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2005-01-31 23:28:46

『永遠の森-博物館惑星』

テーマ:日本SF・ファンタジイ
その博物館は、宇宙……ラグランジュ3にある。
美術品だけではなく、人類のありとあらゆる芸術品が収蔵されている。
また、ありとあらゆる芸術が披露される場でもある。
まさしく、それは、美の殿堂。 ひとつの小惑星をそのまま博物館にしたアフロディーテは、オーストラリアと同じくらいの大きさがあり、それがまるごと博物館だというから、凄い。

ともかく、「芸術」に関係する事なら何でも集められているだけでなく、四季によらず、整備されたさまざまな花園に、美しいビーチまであるという。

そんな中で、各部門を統括し、橋渡しし、あるいは調停する役目をになう上位の総合部門に所属する学芸員タシロは、日々、部門間で発生するあれこれのトラブルに苦労しているのだけれども……。


「美」とはなんだろう?
連作短編として、博物館惑星で起こるいろいろな事件を扱いながら、テーマとしては、常にそれが中心にあると思う。

これって、美学が常に追究している事だと思うけれど、それだけになかなか難しいよね。なぜなら、人によって、何が美しいか、感じ方は十人十色だから。それを模索しながら、ひとつひとつの物語で、いろいろな「美」をみつけていく。その過程が、楽しい。

もうひとつ、隠れた(といっても、半分くらいしか隠れていないけれど)テーマになっているのが、「人を愛する心」じゃないかと思う。
もちろんそれは、単なる、男女の間のものではなくて、親が子を思う心とか、少年が人魚姫を想う心とか、そりゃもうさまざまだ。

そして、物語は、とても不思議な「ラヴ・ソング」で幕を閉じる。
異星からもたらされたものかもしれない、メッセージが託されているかもしれない、不思議な蓮の花。
コンサート用グランドピアノの名品と、老いたピアニスト。
いろいろな愛の形が複雑にからみあい、絶妙のハーモニーをつくりあげてみせるのだ。

連作短編であるから、物語全体のクライマックスというのとは、少し違うけれども、実にいい感じで読み終えられるんだよな。

未来の、宇宙にある博物館だし、ちょっとしたSF的な仕掛けもあるのだけれど、SFが苦手な人でも、きっと、すんなり読めるんじゃないか。
ロマンティックというよりは、優しい。
ちょっと心地よさも感じられる物語なんだ。

著者: 菅 浩江
タイトル: 永遠の森 博物館惑星 ハヤカワ文庫JA
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2005-01-31 20:28:52

『実録!鬼嫁日記』 それはきっと。

テーマ:その他
最近、喧伝されているので、アメブロではきっと誰知らぬ者とてなさそうな、『実録!鬼嫁日記』。白状すると、私も、時々、当のブログはのぞいていた。いや、最初はね。
「このタイトルは、なにっ」
……てところで、のぞきに行ったのだ(笑)。


最初は、マジで、思った。
「……実話かよ?」
ネタじゃないのか?
いくらなんでも、これは作り事だろ?
てか、ふつー、これだけ虐待されたら、離婚するだろう?
私だったら、絶対に、
「フザケルナ!」
と、頬のひとつも張るとか、していたと思う。いや、実際に暴力に訴えてたかは別として(笑)。抵抗はしたと思うなあ。

だって、読む限り、鬼嫁は、あまりにも理不尽で身勝手だ。
私は、女性の友人もたくさん持っているけど(ネットのおかげです)、いくらなんでもこんな人は、いない。見たことない。

だが、ふと、考える。
そこまでの虐待が、実話であったとして。いや、仮に実話でなかったとしても。なぜ、この話は、愚痴になっていないのだろう?

そうなんだよ。
確かに、ヒドい嫁の行状が語られている。
語り口も、いかにも、トホホな感じだ。
ところが、負の感情が行間から漂って来ないんだよね。

これは、カズマ氏が、いくらヒドかろうとも、嫁のことを(そして、壊れたダンプのような! 娘のことを)心の底から、愛しているからではあるまいか?
愛情があるから、耐える事ができ、もちろん、離婚もせず、それをブログに書いても愚痴に見えないんじゃないか?

