ユニクロ社長がブラック企業のグローバル化宣言-世界同一賃金で年収100万・若者使いつぶし仕方ない | すくらむ

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 きょうの朝日新聞に掲載されている「年収百万円も仕方ない・ブラック企業批判は誤解 世界同一賃金、ユニクロ柳井氏に聞く」 の中で、ユニクロ柳井正会長兼社長は次のように語っています。


 ――いまの離職率が高いのはどう考えていますか。


 「それはグローバル化の問題だ。10年前から社員にもいってきた。将来は、年収1億円か100万円に分かれて、中間層が減っていく。仕事を通じて付加価値がつけられないと、低賃金で働く途上国の人の賃金にフラット化するので、年収100万円のほうになっていくのは仕方がない」


 ――付加価値をつけられなかった人が退職する、場合によってはうつになったりすると。


 「そういうことだと思う。日本人にとっては厳しいかもしれないけれど。でも海外の人は全部、頑張っているわけだ」


 「僕が心配しているのは、途上国から海外に出稼ぎにでている人がいる、それも下働きの仕事で。グローバル競争のもとで、他国の人ができない付加価値を作り出せなかったら、日本人もそうやって働くしかなくなる。グローバル経済というのは『Grow or Die(グロウ オア ダイ)』(成長か、さもなければ死か)。非常にエキサイティングな時代だ。変わらなければ死ぬ、と社員にもいっている」


 『Grow or Die(グロウ オア ダイ)』(成長か、さもなければ死か)、「変わらなければ死ぬ」と社員に迫っているユニクロの職場で何が起こっているかというと、これもきょうの朝日新聞で「世界規模のふるい、成長か死か ユニクロの同一賃金」 という記事の中で次のように指摘されています。


 「燃え尽きてしまった」。20歳代の男性の元社員はユニクロでの日々を振り返る。会社が決めた月間勤務時間の上限は残業も含めて計240時間だが、とても仕事を消化しきれない。パソコン上で入力する出退勤時間を上限内に収まるよう日々「調整」し、残業代が出ない「サービス残業」の毎日だった。繁忙期の勤務は300時間を超えた。


 周囲には、うつ病になって突然出社できなくなる同僚がいた。「このままでは自分も精神状態がもたない」と退社を決めた。


 別の東海地方の20歳代の元店員も、膨大な仕事量と店長代理資格取得の重圧に押しつぶされそうだった。勤務時間中も仕事の合間にレジ打ちやミシンの練習、店舗レイアウトも研究した。休日も暇があれば厚さ10センチほどのマニュアルの勉強に費やした。


 海外で働きたい夢はあったが、あこがれていたグローバルな仕事は遠のいてゆく。心の中の違和感は次第に大きくなり、仕事のミスが目立つようになる。入社8カ月後に「うつ状態」と診断され、退社した。


 同社の新卒社員が入社後3年以内に退社した割合(離職率)は、2006年入社組は22%だったが、07年入社組は37%に、さらに08~10年の入社組は46~53%と高まっていった。直近の入社組は、同期のおよそ半分が会社を去る計算になる。休職している人のうち42%がうつ病などの精神疾患


 年収100万円もうつ病になるのも仕方ない、「変わらなければ死ぬ」と言い放つユニクロ柳井会長のもとで、新入社員の半分がうつ病などで辞めていくユニクロは、POSSE代表の今野晴貴さんが指摘している「使い捨て型のブラック企業」や「選別型のブラック企業」などにあてはまるでしょう。(※以下は私が企画したブラック企業問題の座談会 での今野さんの発言要旨です。座談会のネット動画はこちらで視聴できます→
http://youtu.be/WSTNHHXf3gM


 ブラック企業の3つのパターン


 私たちが労働相談を受ける中で、ブラック企業には、3つのパターン――①選別型、②使い捨て型、③無秩序型――があることが分かってきました。


 ブラック企業の特徴は大量に社員を採用することにあります。何か特殊な中小企業が違法なことをやっているという話ではなくて、大きな企業が、たくさん採用する中で行われているというのがポイントです。


 選別型のブラック企業


 1つめの選別型のブラック企業は、大量採用して半分以上を辞めさせることを労務管理の基本的な目的にしているのが特徴です。つまり、企業にとって使える人、従順な人だけを残してそれ以外は意図的に辞めさせることを最初から織り込み済みなのです。


