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2010-11-04 03:44:04

この世の限り。(中編)

※この話は中編です。前編を読んでからご覧下さい。




別れると私が死んでしまうから、別れない。
(今、私に恋愛感情は無い)
要するに、私が『別れても死なない』と分かれば、高確率で別れるかも知れない。
しかし貴方は、私に別れや(死を考えてしまうような)不安を与える『嫌い』と言う言葉を告げた。
『別れても死なない』確認すらしていないにも関わらず、
容易に想像出来る私の考えを無視して気持ちを伝えた。
本当に死なれても困ると思っているなら、そんな発言出来もしないはずだ。

むしろ、私から離れていく事は無いと解っているんじゃないか?
だからそんな事言えるんじゃないか?


付き合い始めに、軽々しい気持ちで『死にたい』と言った私を、
胸倉を掴んで貴方は本気で怒った。
そして私は、元カノが幾度と無く同じような事をしているのも知っていた。
それに苦しんで、心配していた貴方も見ていた。
同じような思いをさせて、貴方の顔を、頭を歪ませたくない。
私が居る事で、笑ってくれたらいいのに。
安心して、眠る事が出来ればいいのに、と願っていた。

私が居る事で、貴方の世界を少しでも彩る事が出来たら、と。

幸せに浸って、それを見失っていたのは私だ。

あの日、本気で死にたいとは思った。
言ってはいけない事だとわかっていながら、
それでもなお、思ってしまうくらい辛くて、
追い詰められてる事を分かって欲しかった。
でも貴方の気持ちを聞く前に、気持ちを伝える前に、死ねなかった。
そして、帰ってきた貴方を見て、話して、
自分の都合が大半だけど、やっぱりまだ一緒に居たいと思ってしまったんだ。

駅まで送ってくれた車の中で私の頭を撫でてくれた手は、
魔法使いの手に一瞬戻ったかと錯覚する程優しかった。
もう2度と会えない、あの魔法使い。
あれは貴方が姫にくれた、愛の一部だ。
頑張って、作り出してくれた、具現化された愛だ。


色々考えたいこんな時に限って、私の頭は拒否反応を起こす。
普段は思い出したい事すら出てこなかったり、曖昧なくせに、
断片ながらもはっきりと映像付きで思い出す貴方との時間。

一緒に料理を作ったり、その最中に抱きしめられたり、
フライパンを振る貴方の横に居る私や、そこでキスしたこと。
明け方、車の中でボーっとしながら、想いや考えについて語り合ったこと。
運転中に手を繋ぎながら、照れあってデートしたこと。
2人で見た、境界線の無い夜の海や、
赤レンガ付近で散歩しながら見つめた風景と貴方。
寝る時間を犠牲にしてまでエヴァを全編一緒に見たり、
付き合ってる事を悟られないように、
店員と客の距離感のまま、うちの店に遊びに来てくれたり。
幾度と無く、私を迎えに来てくれたり、送ってくれたこと。
一緒にいくつかのショッピングモールにも行った。
コールドストーンアイスを食べたり、貴方の好きなコーヒーを飲んだりね。
車のHDDには、私が乗るようになってから曲も大分増えた。
貴方が車を買ってから、一番助手席に乗っているのは、きっと私なんだろう。
甘いものやチョコが嫌いな貴方が、ロールちゃんを教えてくれたね。
指輪も、ネックレスも、タバコもお揃い。
2本並んだ色違いの歯ブラシは、今2代目だ。
貴方に愛された時間の、天井と部屋の明るさと、貴方の表情。
眩しくて頭がおかしく成る程、毎日幸せを感じていた。

そして何より、スリーピングビューティーな寝顔と、微笑みが頭を埋め尽くす。

それらは過去で、今で。
思い返して、随分貴方の無理の上で成り立っていた事だと改めて気付いた。
綺麗に見えるものが多いのも、きっとそのせいだ。



そんな貴方は、今矛盾しているように思える。
電話で『好きでも嫌いだとしても、知ってる人間が死ぬのは気分が良くない』と言っていた。
おかしいのかも知れないけど、私はそうは思わない。
元は仲が良かった(ようにしていた?)友達を、今は嫌いになっているけど、
関わった時間がそれなりにあっても、私は今彼女らが死んだと聞いても何も感じないだろう。
だって嫌いなんだから。関心のない相手だから。
嫌いだと思っていなくても、
極端な話、よく見かけていた芸能人が死んだというニュースが流れても、
事実を知ってぐちゃぐちゃに泣いたりはしないだろう。

つまり、私の感情だけで言うなら、
気分が良くない=嫌いではないという事になるのだ。


しかも、嫌いならもっと酷い対応だって出来る。
電話だって自分でわざわざかけ直してくる必要も無い。
自分から電話を切ったのなら、
その後すぐにかけ直した私からの電話も、無視して出る必要は無い。

その電話で私は、『次会えるのがいつなのかわかったら教えて欲しい』と言った。
すると『わからない』と言われた。
不安になって『もう会えないの?』と聞くと、
『部屋に荷物あるから、取りに来るでしょ?』と貴方は答えた。
必要最低限の行動時でないと、会えないところまで来たようだ。

私は彼の家の合鍵を持っている。
部屋に置いてある私の荷物も、たくさんある。
でも、本当に嫌いなら、私の実家を知っている彼なら勝手に返しに来る事だって出来る。
他にも、荷物を送ってしまう事だって出来る。
住所は知っているかは忘れてしまったけど、知らなければ私に聞けばいい。
荷物をまとめるという手間があるから、それをしないのかもしれないけど、
手段は色々あるものだ。

他にも判断しかねることがしばしばある。
都合良く捉えてるだけかも知れないけど、
どうしても、私のことを嫌いになったと思えないのだ。


よなりーと話して行き着いた結論は、
私を無視して、自分の事しか考えていないということ。
そして、まだ気持ちが不安定で、
私を本当に嫌いかわからないということだった。

部屋を出る気配の最後の最後で、
ただ静かに考えて泣いてしまった。
目の前で壊れなくて良かったとも思えた。


外は思いの外寒くて、冷えた車内でタバコを吸いながら、実家に送ってもらった。
こんなに友達に身勝手に甘えたのは初めてかもしれない。
一緒に居てくれた事に感謝し、申し訳なさも感じ、
弱さを判れる関係を嬉しく思えた。
似た感覚を持てる相手はそうは居ない。

最後まで心配してくれた。
この日、会えて本当に良かった。




家に着くと、弟が居た。
少し会話をすると、食事もしていないようだった。
本来なら私が用意しなければいけなかったけど、
自分で適当に食べてくれるというので甘えてしまった。
ブラコンだと感じる時もあるけれど、
根が優しい弟に、私の姉弟として存在することを感謝している。

個々の時間が流れる。
夜勤の貴方が家に着く前に、私は居ようと思った。
朝早くの電車に乗らなくちゃ。
携帯で調べておく。
大分早めに来ておいて、食事の支度でもしておこうか。
いや、そんな気力無いんだ。
第一、私が作った料理なんか、もう食べてくれないかも知れないのだから。

わざと、いつもの時間を過ごそうとする。
漫画を数冊読んで、携帯のアラームをかけて寝た。
願わくば、悪夢を見ないで済むようにと。



4時間程経っただろうか。一応目を覚ました。
結局寝たようであまり寝ていない。
夢こそ見ていないものの、何度かぼんやりと起きてしまったから。

『行ければいい』というスタンスで、格好も気にせず支度した。
弟はまだ寝ていて、物音で起こさないように気遣ってみた。
頭がぼやけている。
全部、嘘だったらいいのに。



後編に続く。


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