してみると、そもそも、嫁があそこまで傍若無人、無人の野を行くがごとく、やりたいほうだいなのは……実は、カズマ氏の愛情を信じて、甘えきっているからじゃないのか!
ねえ?
離婚されない、殴られない、絶対愛されている、そういう自信がなかったら、あんな事まではできないんじゃないのか?

はたから見ると、すごく理不尽ではあるが、あのヒドい行状は、一種の愛情表現なのかもしれない(汗)。
そして、ほんとのところ、『実録!鬼嫁日記』は……壮大な、ノロケなのかもしれない……。

著者: カズマ
タイトル: 実録!鬼嫁日記
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2005-01-31 11:55:49

『色々な色』 和名が好き

テーマ:人文・社会・ノンフィクション
色について意識したのはいつ頃だろう。幼稚園の「おえかき」かな。
クレヨンで色々な色を紙に塗って、その上から更に真っ黒にクレヨンで塗りつぶす。それから、楊枝の先でひっかいて絵を描くと、黒地に、ネオンサインみたいに線が浮かんできれいだった。そんな画法(というのかな?)を、幼稚園で習った。あれは好きだったなあ。一度しかやらなかったけど(笑)。

絵の具箱をもらったのは小学校に入ってからだよね。
クレヨンとか色鉛筆と違って、色を混ぜる事ができるのが、すごく楽しかったんだ。クレヨンと同じ12色が基本。でも、絵の具なら、混ぜて別の色を作れる。赤と青を混ぜて紫に。白を入れて藤色に。
いろいろ試して、失敗すると、すごく変な色になってしまう。
絵を描くより、そっちの方が面白かったな。

絵の具についていた名前も、なんとなく不思議だった。
ビリジアンってなんだろう? みどり、ではいけないの?
コバルトブルーのコバルトって何?

高校の時は、よく、NHKFMを聞いた。夜、音楽の間にエッセイのようなものをはさむタイプの番組があって、それが好きだった。そこで聞いたエッセイの中に、色についてのものがあった。
中学の時、古典を読んで、なんとなく記憶に残っていた日本の色名。なんか面白いなあって思ったんだよね。

仕事で広告部門にまわされていた頃。
広告原稿で細かに色指定をしていかないといけない。そのために使う、色見本のチップに魅せられた。インキの会社が出している見本なわけだけど、印刷に使うインクですら、こんなにたくさんの色があるかと、びっくり。

色っていうのは、もちろん、目で見るものだよね。
人間はふつうに、虹の七色を見る事ができる。
でも、たとえば犬なんかは、ほとんど白黒の世界で生きているんだそうだ。生物によって、見えるものが違う。感じ取れる色にも限りがあるというのが不思議だ。そういえば、人間は、紫外線と赤外線は見る事ができないよね。
そういう光線を色として見る事ができる生物も、どこかには、いるのかもしれないな。

人間が色につけた名前は、ほんとに、無限に思えるほどたくさんある。
学童用じゃない、もうちょっと専門的な画材で見ると、絵の具にはランプブラックなんていう「黒」の絵の具があって、なんでそんな名前がついているんだろうと思っていた。
絵の具の色についている名前は、成分とか、製造方法からくるものが、わりと多いんだというのを、後になって、知った。
ランプブラックというのも、要するに、煤の色。ランプのほやなどにたまる煤、あれの色っていう事らしい。

色の名前を聞くだけで、いろいろと想像の翼が、あちこちへはばたいて行っちゃうのは、色の名前にこめられたイメージや思いがあるからなんだろうなあ。
私が、一番、心惹かれるのは、古くから伝わる色の和名。
読んだり聞いたりしただけでは、どんな色なのか全然わからないものもあるけれど、面白いものが多いんだ。
「甕のぞき」……染料の藍。その甕をのぞいた程度にしか染まってない藍染めの色っていうことで、ごくごくうすーい、藍色(ていうか、水色?)の事なんだそうだ。面白いよね。

そういう、色の名前。
色にまつわること。
それが、たくさんのきれいな写真とともに、解説されている。
コラムでは、色についての科学的な解説がちょっと入っていたり。
読み物としても面白いし、読み進むほどに、
「色名って文化だなあ」
って感じさせられる。
ちょっと疲れている時には、写真だけ目で追っていって、時々、添えられた文章を読むのもいい感じ。

著者: 近江 源太郎, ネイチャープロ編集室
タイトル: 色の名前  1996年『色々な色』として上梓
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2005-01-30 11:15:12

『仮面ライダーSPIRITS』 懐かしい? いや、燃えるんだ!

