平成28年国家総合職専門択一試験・憲法コメント | 彼の西山に登り

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【本文】

ここ数年、国家総合職の1次試験後に専門択一試験の主要科目についてコメントしています。
1次試験直後なので大した内容でない割には結構重労働の上、国家総合職ゼミもできたので、ブログに書くことはもうやめようか迷っているのですが、取り敢えず憲法についてのコメントは出そうと思います。

例年のことですが、今後の国家専門職・一般職や裁判所事務官等の1次試験にどう生かすかを中心とした解説で、網羅的なものではありません。

問題と正答が手元にある前提で、№は法律区分のものです(政治・国際区分との共通問題については、政№~と付記します)。

※ 一旦アップ後の付記
 経済区分との共通問題について、「経№~」で付記しました(2015・5/31)。


平成28年度の憲法は、基本的人権3問(№1~3)、統治機構4問(№4~7)で、うち人権3問、統治2問が政治・国際区分と共通問題です。№1と№4が引っ掛かり易かったのではないかと思います。あとは平易~標準的な問題と思います。


№1(政№21、経№41)=正答2
憲法13条に関する判例ベースの問題。
ウ○輸血拒否事件(最判平12・2・29)→肢2・5までは平易です。

ここから絞るのに、イ×最判平15・3・14の知識が必要です。同判例は、記事の掲載が不法行為となるかについて、名誉毀損については最判昭41・6・23を援用して、「公共の利害に関する事実に係り、その目的が専ら公益を図るものである場合において、適示された事実がその重要な部分において真実であることの証明があるとき、又は真実であることの証明がなくても行為者がそれを真実と信ずるについて相当の理由があるときは、不法行為は成立しない」とし、プライバシー侵害については、ノンフィクション『逆転』事件(最判平6・2・8)を援用して、「その事実を公表されない法的利益とこれを公表する理由とを比較衡量し、前者が後者に優越する場合に不法行為が成立する」としました。記述イは原審の判断ですが、最高裁はこれを破棄しています。

なお、ア×最判平18・9・12は平易。エ×大阪空港騒音訴訟において最高裁は人格権に言及しておらず、夜間の飛行差止めも認めていません。人格権に言及したのは原審(大阪高判昭50・11・27)です。


№2(政№22)=正答4
信教の自由に関する判例ベースの問題。
イ×最大判昭52・7・13、ウ×最判平8・3・8は基本判例で平易ですので、肢3・4までは絞れると思います。

そこから正答4にたどり着くには、ア○殉職自衛官合祀拒否事件(最大判昭63・6・1)の知識が必要です。一頃に比べ、最近の問題ではあまり目にしなかった判例です。
なお、エ○、オ○はいずれも箕面忠魂碑訴訟(最判平5・2・16)です。これも一頃に比べ、最近は比較的目にしなくなっていた判例です。特にオ○の記述は、この後に「換言すれば」として述べられている「特定の宗教の信仰、礼拝又は普及等の宗教的活動を行うことを本来の目的とする組織ないし団体」という定義がよく引用されますので、判例集や「公務員試験六法」等で長めに引用された判旨を見ていないと、知識としてはあまり目にしていないのではないかと思います(内容は平易ですが)。


№3(政№23、経№42)=正答2
経済的自由権に関する判例ベースの問題。勉強の向きにもよりますが、今回の憲法では最も平易な問題だったのではないかと思います。

ア○素材は小売市場距離制限事件(最大判昭47・11・22)です。あまり注目されない部分ですが、職業選択の自由の規制の一般論としても通用する内容です。
イ○国籍離脱の自由は無国籍になる自由を含むものではないという通説です。職業選択の自由以外(を含む)22条問題や経済的自由の総合問題では出題頻度が非常に高いですから、ほとんどの方が分かったと思います。
ウ×最大判昭33・9・10、エ×最大判昭28・12・23。
オ×薬事法違憲判決(最大判昭50・4・30)ですが、積極目的規制で明白(性)の原則で審査しています。結論ではなく間の説明が誤っています。


№4=正答3
国会に関する条文ベースの問題。取れなかった方がかなりいるのではと思います。
ア×最判平9・9・9、イ×会期不継続の例外として、①(継続審議に)特に付託された案件と②懲罰事犯の件が認められている(国会法68条ただし書)ところから、肢3・5までは容易に絞れます。

決め手はエ×が分かるかです。両議院で可決したときに法律となる(59条1項)原則に対する例外は、①衆議院の優越が認められる場合(59条2・3項)、②地方(自治)特別法(95条)のほかに、③参議院の緊急集会による場合(54条2・3項)があります。※

なお、ウ○は60条2項、61条、67条2項、59条2・3項、オ○は国会法11条、13条、12条2項です。


№5(政№24、経№43)=正答5
司法権に関する判例ベースの問題。平易です。
ア×富山大学事件(最判昭52・3・15)、イ×板まんだら事件(最判昭56・4・7)→肢5が最速です。

誤肢も基本判例です。ウ×警察法改正無効事件(最大判昭37・3・7)、エ○砂川事件(最大判昭34・12・16)、オ○苫米地事件(最大判昭35・6・8)。


№6=正答1
法律及び予算に関する条文ベースの問題。
誤肢には附属法規中心で内容が細かいものもありますが、正答1が平易なので、解けた方が多いと思います。

1○59条4項、60条2項。
2×予算の衆議院先議は慣例ではなく、憲法典上明文の規定(60条1項)があります。
3×主任の国務大臣の署名、内閣総理大臣の連署(74条)が欠けても、法律の効力には影響がないと解するのが一般です。
4×暫定予算も国会の議決が必要です(財政法30条参照)。
5×継続費、繰越明許費は、一般会計予算でも認められています(財政法16条参照)し、特別会計予算も毎会計年度国会の議決が必要です(特別会計に関する法律5条1項参照)。


№7(政№25)=正答1
地方自治に関する条文、判例素材の問題。
ア○町村総会(地方自治法94条)が分かるか否かで、解答速度に差が出ます。
分かれば、エ○最大判昭37・5・30か、オ×で正答1がでます。
オ×に関し、条例による財産権の規制については、①財産権の規制は法律によってのみ可能で、条例で規制するには法律の具体的委任が必要であるとする記述オの説のほかに、②財産権の内容と行使を区別し、前者は法律によらなければならないが、後者は条例によって規制可能とする説、③財産権は条例によって規制可能とする説など諸説あります。実務では、財産権の規制に関する条例は多数あり、③説的見解が定着しているとされます(奈良県ため池条例事件(最大判昭38・6・26)も参照)。

イ×93条2項は「住民自治」の原則が具体化されたものであると解されています。ウ×は最大判昭38・3・27で基本判例です。


ざっとですが、今後の受験のために、復習の参考にしてください。


※ この他に、④予算法律説に立った場合の予算(60条2項)というのも考えられますが、通説ではありませんから、ここでは意識しなくていいでしょう。ちなみに、私の手元にある有斐閣の『判例六法』(平成28年版)では、憲法59条の後ろに、59条1項「特別の定」の参照条文として、59条2・3項、95条、54条2・3項が挙がっています。