2007-06-02 10:37:15

Florigen(フロリゲン)について

テーマ:農学 バイオ

花咲爺さんのイメージだろうか。老人が灰をまくと周りの桜が次々と開花を始める。

その、魔法のような灰はどのような物質でありえるだろう。

花の開花を研究している科学者は、そんな自由に花を咲かせる事のできる物質を”Florigen”(フロリゲン)となずけ、数十年探してきた。そして、先日,その物質、フロリゲンが見つかったというニュースが流れた。


フロリゲン自身についてはwikiの”フロリゲン ”やGoogleの検索結果 で沢山情報が得られると思うのでそちらに譲る事にして、では、実用化された際に、どのような影響があるか、QA形式で答えてみたい。


①稲の収穫量を増やすとか、食糧問題を解決になるの?


フロリゲンが何を行うかというと、花を作る準備ができた枝の先っちょのSAMと言われる細胞を花に変化させるキッカケを与える働きをする物質だ。つまり、そもそもSAMの準備ができてなければ、フロリゲンを与えても花を咲かす事もない。これは何を意味するかというと、種を蒔いてから花の咲くタイミングを限りなくゼロに近づけるという話ではない。SAMの準備ができない、つまり体が花を咲かせる=妊娠&出産 に対し、体が未成熟だと花を咲かす事はできない。


なので、そもそもSAMが成熟できないような環境(砂漠とか寒冷地)では、フロリゲンを使っても稲を育てたりはできない。また、現在、稲がもりもり育てられているような場所は基本的にそれほどSAMの成熟から、開花までリードタイムがあるわけではないので、生育期間が半分になるという事もないと思う。可能性としてあるのは、温度や栄養は十分あるのだけれども、日長の関係で稲が育てられなかった地域で、フロリゲンの散布で強制的に開花させて稲の栽培を行う事は可能だと思う。コストの関係もあるので、稲でなくてもいいが、作物の生育可能地域の拡大に寄与する可能性はある。結果は○。


②花や野菜の産業に対する影響は?


フロリゲンの発見によって”花を咲かせる技術”とフロリゲンの働きをブロックする事による”花を咲かせない技術”の進歩が見込まれる。産業的には後者の方が大事だったりする。例をあげればキャベツがある。キャベツは花が咲くとその商品価値は著しく低くなる。なので、フロリゲンをブロックする物質が見つかれば、それを散布することによって、本当は今日出す予定だったキャベツを来週の月曜まで出荷を延ばすという事はできるかもしれない。


ちなみにフロリゲンをブロックする物質まだ、聞いた事はないが、蛋白の構造さえ分かってしまえば、あとは一直線なので、アメリカの農薬メーカーが作るだろう。でもこれもまだ5年以上の話。結果は△。


③品種改良に対する影響は?

フロリゲンの話を聞いたとき、これが一番頭に浮かんだ(というか自分の専門だったからだろうか)。

アメリカでは遺伝子組み換え技術は、果樹研究の分野で良く使われている。理由は果樹の品種改良は非常に時間がかかるからだ。品種改良はAという品種とBという品種を掛けて、その子孫から選抜して、それをさらに別の品種と掛けたりして要らない形質をそぎ落としたり、味を良くしたりする。通常のフローでは、その様な掛け合わせて種を取るプロセスが5~6回は行われる。


稲なら、3ヶ月程度で交配して、種を取れるがいいが、これが柿ならどうだろう。実が取れるまで桃栗三年柿八年なので、5回交配するなら 8×5 = 40年必要となる。これが果樹の品種は親子三代かかるとか言われる理由で、この理由でアメリカでは手っ取り早く遺伝子組み換えで品種改良しようとしている。だが逆にフロリゲンを使えば、柿の実がなる期間を1年に短くできるかもしれない。そうなれば1x5=5年で新品種ができる。マーケットの事情で遺伝子組み換えを使いたくないときは、有効な選択肢だと思う。品種改良の方法自体を変える可能性があり、インパクトは大きい。結果は◎。


<結論>

マーケットでは往々にして誇張されるがバイオ技術や遺伝子組み換えは夢の技術ではない。その中でもフロリゲンは少しは期待してもいいビックニュースだったと思う。世界の食糧危機を救ったりはしないが、先進国のマーケットへの影響は高い。特に単価が高いオーガニック作物などの開花制御に使用されるのではないかと思う。それとデルモンテやサンキストなどの会社のR&D費用の削減や効率化に繋がるかもしれない。


補足1

たまに勘違いしているサイトがあるが、今回の論文の題名は"Hd3a Protein Is a Mobile Flowering Signal in Rice"(Science Express)、つまり”稲でHd3aという遺伝子から作られる蛋白がSAMに開花の刺激を伝えますよ”という内容で別にHd3aも昔から良く知られてた遺伝子だ。Hd3aとSAMの場所が離れているので、その間の伝達経路が長いこと謎だったのだけど、これが分かりましたよという論文だった。mRNAがフラフラと通ってSAMに行き着くとかいう説もあったのだけど、蛋白が直で働いているという内容。


補足2

ちなみに遺伝子組み換えでフロリゲンを作る遺伝子をリンゴだかミカンの木で過剰に働かせて、種が取れるまでの期間を短くしようという論文はすでにあったと思う。


補足3

論文読んだ内容としてはGUS遺伝子とくっつけて、GUS(蛍光物質)つきの蛋白をトレースするってそんな、難しそうでもないんだけど、何が大変だったのだろうか。たしかHd遺伝子が見つかってから大分たってると思うのだけど。Arabidopsis(雑草)でHd3aと似た入れるのFTとかは、大分まえに同定されてるはずなんだけど。その内、どっかで裏話聞けないかな。


感想

Hd遺伝子に昔、ちょっと、かかわってた事があったので、すげー懐かしかったです。HdはHeading(イネの出穂)の略で筑波の先生が見つけた遺伝子(正確にはQuantitative Trait Loci)だったかな。何にせよ、日本が海外に先駆けて、メカニズム解明したのは大興奮!むふー。 研究したくなった。

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