テーマ:日本SF・ファンタジイ
仮面ライダー。それは、子供の頃、真正のヒーローだった。ウルトラマンなんかとは違う。
なぜなら、仮面ライダーは、どこかわけのわからない「ひかりのくに」からやってきた異星人なんかじゃない。
「神に選ばれた戦士」じゃない。
仮面ライダーは、何よりもまず、人間であって、悪の組織による犠牲者である。でも、仮面ライダーが悪と戦うのは復讐のためではなく、人々を守るためなのだ!

燃えるだろう?
燃えなきゃウソだろう?

そんな仮面ライダーを、甦らせてくれたのが、『仮面ライダーSPIRIRTS』だ。
1号、2号、V3。ライダーマンを含め、スーパーワンまで!
勢揃いした、というより、もし仮面ライダーのどれかを、最後まで見ていたなら、きっと憶えているはずだ。
「彼は、そして、新たなる戦いへと旅だっていったのだ」
締めの、あの一言。
そう、日本とは別の国で悪と戦い続けているという事になっていたよな。
まさしくその通り、世界中で戦い続けるライダーたち。風のように現れ、人々を守るために戦う。
……正義のためじゃないんだ。
そうじゃなくて、仮面ライダーにとっては、
「人々を守る事が正義」
なんだよな?

なかなか、全員がひとつの場所に集う事はないけど、この物語では、おおむね、2人くらいの組になってる事が多いみたいだ。
それが、テレビシリーズの要因をきっちりおさえているのがニクい。
たとえば、1号と2号が組むのは当然としても、スカイライダーとV3、みたいな。
おまけに、全体をまとめる進行役を担うのが、本郷猛の友人、FBIの滝捜査官であるところも、ニクい。

でもな、やっぱり一番いいのは、読んだ時の手応えが、単なるマニアな本でもなく、見た目かっこいいヒーローものでもない。
「ヤツらの行動がかっこいい!」
子供の頃に大好きだった仮面ライダーが、今、そこにいる。
そういうことだ。

今でも憶えている。
仮面ライダーでは定番だったけれど、子供たちを人質にとられたライダーが、戦闘員たちの攻撃に耐えているシーン。
怪人じゃないんだよ。いわゆる雑魚である戦闘員たちにタコ殴りにあっているのだ。手をあげれば、子供たちが殺されてしまうから。
あれが、仮面ライダーという存在の、真髄だと思うのだ。

守ること。
そして、耐えること。
決して、あきらめたりしないこと。

燃えるだろうっ?






著者: 村枝賢一・石ノ森章太郎
タイトル: 仮面ライダーSPIRITS [少年向け:コミックセット]
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2005-01-29 13:47:45

『ほしのこえ』 ノヴェライズですが

テーマ:日本SF・ファンタジイ
これを読んでみたいと思ったのは、先日CS放送で元となったアニメーションを見たからだ。で、ノヴェライズが大場惑だったから。大場惑って、SFマガジン誌上で何度か短編を読んだ事があって、ちょっと興味があったんだよな。


著者: 大場 惑, 新海 誠
タイトル: ほしのこえ  MF文庫


とはいえ、まず第一に、これはノヴェライズである(笑)。
アニメーションの方も、きれいな絵で、悪くはなかったが、あれはちとストーリーがわかりにくかった。さほどの長さでもないフィルムに、情報を詰め込みすぎというか、背景の情報が大量なのにそれがうまく反映されていないという感じだったのだ。
だから、この作品に関しては、ノヴェライズが絶対に面白い。アニメの方と一緒に鑑賞すれば、多分、言う事ない(笑)。