 たとえば、私たちに労働相談が寄せられたあるIT企業では、1,000人規模で毎年200人以上採用するのですが、1年経過すると半分は辞めさせられているのです。採用されてすぐに、この人間は使えるか使えないかという選別が行われて、使えないと判断された人に関しては、カウンセリングと称する徹底的な嫌がらせをする。「お前は何でこんなに仕事ができないんだ」「会社に貢献できないのは自分の今までの人生に関係している。親にどんな教育をされたか、小学生時代から振り返って反省文を書いて、どうして能力のない人間なのかをレポートせよ」などということを毎日やられて、うつ病にされてしまう。そうしたうつ状態にしたところへ企業側は自己都合退職を迫って辞めさせてしまうのです。こうした選別型のブラック企業はIT企業などに顕著に見られます。


 使い捨て型のブラック企業


 2つめの使い捨て型のブラック企業は、労務管理として積極的に辞めさせるわけではないのですが、過酷な労働実態があるために、将来を見据えて長期間働き続けることができない点に特徴があります。


 ブラック企業は、IT産業、小売、外食、それから介護といった新興産業の分野でとりわけ広がっているのですが、この使い捨て型のブラック企業は、小売や外食産業に多くなっています。


 たとえば、過労死事件を起こした日本海庄やでは、基本給20万円と言って採用して、実はその中に月80時間分の残業が含まれているというのですね。これは研修中に明らかになって、月100時間以上の残業をさせられて彼は24歳という若さで過労死させられてしまった。こうした企業側が基本給と言っている中に月100時間、80時間などという残業が組み込まれているというのが、現在、IT産業、飲食、小売、介護などの新興産業に広がっていて、スタンダードな状況にもなってきています。


 労務管理のあり方として最初からだます気で採用して長時間低賃金で働かせて、これが基本なんだ、基本給なんだと言ってはばからない。とにかく低賃金で長時間働かせることを目的としているので、体力が続かない人間はどんどん使い捨てて、また新しい人間を採用するというのが、使い捨て型のブラック企業の特徴で、このパターンも大きく広がってきています。


 無秩序型のブラック企業


 3つめの無秩序型のブラック企業は、「辞めてもいくらでも代わりはいる」という労働市場を背景にして企業自体がパワハラやセクハラを放置している企業です。私たちの労働相談にも多く寄せられるのですが、パワハラ上司、セクハラ上司が気に入らないと非常に凄惨な行為で部下をどんどん辞めさせてしまう。企業はその上司を取り締まるよりも、次の新しい人を採用した方が早いということで放置する。新卒で入ってくる若者というものの価値が異様なまでに企業によって低下させられているというのが、ブラック企業の問題を引き起こしている背景にあると思います。


 内定率が上がればいいのか?


 どのくらいブラック企業が広がっているのかと問われることがありますが、この点については2つ考えていることがあります。


 1つは、新卒ということに限るとかなりの割合に上ってしまうのではないかということです。なぜなら、過労自殺を引き起こしたワタミの渡邉美樹会長は私たちはもっとも新卒をたくさん採用している社会貢献企業だなどと誇っているわけです。ワタミは外食だけでなく介護事業なども含めてかなり新卒を採用しているのは事実で、たくさん雇っておいて使いつぶすことによって大きな利益をあげて、業態を拡大していくということになっているので、新卒をたくさん採用する企業となってくると、かなりブラック企業の割合が大きくなるのではないかと思うのです。


 そうすると、最近、就職率が上がった、内定率が上がったということで騒ぎ立てるわけですが、一方でブラック企業の問題も懸念しなければならないと思っていて、一体どんな企業が採用を増やしているのか? 新卒のところで待ち構えている企業はどんな労働実態にあるのか? というところまで、きちんと注目していかないとマズイと思うのです。


 一般企業が「ブラック化」する危険


 もう一つ考えなければいけないポイントは、今の時点でこのような新興産業を中心に新卒のところでブラック企業が広がっているという特徴とともに、これまではまともだった企業がブラック化しない保証はまったくないという問題です。労働市場に人がたくさん余っているのでいくらでも使い捨ててもいいような労務管理に切り替えていくということは、これまでまともだった企業でも起こり得ます。


 また、企業の中の一部門、あるポストある部署でブラック化が起こった時に、それを止めなくてもいいと企業が全体として判断してしまうようなことが容易に起こっているのではないかという問題も労働相談事例を見る中で危惧していることです。


