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2005-08-31 21:13:08

『魔道士の魂3 ダルトンの策略』

テーマ:海外SF・ファンタジイ
第3巻といえば、原書1巻を5分冊している今回でいうと、ちょうど話の真中になるのだが、なんだか読むのが、つらい展開だった。
なにがつらいのかって?

たとえば、アンデリスという国で繰り広げられる、アンダーとハーケンという、ふたつの民族の関係。
かつて、ハーケンはアンダーを征服し、支配階級になったけれども、それは(カーランが魔道士たちに教えられた歴史によれば)、進んだ農業技術や文化をもたらし、アンダーをおおむね公正に扱ったハーケンによって国が発展する結果となった。
けれども、後にアンダーはその関係を逆転させる。
そして、ハーケンによる支配に恨みをいだいていたアンダーは、ハーケンによって何がもたらされたかを顧みず、歴史を捏造して、ハーケンにありもしない罪をかぶせ、終わることのない「悔悟」を要求する。

あー。頭いてえ(笑)。
なんか、どこぞの二国関係をみるような展開じゃないか、途中まで?
日本の政治がまずい方に転んで、某国(複数)に媚び続けたらどうなるかっていう近未来を見ているみたいだ!
げー。
かんべんしてくれよ。
これがまずひとつ。

もうひとつは、ようやくストーリーに再登場したリチャードとカーランが、泥の民のところにたどりついたデュ・シャイユを間にはさんで、
「一国の悪習に干渉する是非」
これを論じていることだ。
いや、なんかね。
リチャードの言ってる事が、まんま、近代におけるアメリカ合衆国の主張みたいで(笑)。
そこにカーランがつっこみまくっているんだけれども、かなり、読んでいてイタイ会話だよ、これは。

そりゃあ、なんつっても、異世界なのに、リチャードとか、いかにも英米風な固有名詞が満載で、まあ、そこらへんが、ファンタジイに慣れていない人(但し、英語国民。はっきりいってここではアメリカ人)に、話に入りやすいよう考慮しているのだろうし、そういう意味では、今回のリチャードの言動も、わかりやすいっちゃわかりやすいが。

なんかこう、現実のなまぐさい政治の世界が、そのまんま物語に投影されているかのようで、今回はファンタジイとしていまいち、いやいや、いまさんぐらい、楽しめないのです( ‥)/

ストーリー展開は面白いと思うんだけどなあ。残念!

……それはそれとして。
サブタイトルにもある、ダルトンの策略は、順調に進んでいるもよう(笑)。
この世界が、至高秩序団とダーラという二極にわかれて戦おうとしている矢先、ちっぽけなアンデリス王国で、なにしてんだかなあ。
もっとも、もうひとつ世界の危機となっている「チャイム」に対抗する手段が、アンデリスに隠されているようなので、これまた長い目で見なければなるまい。
病気で寝込んでるアンデリス国王、王座を狙っているすけべじじい、そのまた黒幕に入ろうとしているダルトン。ただ、アンデリス国内に限定されている彼の活動は、どうも、
「ちいさい、ちいさい」
と感じざるを得ないぞ(笑)。
やはり、先の展開に期待か。


テリー・グッドカインド, 佐田 千織
魔道士の魂 3
ハヤカワ文庫FT
2005年8月31日新刊
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2005-08-31 09:44:37

『ベクフットの虜』〈クレギオン7〉

テーマ:日本SF・ファンタジイ
地表の多くを水に覆われた惑星ベクフット。
そこは現在、軍に封鎖されている。
ミリガン運送は、その軍の施設に運ぶ荷物を請け負うことになったのだけど、なんと!
メイの両親が、娘の仕事ぶりを見に来るということに(笑)。

いやだよな~。
あとがきで、作者は、
「家を出た者にとって最大の恐怖は、親が会いに来ること。帰宅した時いきなり親が勝手に掃除を始めていた時の怖さ!」
ということを書いているけれど。
べつだん、家に同居していたとしても、本来親が入ってくるべきでない領域にいきなり顔を出す事は、
迷惑で、
腹立たしく、
いきなりパンツを引き下ろされたような、
いや~~~~~な気分になるものだ。
「心配なのはわかるけど、やめてくれよ」
かんべんしてくれ、というのが子供の側の気持ちだろう(笑)。