ストーリー的には、SFでもあるし、ラヴストーリーでもある。但し、プラトニックだぞ。ていうか、シリウスに向かう航宙船と地上に分かれているんだから、プラトニック以外になりようがないとも言えるよな。
究極の長距離恋愛だ。
オトナになってしまうと、長距離恋愛って、なんかたるくて続くのが大変で、やっぱ金かけてもいいから会いに行っちゃおうかとか、だんだんめんどくさくなっちゃったりとか、妙に生臭くなるような気がする。

でも、十代の時ってどうだろな。
私は、もしかするとオクテだったのかもしれないけど、ちょっとかわいい子とか美人の先輩とか、いいなあと思ってもまともに声をかけられなかった記憶がある。
で、逆に声をかけられると、今度はやたらブアイソになったりとか。
だから、もしそういう年代の頃にだぜ。
ちょっと気になっていた子が、いきなり、宇宙へ行ってしまい、メールのやりとりしかできなくなった。
としたら、なんかすごく、そこにこだわっちゃうような気がする。
よく、死んだ人とか思い出の中の人には勝てないっていうけど、二度と会えるかどうかもわからない、「思い出の人」でもあり、かつ、メールのやりとりは凄く長い間隔をおいてでも、できちゃう。
やけに強力じゃないですか、これ?
ラヴストーリーとしては、めっちゃくちゃ最強のシチュエーションじゃなかろうか。

おまけに、ことさら将来設計なんかない十代の頃にそれがあると、自分の進路までそれに影響されちゃうっていうやつ。
なんかわかる気がするんだよなあ。

これは私見だけど、プラトニックの方が、絶対、肉体関係があるより感情として強力だと思うよ。
しかも持続的なパワーになると思う。

タイトルの「ほしのこえ」って、宇宙空間を越していく、気の遠くなるようなメールのやりとりを直接的に指していると言えるんだけど、もちろん、もうひとつの意味がある。

それは、謎の「タルシアン」っていう異星人のこと。そもそも、ヒロインが宇宙に行くはめになったのは、この異星人の調査というのが大前提だったりする。なぜか、いや、おそらくは政治的なオトナの事情ってやつで、調査とコンタクトより、
「やつらと戦い、追っ払う」
という事が、艦隊の目的になってしまってるんだけど、なぜか、彼女らが遭遇するタルシアン。それは、かなり腕のいいトレーサーパイロット(名目上は調査を担当する、でも戦闘に使われているロボットみたいなもんのパイロット)であるヒロインに対して、コンタクトをかけてくるんだな。
不思議と、人類が自分たちを攻撃してくることをなじるでもなく、非難するでもなく、どちらかというと、ヒロインを励ましているようにも思えるし、メッセージを託そうとしているようでもある。

もっとも、そのメッセージというのが、曖昧なのだ(笑)。
明確な意志というものが感じられない。むしろ、「気持ち」を託しているというような感じ。
ヒロインがコンタクト相手に選ばれたのも、彼女がそういう「気持ち」を、地球に残った主人公に送り続けていたからなのかもしれない。

なんかね、そういうあたり、SFとしてもかなり上質なんじゃないかと思うのですよ。読みやすく、難しくなく、SFとしてもかなり面白い。

ちなみに、アニメの方では明示されてなかった、ヒロインと主人公の再会もちゃんとラストには、ある(笑)。

ただ、タルシアンについてはやはり全くといっていいほどわからないので、できれば小説で続きを読みたいものだ。出してくれないかな。



タイトル: 「ほしのこえ」The voices of a distant star
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2005-01-29 11:45:30

『魔法』 凄いのか? 凄いのかも。だが……

テーマ:海外SF・ファンタジイ
記憶喪失。この言葉には、ある種のロマンを感じる人もいるだろう。でも、もし自分がそういう事になったら?
自分の人生の、ある一定期間の記憶がない。それはもしかすると、自分のアイデンティティにかかわる事になるかもしれない。
たとえば……。
「私はあなたの恋人だったのよ」
そう主張する女性が現れる! でも、その女性の事は、何一つ憶えていないとしたら?


