1 | 2 | 3 | 4 | 5 |最初 次ページ >> ▼ /
2005-02-28 22:37:50

『恐竜の私生活』 化石から恐竜の生活は想像できるか?

テーマ:自然と科学

恐竜。アロサウルスにステゴザウルス、ティラノサウルスにブロントサウルス! ともかく山のようにでかくて、でっかい牙と長い尻尾がある!
恐竜だーいすき。
去年、かなり規模のでかい恐竜展が開かれたけれど、私はフランクフルトの国立自然科学博物館の恐竜展示が今まで見たなかでは一番気に入ってる。
あそこはね、恐竜の骨格標本のまわり、柵とか作ってないんだよ。
その気になれば手で触れる。
写真撮っても文句言われない。
恐竜好きにとっては天国のような博物館でした(‥

それはそうと、恐竜っていうのは、当然、大昔に滅びてしまったわけなので、実際にどんな色をしていたかとか、正確にはどういう形だったのかとか、あまりよくわかっていない。
恐竜の研究は、残された化石その他を使って多方面から研究されており、その成果は、日進月歩……とまではいかなくても、だいぶん、進んでいる。
20年前には、ゴジラみたいな直立歩行的な想像図で描かれていたけど、最近では、頭をぐぐっと前方に、長いしっぽを水平状態で後ろへのばした、T字状態に近いポーズで描かれてる。
名前の方も、変えられちゃったやつとか、あるしね。
ブロントサウルスが、アパトサウルスとか。

で、そういう研究の結果、少しずつわかってきた、恐竜の生態について、わかりやすく、かつ面白く紹介しているのがこの本だ。
「ちょっとそれは想像過多じゃないか?」
と思われるようなところも、散見されるけれど、いろいろな種類の恐竜について、素人でも、楽しめるように書いてあるのが、いい感じ。

最近は、CGで恐竜を動かしてるDVDなんかもあるんだけれども、こんな風に文章を目で追いながら、恐竜のいろんな姿を想像していくのも、面白い。

著者: 福田 芳生
タイトル: 恐竜の私生活―化石から探る恐竜たちの毎日
AD
いいね!した人  |  コメント(8)  |  リブログ(0)
2005-02-28 21:52:41

『エロイカより愛をこめて(31)』

テーマ:冒険・アクション
読み切り短編が3本。てことは、最初から最後まで大笑いできるということだな!
……もちろん、その読みは、当たった(‥

『エロイカより愛をこめて』は、スパイが活躍するコメディである。ゆえに、基本的には(いや建前としては)、クールでドライな国際的謀略に関するストーリーが進行し、その端々にギャグがちりばめられるという構成になるのだけれども、読み切り短編となると、これが一転して、ギャグが中心になるのだよな。

今回の収録作品は次の3つだ。
『ビザンチン迷路 番外編  瑠璃色事件』
『番外編 心理実験プロジェクトS』
『番外編 少年たちの黄金伝説』

冒頭の『瑠璃色事件』は、珍しく伯爵が中心で、それはそれで面白い。ラヴェンナのいかした古書商のじいさんが再登場したのには驚いたが、私は、あのじいさん好きなんだよな。
トルコの絨毯屋たちも面白いしね。

だが、実は最初から『心理実験プロジェクトS』に一番期待をしていた!
なぜってそれは。
少佐がケーキ屋さんをしている、というタダナラヌ情報が、以前から耳に入っていたからだ。
あの甘いもの嫌いな少佐が!
ケーキ屋だとぉ?(‥

事前情報は、正しかった。
確かに、少佐がケーキ屋をしてるじゃないか。
ロンドンで、チョコレートケーキをさいの目に切ってた、あの少佐が(笑)。
(いや、まあ、律儀に全部食べていたが)。
しかし、
「ケーキとは、分量、手順を正確にしなければうまく作れない」
というのは、本当なんだな。で、そのポイントは、確かに、ある意味少佐向きなのかもしれない。

掛け値なし!
最初から最後まで腹抱えて笑った。
一人きりの時で本当に良かった。
でなきゃ、笑いをこらえるために、死ぬ思いをしたに違いない。
それにしても、ロレンスの破壊力ってほんと絶大なんだな。
ある意味ロレンス慣れしてしまっている少佐や伯爵たちだけれども、ロレンスを初めて見る一般の人のところに追い放すとああいう事になるんだな(笑)。

