史上最長の放射能漏れ、禁止区域外で高濃度放射能-最悪事態招く危険高まる福島原発事故 | すくらむ

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 ※「連合通信・隔日版」(2011年4月2日付No.8444)からの転載です。(★「連合通信」の購読申し込みはこちらへ


 史上最長の放射能漏れは確実
 福島第一原発事故 東電の対応進まない理由を分析


 東京電力の勝俣恒久会長は3月30日の記者会見で、放射能漏れを起こす福島第一原発事故について「安定化に時間がかかる。数週間では難しい」と述べ、原発事故史上で最も長期間にわたって放射能漏れが続くとの見通しを示した。東電の責任は極めて重大だが、なぜ事故を終息できないのか。


 ●大惨事のリスク


 「水の少ない鍋がコンロで炊かれているようだ」


 元東芝・原子炉格納容器設計者の後藤政志氏は、福島原発の原子炉とそれを包む「最後の砦(とりで)」である格納容器が置かれた状況をこう例える。この状態が続けば鍋は破裂するが、鍋と原子炉の大きな違いは中に放射能を持つ核燃料があること。原子炉が格納容器ごと破裂すれば、1986年のチェルノブイリ事故を超える大惨事となる。


 東電はそれを防ごうと、原子炉内に水を注いで核燃料の過熱を抑えようとしている。だが、後藤氏は経済産業省原子力安全・保安院の発表を元に「原子炉下部の底が抜けた」と分析する。1~3号機はすでに核燃料が水から露出して溶け出す「メルトダウン」を起こしているとみられ、原子炉から格納容器に放射能が出ているのはほぼ確実だ。


 ●「最後の砦」陥落か


 放射能が格納容器から外にあふれている可能性も極めて高い。


 後藤氏によると、格納容器には水や蒸気をタービンや冷却システムに回す管が取り付けられており、接続部分を樹脂などで固めている。樹脂は270度の熱で溶ける性質を持ち、原子炉内の温度がその程度に達すれば、つなぎ目が破損して放射能が漏れ始めるという。1~3号機のタービン建屋地下に高濃度の放射能汚染水がたまる原因も、原子炉内に注入した水が破損部分を伝って地下に流れ込んだとみるのが自然だ。


 ●電源回復できても…


 元原発設計担当者の小倉志郎氏は、海にほど近い原発の作業用トンネル「トレンチ」にも大量の放射能汚染水がたまっている現状を挙げて、すでに海へ漏れ出しているとの見方を示す。トレンチはコンクリート製で「継ぎ目からはどうしても水が染み出す。大地震で緩んでいるためにすき間が生じていることも十分考えられる」からだ。実際に東電や保安院の発表では、原発の地下水や原発近くの海水から国の基準をはるかに上回る放射性ヨウ素131が検出されている。


 東電は核燃料の冷却化に向けて、外部電源を引いてシステム復旧を進めている。小倉氏はこの点も悲観的だ。「冷却水ポンプは、原子炉建屋よりも海に接しており、大津波で破壊されているだろう。電源が回復すれば終息するほど単純ではない」と戒める。


 ●IAEAは「再臨界」指摘


 元京都大原子炉実験所教員の海老沢徹氏は、大量放射能漏れという最悪の事態を防ぐカギは「現場の放射線が人間の作業できるレベルを保てるか」と話す。ただ、敷地内の土壌からプルトニウムが検出された現状も踏まえると、レベル確保すらままならない。国際原子力機関(IAEA)は30日に「原子炉が(無制御状態で核燃料が反応して放射能を出す)再臨界する可能性」を指摘している。


 事態をマスコミ報道よりも深刻にとらえたい。


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 なぜIAEAを黙殺するのか
 禁止区域外で高濃度放射能 国は警告を真剣に受け止めよ


 国際原子力機関(IAEA)は3月31日までに、福島第一原発から北西約40キロの福島県飯舘村の土壌から「独自の避難基準の2倍を超える放射性ヨウ素131を検出」と発表しました。IAEAは世界の「核の番人」であり、その立場から原発から20キロ圏内を立ち入り禁止とする日本政府に警告を出したのです。


 しかし、国の原子力安全委員会は、翌31日の記者会見で「政府の避難措置は妥当」として、警告を黙殺する姿勢を示しました。その理由を代谷誠治委員(元京都大原子炉実験所長)は「IAEAは草の上に落ちてきたちりを測定しただけ」「日本は空間(大気中の)線量や飲食物の摂取などを勘案している。土壌ではなく人が受ける放射線レベルで退避を判断している」と述べました。


 要するに「日本の基準の方が優れている」と言いたいのでしょうが、本当なのでしょうか。


 ●独善的姿勢が最悪招く


 放射性物質は土壌であろうと、大気中であろうと放射能を出し続けることは常識。普段は国際基準の重要性を主張しながら、都合が悪いときは「日本の基準が正しい」と言うのは身勝手です。


 放射能漏れが長期化するなかで、最も大切なのは国民を被ばくから守ること。どの機関が検出したかではなく、検出値にこそ注意を払わなければなりません。日本側のモニタリングにIAEAのデータも加味した総合的な判断が求められます。


 東京電力や原子力安全・保安院は、周囲の忠告を聞かずに独善的に事を進めて、放射能漏れを起こしました。中立が建前の安全委までもが同じ姿勢ならば、被ばく拡大という最悪事態を招く危険は高まるばかりです。