 プリーストの作品って、たとえば『奇術師』(これ、映画化されるらしい)も、人の存在の不確かさというものが大きなファクターになっていると思うんだけど、この『魔法』 Glamour も、それがテーマになってる。
記憶喪失で自分の一部が失われてしまった、というシチュエーションからして、それにあたるのに、さらに、
「不可視の能力に悩まされている」
という、非常にアヤシゲかつ困惑させられる特性がかかわってくるのだ!

あ。これ、日本人にはわかりにくいなあって思うんだが(笑)。
イギリスの妖精譚が好きな人には、
妖精とか水妖のお産を手伝った産婆が、生まれた子供のまぶたに、ある軟膏を塗るように指示される。好奇心に負けて、その軟膏を自分の目にも塗ってみたら、妖精の世界が見えるようになってしまった。
このため、後にお産の手伝いを頼んだ旦那を市場で見かけた時、気軽に声をかけてしまうと、「妖精を見る視力」を産婆さんが持っているという事がわかってしまい、目を強く殴られる。すると、その特殊な視力どころか、普通の視力も失われてしまう。

というパターンの民話がある事は知ってるだろうな。
この、妖精を見る視力が、グラムサイト。
直訳するなら、魔法の視力、とでも訳せばいいんだろうか?

『魔法』の作中では、不可視になってしまう生来の能力の事を、グラマーと呼んでいて、それは、「人を魅惑する妖しい力」であるところの魔法を意味するのだ。
もちろん、不可視だから人の目を気にしない(だらしない、キタナイかっこうをしている)彼らの、皮肉な言い方という事になっているのだけれども、そもそも、イギリスの民話の中に、
「見えない妖精を見る視力、グラムサイト」
というのがあるっていうことを知っていると、さらに含蓄のあるものとして読めちゃうわけですね。

それにしても、この「不可視力」というのもは、真実なのかどうか?
謎の女性スーザンが語る、彼女をストーキングしている不可視の男ナイオールって、正体は、何。
謎です。わかったかと思うと、またしてもプリーストに肩をすかされてしまう。

それどころか、主人公であるはずのリチャードすら、もしかすると、現実ではなく、虚構の存在なのか……っ?

誰が「現実」で誰が「虚構」であるのか、下手をすると、最後までわからず、頭がこんぐらかってしまいそう。まさしく、現実と虚構が何層にもわたって重なり合い、複雑な謎を作り上げている感じ。

ところで……あなたは、自分が「現実」であるという確信がありますか?
絶対だいじょぶですか?

読み終わると思わず、そう、自問したくなるかも(笑)。



著者: クリストファー・プリースト, 古沢 嘉通
タイトル: 〈プラチナファンタジイ〉 奇術師

著者: クリストファー・プリースト, 古沢 嘉通
タイトル: 魔法
ハヤカワ文庫FT プラチナ・ファンタジイ
2005年1月新刊(但し単行本は1995年刊)
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2005-01-28 11:16:42

『UMAハンター馬子 完全版1』 これは強烈だぞ!

テーマ:日本SF・ファンタジイ

UMA。UFOのようにメジャーじゃないけど、これは「未確認動物」の事。
ネッシーとか、イエティとか、そういう、いるらしいけど存在がちゃんと確認されていない動物の事を言うわけだ。
最近だと、スカイフィッシュなんてのが話題なのかなあ? 全国的な話題っていうのでは、ぜーんぜんないけど(笑)。

で、これは、そういうUMAと不老不死の伝説をからめて、日本のあちこちへ行く。UMAの正体をつきとめる。そういう話なのだ。
いや、そのはず。

UMA(と、不老不死伝説)を追っかけてるものは2者あって、片方は全身黒づくめの財閥の御曹司で、どうも、
「あと半年であなたは死にます」
と宣告されている因業爺のために不老不死を探しているらしい。
但し、こちらは「敵役」だったりする。

