学習する組織の作り方 | 新潟でフラッグフットボール、アメリカンフットボールの普及を目指す

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デービッド A. ガービン『アクションラーニング』ダイヤモンド社(沢崎冬日 訳)を読んだまとめです。

 

 

 

 

 

 

本書はセンゲの唱える「学習する組織」を如何に作り上げるか、を論じた本である。

 

学習する組織かどうかを判断するための質問

まず、自分が所属する組織が学習する組織になっているかどうか、リトマス試験紙となる質問を列挙している。

・この組織では、学習上の課題が明確に定義されているだろうか。

・この組織は、嫌な情報にも耳を傾けているだろうか。

・この組織は、同じ失敗を繰り返すことを避けているだろうか。

・この組織は、中心的な人物が離脱すると必要不可欠な知識を失ってしまうだろうか。

・この組織は、自らの知識に基づいて行動しているか。

 

 

組織学習の理論

続いて学習の理論の説明となる。

まず組織の学習プロセスを以下の3段階で表している。

①情報の取得

②情報の解釈

③情報の活用

 

①情報の取得段階では、ノイズからシグナルを分離し、ノイズの少ないシグナルを取得することが重要だとしている。

 

②情報の解釈段階では、その企業が暗黙的に用いている情報解釈フレームワークに従うが、マネジャーには「そのフレームワークを絶えずチェックし更新すること」、「そのフレームワークが不十分で不完全なものである認識しておくこと」の2つの課題があるとしている。

 

③情報の活用段階では、マネジャーは「自らの解釈を具体的な行動に翻訳すること」、「そのうえで組織内の相当の部分が新しい行動を採用するように配慮すること」の2つのステップを取る必要があるとしている。

 

 

 

さらに著者は上記の学習を妨げる障害として以下をあげている。

・情報の偏り

・解釈の誤り

・行動の欠如

これらは上記の①、②、③のそれぞれの失敗と考えられる。

 

 

 

また、逆に学習を支援する環境として以下をあげている。

・差異の認識と受容

・タイムリーで率直なフィードバックの提供

・新しい考え方や未開発の情報源の追求

・誤謬やミス、その時々の失敗を改善の代価として受け入れる態度

 

1つ目の「差異」とは、願望と現実の違い、業績予測と実績の違い、有力なマネジャー同士の意見の食い違いなどのことで、差異が生まれることにより、緊張や不快感を招きその解決を探る動きが生じる。

多くの組織では差異を生み出すのは難しくないが、見解の相違をまとめ、それを十分に公開し、それによって生じる緊張を生産的に解決するプロセスを確保することが重要であり難しいところである。

 

2つ目のフィードバックがタイムリーに行われると、予測した行動と現実の行動の比較が容易になり、問題や障害の見極めもやりやすくなるため、学習サイクルが短期間に短縮される。

 

3つ目の新しい考えや情報源は、フィードバックだけでは得られない洞察を生み出すために必要となる。

社内、社外問わず情報の取得方法を変えることによって新たなアイディアを生み出すことができる。

 

4つ目のミスに対する寛容さがなければ行動は生まれてこない。

リスクを冒すことに対し心理的な安心を得られる環境の特徴として「研修と実践のチャンス」、「失敗することにつきまとう恐怖や周知を克服するための支援・奨励」、「正しい方向に向けた指導と、努力に対する報酬」、「失敗することを認めるような規範」、「革新的な発想や実験を認めるような規範」の5つが考えられる。

 

以上の学習プロセス、阻害要因、促進要因に加え、ツールとテクニックをまとめたものとして著者は下表を提示している。

 

 

学習する組織の実践プロセス

続いて著者は

実践的な学習プロセスを3つ提示している

(1)情報収集活動による学習

(2)経験による学習

(3)実験による学習

 

 

(1)情報収集活動による学習

情報収集には

①検索

②照会

③観察

の3種類があるとしている。

 

①検索はインターネットの検索だけでなく、雑誌や社内外の報告書の閲覧も含まれる。

その関心の対象となるのは主に競合他社や市場情報、規制、技術的問題である。

その際、情報源の多角化、情報同士を突き合わせてのチェックが重要となる。

また、得られた情報に対して肉づけを行い、ストーリーを豊かにしていくために受動的な検索と積極的な検索とのスムーズな移行、そして十分な分析・解釈が必要となる。

そして、最終的には情報収集を意思決定に直接結び付ける仕組みが重要となってくる。

(ケーススタディにてゼロックスが現場のマネジャーを情報の検索のプロセスに組みこみ、意思決定と結び付けている事例が紹介されている。)

 

②照会は検索では得られない、まだ存在していないデータを得るための活動である。

簡単にいうと、照会はアンケート調査や面接調査である。

(ケーススタディにてLLビーンがモニターを利用することによる新商品に関する意見を収集し商品開発を行っている事例が紹介されている。)

 