トリをうけもつ『少年たちの黄金伝説』は、笑えるというより、微笑ましい一編かもしれない。
黄金伝説っていうのは、日本人にはあんまりなじみがないけれども、キリスト教の聖人の伝説を集めた本なんだよな。
ということで、これも、ドイツのとある村のローカルな「聖人」にまつわる物語ってわけだ。
注目点。
エーベルバッハ家の執事の本名が、今回ようやく明らかに!
家族構成も(全てではないが)明らかに!
どこで生まれ育ったのかも、明らかに!
……そしてやっぱり、少佐は、執事には勝てないのだな(笑)。

著者: 青池 保子
タイトル: エロイカより愛をこめて 31 (31)
AD
いいね!した人  |  コメント(6)  |  リブログ(0)
2005-02-28 19:44:56

『凶刃-用心棒日月抄』

テーマ:歴史・時代小説
ざしゅっ……!
……ばた。
しぃぃぃぃぃぃん……。

今の日本なら、人が住んでいるところであれば、夜になっても、まったくの暗闇っていうことは、ほとんどないだろうと思う。
でも、江戸時代はそうじゃなかった。
街灯なんてないから、提灯でも持って出なければ鼻をつままれてもわからぬ闇の中。いや、提灯があっても、ようやく足下が照らせるくらいだよね。
そういう、真っ暗闇の中から、白刃が襲ってくる!

かなり、怖い。

『凶刃』は、そんな事件が青江又八郎の国元で起こったところから、始まる。

これ、用心棒シリーズの完結編という事になっているんだけど、最初の3冊が時間的にそれほど間を置いていないのに対して、いきなり16年の歳月が過ぎ去っており、なんと青江も、せりだした腹を気にする、中年のオヤジになってるのだった。うあ(笑)。

16年の歳月は、もちろん、公平に誰の上にも流れているわけで、密命を帯びて江戸へ赴いた青江が出会うのは、大病をしたとかでびっくりするほど丸顔がしわの寄った痩せ顔になってしまった相模屋だったり、一度は仕官したのに、結局用心棒に逆戻り。妻にも死なれ、アル中になってしまった細谷。
16年の歳月って、むごいよな。
まさしく、青江にとっても「人生の秋」っていうような、そんな感じが、かつての朋輩や知人の姿を通して、青江にはねかえってくる。

そういう、人物群の変容が、それぞれのキャラに深みを与え、それがひいてはシリーズにもより深い陰影を与えていると思うんだ。
佐知と青江の関係も、なんだか円熟味を増している。(これが、凄くいい)。

ところで、単に前の巻に比べ、物語の中で16年の時が過ぎているという他に、この巻だけ他と違う点がいろいろあるのだ。
たとえば、青江が今回は脱藩しないという事!
従って、終始、藩の役付の武士として動く事になるわけ。
もうひとつは、連作短編ではなく、純然たる長編だということ。

実は、冒頭の斬殺事件をきっかけに、次第に浮き上がってくる「お家の大事」を、青江や佐知たちが、解明していくという仕立て。
しかも、見えない敵はなかなか正体がわからず、佐知や青江の命まで狙われているようだとあって、かなりハラハラドキドキなのだ。

いったい、凶刃の使い手は誰なのか。
なぜ、佐知たち、江戸詰の忍者たちを狙うのか?
謎が謎を呼ぶ感じで、けっこうノンストップで読んでしまう!

とはいえ、藤沢周平作品の特徴という事なのか、登場人物の感情の動きは、悪く言うと平板じゃないかと思うくらい、静かだ。
それが、クライマックスに近づけば近づくほど、そうなるんだよな。
ラストのところなど、青江は主人公というより、単なる語り手なのではないかと思えるくらい。
そのあたりが、私としては少し不満が残るのだけれど(笑)。
でも、エピローグにあたる部分など、じんわりとした青江と佐知の情感が底辺に流れているのが感じられて、いい雰囲気を作ってると思う。

著者: 藤沢 周平
タイトル: 凶刃―用心棒日月抄  新潮文庫(上の画像は単行本のもの)
AD
いいね!した人  |  コメント(0)  |  リブログ(0)
2005-02-28 13:00:19

『キャバレー』 古いジャズでも聴きながら

テーマ:冒険・アクション

これは、栗本薫のハードボイルドである。
主人公は、けっこういい家庭に育ち、いい大学に入って、ジャズが心底好きになってしまった青年。本物のジャズを求めて飛び込んだのは、場末のキャバレーで、まわりとのギャップに四苦八苦しながら、プロのジャズマンとして働き始める。

