系シリーズ

テーマ:ホラー
文庫版6巻は、ラヴクfラフト&ダーレスによる短編が2編と、『ビリントンの森』3部作が収録されている。
ビリントンについては、単行本版の記事ですでに触れているので、短編2つをメインに語るか。

まず、『恐怖の巣くう橋』。
ダニッチ近辺の家を遺産として受け継いだ男が、そこで暮らそうとやってくると、地元では評判がやけに悪い。
結局、すでに死んだはずの父祖に「たたられて」しまい、悲惨な結末となる。
なーんてあたりも、そこに至る展開も、典型的なクトゥルーものであり、面白いには面白いのだが、あまり新鮮みが感じられない。
なぜか、崩れた橋のどまんなかに「旧神の印」が刻まれて封印の役を果たす事になっているんだけど、事件と橋と封印の関連性は、一見明確に見えて、いまひとつ曖昧なまま終わっている。

とはいえ、特定の、ヴァンパイアハンター的存在が封印をほどこしたのではなく、どうも近在の住民が、邪悪なものを跳梁させないため、一致協力してそれをやった、という風な示唆があるところは、
「そういう、邪悪なものが徘徊する土地」
という、背景をうまく際だたせている、とも言える。

ラヴクラフトの世界を支える、脇役的な特徴のある短編とは言えそうだ。

『生きながらえるもの』は、クトゥルーものに特有の、水の生き物に対する生理的嫌悪感を打ち出した作品だが、クトゥルーものらしさは、かなり薄い。
もっとも、「不死」といものへの、ラヴクラフトの興味を、かの死体蘇生者とは別の雰囲気でネタにしているという意味では興味深くもあり、それなりに面白くもある。
しかし、本作をふくめ、どう~も、魚類と爬虫類と両棲類が、ラヴクラフトの中ではいっしょくたになっているような雰囲気が感じられる(笑)。


ラヴクラフト, ダーレス, 大滝 啓裕
クトゥルー〈6〉
青心社文庫
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2006-11-23 22:02:02

『野生ネコの百科 最新版』

テーマ:自然と科学
「ネコ科動物は獲物を補食するという目的に向かって、ひたすら進化してきた究極の生き物なのである」(まえがきより)
しかも、自分の安全を確保したまま、獲物に忍び寄り、一撃でしとめる!
(そして、まりまりと食い尽くす)。
ネコ科たるもの、すべからく、そのようにつくられ、そのように生きている。
ブレイクが歌い上げたごとく、その肉体には、美とパワーが満ちあふれている。怖ろしいまでに。

しかし、人間の生活圏が広がるほどに、そのテリトリイは侵され、世界各地で、多くの、野生猫が絶滅に瀕している。
本書に載せられているものも、多くが、RED DATA なのだ。
神または自然の生み出した、これほどまでに美しい生き物を、滅ぼして良いのか!

まあ、見たまえ。

構成としては、まずアジアから初めて、アフリカ、西アジア、ヨーロッパ、北アメリカ、南アメリカと地域で分け、そのなかで主に分布している野生のネコ科動物を、ひとつずつとりあげている。
(真っ先にアジア。そのなかでもまっさきに虎!)
写真、写真のないものの場合は、美麗なイラストレーションで飾られている。
現在わかっている限りの生態が説明され、末尾に分布図と亜種の一覧が掲載されている形だ。

ひとくちに野生ネコといっても、虎もいればライオンもあり、豹もあり、あるいはリンクスだとかボブキャットだとか、小さいものから大きなものまで、そりゃもうさまざまだし、棲息している土地柄などにより、その行動形式も全く違う。
たとえば、ほとんどのネコ科動物は水に入るのがキライだが、虎など、一部のものは水に入るのが好きだし、スナドリネコのように、積極的に水に入っちゃうのもいる、という感じ。

そんな野生猫を、隅から隅まで、本書では堪能できるのだ。
ネコの百科であるから、どのページを開いても、見えます!
ネコ科の生き物。
くぅぅぅ。
いいねえ……。

なお、日本にも野生の猫はいる。
ひとつは有名なイリオモテヤマネコ(やままやー、または、やまぴかりゃー)。
もうひとつは、知名度では劣るが、ツシマヤマネコ。
どちらも山猫となっているけど、種は全く違うようだ。
そういえば、日本と朝鮮半島の間にあるもうひとつの島嶼、鬱陵島にも昔は山猫がいたらしいけど、本書にはとくに記載されていなかった。
ツシマヤマネコの同類ということなのか、あるいは現在では絶滅してしまったのか……?
ちと、気になる。

また、人類がまだ人間ではなかった頃なら、本州にも山猫の類はいたらしい。
化石が出てるんだそうだよ。
(有史になってからも実は一部棲息していたのではないかという説はあるが、それはまた別の本で)。