さて、そんな困った状況を前に、1ヶ月の余裕しかない親とうまく落ち合うため、直前の仕事……すなわち、ベクフット行きのMDをつとめる事になったメイ!
仕事そのものにも、なんとな~く、いや~な予感がする。
なぜなら、それは、例によってロイドがとってきた仕事だし、いくら、
「安全かつ堅実な仕事」とマージが念を押し、
「安全かつ健全な仕事」とメイが懇願していたとしても、
ロイドのやることは、どこかしら、うさんくさいにおいがつきまとう。
海賊がかかわってくるとか。
密輸人がいそうだとか。

そう、密輸だ(笑)。
なんと、ベクフットの表面には、退去を拒んだ入植者がいて、高価に取引されているベクフットの花の密輸にかかわっているんだそうだ。

また、この花ってやつが、地上じゃなく、水上の、しかも海草に特殊な条件下で咲くというのだが。
いったいなんで花が咲くのか、どうやったら咲くのかというのが、わかっていないんですな。

惑星を封鎖している、軍(かれらは、ある実験をしようとしているらしい)。
惑星に居座ろうとしている入植者(潜水艦できつきつの耐乏生活を強いられている)。
軍の実験と、花とがからむ、実に壮大な宇宙的ギミック。

そこへ、
「親が来ちゃう~、どうしよう~っ」
焦りに焦るメイひとり(笑)。

そんなとんでもない状況下、ミリガン運送の面々が登場していたアルフェッカ・シャトルは入植者=密輸人によって、ベクフット地上(ていうか海中)にとらわれてしまうのだけれど!

はたして、ベクフットの虜とは、なにをさすのか?
文字通り、シャトルを拿捕され、とらえられてしまったミリガン運送の3人?
かれらは、まさしく、ベクフットの虜である。
軍の退去命令にさからい、ベクフットに居座る入植者たち?
かれらは、まさしく、ベクフットの虜である。
軍の実験に励起された異常現象によって、ベクフットに引き寄せられた客船?
かれらは、まさしく、ベクフットの虜である。
それとも、惑星ベクフットに仕掛けられた、とんでもない謎?
それらも、まさしく、ベクフットの虜であるのかもしれない。

惜しむらくは、密輸人となった入植者たちがそこまでベクフットにこだわる理由付けの描写が、ちょっと弱い気がするけれども、全体に、いくつもの要素がバランス良く扱われていて、シリーズ中でも名作と呼ぶに値すると思う。
ハードSF風味であり、かつ冒険活劇という〈クレギオン・シリーズ〉の真骨頂といってもいいだろう。

ところで、あとがきにはもうひとつ、ファンを期待させるような一言があった(笑)。
それは、作者が、
「このシリーズは終わっていない」
と考えているということ。
機会があれば、続きを書いてくれる可能性がありそうだ。


野尻 抱介
ベクフットの虜 クレギオン7
ハヤカワ文庫JA
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2005-08-30 22:19:03

『アフナスの貴石』〈クレギオン6〉

テーマ:日本SF・ファンタジイ
ある日突然、大事件が発生!

ま~たまたぁ(笑)。
そんなのミリガン運送では日常茶飯事じゃん。
どうせまた、ロイドがとんでもない事を言い出して、
マージが大反対して、
メイが困ってるんじゃないの?

確かに、そのとおり。
だが、ふつー、それは、運送業務の途中に発生するなにか、に関してだよな。
ところがこんどは。
「ミリガン運送は解散をする事にした。ふたりの給料は、二ヶ月分を振り込んである……」
おーぉぉぉぉい!!

だが、そんな書き置きを裏付けるように、二人が投宿したホテルには、船内にあったはずの、二人の私物が届けられてしまったのだった!(どどどどどーん)。

しかし、こうして見ると、メイって確実に、第1巻から成長し続けてきてるのな。
いきなり、ミリガン運送がなくなる、という事態に動揺しつつ、『アンクスの海賊』の時みたいにうちひしがれて言いなりになるわけでもなく、しっかり自分を出しているところが良い。

また、ずぅっとミリガン運送のトリオのままやっていくのではなくて、いったん、ばらばらにしてみるというのも、シリーズのマンネリ感を打破する上では、有効なのだろうな。

キャラクター的には、本巻に登場する詐欺師のコンビがそれなりに面白いが、なによりSF心をくすぐるのは、タイトルにもなっている「アフナスの貴石」の正体だろう。
これをめぐって、実はファーストコンタクト・テーマにもなっている。


野尻 抱介
アフナスの貴石 〈クレギオン〉第6巻
ハヤカワ文庫JA
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2005-08-30 20:43:37

『タリファの子守歌』〈クレギオン5〉

テーマ:日本SF・ファンタジイ
太陽系で言うならば、たとえば水星。

そういう位置にある惑星に、大気があったなら。
太陽に片面を向け続けている時間が長いと、何がおこる?