でもね、この話は、ある意味、主人公なんてどうでもいいのだ。
いがらっぽいような煙草の臭い、ウィスキーやビールの臭い、ぬぐってもぬぐいきれない、饐えたような……異臭。
そこで暮らす人々も、たとえば仲間のジャズマンにしろ、キャバレーのバーテンダーやホステスにしろ、どことなく、けだるく、人生を甘酸っぱく腐らせながら、それでも生きている。
これが、この物語の醍醐味だから。

そして、そういう世界が舞台であるからこそ、生々しく、ジャズの音が聞こえてくる!
繰り返し演奏される『レフト・アローン』の他にも、『ラウンド・ミッドナイト』とか、いろいろ。そうだな、フォービートで、スローに演奏されるジャズが、一番似合いそうだ。

主役を食ってる、ヤクザが、いい。
主人公を見守りながら、ヤクザとしての生き方を通す男の姿が、いい。
傷だらけになりながら、日の当たらないところを歩くのが、どういう事なのか、その生き方が、証明している。
口で語らないところがいいんだよ。
行動で語る。そこが、もう、ほんとに、ハードボイルドなんだな。

どちらかといえば、キャラを能弁にしがちな栗本薫作品としては、もう、意外なほど、
「いるだけで存在感がある。しゃべらなくてOK」
……いや、まあ、勿論、しゃべるんだけど(笑)。

映画の方も、すごくいい感じにできあがっていた。
サントラも浸れるできあがりなんで、改めて『キャバレー』を読む時は、『キャバレー』のサントラをかけることにしてる。
雰囲気が、層倍、楽しめるから。

ところで、作中ではビリー・ホリディが歌った『レフト・アローン』について、触れられていたのだけど、今、CDとか探しても、ないんですねこれが。
ビリー・ホリディのCDは(レコードから移植されて)それなりにあるんだけれども、この曲の入ったものがみつからない。
みつからないとなると、ますます聞いてみたくなるんだけれども。
やむをえず、ビリー・ホリディの歌が聞こえるつもりで、『レフト・アローン』をピアノでざかっと弾いてみたり、する。
私は、さすがにこれほど場末のキャバレーで弾いた事はないが……。

ふぅ。この音聞くと、やっぱり、また、『キャバレー』が読みたくなるかな。



著者: 栗本 薫
タイトル: キャバレー
いいね!した人  |  コメント(8)  |  リブログ(0)
2005-02-28 11:42:03

『剣客商売』とおいしそうな料理

テーマ:グルメ・料理・ドリンク
池波正太郎っていうと、
「出てくる料理がうまそうなんだよなあ」
これ、仲間内でよく聞く話。私もそう思う。
主なシリーズとして、鬼平、梅安、剣客商売の三つがあると思うんだけど、そのいずれにも、おいしそう~な料理が次々に登場する!

もっとも、シリーズによって、ちょっと傾向が違うっていう気がするな。
鬼平は、基本的に「外食」が多いのだ。
江戸市中のいろんな食い物屋が、料理屋、鰻屋、蕎麦屋から、一膳飯屋に菓子屋に団子屋。ほんと、次々出てくると思う。

梅安の場合はどちらかというと、家の中で男が手作りする料理。
特に、湯豆腐がよく出てくるのは、梅庵の相棒のせいだと思うけれども、そういう、なんてことのない料理がいろいろ登場する。

そして剣客商売は、主人公の一人、秋山小兵衛が、グルメなんだよね。
それで、女房のおはるにいろいろとうまいものを作らせるし、小兵衛が好んで入る料理屋なども、凝った料理をいろいろ出したりする。

なので、鬼平の方がいろいろと料理本は出てるんだけど、剣客商売の方が、なんとなく、登場する料理が精選されているような気がしてしまう。

ただ、これまた仲間内ではよく言われる事なんだけど、
「実際に作ったら、うまいと思うか、あれ?」
う~ん?
あ、いや、この『包丁ごよみ』に掲載されているものは、プロの料理人が小説に出てくる料理を、作り方などいろいろ吟味しているので、ほんとうまそうだなあって思うし、この通り作ったらうまいと思うよ、絶対にね。

だが、池波正太郎の筆にだまされてはいけない!(笑)
たとえば、『剣客商売』のしょっぱなでは、秋山大治郎が、こんなものを食べているのだ。
「麦飯と根深汁」
この時、彼はとっても貧乏なので、おかずがありません!
で、根深汁ってのは、長ネギです。長ネギのみそ汁。
それだけをおかずにして、「麦飯」を喰ったら、うまいか?
どうですか?