一方の主人公側は、「おんびき祭文」という聞いた事もないような伝統芸能をやる関西芸人の師匠と弟子なのだ。
両方とも、(一応)、「女性」。
なんで一応とつくかって……。
師匠である方の、蘇我家馬子(そがのやうまこ)というのが、もう、ほんとに、女とも思われないすごいモノなのだ。
噂に聞く関西のおばさんってこういうやつなんだろうか?
いや、かなりデフォルメしてるのかとも思うけど、傲岸不遜、我が儘勝手、低俗下品、さらに外見まで、えーと……。
あろうことか、この馬子の弟子になってしまったイルカちゃんは、中卒で芸の世界に入ったけなげな女の子だが、いやもう、可哀想です。
そりゃ、日本の伝統芸能の世界では、とんでもない師匠のために弟子が理不尽な苦労をするなんてのはよくある話だけど、それにしても、なあ~。

おまけに、どうも、この「馬子」は、本名もわからなければ、年齢も不詳なのだ。外見は中年くらいだけど、関西芸能の大御所的な爺さんが、
「子供の頃に馬子の芸を見た」
というのだから、得体が知れない!

この物語に出てくる最大のUMAは、実は馬子ではないのか?
(私はかなりのところ、そう確信しています)。

不老不死伝説と、それにからむ「ヨミカヘリ」なるものが、ちらっちらっと出てくるのだが、それは次の巻で明らかになりそうだ。
ていうか、もともと学研から出ていたこのシリーズ、完結前に版元の方針変更で尻切れになってたんだそうだけど、それが今回、ハヤカワ文庫で2分冊、完結しますよという事なんだって。
理不尽にヒドい馬子と、けなげなイルカ、それこそ学研の「ムー」に出てきそうな、
日本の亜流ネッシーとか、
ツチノコとか、
ヒバゴンとか、
そういうUMAの正体について興味本位に楽しむ事ができます(笑)。

難を言えば、東北とか関東の田舎が舞台になっていても、創作されたとおぼしき方言が、どうも東海以西くさくて、どうしてもどうあっても、東北関東とは思えないのだが。
UMAの正体の解明は、うならされるところもあり、大笑いできるところもある。おさえるべきところはおさえ、笑わせるところは笑わせてるという感じかも。関西風なんですかね? ……よくわかりませんが……。

いや、でも、ネッシーとか「ちょっと興味がある」なら、これは笑って読めるぜっ。

UMAハンター馬子―完全版 (1) 』(田中啓文作 ハヤカワ文庫JA)
2005年1月新刊
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2005-01-27 10:00:57

『エロイカより愛をこめて』 スパイ、ハードボイルド、そしてコメディ

テーマ:冒険・アクション

スパイものである。
ハードボイルドである。
しかも、コメディである。
少女漫画のコミックスから出ているといって侮ってはならない。(最初の数巻はともかくとして)キャラクターがちゃんと、白人の成人男性に見える。細かいとこ言うと、単に、頭のハゲた人がいるとか、鼻がでかいとか、そういうのだけではなく、手ががっしりしてるんだよ。
細かいかもしれませんが、重要です。これがあるので、リアルに「白人の成人男性だ」と感じられるのだ(笑)。

ストーリーも、また、侮れないのだ。
なまじっかな小説より、きっちり背景が調べてあって、読み応えがある!
政治情勢、経済情勢、科学技術の情勢など、作者はその都度、専門家にあたるなどして、調べているらしい。すばらしい。
英米のスパイアクション小説を読んでるような、リアルなステージになっている。

いや、これだけならね。青年向けの漫画などにも、あるだろうと思うよ。
素晴らしいのは、そういう、かっちりしたハードボイルドな舞台で、かつ、ハードボイルドな小道具を使って、なおかつハードボイルドなストーリーを仕立てて、そこで、コメディをしている事なんだよね。

その証拠に、登場人物は、それぞれ、性格がデフォルメされている。
背景の世界情勢は刻々と現実にあわせて変化していても(この漫画、20年以上にわたって描かれてるのだ!)、登場人物は年を取らない。
昇進もしていないし、部署の移動などもほとんど行われない。