炙られ続けた「昼」の面は、フライパンの中より熱く、
闇に閉ざされていた「夜」の面は、業務用冷凍庫の中より寒く!
すると、境目(明暗境界線)では、
すんごーくアツアツの空気と、
むっちゃくちゃひえびえ~とした空気がぶつかりあい、
嵐を作り出すのであった!

と、まあ、今回は、物語の舞台となる惑星が、わりとハードSF風に描き出されているのだけれども、
そして、事実、マージもメイも(つまり、ロイドを除くところの定番の二人が)惑星タリファのすさまじい「嵐」をヒコーキで乗り切るために、すごい冒険活劇をするはめになるのだが。

ここでクローズアップされるのは、なんと活劇と併行して展開される、
マージの災難。
それは、ロイド(そしてメイ)が、マージの初恋の人だと勘違い(?)をしている、かつての凄腕の教官が、この惑星にいたということ。
しかも、惑星一、あこぎなレンジャー(救助屋)になっていたということ!

そのうえ、この子弟対決には、なんと、マージが苦手な家事全般の中でも筆頭をしめそうな、
「赤ん坊(の世話)」が、かかわってくるのだった!

最初にこの話を読んだ時は、身の回りに、赤ん坊を育てている人がいなかったため、さほど気にならなかったのだが、最近はたまたま友人の家庭に赤ん坊がいる事が多くなったため、いろいろな話を聞く。
すると、事実生後8ヶ月くらいの赤ん坊が、むちゃくちゃ大変だというのがわかってきた(笑)。
そういう情報が身近に入ると、マージがいかに危険な事を赤ん坊にしているか(いや、いかにも、しろーとがやりそうな事なのだけど)、よくわかるのだ。
そして、赤ん坊の両親や、メイが、離れた場所からむちゃくちゃやきもきする理由も。

ああ、そうか、これってオトナになってから読むと別の意味で面白い話だったのだな(違。
いや、わかってから読むと、
「マージ、それは、や~め~ろ~っ」
の連続なんだけどな(笑)。
なんかスリルの有り場所が違うよなあ。


野尻 抱介
タリファの子守歌 〈クレギオン〉
ハヤカワ文庫JA
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2005-08-30 17:11:04

『サリバン家のお引越し』〈クレギオン4〉

テーマ:日本SF・ファンタジイ
ロケット、ていうより、きっぱりはっきり、宇宙船が銀河を飛び回る時代。
となれば、もちろん、植民用のコロニーもあろうし、
そういうものがあるならば、そこへ地上から引越をします!
……と、いうこともありうる。

さて、主人公たちは運送屋をいとなんでいるのだから、当然、そういう、個人の仕事(ふつうは、宅配みたいなのとか引越みたいなの)も、請け負うだろう!

いや~。
それが、実は、そうじゃないと私は思う。
というのは、こういった流れ者の業者は、まず、そういった個人客との接点が少ないし、
実は、個人の家庭には、意外と、専門知識のある業者じゃないと扱いに困る品物があったりするのだな。
日本でいうと、ピアノなんてのが、そう。
専門の引越業者なら、自社内でノウハウも設備も持っているけど、そうでないと……!
良心的な業者なら、楽器専門の輸送業者にその分をまかせたりするけど、無理矢理自社で運んでトラブル、なんて話も聞く。

そして、われらがミリガン運送も、そういうトラップにひっかかるのであった(笑)。
ものは、アンティーク家具、なんてものもあるのだが、メインはとんでもない代物だ。
それは、花壇!