たまたま、私自身は、麦飯も好きだし根深汁も好きだ(笑)。
それなりに、作りたてなら美味いと思って食えるかもしれない(特に、道場帰りだったりすれば)。
でもやっぱ、ちょっと寂しいよなあ(‥

ところが、それを、秋山大治郎は、実になんとも、うまそ~うに、食うのだ!
読んでいると、
「あ~、これ食べてみたいな」
そう思わせられちゃうんだな。
「根深汁と麦飯……いいかも~」
……もう、だまされてます!(笑)

でも、それだけだまされちゃうのは、池波正太郎が、ほんとに、「料理」というものが好きだからだと思うんだ。
別に、格別「美食家」というのではなく、「食べる」という事が、好きだったのではないかと。
ほんとに、なんのへんてつもない食べ物であっても、おいしく食べる術を知っていて、おいしく食べてきた人なんじゃないかなあって。

さて、この本自体は、『剣客商売』を中心に、その他の池波作品からも、料理が出てくるシーンをいちいち引いてきてある。
必ず、料理のカラー写真。
簡単ながら、レシピが添えられ、実際に作ってみた板前さんの一言も載ってる。春夏秋冬、メインの食材を章のタイトルにして、それを中心にだいたい一食分の献立になるように編成されてるんで、
「今日は池波風の食卓にしよう!」
なーんて思い立って、この通り作ってみても、いいかも。

もっとも、私などには、載ってる献立まるごと全部、作るのは絶対無理。
でも、ちょこちょこ探して
「あ、冷やし汁ってこういうのかあ!」とか、
「菜飯くらいならやれるかな」とか、
意外にみつかるもんだ(笑)。
今の季節だと、まだ寒いし「冬」の項目を見て、
「蕪のみそ汁ってそういや最近喰ってないな」とか
「やっぱ大根の煮物が食いたい」
なんて思ってみたり。
うおっ。さっき出した、「根深汁」も作り方が載ってるぞ。
……むろん、「うげ」と言うほど凝った料理もいろいろ入ってます(笑)。

ただ、この本、難点がひとつある。
ページをめくっているだけで……。
腹が減ってきます(ぱた)。

著者: 池波 正太郎, 近藤 文夫
タイトル: 剣客商売 包丁ごよみ  新潮文庫
いいね!した人  |  コメント(6)  |  リブログ(0)
2005-02-28 10:53:25

『銀河おさわがせ中隊』

テーマ:海外SF・ファンタジイ



アスプリンといえば、今じゃあ、〈マジカルランド〉の方が有名なんだけれども、紹介されたのはこっちが先なのだ! 『銀河おさわがせ中隊』。
これは、ハチャメチャに面白いスペースオペラである!

銀河にひろがった人類版図で、5本の指に数えられるくらいの若き大富豪ウィラード・フールは、一度軍隊勤めをしてみたかった。
もちろん、士官として兵隊の指揮をとってみたかったのだ。
な~んていうと、
「ああ。いるよね。そういうやつ。お金持ちのおぼっちゃんの兵隊ゴッコ?」
と思う人がいるだろうし、実際、銀河で、そう思った人はたくさん出てくるのだし、事実彼はカネを使って宇宙軍の階級を買い、思い切り、大失敗をしてしまった!
……ってところから、話が始まる(笑)。

ほんとなら、厳罰を受けて当然の、彼がおかしたミスというのは、ある和平会談の場に、機銃掃射をかけたことだった。をいをいをい(‥
でも、そいつはちょっとした行き違いってこともあるし、なんといっても
(宇宙軍はフランス外人部隊同様、入隊前の事は問わない、宇宙軍では変名を名乗る事になっているにもかかわらず)その正体が、正体。
じゃあどうする?
そこで宇宙軍は、
「よし、ならば1階級くらい昇進させてもいいから、ヤツが音をあげるような部隊に指揮官として送りこんじゃおう! マスコミをかわすために名前はかえさせればよいのだ」
こう考えた。

