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読んでいる最中、何度も溜息が出た。
三田完著「鵺」。

演出家であり作家である久世光彦さんをモデルにしたこの小説は、19歳の時の初舞台「寺内貫太郎一家」の演出が久世さんだった私にとって、泣きたくなるように懐かしく、愛しい世界がどこまでも広がっていた。
同時に、時に鬼のように厳しかった久世さんの、大事な秘密を知ってしまうような背徳感もあり…。

虚実ないまぜの妖しき光に誘われて、
物語の奥へと這うように進み、
読後は芝居小屋の明かりが点いても、まだ席を立てないような。

私は戦中、戦後という時代の一つの内側を、
久世さんに教えて頂いたような気がします。
あの日の空は青かったとか。
少年の久世さんの目にだけ映った美しさというか、そんなものを。

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「鵺」に誘われ、久世さんの本を本棚から出してみる。再読しよっと。