え。分解して組み立てればいいだろ?
いやいや。
花壇の「縁」じゃないのだ。
花壇の、「中身」。
そう、根のはりきった土、その上に咲き乱れる花々。 それをそっくり、コロニーまで運ぶ。
これが条件。

土って重いんだよね。
しかも、植物の根がはりまくった土っていったら……かさばり具合も大変なものだ。

そこらへんをよく調べないで仕事を請け負ってしまった、メイは、なんと初のMD(ミッションディレクター、つまりその運送の責任者)に指名されてしまう。
おまけに、なかなかとんでもないハプニングまで起こるのだけど、
依頼人の家族、とくにサリバン夫人が、
「花壇が、花壇が」
という、その心理のウラをメイがおもんばかるというのが、なかなか良い。

もっとも、そういうメイの心の動きに重点が置かれているせいか、コロニー内でのアクションという、日本ではアニメ以外ではあまり見られない活劇が、いまひとつ冴えていないのは残念。そういう意味では、メイの成長はあるものの、いまひとつ、前3巻に比べてバランスが悪いような感じがするのが残念だ。


野尻 抱介
サリバン家のお引越し
ハヤカワ文庫JA

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2005-08-29 22:20:35

『アンクスの海賊』〈クレギオン3〉

テーマ:日本SF・ファンタジイ
宇宙。
活劇。
こう並ぶのなら、次はやはり、これを持ってきたいだろう。
海賊!

昔から、スペースオペラと海賊は、切っても切れない縁がある。

スペースオペラ。
海賊。
こう並べると、ある程度以上古手のファンは、思い浮かべるかもしれない。
〈スペースオペラ傑作選II〉『お祖母ちゃんと宇宙海賊』(野田昌弘編 ハヤカワ文庫SF)

あれは面白かったよなあっ。
ほんとに小柄で、アメリカの古き良き時代のお祖母ちゃん。十人以上の子供と、そのまた子供(つまり孫)と、もしかするとさらにそのまた子供(要するにひ孫)までも、育てあげてきたようなお祖母ちゃん。
台所でお手製のクッキーを焼くのが絶対得意のおばあちゃん。
そういうおばあちゃんが、立派な子供を育て上げてきた実績にものをいわせて、宇宙海賊をひとひねり!(ある意味で)。

そして、なんと、これは、野尻砲介版の、『お祖母ちゃんと宇宙海賊』なのだ(笑)。
いや、ほんとに。
ひょんなことから客船の二等船客になることとなったメイと、同室になったおばあちゃんは、『お祖母ちゃんと宇宙海賊』の主人公をほうふつとさせる、すばらしいおばあちゃんなのだ!
絶対に、手焼きのクッキーと紅茶の香りが漂ってきそうな、おひとよしで、おせっかいで、元気はつらつな。

う~ん、これだけで、まいっちゃうよなあ(笑)。

そして、本編は、延々とミリガン運送をおいかけてきた例のマフィアと、正面対決という話でもある!
とってもいやみなマフィアのボス、カミソリみたいなナンバー・ツー、ちょっとマヌケでミリガン運送の面々にはとうていかなわなそうな、三下。

さらに、元彗星学の教授であったという、宇宙海賊ドクター・アンガスその人!
もともとカタギの学者であっただけに、ちょっとかわってるんだよ(笑)。
いや、ちょっとじゃないか。
だいぶ、変わっている。
ひとくせも、ふたくせも、ななくせくらいはありそうな、見かけはレトロに海賊だけど中身は学者で、チェスも得意なのにかなり無謀。
(学者ってだいたい変人だからなあ。無法者になったら、手がつけられないよな)。

こういう面子が、見かけ原始的な要素をたっぷり残しているために、星間ガスはたっぷり巻いてる上に、彗星が、ひゅーんびゅーんどかーんしている、ちょっとかわった星系で、追っかけたり追いかけられたり逃げたり逃げられたり、という、ハチャメチャ遁走曲を演じるわけなのだ。
味があっていいぜえ。

そうだな、クレギオンは、ややハードSFよりのスペースオペラなのだけれども、シリーズ中で、最もサブキャラクター群に魅力があるものとして、間違いなくこの巻は、1番か2番にあげられると思う。
(個人的には、ナンバーワン)。


野尻 抱介
アンクスの海賊
ハヤカワ文庫JA
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2005-08-29 20:43:20