そういうわけで、ジェスター大尉ことウィラード・フールが送りこまれたのは、思いっきり「おちこぼれ」ばっかり集めた中隊だったのだ(笑)。
そこは、人間と、非人間が、いりまじった混成中隊で、士官も下士官も兵士も、箸にも棒にもひっかからないんだな。
落ちこぼれと一口にまとめても、実体はほんとにさまざま。
スケッチばっかりしている美術家志望の女性士官や、自分にも他人にもニヒルな曹長。メチャクチャ、キレやすい調理係軍曹がいるかと思うと、どうやっても人間の動きにはついていけない、軟体動物(?)系異星人とか。
スゴイ読書家にして平和主義者の異星人とか……。

ところが、これらを落ちこぼれではなく、
「人材の宝庫である」
という、今までの宇宙軍とは正反対の見方で、適材適所を心がけ、ウィラード・フールは、正規軍精鋭部隊とはりあえるほどに、中隊を鍛え上げてしまうのだ!(笑)
シリーズ第1巻にあたるこの話では、ともかくその中隊改造計画が、奇想天外で面白い。もちろん、最後に精鋭部隊と対決するあたりは、クライマックスになるわけで、読んでいても、大声で中隊を応援してしまうの間違いなし!

さあ。想像できますか?
こんなような
「どこをどう取れば、兵士になれるんだって?」
みたいな中隊員が、どう変化していくのかを。
そして、精鋭部隊とどんな風に対決するのかを!

抱腹絶倒するほど面白い物語を読みたいなら、これはイチオシだぞ。
SFだからちょっとわかりにくそうでやだな~、なんて心配は、一切、ありません( ‥)/


著者: ロバート アスプリン, Robert Asprin, 斎藤 伯好
タイトル: 銀河おさわがせ中隊 ハヤカワ文庫SF
いいね!した人  |  コメント(2)  |  リブログ(0)
2005-02-27 20:30:45

『刺客-用心棒日月抄』 女たちの不思議な魅力

テーマ:歴史・時代小説
青江又八郎またまたの脱藩。でも、今度は以前助けられた、江戸藩邸の女忍者たちを刺客の手から守るという仕事で、
「今度はやりがいがあるな!」
そんな感じ。
でもやっぱり、青江は用心棒をしながら、活動する事になるんだけどな。

ところで、「用心棒」という仕事をテーマにしていて、主人公が剣客であるにもかかわらず、剣劇シーンはイマイチだと思う。
目立ってヘンだというのではないけれども、ところどころ
「あれ? この動きは?」
と、引っかかるようなところがあるからだ。

それでも、この小説が面白いというのは、「用心棒」というものを、単に剣をふるう仕事というのではなく、人間関係を客観的に見る立場の仕事としてとらえているからなんだろうな。

しかも、それぞれの「家庭の事情」に深く立ち入りながら、あくまでも第三者として、距離をへだてた視点から、見守る。
そのせいか、(あるいは、自ら強い感情をあらわにする事のない、青江の性格からくるものか)、藩政を狙う悪玉を含めて、ギラギラした悪とか、どぎつい表情をむきだしにする人間というのが、出てこない。

特に、女たちは、みな、不思議な魅力をもって映る。
女忍者の統領である佐知はもちろんのこと、たとえば口入れ屋である相模屋の娘、あるいは青江が住む長屋の隣人、徳蔵の女房。
無口な娘だったり、ごくふつうの長屋のおかみさんだったりするのに、なぜか、その立ち働く姿が、とても魅力的。
美人とか、きれいとかいうのではなく、人間的な魅力に満ちてるんだな。
抑えた筆致の中に、時々、キラッと光って見えるような、そんな魅力。読んでいて、そういうのを見つけると、ちょっと嬉しくなる。

著者: 藤沢 周平
タイトル: 刺客―用心棒日月抄(じつげつしょう)  新潮文庫(上の画像は単行本のもの)
いいね!した人  |  コメント(4)  |  リブログ(0)
2005-02-27 14:07:42

『孤剣-用心棒日月抄』 昔も今も上司ってやつは!

テーマ:歴史・時代小説
藩内の陰謀に、思わぬ経緯から巻き込まれ、許嫁の父を斬殺して脱藩した青江又八郎。『用心棒日月抄』は、その青江が江戸で苦労する話だったのだけど。
続編が、ひいふうみい。3冊出ているのだ。
裏表紙の紹介文をちらりと見ると、
「青江又八郎は再度脱藩した」(『孤剣』裏表紙)
「青江又八郎は三度び脱藩」(『刺客』裏表紙)
おいおいおいおい(‥
そんなに何度も、脱藩しては帰参、するものなのか?

