香りがしてきた。

あのかぐわしきに匂ほい。

そう、昆布だしとかつおだしが吹き出した匂い。

そう、それに絡まった鳥の脂とごぼうのコクの香り。

そう、もうすぐかやくご飯ができるのだ!!

東京ではこの手はとり釜飯、鶏ごぼうごはん? 定かな名前はない。

 

かやくご飯。

 

まずは野菜を切る。

人参、ごぼう、しいたけ、鶏肉、タケノコ、これが基本。

これに昆布だし、かつおだし、酒、しょうゆ、塩、砂糖をまっテキトーに。

ホンデもって煮る。その時からこのかぐわしき香りはのぼり立つ。

ツーンと鼻孔の奥を刺激する。

ホントはご飯と一緒に炊くべきなのだろうがこの方が素人はやけどしない。

米をとぐ。ざるに取る。

炊飯器に入れる。

 

再びざる登場。

先ほどの煮汁を炊飯器の器に落としながら具を別に。

二度もざるに救われここに至る。ざるの偉大さをここで味合う。

野球や囲碁で「ざる」というのはいい表現ではないが、ざるは実は立派なチームプレーの一員であることを知る。スルーの大切さ。

見ざる聞かざる……。カッカしない。

 

さっきの煮汁にサラダ油一匙。これでピラフ風になる。

イスラム圏、ラテン系、地中海の人たちのピラフと似た料理。

海苔をふりふり、七味ふりふり。店ではできないよね。これぞ家かやくご飯の魅力。

いつしか短気でカッカカッカしがちだったのに、うまくスルーすることができるようになった。

大勢に影響がないことには細かい私はとにかくスルー。

何十年もかやくご飯を作っていて発見した事実、それは「ざるは偉大なり」と言うことだった。