『フェイダーリンクの鯨』〈クレギオン2〉

テーマ:日本SF・ファンタジイ
鯨……クジラ。
クジラは、宇宙に、なぜかよく似合う。
クジラが出てくる、宇宙を舞台としたSFは、けっこう、ある。

私は宇宙が好きだし、
クジラも好きだ。
でも、どういうわけかクジラが出てくるSFはあまり好きではない。
いや、どういうわけか、なんて言わなくても良いか(笑)。
それは、クジラなSFが、どれも欧米人の目を通して描かれており、それがまた、
「クジラを捕るのは悪いこと。クジラを捕るなんて野蛮人」
と言わんばかりの、いささか感情的なクジラ保護論者の影響が感じられるものだからだと思う。

なんつーか。
クジラは素晴らしいよ?
そりゃもう、素直に、クジラってのは凄いし、見ていて気持ちがいいし、ステキだとも思う。
でも、クジラをちやほやするのは、ちょっとゴメンかなあ。

ゆえに、クジラというもののすばらしさを投入しつつ、かつ、宇宙を舞台として、描きあげた日本人作家がいるっていうのは、嬉しい話じゃないか。
しかも、クレギオンである。
面白いんだよ(笑)。

さて、宇宙といっても、その環境はさまざま。
ここは、ちょっと太陽系内に範囲をせばめてみた場合、
水金地火木土天海冥。
天体望遠鏡で観測をするとしたら、どの惑星が好き?
そう問いかけた場合、たいてい、トップに躍り出るのが、土星。
なぜって、そりゃ壮麗な「輪」があるから!

単にガス巨星というなら木星もそうだし、木星は木星で大赤斑が人気(これ、好き)。
土星より外側の惑星にも、輪があることは、今では確認されている。
でもやっぱ、輪をもった惑星はどれ、と問われるならば、筆頭に上がるのは土星(大好き)。
現実、輪がどんなもので出来ていようが、なんだろうが、土星の輪というのは、それだけで、天体少年の心を、ぞっくりとえぐる魅力を持っているのだ。

そして、この物語は、土星でこそないものの、土星にとってもよく似ているガス巨星の、しかも、輪が舞台。
くぅぅぅぅぅぅ。
これだけでこたえられないよなー。
輪の上というか、中というか、そこで水素を集めて、売ることで生計をたてている、ハイドラー(水素商人)の家族の様子も魅力的。
0Gに適応した家族の動きは、統制のとれたバレエのようなのだそうだ。
運動エネルギーすら、保存し、リサイクルしなければならない、厳しい環境でこそ生まれる、美しさ。

0G。
そういえば、水中も0Gにかなり近い環境だ。
ということは、ハイドラーの動きは、水中にいる人の動きとも、近いのかね。
もちろん、そっくりそのままとは言わないけれど。

ところが、このハイドラー、立ち退きを迫られていたというわけだ。
どうしてかというと、なんと彼らのいるガス巨星を、太陽にして、その軌道上をめぐる衛星(当然、惑星サイズだ)を、人の住める環境にしようよ、という大計画が動き出しているため!

そこで注目されるのが、
「ガス巨星には生物がいるのかどうか?」
生物がいるならば、環境保護・生態保護の観点から、ガス巨星を太陽にかえる事は許されない!
でも、いるんですかね、ガス巨星なんぞに生物が。
いるとしたら……クラゲに似た、気嚢生物か?
それとも。
たとえば。
魚とか……。
クジラみたいな……!?

宇宙、クジラ、ガス巨星、ガス巨星の輪!
こんなにも魅力的なものを取りそろえておいて、淡い恋あり、アクションあり。
面白くないわけ、ないでしょう。
ぺたり、太鼓判。


野尻 抱介
フェイダーリンクの鯨―クレギオン〈2〉
ハヤカワ文庫JA
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2005-08-29 19:31:35

『ヴェイスの盲点』〈クレギオン1〉

テーマ:日本SF・ファンタジイ
虚空にぽつんと浮かぶ惑星。
その地上には、ドーム都市がひとつある。
「大戦」前の遺物を他の星系と通商する事で、ドーム都市は生き延びている。
だが、そのためには、惑星をぎっしりと押し包む、機雷原を通り抜けなければならない!

ロマンだ。
そう、機雷原ときたら、それは男のロマンだ。 一歩踏み間違えれば、死。
そんな危険地帯を往来して、品物を運ばなくてはならないのだから。
うおーっ。

と、いうはずなのだが……。
それにチャレンジするのは、オンボロ貨物船を操るヨッパライの社長(男)と、
凄腕で貧乏くじの敏腕パイロット(女)。
そして、機雷原専門の水先案内人として特別教育を受けた、ど新米のナヴィゲーター(少女)なのであった!