いくらなんでもなあ。

そう思ったので、続編を読むのは、ちょっとコワかった(笑)。
でも、そこはそれ。
度重なる脱藩にも、ちゃんと、相応の理由と形がつけられていた!

青江又八郎が江戸へ出奔して、用心棒稼業に入らなければならなくなった、問題の「陰謀」って、まだ完全にカタがついたわけではなかったというのが今回の話の発端。
大ボスはうまく倒したけど、とんだ置きみやげがあって、それを誰が入手するかで藩の運命が変わる!
置きみやげを狙っているのは、「陰謀を企んだ人」「陰謀を防いだ人」「藩の内情を探る幕府」、なんとこの三者なのだ。
藩内の勢力争いもさることながら、もし、幕府にその置きみやげ(要は陰謀の証拠物件だ)をかっさらわれると、藩が取りつぶされるかもしれない。
「お家の大事」なのだ。

しかーし!
いくら、相手方や幕府方にかぎつけられちゃあマズいといっても、
「家族には生活していけるだけのものは渡そう」といっても、
青江又八郎は、一銭も、活動費をもらう事ができないのだ(‥
いくらなんでもそりゃないだろう。
そう思ってしまうんだけど、考えてみれば、現代だって、そういう無理をいう上司はいるよなあ。
「こいつ、思わぬ能力があるぞ」
と目をつけられた時、出世とか特別手当につながるより、苦労する方が多かったっていう経験、ないですか?
大なり小なり、そういう上司ってどこにでもいそうな気がする。

この、イヤ~な上司のせいで、藩との関わりすら断たれたような状態で、密命を果たさなければならない青江の苦労は、前回を上回ると言っても良さそうだ。自力で食い扶持を稼ぎながら、敵方や公儀隠密より先に、ブツを持った男を捜し出してそれを確保する。
ぐはあっ。おまけに、途中、地震と火事が襲ってくるし、当人も病気に倒れるなど、踏んだり蹴ったりなのだ。

踏まれても強くなるのは麦と雑草くらいなもので、心身ともボロボロで、黄昏れそうになった青江を影からたすけてくれるのが、女忍者で、今回、このキャラがいなかったら、読むのがつらかっただろうと思われる。
実はこの忍者って、最初の巻のラストで青江を襲った女なんだよな。
その時、命を救われたのを恩に感じて、そりゃもう、影から探索方に大活躍してくれる。

忍者小説っていうのも時代小説では人気のあるもので、いろんな作家がいろんな忍者を書いているけれど、なんとこの女忍者、青江を襲った時のような短刀術さえ、今回はほとんど見せません!
そりゃ、脇役だからということもあるかもしれないが、普通想像するような
「忍者らしい活躍の描写」
これが、全くと言っていいほど、ないのだ。

本来、隠密ではない、一般の武士が、たまたま忍者に仕事を助けてもらう事になった場合、その接触ぶりはこうもあろうか。
そういう点で、かえって、
手裏剣シュッシュッシュッ、とか
通りすがりにズバッ、みたいな。
そんな描写が入るよりも、リアルに、彼女が「女忍者」であるという事が、行間から迫ってくるのが、面白い。

また、彼女の部下は、少なくとも青江の前に現れたものは、全て女なんだな。
これも面白い!
考えてみると、武家社会では女はどうしても、軽んじられてしまう。その分、目立たずに隠密活動ができるのかもなあ。
これを読んでいると、なんか、そんな気がしてくる(笑)。
部下の女忍者たちも、全員、さりげない様子が、とても良い感じ。

そういうわけで、青江の用心棒ぶりも、前回同様、見ていて面白いといえば面白いのだけれど、この巻に関しては、女忍者たちが、目立って面白いと私は思うのだ。

著者: 藤沢 周平
タイトル: 孤剣―用心棒日月抄  新潮文庫(上の画像は単行本のもの)
いいね!した人  |  コメント(10)  |  リブログ(0)
2005-02-26 23:12:22

『空飛び猫』 ほら、見て見て猫が飛んでるよ!