ともあれ、すてきな野生猫の世界へ、この本で遊びにいってみては如何。


今泉 忠明
野生ネコの百科 最新版
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2006-11-22 18:33:24

『修道士カドフェルの出現』

テーマ:ミステリ
修道士カドフェルといえば、今はなき教養文庫のミステリの人気シリーズだったのだが、その後光文社文庫にそっくり移ったという事は知っていた。
(イギリスで制作されたテレビドラマの出来が非常に良く、それがCSなどでも繰り返し放映されたのはでかいのだろうなあ)。
しかし、いくらなんでも光文社版で全部買い直すのはなあ、と思っていたのだ。
好きでも、書棚のスペースには、おのずと限度というものがあるのだ。

しかし、最後の短編集だけはそういえば持っていなかったと思い、このたびようやく購入した。
うぬぅ……光文社版、装丁がいいなあ!
教養文庫の版も、非常に上品な装丁で好きなんだけど、光文社版は、薬草園をテリトリーとしているカドフェルに敬意を表してか、表紙がハーブのデザインであります。
それだけでなく、裏表紙折返しには、ハーブ情報を入れているようだ。
ちなみに、この巻の場合は、「パセリ」。
格別、収録作品と関係のあるハーブというわけではないが、いや、こういうのはいいよなー。

収録されている短編は3本で、本シリーズの訳者3名が1本ずつ訳している。
タイトルから予想されるとおり、まず、カドフェルが修道士となる「前」の物語がひとつ。
修道士になり、ヘリバート院長の時代のものがひとつ。
そしてヘリバート院長が引退し、ラドルファス院長になってからのものがひとつ。
いずれも、カドフェルの魅力たっぷりであり、かつ、ごくごく薄い本でもあるため、たとえばドラマは見たけど小説はまだという人や、カドフェルは読んでみたいけどどれがいいの、と悩んでいる人にはお勧めしたい。

作品の分量の関係か、他の光文社文庫(海外作品)と比べても、文字が大きめで行間があいているように思う。
目が疲れている時、体力がない時もお奨めかもしれない!
内容も、カドフェルものだけに、コージィ・ミステリだしねえ。


E・ピーターズ, 岡本 浜江, 岡 遥子, 大出 健
修道士カドフェルの出現—修道士カドフェル・シリーズ〈21〉 光文社文庫
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2006-11-21 23:27:23

『朝日現代用語 知恵蔵』 付録にやられた

テーマ:その他
年末が迫ってくると出回るものが、年末調整の用紙に、年賀状に、現代用語の本。
昔は『現代用語の基礎知識』オンリーだったそうだが、今は、『imidas』と『知恵蔵』あわせて三者そろい踏みという感じがする。

さて、個人が毎年買ってもしょーもないようなものだから、ほんとに随分、この手のものは買っていなかったのだが、今年は買ってしまったのであった。
しかも、朝日嫌いであるにもかかわらず『知恵蔵』なのであった。
なんでかというと、付録にやられたのだ(笑)。

付録といえば、昔は、子供むけの雑誌についているものと相場がきまっていたような気がするが、昨今は大人向けの雑誌にも豪勢な付録がついているのはあたりまえ。
この手の現代用語事典も、付録がウリらしいぞ。

手帳は定番らしいのだが、『知恵蔵』の手帳は、「月の満ち欠けが毎日わかる」というやつ。
私は月が好きなのだが、今使っている腕時計には、月齢表示の機能がない。
なので、まず、これにやられたのだ(笑)。
月齢表示のついている手帳。
しかも胸ポケットにジャストサイズ。
これはいいかもしれない……!
(実際、ビジネス手帳としてもかなり使えそうな手帳だった)。

そして「知っておきたい日本語常識ドリル550問」。
この手のものは、あまり買ってまでやろうとは思わないが、付録ならいいかなーとか思う。
最近の脳トレ流行りをうまくつかんだ付録と言えそうだ。
設問は、漢検準2級~準1級くらいのレベルではないかと思う。
かなーり楽しめた。
「俺にはそこそこ簡単だな」
と胸を張れれば良いのだ(笑)。

最後に「壁に貼って使える世界地図/日本地図」。
地図好きは問答無用で「あ、いいな」とか思うわけだが、これって、世界征服を企む悪の帝王の真似をする時のマストアイテムでもあるのだ!(え? ふつーそんな事はしない? いや、やってみると面白いんだから!)

う~んいい付録だよねえ……!
朝日やるな。

え。
知恵蔵本体はどうだったかって?
まあ、現代用語の基礎知識本としてはふつーだと思うよ。
とりあえず朝日だし。
もっとも朝日なので一部の記事は、バイアスかかってると思って読まなければいけなさそうだな~。

ともかく、この3つの付録がついて、ついでに知恵蔵本体もあって(をい)、2650円なんだよ。
……やすい(笑)。


朝日現代用語 知恵蔵 2007
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