LE CARNET DES NUITS|夜の手帖

映画監督|小谷忠典 (kotani tadasuke)のブログ


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中央線を走る電車の奥に…見えますか?

『LINE』の配給を引き受けてくれた大澤一生から、ひとつの提案があった。それは『アヒルの子』という作品と同時公開しないかというものだった。『アヒルの子』について一通りの説明を終えてから「先ずは、観てから、考えて下さいね」と大澤から手渡されたDVDを、早速、鑑賞する。東京でひとり暮らしをしながら専門学校に通う若い女が、生きる意味がないと悶え苦しんでいた。5歳の時に家族のもとを離れて、ヤマギシ会に1年間預けられたことが原因だった。彼女は家族から「捨てられた」と思い、2度と捨てられないためにこれまで「いい子」を演じてきた。しかし「いい子」であり続けてきたことが自分自身を苦しめていることに気がつき、内面の呪縛を解くために、彼女は「家族」ひとり一人に衝突しはじめる。

冒頭から僕は慨然とした。ドキュメンタリー映画『アヒルの子』が生まれた、2005年に、僕も劇映画『いいこ。』という作品を完成させていたのだが、アプローチは異なれ、文字通り“いいこ”という同一の主題を取り扱っていたからだ。それゆえに余すことなく『アヒルの子』を受け容れた。『アヒルの子』監督の小野さやかにはじめて会った時、その話をすると「じゃ、我ら、運命共同体だ!」と力強く肩を叩かれた。他力本願ではなく等身大で生きている者が発する“運命”という言葉には命脈が激しく波打っている。僕は小野が口にする“運命”という響きが好きになった。のちに「ワタシ×家族×ドキュメンタリー」と名づけられた大澤の具体的な主旨にも納得する。詳しくは、映画批評の萩野亮氏が綴った(「私」をめぐるふたつの冒険 http://line.2u2n.jp/document/impression.html)を参照していただきたい。議論を重ねた結果、個々の要因がもたらす以上の結果が生じることを予測して、僕たちは『アヒルの子』『LINE』の同時公開を目指した。

neoneo坐、そして、下北沢トリウッドでの『アヒルの子』&『LINE』の上映会の成果を認めてくれたポレポレ東中野代表、大槻貴宏氏から「ウチで、やりましょう」と念願の申し出があった。遂に劇場公開が決まったのだ。直ぐさま、劇場の石川翔平、宣伝の原田徹(スリーピン) 、宣伝協力の加瀬修一、宣伝美術の小口翔平(『LINE』)、ホームページのぴろきち(『LINE』)と平坦ではない劇場公開に向けての陣営が形成された。『LINE』上映チームには、堤健介、光成菜穂、岡澤陽子、佐藤健人、伊藤華織(宣材写真)、松本篤、服部規宏とつつしみ深いメンバーに支えられる。そして、恩師の高嶺剛や、先輩の島田角栄、西尾孔志、旧友の木村文洋の後押しにもとっても勇気づけられた。「すべてはひとつの“線(ライン)”となって繋がっていく」と題された『LINE』は、この2年間で様々な方との繋がりをもたらせてくれた。

渦中、画家の祖父が息を引き取った。ボケる前も、ボケた後も祖父は必ず「長いけど、続けなさい」と囁きながら、僕の手を強く握る人だった。その僕の手と同じ形をした皺と染みだらけの痩せた手の感触は、永遠のものとなった。帰宅途中に、大きな栗の木が佇んでいる。この頃、足を止めずにはいられない。瞼を切り落としたかのようなまなざしで、山々の風景を見つめる画家の背中が、幼い頃から僕の眼前にはあった。栗の木の木肌は、それと似ている。

いよいよ、明後日、22日は舞台挨拶だ。ぜひ、ポレポレ東中野にご来場ください。同時公開の『アヒルの子』もよろしくお願いします。

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