機雷原は、女のロマンだったのだ(笑)。

このスリリングな機雷原に関する謎と、冒険と、ロマン。
それが、すみからすみまで、びっしりと詰まったステキなスペースオペラが、クレギオン・シリーズの第1巻であり、作家野尻抱介の処女作だ。

文章は、それでいて生硬ということもなく、どんどんと物語の中に引きずり込まれる勢いと、魅力がある。
いささか、
「一気に読めすぎる」
という感じもするのだけれど(笑)。

だが、それもそのはず。
これって、ライトノベルのレーベルである、富士見ファンタジア文庫から出されたものなのだ。
それを、昨年、ハヤカワ文庫JAが新装版として再録した。
いやあ、そうしてみると、富士見ファンタジア版とは、まるっきり方向性の違う表紙(笑)。
いかにも、
「ハヤカワJAっぽーい!」
と、言いたくなるような、クールでハードな感じだ。

とはいえ、最近のハヤカワ文庫に似合わず、表紙絵だけでなく、挿絵も入っているというのは、やはり本来ライトノベルであるという事を考慮したんだろうか。

もちろん、野尻抱介らしい、ハードな味わいは、ここではよりマイルドになっているけれども、その分、冒険的なテイストは増していて、とても楽しい世界を幕開けしてくれているのだ。


野尻 抱介
ヴェイスの盲点―クレギオン〈1〉
ハヤカワ文庫JA
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2005-08-28 19:51:34

『蚊』 嫌われ者でも面白い

テーマ:日本SF・ファンタジイ
プゥ~ンンンンン……

今の時期、100%誰でも聞きたくない音のはずだ!

うるさい!
こいつのせいで寝つけねえっ。
ていうかその音だけでかゆいってばよー!
蚊は人類の敵なのだ。
こいつがいて、いい事なんかひとつもない。
喰われると痒いし、病気になる事だってあるし。

人間に嫌われる昆虫の、ワースト3には、絶対入っているはずだ。

そんな「 」が、 ゲームソフトになったのにもびっくりしたものだが
(いいですか、しかもこれ、それなりに人気ソフトだったのだよ。その証拠に、”2”も作られたんだからな)、
なんと、小説のアンソロジーまでできてしまったんだよな(笑)。
しかも、現代のホラー短編とか、異色短編が好きな人なら、「あっ」というような面子。

目次-------------------------
「赤い家」 田中啓文(かんなたかし)
「か」 田中哲弥(ハシモトヒロアキ)
「刻印」 小林泰三(せんのあき)
「虫文」 牧野 修(菅原 健)
「タタミ・マットとゲイシャ・ガール」 森奈津子(丸藤広貴)
「訪問者」 飯野文彦」(中村聡子)
-------------------------------
( )内はイラストレーター

2002年に出たものだから、すでに他のアンソロジーに再録されているものもあるけれども、やはり、同じテーマのものが一堂に会している方が、楽しい。
書いた作家は、自分でゲームをプレイした人あり、していない人あり、プロのゲーマーにゲームの進行を見せてもらった人あり、とさまざまのようだが、はっきり言うと。

これは、ゲームのノベライズ小説ではないため、
ゲームの中のストーリー(?)とは一切関係ない。
(あれがストーリーと言えるものかは別として)。
関係あるとすれば、ゲームの中で、蚊の敵となる人間のキャラクターが、そのまま登場するところくらいか。

あ、ちなみに「 」というゲームは、プレイヤーが蚊をあやつり、
山田家の三人家族の直接攻撃やトラップ(蚊取り線香とか)をかいくぐって、山田家の人の血を吸う、というもの。う~ん、アクションゲームになるんだろうなあ。やっぱり。たぶん。いちおう。

そう、小説は。
あくまでもそのコンセプトを残しながら、
蚊の女探偵が人間と協力して犯罪を解決したり、
元ヤクザが妹の敵を討ったり、
宇宙から(?)、高度な知性体である巨大な蚊がやってきたり、
蚊が人間の守護蟲で、特定の人間をネクロダイバーとして存在させたり、
美しい女吸血鬼が蚊の中に入れられてたり、
あるいは蚊が、人間の記憶を操作していたり……。