③観察はエスノグラフィーと考えられる。

場にとけこみ、見たままを記録していく。

観察者が行為に参加する場合、参加しない場合両方ありうる。(デザイン思考の最初のプロセスに当てはまると感じた。)

(ケーススタディでは米国陸軍が最前線で作戦の実行手法やテクニックを記録するチームを組織して活用している事例が紹介されている。)

 

著者は検索、照会、観察のどれか1つが優れているというわけではなく、組み合わせて用いることによって優れた情報収集活動となると述べている。

 

 

 

(2)経験による学習

著者は経験による学習の基本は「繰り返し」と「露出」だとしている。

同じことを何回も繰り返すことによってスキルは研ぎ澄まされる。

また、露出とは不慣れな環境を開拓し、新しい任務を引き受けることによってスキルが追加されることである。

 

ただ、著者はそれだけでは不十分とし、反省と検証の重要性を述べている。

単独で検証するにせよ、比較して検証するにせよ、記憶が新鮮でデータの確認が可能なうちに行わなければならず、検証作業を業務計画・プロジェクトのスケジュールに意識的に組み込まなければならないとしている。

そして検証を行う上で大事なのは検証に対する支援と寛容を重視する企業文化だとしている。

 

また、検証を個人、グループ、組織全体それぞれに焦点を合わせて行うことも有効としている。

個人レベルであれば効果的な実践の要素(スキル、テクニック、考え方や感じ方など)を抽出し、他の者にも周知させることが目標となる。

グループレベルではプロジェクトの評価、組織レベルではベストプラクティスの調査と改革プログラムの評価が想定される。

(ケーススタディでは米国陸軍でのアフター・アクション・レビューというグループ単位での反省・検証プロセスを紹介している。)

 

さらに経験による学習において反省・検証による学習の短所である「何かの事実が生じた後でなければ学習できない」という点に解決する手法として「経験学習」が提示されている。

経験学習は、学習を主目的として現実の問題に取り組ませたり、シミュレーションによる問題に取り組ませるプログラムである。

重要なのは問題の設計であり、問題が重要であること、複雑であること、予想外の内容を含んでいることなど、学習を刺激するような要素が含まれる問題が効果的な経験学習プログラムだとしている。

また、時間の制約を設けることにより、学習が促進されるとしている。

(ケーススタディとして、GEの改革促進プロセスが紹介されている。)

 

 

(3)実験による学習

目新しいコンセプトや実績のない理論が絡んでくる場合には情報収集活動による学習や経験による学習では不十分であり、ます望ましいデータを作り出すことが必要となる。

そのため、「実験」が重要となってくる。

著者は実験には「実地踏査実験」「仮説検証実験」の2つのタイプがあると述べている。

 

実地踏査実験とは、デザイン思考におけるプロトタイピングとフィードバックである。

すなわち、ある程度の完成度になったらユーザーに使用してもらい、反応を集め再設計を行う。

それを繰り返し、再設計を止める基準を満たすまで行う。

この実験は製品・サービス設計だけでなく、販売方法やプロジェクト等にも応用可能である。

(ケーススタディとして、ティムケンがストーリーボードや段ボールを活用して実験を行い、製造プロセスを改革した新工場の建設を行った事例が紹介されている。)

 

仮説検証実験とは、実地踏査実験と異なり、発見ではなく証明を目的としている。

対立する見解・説明が存在した場合に、根底にある因果関係を明らかにするために行われる。

著者は「実験環境・設定の選択」、「変数操作のプロセス」、「比較・対照群の導入」、「参加者の選定」、「結果の検証」の5つを仮説検証実験の必須要素としている。

(ケーススタディとして、アレゲーニー・ラドラム・スチールが実験を繰り返して生産プロセスに関する知識を獲得していく事例が紹介されている。)

 

 

学習のためのリーダーシップ

著者は最後に学習する組織におけるリーダー/マネジャーの仕事について述べている。

①学習に必要な活動を促すような環境、イベントを設計することによって、学習機会を生み出す。

②適切な雰囲気を培い、望ましい規範やふるまいを育み、参加のルールを定める。

③討論の枠組みを作り、疑問を投げかけ、注意深く聞き、フィードバックと結論を提示することによって、自ら議論のプロセスを主導していく。

 

①の学習機会の創出においては、学習の促進を主目的としたイベント「学習フォーラム」の創設、実地踏査型の取り組み、経験の共有などが挙げられている。

 

②の学習のための雰囲気づくりでは、挑戦と対立を意図的に生み出しつつ、安心感を与えると共に学習を支援することが重要であると述べられている。また、情報に対する自由なアクセス、オープンなコミュニケーションも重要だと述べられている。

 

③の議論プロセスの主導では、質問する、話を聞く、回答する、というテクニックが挙げられている。

 

 

最後に著者は組織学習には、まず個人学習が重要だとして本書をまとめている。

 

本書をまとめて以下の二つの図を作成した。

【組織学習の理論】

 

【学習する組織の実践プロセス】