 典型的な事例で言うと、ある交通系の大手企業から労働相談が寄せられて、これまでは労務管理はまともだったのだけれども、IT系のいわゆるブラック企業コンサルタントが人事に入ってくるということがあって、労務管理のあり方が突然変わった。正社員をいじめてどんどん辞めさせて代わりに契約社員を入れていくというようなことが突然吹き荒れて止まらない。どうすればいいんだという相談だったわけです。


 それはブラック企業という構図が、突如として出てきたわけではなくて、日本型雇用の中で企業が非常に強い権限を持っているわけですけれども、その権限を悪用し、いじめて辞めさせるということができてしまうわけです。老舗企業の中でもそういうことをひとたびやろうというふうに経営が判断してしまった時に、これはなかなか止められないというのが実態ではないかと思うのです。


 もちろん職場における労働組合の強さが相当影響してくるでしょうが、労働相談の事例を見ていると、部署単位でブラック化してくるときに、ほとんど労働組合の力を発揮できていないケースが多く寄せられています。ある個人がターゲットになった時に、労働組合が存在感を発揮できていないというようなことが多く見受けられるので、ブラック化をなかなか止められないということも含めて、今は新卒のところで大きな問題になってきていますが、ブラック企業が日本社会全体に広がってくるのではないかと懸念しているところです。


 ――以上が今野さんの座談会での指摘ですが、きょうの朝日新聞の記事について、今野さんは次のようにツイートしています。


 @konno_haruki
https://twitter.com/konno_haruki/status/326507529276379136
 ユニクロの「世界同一賃金」導入の最も重要なことは、賃金引き下げよりも、「海外で採用した社員も国内と同じ基準で評価」されること。この「成果」をどうやって評価するのか。仮に新興国の労働者が不眠不休で働いて成果をだしたとして、日本人もそうすべきだ、となるのだろうか。過酷労働が問題の本質


https://twitter.com/konno_haruki/status/326508291511422978
 ユニクロの「世界同一賃金」という発想は、とことん労働者の実情を無視している。その国によって、生活に必要な賃金は違う。社会保障の水準も、税率も、家族の扶養の在り方も、違うのである。ユニクロがグローバル展開するのは結構だが、人間それぞれは、決して「グローバル」にはなれない。


https://twitter.com/konno_haruki/status/326522937714823169
 朝日面のユニクロ社長のインタビューが凄まじい。「付加価値をつけられなかった人が退職する、場合によってはうつになったりすると」との質問に、「そういうことだと思う」と肯定。「成長か、さもなければ死か」とも。この人は、とことん「日本」を食いつぶすつもりだろう。「売国奴」といってもよい


https://twitter.com/konno_haruki/status/326523568852717568
ユニクロ社長は、国際競争があるのだから、「年収100万円のほうになっていくのは仕方ない」としている。国内経済の発展や、安定した成長戦略などお構いなし。完全に「自社本位」の発言である。安倍首相や自民党は、こういう「ブラック企業」(と朝日で指摘されている)社長を取り締まるべきだ。


 それから、雑誌『POSSE』編集長の坂倉昇平さんは次のようにツイートしています。


 @magazine_posse
https://twitter.com/magazine_posse/status/326533820536983556
 ユニクロ柳井会長は「成長か死か」「正社員でいる以上、効率をあげて頑張ってもらわないと生き残っていけない」というけど、ユニクロで正社員で頑張ったほうが、長時間労働でうつを患ったり過労死しかねない。日本のまじめな若者たちを死なせてでも、自分たちの会社が生き残りたいってだけだよね。


https://twitter.com/magazine_posse/status/326540476591243264
まさかユニクロが世界同一賃金を目指すユニバーサルブラック企業だったとは…。しかし「世界規模」といいながら「新興国」にしか目を向けず、労働時間や会社の命令に制限のある「先進国」を無視してるのはグローバル企業としてセコすぎるのではないでしょうか。


https://twitter.com/magazine_posse/status/326542813577768960
職務による同一労働同一賃金を世界水準で実現したいって理念なら賛同できるけど、ユニクロ柳井会長のいうのは、会社の命令に服従できる度合いで賃金を統一しようってことだよね。


(byノックオン。ツイッターアカウントはkokkoippan)