テーマ:海外SF・ファンタジイ
なんとなく、窓から外を見る。
優雅に視界を横切っていく猫の姿。
あれ? ここって、ビルの5階だよね?
今の猫は……なに。

空を飛ぶ猫というイメージは、わりとあちこちで使われている。
漫画でもなにげな~くそこらに登場しているし、小説でも。あるいは絵本でも。それはもう、作品によって、翼があったりなかったりするのだけれど、なぜか猫は、空中と相性が良いらしいです( ‥)/

なんでだ?
高いところから落ちても、くるっ、ひょいっ、ぱっ!
宙返りしてちゃんと四つ足で着地できる、有名な能力のせいなのか?
それとも、実は、ひそかに、そういう種類のUMA(未確認動物)が地球に広まってるんだろうか。

ともあれ、そんな、空中をいく猫たちの中で、最も魅力的なのが、この『空飛び猫』なのだ。
タイトルからして、すでに空飛びです。

作者は、SFやファンタジイのファンならおそらく知らぬものはないであろう、アーシュラ・K・ル=グィン。
訳者は、日本の文学界にその人ありと知られた村上春樹。
なかなかスゴイ組み合わせ。
そしてね、これの良いところは、絵本だっていうこと。

猫って、あの姿態が魅力的なわけで、やっぱり、絵がたくさん入っていればいるほど、手に取った時、口元に笑みが浮かんでくるというものじゃないか。
それが、絵本だよ。
どのページにも、翼をもった猫の挿絵があるのだ!
う~ん、これを天国と呼ばずしてなにを天国と呼ぶのだ(笑)。
いや、もちろん、猫好きにとってはの天国だけれどな。

そういうわけだから、手にとったら、まずぱらぱらとページをめくろう。
どのページにも猫。
翼が非常によく似合う、不思議な猫たちが、いるいる、たくさん、本の中にちりばめられている。それとも、猫の事だから、実は気ままに本の中を飛び回っているのかもしれないな。

とりあえず絵を見終わった?
じゃあ、物語も読んでみようよ。
なぜか、いきなり翼をもってしまった猫のきょうだいが、どんな冒険をするか。それはもう、わくわくどきどき、魅力的。

読み終わった?
じゃあ、もう一度、窓から外を見てみようか。
ほら、あそこに、空飛び猫が……見えるかも!

著者: アーシュラ・K. ル・グウィン, Ursula K. Le Guin, S.D. Schindler, 村上 春樹, S.D. シンドラー
タイトル: 空飛び猫
いいね!した人  |  コメント(9)  |  リブログ(0)
2005-02-26 16:33:34

『用心棒日月抄』 元禄と四十七士と用心棒

テーマ:歴史・時代小説
ハードボイルドというテーマで記事を書いた少し後、山川健一さんから、この本はどうだろうと推薦してもらったのだ。
「藤沢周平かあ……」
初めて耳にする名前ではないけれども、まだ読んだ事はなかった。

私が、その名前を最初に心にとめたのは、時代劇チャンネルで、『清左衛門残実録』という番組を放送し始めて、それの番宣を見た時だ。
隠居した武士が主人公っていうのが、なんか渋いな、そう思った。だから、何かいいのがあったら、読んでみようかなあ。藤沢周平。そう思っていた矢先だったんだな。

ところで時代小説っていうやつも、いろんな種類があって、サブジャンルに「剣客(剣豪)小説」っていうのがあると思う。
要するに、剣術使いが主人公の小説っていうやつだ。
これ、私が一番好きなサブジャンルだ。

とはいえ。時代小説が好きだけれども、本筋は海外もの、それもSFとファンタジイがメインなので、時代小説自体、それほど広く読んでいるとは言えない(たぶん)。
一番好きなのが池波正太郎で、司馬遼太郎、山田風太郎、隆慶一郎……。
池波正太郎が、ダントツ。

これらの作家が書いたものに比べると、藤沢周平の小説は、ちょっと違う。
何が違うって、それは、剣劇の描写が違うんだ。
剣客が主人公であるからには、当然、白刃を交えるシーンに迫力がなくちゃいけない。たとえば、山田風太郎は、一番、けれんの強い、極彩色な情景描写をしてくれるし、池波正太郎の場合は、対決している人たちの背景を描写しつつ、迫真性のある剣劇を見せてくれる。
その点、藤沢周平は、そういったリアルさが、ないのだ。

