それまでにお見合いしたBさんとCさんを断ってしまった経緯もあり、僕は「ルックスもプロフィールも悪くないのだから、Dさんで決めてしまおう」と思っていた。だから2回目か3回目のデートの別れ際に、「結婚について前向きに考えています」という話をした。お見合いをDさんから申し込んできたのだし、僕がOKすれば、後はとんとん拍子に縁談が進むものだと思っていた。しかし、Dさんの態度が何ともあいまいで、何を考えているのかよく分からないのである。色々突っ込んで聞いてみると、「すぐに結婚とかいうことではなく、付き合っていく上で、自然にそういう気持ちになったらその時考える」というような答えが返ってきた。


 何ということだ。これでは、お見合いした意味がない。カップリングパーティーの恋人探しと同じである。「Dさんの考えも分かります。でも、僕はDさんとの結婚を前向きに考えています。Dさんも前向きに考えてくれませんか」という話をしたが、Dさんからは確か「価値観の違いだから」というような答えが返ってきた。そして、次のような話を聞いた。「実は、以前にも別の結婚相談所でお見合いをし、交際していた男性がいたが、その男性にも同じようなことを言われ、結局別れました」。


 今ではDさんとどのような話をしていたのか詳細は忘れてしまったのだが、Dさんと話しているといつも価値観がどうだとか人生観がこうだとか、なぜか難しい話になってしまうのだ。そして、Dさんは僕のことを「私とは価値観の違う人」と考えるようになったようだった。でも、それは違う。誤解だ。Dさんと僕の価値観はそんなに違うわけじゃない。それに、もし価値観が違っても、お互いを認め合って暮らしていくのが、結婚そして人生というものではないか…。というような難しい話をDさんに一生懸命していた。Dさんは、相づちを打つぐらいで、基本的には僕の話を聞いているだけだった。なぜこんな風になってしまうのか分からなかった。


 サーカスを見られなかったその次のデートをどうするか、メールをしてもやはり返事が来ない。週末にやっと連絡が取れた。日曜日、いつものように1時間クルマで走って自宅まで迎えに行った。どこかで食事でもと誘ったが、「近くでお茶しましょう」と言われ、近くの喫茶店に行った。おそらく、この時すでにDさんは僕との交際を断ることを決めていたのだと思う。喫茶店で「気持ちを何とか分かってもらいたい」と、また一生懸命しゃべった。必死過ぎて、買ったばかりの白いポロシャツの上に、アイスコーヒーをこぼしたぐらいである(このポロシャツは結局この一度しか着ず、結婚後もずっとタンスの肥やしになっている)。1時間半ぐらい話して、Dさんを自宅まで送った。それが最後になった。


 喫茶店で会ったその日の夜も、次の日も、僕が出したメールの返事は来なかった。その週末、何度か電話したが、やっぱり出ない。「また携帯をバッグに入れたまま、眠っておられるのでしょうか?」。嫌みな文面だとは思ったが、そんなメールを出した。それでも、返事は来なかった。その翌日か翌々日だったと思う。相談員Aさんから電話があった。覚悟はしていたが、Dさんが交際を断ってきたという連絡だった。相談員Aさんは非常に残念がっており、僕にこれまでの交際の経緯などを色々聞いてきた。僕は、メールを出しても返事がないこと、なぜかいつも難しい話になってしまうこと、Dさん自身があまり結婚に乗り気ではないことなどを話した。


 これは後に母を通じて聞いた話だが、相談員Aさんは、僕とDさんは必ずうまくいくと思っていたらしい。Dさんは新規入会者で、初めに写真を見せたときに僕の写真をさっと選び、僕のことを気に入っていたので、Dさんから僕との交際を断る電話が会った時は非常に驚いたという。「○○さん(僕のこと)は、結婚を焦り過ぎたんじゃないですか。もったいないことをしました。あと、○○さんは、Dさんからメールが来ないことを不満そうに言っていましたが、メールのことを気にし過ぎのような気がしました」というような話を母にしたらしい。


 その後、僕はことあるごとに母から次のように言われ、よく口論になった。母「また、メールをしてるんじゃないでしょうね。男がメールなど毎日送るもんじゃない。恋人ならまだ分かるが、お見合い相手に毎日メール送るのは異常です」。僕「そんなことはない。だいたい、今の時代にメールをしない人の方がちょっと変わった人なんである。それに、Dさんのように交際相手からメールが来ているのにそれに返事を出さない方こそ、人間として失礼じゃないのか」。


 母「お見合いやデートで必要以上にしゃべるな。男はしゃべるもんじゃない。女にしゃべらせておけばいい」。僕「そんなことはない。それに僕だってしゃべりたくてしゃべってるんじゃない。相手がしゃべらないから、沈黙が嫌なので、しゃべっているだけだ、だいたい、お見合いなどしようという女の人は、コミュニケーション能力が低い人が多い。だから、彼氏もできず、結婚もできず、お見合いをしているのだろう」。母「そう言うあなたも同じじゃないか」。僕「僕は違う。僕はちゃんとしゃべるし、相手の話もちゃんと聞く。相手に失礼になるようなことはしない」。


 婚活中、母と電話でお見合いのことを話していて、しばしば口論になり、余りに腹が立って、よく話の途中でブチッと電話切った。悔しくて、情けなくて、やりきれなかった。次回は、マイペース型に気をつけろ。

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