年収格差500倍、トップの報酬vs社員の給料 | すくらむ

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 『週刊朝日』(5/1)が、「トップの報酬vs社員の給料 - 役員報酬が社員の30倍以上の企業」という記事を掲載しています。


 株主オンブズマン代表の関西大学・森岡孝二教授が、日本企業の中で一番高い報酬を得ているトップは、ソニーの会長兼最高経営責任者で社長も兼ねているハワード・ストリンガー氏だろうと指摘しています。2007年度の有価証券報告書によれば、ソニーが執行役7人に対して支払った報酬総額は20億2900万円。そのうち、おそらく、約半分の10億円ほどをストリンガー氏は得ているだろうと森岡教授は語っています。


 森岡教授が「おそらく」と言うのは、日本では役員報酬の個別開示が義務づけられていないためです。たとえ株主であっても、社長ら役員がいくら報酬をもらっているのか知ることはできないとのこと。


 ソニーのストリンガー氏が10億円は得ているだろうとする根拠として、森岡教授は、「国内企業の執行役の報酬は高くても1億円が相場。たとえ、ナンバー2が5億円もらっていると仮定しても、そのくらいの額になる」と指摘し、「米国では上位5人の役員について報酬の個別開示が義務づけられている。ソニーのようにグローバルスタンダードでコーポレントガバナンス(企業統治)をやっていると公言している企業でも、実情はそうなっていないのです」と語っています。


 森岡教授はこれまで、ソニーの株主総会で7回にわたって役員報酬の個別開示を株主提案してきましたが、現在も実現していません。「ストリンガー氏もよく『報酬を開示しないことは日本文化であって尊重したい』と言います。また、日本の役員報酬は米国に比べて圧倒的に少ないんだから、個別開示しなくてもいいじゃないか、という意見もあります。しかし私は、日本文化でも、報酬額が多い、少ないの問題でもないと思う。その金額が適正かどうかを株主であるわれわれが評価できないことが問題なのです」と森岡教授は力説しています。


 そこで、『週刊朝日』編集部は、役員報酬の総額は、企業が提出する「有価証券報告書」に記載することが義務づけられているので、その開示資料をもとに、報酬総額を役員の人数で割った「役員1人当たりの平均年収」を算出。あわせて「有価証券報告書」で開示されている従業員の平均年収もあわせて算出したのが以下の数字。


 ◆役員報酬が従業員年収の10倍以上の企業


▼会社名   ▼役員平均年収 ▼従業員平均年収 ▼倍率
日産自動車  2億6210万円      714万円     36.7
ソニー      2億8986万円       958万円     30.3
住友不動産  1億1233万円       652万円     17.2
HOYA        9866万円      654万円     15.1
トヨタ自動車   1億2200万円      829万円     14.71
新日本製鉄   1億1024万円     750万円     14.69
シャープ       9570万円       764万円     12.5
ダイキン工業    8160万円       674万円     12.1
三菱電機      8795万円       782万円     11.2
新生銀行      9913万円       917万円     10.8
ヤフー        6300万円       598万円     10.5
※「倍率」=役員平均年収÷従業員平均年収


 上記にあるように、役員1人当たりの年収が最も多かったのはソニー。役員と従業員の年収の格差については、日産自動車とソニーの2社が、役員の年収が従業員の年収の30倍を超えています。この2社を含め、経営陣と従業員の平均年収に10倍以上の差があったのは、住友不動産、HOYA、トヨタ自動車など11社でした。


 日産自動車の場合で、正規の社員と役員の年収格差は36.7倍ですが、これを年収200万円の非正規社員と役員の年収格差を計算してみるとなんと「131倍」もの格差となります。さらに、前述しているソニーのストリンガー氏の報酬10億円と年収200万円の非正規社員と比較するとなんと「500倍」になります。マイケル・ムーア氏は、「1980年には米国の平均的な最高経営責任者は従業員の45倍を得ていた。2003年には自社従業員の254倍を稼いだ。8年のブッシュ時代が過ぎて、今では従業員の平均給与の400倍を得ている」と指摘していますが(※参照→マイケル・ムーアの「ウォール街救済プラン」~労働者給与の400倍得る経営者が救済経費負担せよ )、いまや、3人に1人が非正規労働者とされてしまった日本社会で、「500倍」もの年収格差が生まれているのです。


 『週刊朝日』の記事の最後に、同志社大学経済学部の橘木俊詔教授が次のように指摘しています。


 私は社長の適正な報酬はその国の文化で決まるのではないかと考えています。98年、クライスラーとダイムラー・ベンツが合併したとき、大揉めに揉めたのが、新会社の役員の報酬額でした。米国のクライスラー側は「もっと高額にすべきだ」と言い、ドイツのベンツ側は「労働者との差が大きくなると反感を招き、よくないので、そんなに高くする必要はない」と主張。ここに両国の文化の違いが表れている。日本は今までドイツに近い立場でした。ところが、小泉改革以降、米国に近づいています。ここ10年近く、国民所得のうち、労働者の取り分である「労働分配率」は下がり続けています。私はその責任と能力から、経営者はそれなりの報酬を受けてしかるべきという考えです。ただ、労働者はきちんと経営者の報酬を監視しなければなりません。そのためにも企業は、役員報酬の個別開示をすべきなのです。