リアルさがないというのは、「リアルじゃない」というのとは違う(笑)。
剣道をちょっとでもやった事があるなら(私は剣道はちょっとしかやってないんだが、それでも)、斬り合いの「手」が、いかにもありそうな形に書かれているかどうかは、わかる。
別に、藤沢周平の描写に、不自然があるわけではない。
ただ、手応えが実感できるような描写じゃないんだよなあ。
「あの試合では、Aがこう、Bがそれを受けてこうでした」
と事後報告を聞いているみたいな、そんな感じ。

藤沢周平自身は、肺病を5年も患ったそうだから、あまりそういう、肉体的に激しい行動を取る人ではなかっただろうというのも想像はできるのだが。
そのせいか、藤沢周平の小説は、周囲の情景であるとか、登場人物の肉体的な感覚よりも、むしろ内面の心情に重点が置かれているように思う。

やむなき事情で江戸に出てきた若い侍が、生活のアテもないままに、口入れ屋にいって、用心棒稼業をする。
それも、華々しい仕事じゃあない。
だって、最初は、犬のおもりなんだから!(笑)
それも、金持ちが膝の上に抱いてるような、きれいな狆とかじゃない。
どこにでもいるような、雑種っぽい、駄犬。
あ~あ(笑)。

あるいは、商家の娘が三味線だか小唄だかのお稽古に通う、その送り迎え。
ストーカーっぽいのがいるよという事なんだけど、大の男、それもかつては百石取りの侍が、小娘のおもり。
や~れやれ(笑)。

でも、生活のためには、あ~あとかやれやれなんて言っていられないわけで、青江又八郎がんばる!
それも、しゃかりきにがんばるとか、そういうのとは違う。
「江戸とはこういうところか」
と、肌で感じながら、かなり淡々と……。
仕事をしていくというより、むしろ、生きていく。
そんな感じがする。
観察者として淡々と周囲を見ながら、いや、自分自身をも観察しながら、生きていくのだ。

う~ん、あまり、ハードボイルドっぽくはないよね(‥
でも、この小説は、面白いのだ。
どこがと言われると、実はこれ、忠臣蔵を
「第三者が外から見ている」
そういう視点で書いたものだからだ!

あくまでも江戸で暮らしている青江又八郎が、偶然、赤穂浪士の関わる事件に、仕事上関わっていくという形。
忠臣蔵をテーマにした小説はいろいろあるけど、こういうスタンスのものは、初めてだ。赤穂浪士というからには、彼らの生活はそもそも関西の赤穂にあるわけで、忠臣蔵を扱った小説なら、一度は赤穂なり、京なり、大阪なりに舞台をうつすものなのだけれど、これは、そういう事はない。
もうほんとに、あくまでも、江戸で用心棒をしている青江がたまたま関わった赤穂浪士を通してしか、事件を見ていない。
朋輩である細谷という用心棒は、かつて同じ家に仕えていたものが浅野家にかかえられたという事情から、もうちょっと赤穂浪士に肩入れをしている感じだけれど、青江自身は、な~んの関係もない。
なので、
「心情的に赤穂浪士に興味はあるし応援もしたいが、格別の肩入れはしないし、吉良家を敵視するというほどのこともない」
そういう、ほんとに、七歩くらい感情的にも隔たったところから忠臣蔵事件を見ている。
そのスタンスが、なんだか、良いのだ。

元禄という、江戸時代では一番豪華絢爛だったような時代が舞台なのに、青江又八郎の目を通すと、それを黄昏の淡い光の中で見ているかのように、ペイルトーンのものとして感じられる。

そこで、ふと思ったのだけど、情に流されず、淡々と生きていく、その生き方が、ハードボイルド的と言えるかもしれないなあ。

著者: 藤沢 周平
タイトル: 用心棒日月抄
いいね!した人  |  コメント(0)  |  リブログ(0)
1 | 2 | 3 | 4 | 5 |最初 次ページ >> ▼ /

AD

Ameba人気のブログ

Amebaトピックス

      ランキング

      • 総合
      • 新登場
      • 急上昇
      • トレンド

      ブログをはじめる

      たくさんの芸能人・有名人が
      書いているAmebaブログを
      無料で簡単にはじめることができます。

      公式トップブロガーへ応募

      多くの方にご紹介したいブログを
      執筆する方を「公式トップブロガー」
      として認定しております。

      芸能人・有名人ブログを開設

      Amebaブログでは、芸能人・有名人ブログを
      ご希望される著名人の方/事務所様を
      随時募集しております。