特定のテーマがないアンソロジーより、むしろこういった条件が厳しいほど、ぶっとんだ作品が生まれるものあんだよなあ。

私がとくに好きなのは、蚊の女探偵が出てくる話と、
美しい女吸血鬼の話だ。
いやあ。蚊が、こんなに魅惑的なものになれるとは!
そうそう、魅惑的といえば、巨大蚊の話もなんだかロマンティックだし、
ヤクザの話は、ハードボイルドでセンチメンタルだ。

マジで、かなりおすすめです( ‥)/

これを読めば、蚊に親しみがわくとは、保証できないけどな。

プゥゥゥンンンンンン……(ばしぃっ)


飯野 文彦, 田中 哲弥, 田中 啓文, 牧野 修, 小林 泰三, 森 奈津子
蚊‐か‐コレクション
ファミ通文庫
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2005-08-28 15:10:49

『ヴェロニカの嵐』〈クラッシュ・ブレイズ3〉

テーマ:日本SF・ファンタジイ
考えて、読んではならない。
とくに、以下の条件にひとつでも該当する人は、考えて読んではならない。

★ 泊まりがけのキャンプをした事がある人
★ アウトドアライフの経験を積んでいる人
★ サヴァイヴァル技術にある程度通じている人
★ SFファンの人
★ 物理学の知識がある程度以上ある人
★ 生物学の知識がある程度以上ある人
★ 救急医療の心得が多少なりともある人
★ 科学的なシミュレーションが得意な人 ★ 法廷劇、あるいは裁判に関する知識のある人
★ 運動能力に関するシミュレーションが得意な人

以上の項目が「はい」であればあるほど、
「あれ?」
と思う事が、多いだろうと思われる。
それくらいめちゃくちゃだし、下手をすると、一個も「はい」がなかったとしても、
「ちょっと待て?」
と思う、辻褄のなさが目につくかもしれない。

だが、なんといっても、これは、茅田砂胡作品だ。
あえて断言しよう。
「茅田砂胡作品に、辻褄を求めてはいけない!」
なぜなら、茅田砂胡作品の魅力の全ては、『王女グリンダ』に発する魅力的なキャラクター群と、ドライブ感の高い読み口にあると思うからだ。
うん、荒唐無稽というのとも、違う。

実際、そうしようと思えば、ほぼ1ページごとに、
「ここがヘン」
「これは、計算が間違ってる」
「これはあり得ない!」
というツッコミどころのオンパレード。

この巻に関して、一番大きな
「それはまてー」
をあげるなら、
人間が居住可能なら惑星であるかたといって、必ずしも、地球上と全く同じ生物がいるとは限らない。
ということ。
むしろ、いかに地球上の特定の地域(はっきり言って、温帯)と同じような条件下にあるからといって、鹿だのうさぎだのあなぐまが、そのままいるというのは大いに考え物だ。
似ているからといって同一とも限らず、それは、
「人間が消化できる可能性が高くない」
という事でもある。
しかも、それらの動物がいるわりに、一度も、大型肉食獣がいるかどうかについては言及されていない。
……いないはずないんだけど。

また、いくら澄んで綺麗な水に見えるからといって、生水を飲むのも考え物だ。
日本列島は、世界でもまれなくらい、水資源が豊富で、おいしい湧き水がたくさん得られる島だけれども、それでも、山歩きをする人なら、下手に湧き水を飲むと、泉熱にやられる事は知ってるだろう。(これは、野ねずみなどの尿が混入する事によって起きるといわれる、一種の熱病)。
人間の胃腸なんて、ちょっと水に含まれているミネラルの構成がかわっただけでも、簡単に調子を崩してしまうのだ。ましてや、人工的な環境にいたティーンのみなさんは、どうよ。

だが、もちろん、これらは、少年たちがサヴァイヴァルを強いられる物語だと思うから気になるのであって、
これは、そうだなあ、「なんちゃってサヴァイヴァル小説」なのだと思って読まなきゃ、だめだ(笑)。

首をかしげるところがあっても、それは数光年ばかり先にほっておいて、ともかく物語のドライブ感を楽しむ小説。
そうすれば、たぶん、宇宙に出たリィとシェラが、少年少女と、人のいない森林地帯で生き延びる物語を、楽しめると思う。


茅田 砂胡
クラッシュ・ブレイズ - ヴェロニカの嵐
C☆NOVELS FANTASIA
2005年7月25日新刊
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