マイクがない!でも大丈夫!BABYMETALはトラブルを平然と乗り越えた | たろの超趣味的雑文日記〜本と映画と音楽とBABYMETALその他諸々

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趣味的なことを中心に,いろいろと思ったことを徒然なるままに語ります。映画/本/スポーツ/世の中/旅行/音楽(ヘヴィ・メタル)/BABYMETALなど。

2015年12月30日 Text by たろ a.k.a. TAROMETAL

12月28日に幕張メッセで開幕した音楽フェス"COUNT DOWN JAPAN 15/16"に出場したBABYMETALが「マイクトラブル」に見舞われた。セットリスト最後の曲"Road Of Resistance"のイントロが終了し、SU-METAL、YUIMETAL、MOAMETALの3人がそれぞれ手にしていたBABYMETALフラッグを片付けた後、いざ歌い出すという段になってVoのSU-METALがマイクを持っていなかったのだ。そのまま数十秒間「歌なし。ダンスのみ」という状況が続いたという。本来ならばフラッグを片付けた際にドラムライザー近辺に置いてあるマイクをYUIMETALもしくはMOAMETALが取り上げて、すれ違いざまにSU-METALに手渡すというのが正しい手順。いったい何が起きたのか。


写真=RO69のCOUNTDOWN JAPAN 15/16クイックレポートより

マイクトラブルというと普通は「マイクが壊れて音を拾わない」というような問題を想像するが、今回は「そもそもマイクがない」というアクシデント。これはもはや珍事と言っていい。野球に例えるなら、バッターがバットを持たずに打席に立つようなもの。Twitterでの多くのつぶやきを見るかぎり、どうやら以下のような状況だったと推測される。

・何らかの理由により、本来マイクが置かれているべき場所にマイクが見当たらなかった。
・したがってYUIMETALはマイクを手に取りSU-METALに渡すことができなかった。
・SU-METALはやむなくマイクなし=歌なしでパフォーマンスすることを瞬時に決断。

また、次のような発言もあったが、これはほぼ確実に事実ではないだろう。

・YUIMETALがSU-METALにマイクを渡しそびれた。
 →単に渡しそびれただけならマイクはYUIMETALの手にあったはずだ。
・SU-METALがマイクを落とした。
 →SU-METALは最初からマイクを持っていなかった。

真相は不明だが、いずれにしてもSU-METALの手にマイクはなく、彼女たちは「歌なし。ダンスのみ」という空前絶後の条件でRoRをパフォーマンスし始めたわけだ。

この時のSU-METALの振る舞いがあまりにも自然だったため、そのような演出だと錯覚させられた人も多かったと聞く。それくらい自然な、まるで「何事もなかったかのような」対応だったようだ。

これはBABYMETALにダンスという武器があったからこその神対応だと言えよう。普通のアーティスト(歌と演奏だけ)だったら、ほぼ確実にパフォーマンスを中断していた可能性が高い。もしそうなったとしたら「セット・リスト最後の曲の冒頭で一時中断」という、その日の1曲目から全力で作り上げてきた会場の空気を自らぶち壊し、クライマックスに向かって一気に加速していた流れを分断してしまう大失態。アーティストにとってはこれ以上ない屈辱であり、オーディエンスにとっては大いなる失望だ。

たとえば今年のLOUDPARK。DragonForceのハーマン・リにギター・トラブルが発生した時には演奏が一時中断した。他のメンバーがトークや即興の演奏で何とか場をつないだものの、かなりしらけた空気になってしまったのは事実だ。これは彼らの対処に問題があったのではない。ライブで技術的なトラブルがあった時の様子としては、これが普通と言っていい。だからこそ、パフォーマンスを一瞬たりとも止めなかった今回のBABYMETALの対応は素晴らしいのだ。

そこにあるはずのマイクがなかったにも関わらずパニックにならなかったYUIMETAL。しかも問題が発生したことをアイ・コンタクトでSU-METALに伝えたらしい。この対応っぷりも神レベルだ。瞬時に異常を察知したSU-METALがそのままダンスのみでのパフォーマンスを選択した判断力も、もちろん素晴らしい。さらに、演奏は継続中なのにSU-METALの声が聞こえてこないという不思議な事態が発生したのに、何事もなかったかのように踊り続けたMOAMETALだって大したものだ。

思い起こせば2014年3月1日、伝説の日本武道館公演では"ヘドバンギャー!!"の間奏部分で観客を煽っていたYUIMETALがステージから奈落に転落するという大事件があった。この時もBABYMETALはパフォーマンスを中断することなく続行。"舞踊の天使"を欠いたまま"ヘドバンギャー!!"を演じ切り、場内が騒然とする中、次の"イジメ、ダメ、ゼッタイ"で何事もなかったかのようにYUIMETALがステージに登場するという「奇蹟」を演じてみせた。

もともとBABYMETALは逆境にめっぽう強い。海外フェスでの完全アウェイな環境を、その圧倒的なパフォーマンスで幾度となくひっくり返してきたのは周知の通り。あらゆる試練は彼女達にとっては成長の糧なのだろう。逆境になればなるほどそのポテンシャルの高さを発揮するBABYMETALの面目躍如。こんなアーティストにはめったにお目にかかれない。

最後にもう一つ。

マイクを持っていなかったSU-METALが、実は踊りながら「歌っていた」という証言もある。神バンドが繰り出す轟音のただ中にあって、フロア最前列付近にいた一部の人たちの耳にはSU-METALの歌声が届いていたというのだ。何という歌声の持ち主。刀が折れ矢が尽きてもなお戦おうとする戦士――「女神」「女王」と称されるSU-METALだが、この日ばかりは「鬼神」だったようだ。

※私は12月28日のCDJには参戦していないので、この出来事を現場で実際に目撃したわけではない。主にTwitterでつぶやかれた数多くの参戦者の投稿を元に把握しただけであり、すべては推測にすぎないことをお断りしておく。真相は"Only The FOX GOD knows."である。