人間シェパードのような、「少佐」こと「鉄のクラウス」が、真面目だったりぐうたらだったりする部下をこき使い、どっしりした元「オリンピックのボクシング金メダリスト」である「こぐまのミーシャ」をはじめとする、ロシアその他の諜報機関を相手取り、国際的なスパイアクションを展開しつつ……。
彼らはなんと、常に、「華麗なる美術品泥棒」である金髪の美形イギリス貴族「エロイカ」に翻弄されるのである(笑)。
(ていうか、エロイカの雇っている超弩級にケチな計理士「ジェイムズくん」にエロイカ含む全員が翻弄されているというべきか)。

洋の東西を見渡し、小説、映画、漫画とあらゆるエンターテイメントのメディアを網羅しても、こんな作品は絶対他にないと思う。いやあ、笑えます。そして、笑えるだけではない、というところが、すごい。


 
 
著者: 青池 保子
タイトル: エロイカより愛をこめて (28)
タイトル: エロイカより愛をこめて (29)

著者: 青池 保子
タイトル: エロイカより愛をこめて (30)  「ビザンチン迷路編」(28~30巻)
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2005-01-26 15:27:13

『サスペンスはきらい』 世界一なさけない探偵

テーマ:ミステリ

探偵ものは数々ある。別に本格じゃなくて、「探偵」が他に本業を持っている場合のものでも、たーくさん、ある。
でも、ミステリに登場する探偵なら、ふつー、本職だろうがなんだろうが、みごとに事件を自力で解決するもんじゃないですか?
運だよりでもいい。とりあえずともかく、自力で。
それが探偵だろ?

ところがそうじゃないのもいるんだなあ。
世界でただ一人かもしれないけど、ともかくなさけない「探偵」が。
パーネル・ホール描くところのスタンリー・ヘイスティングスが、それ。
もうこれで13作目なのに、シリーズタイトルがついていないほど、「控えめ探偵」な、彼。
腰巻にもこう書いてあります。
「人生裏目続きの控えめ探偵」。
ある意味すげーかわいそう。
でも、また、ある意味パーフェクトに、現代の典型的なお父さん。

スタンリーは、作家志望なんだけど、妻と小学生の息子がいて、家族を養わなければならない。
一作も売れた事がない作家「志望」であるから、それじゃ勿論食っていけないので、友人のツテで、探偵をやってるんだ。
といってもね、シャーロック・ホームズやポアロみたいに、謎めいた殺人事件を解決するわけじゃないし、かといって、よくある興信所の探偵みたく、浮気してるかもしれない旦那や奥さん、結婚前の婚約者、就職前の学生の行状なんかを調べているわけでもない。
何をしてるかっていうと、
「すみませんが、道路で転んでけがをしたジョン・スミスさんはこちら?」
スミス氏に会って、怪我の様子を写真にとり、転んだ現場を見て、転ぶ原因になったかもしれないひび割れだの段差だのを写真にとり、スミス氏に訴訟を起こす事に関する書類にサインをもらい、事務所に持っていく。これ、全部時給で事務所から払ってもらってるんですね。
事務所とは弁護士の事務所。
この事務所では、主として損害賠償を扱っている。
訴えられた法人や個人が裁判に負け、賠償金が入った場合、その何割かを弁護士の事務所がもらうわけです。入ってこなければ、なんにもなし。
怪我をした人は(ある意味)まるもうけ、弁護士は自分の腕によりをかけ、ネタになる怪我人を依頼人として確保できるかに生活がかかってる(そしてけっこう儲かる)。
こういう仕事に雇われる「探偵」を救急車の追っかけとか呼ぶそうで、もちろん、尊敬される仕事とは言い難い。

それでも、一応、探偵の免許は必要なんだそうで、スタンリーも、そのおかげで探偵の免許ってやつを持ってると。
で、たまに、間違って彼に何か捜査を依頼しに来る人がいる!

でも、スタンリーはぼんくらなので、ぜーんぜん、自分では事件を解決できないのだ。そのつど、警察にいる知人をわずらわせたり、奥さんに知恵を借りたり。しかも、そうやって他人に頼りながら、
「でも、私はこうなんじゃないかと思うんだけど……」
思うなら知恵を借りに行くなよ!(笑)

かなりうっとうしそうだけど、奥さんも知人も彼を見捨てないのは、見てると、なんとなく、
「あいつ、だいじょぶかな」
と思わせるところがあるからなんだろう。善人なんです、スタンリーは。で、どうもはたから見てると(勿論、読者から見ても)、足下にすら目が行き届いてなくて、次の瞬間にはすっころぶんじゃないかとハラハラしてしまうほど。
目をはなしてられないよなあ。
そう。そんな感じなんだよね。

さて、今回スタンリーがめぐりあう事件は、電話による脅迫事件。
てか、ほとんど嫌がらせに近い感じの。
有名な(三文)サスペンス作家の奥さんが、
「お前を殺す」<ヒイロ・ユイみたくかっこよくはないよ
と、ほとんど定時に、電話で脅迫されているのを、何とかしてくれってわけ。
かなりしよーもない事件なのに、なぜかそれが殺人事件に発展してしまう!
今回は犯人扱いされる事はない。らっきー。
そう思ったら、なんとスタンリー自身が拉致されてしまった!

作中、人気サスペンス作家が、とうとうと、
「サスペンスはミステリと違うんだ。犯人が読者にわかっていても差し支えない。唐突に出てきたってかまわない。ともかく、主人公が次の瞬間どうなるか、ハラハラドキドキさせることができさえすればいいんだよ」
と持論を語るんだけど、それとそーっくり、同じように事態が展開していくんだよね。
おまけに、こいつが犯人か? と思わせる人物が、ひとり、ふたり……。

さて、今回の物語はミステリなんでしょか、それともサスペンス?

読者の目の付け所を惑わすためのいろいろなものがあちこちに散乱してまして、犯人の目星はまったく、つけづらい。いっそ今回の話は、そんなものに気を取られずに
「スタンリーのやつ、まったくドジだよなあ」
と思いながらハラハラドキドキ、読むのが正しいのかも。

著者: パーネル・ホール, 田中 一江
タイトル: サスペンスは嫌い  ハヤカワ文庫HM
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2005-01-25 21:15:47

『黒いカーニバル』 サーカスの不思議

テーマ:海外SF・ファンタジイ
子供の頃から、サーカスというものに、不思議な魅力を感じてしまう。
動物たちの曲芸、華麗な空中ブランコ、すごいアクロバット。
どうしてだろう?
華やかな色彩が魅力なのか。
命を賭ける危険な技に惹かれるのか?

もちろん、そういう事もあるのだけれど。
サーカスというのは基本的に常設じゃないんだよね。世界中を興行してまわっている。
つまり、どこの誰ともわからない人たちが、素顔を隠して、ほんのいっとき、人ができるとは(動物もだけど)、思えないような技を披露してくれる。
そういうものなんだね。

さすがに、今は言わないだろうけど、昔は、
「(悪い)子供はサーカスにさらわれて(売られて)、酢を飲まされて体が柔らかくなったところで曲芸をさせられる」
という都市伝説みたいなのがあったそうだ。
そうやって子供を脅かしたのかもしれない。
だから、華やかさの後ろには、「命がけ」という怖さの他に、そういう、悪の華めいたところも、魅力としてあったわけだ。

そういう、サーカスのダークサイド。
というより、ダークサイドだけが実体化したみたいなサーカスを描いてくれたのがブラッドベリ。いや、これ、ほんと、子供の頃読んで怖かったんだよ!
昔のサーカスは、「見せ物」という要素もあって、たとえば体中に刺青をした人とか、(そう見せかけたものかは別として)奇形の人とか……。
そういう、なんかこう、リアルに怖い人もいた。
そういう人か、魔物か、わからないようなモノが集まった、黒いカーニヴァル。今思っても、この描写のここがこう怖かった、なんて具体的なものじゃないんだ。
行間から、フツフツと、怖さがにじんでくるような名作です。



著者: レイ・ブラッドベリ, 伊藤 典夫
タイトル: 黒いカーニバル  創元推理文庫SF
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