ミニブタの病気 ②内部器官の病気
外部器官の病気と違って内部器官の病気は症状が微妙なので、飼い主さんは日頃から観察を怠ってはなりません。
病気の判断は難しいので少しの変化も見落とさないように気を付け、異常があれば速やかに病院で診てもらいましょう。
また勝手な判断で人用の薬を与えてはなりません。
消化器
①胃潰瘍・胃食道部潰瘍
○症状
初期症状としては食欲がなく、不活発で機嫌が悪くなる。
やがて痛みのため腰を丸めたり寝起きの時にうめき声を出したりする。獣医すら腰痛と間違えたりすることもあるので、状況を克明に知らせる必要がある。
さらに進むと嘔吐するようになり、最終的には吐血したり糞が黒くなる。
○原因
家畜豚の場合、屠場で多くの個体に潰瘍が見られるそうです。原因は過密飼育によるストレス(胃潰瘍)、粉末状飼料(ペレットを含む)や食物繊維の不足による胃内部での過剰な流動性などで胃の入り口付近の食道組織が胃酸に侵される(胃食道部潰瘍)が原因と思われる。
○予防
野菜類を多く食べさせること。ストレスを与えないこと。運動をさせること。
②消化不良
○症状
胃潰瘍と同じような症状を示す。吐瀉や下痢することもあります。
○原因
不適切な飼料、変質した飼料や散歩中に拾い食いしたりした場合起こります。この場合は獣医に診せましょう。
過食の場合は1日絶食させ、可能なら運動をさせます。
プレーンヨーグルトを食べさせれば早く回復することもあります。
○予防
ミニブタフードに野菜を給餌の基本にし、ブタが探し出せる場所に食べ物を置かないこと。
ミニブタフードは密閉容器に入れ、乾燥して涼しいところに置き、保存期間を過ぎたものは与えないようにする。
また、散歩中は絶えず注意して拾い食いをさせないようにします。
呼吸器
ブタの呼吸器病は感染症、非感染症を含めて重要なものがあるが、そのほとんどは飼育条件が悪い養豚場で発生しており、ペットのブタでは発病例はほとんどありません。
雨の日に散歩をする場合はレインコートを着せたりして濡らさないようにします。濡れた場合は速やかに乾かしてください。
泌尿器
家畜豚は6か月で処分されるので、泌尿器の病気は発症しているのに気が付かないか、気がついてもそのまま処分されてしまうので、家畜豚では泌尿器の病気は問題にすらされない。しかし、ペットのミニブタは長年飼われるのでよく見られる重要な病気です。
①膀胱炎
○症状
頻尿で残尿感があり、尿を取ってよく見ると浮遊物が漂っていることがある。更に進むと血液が混ざることもある。
病気が進むと痛みが出て食欲がなくなる。飼い主が気が付きやすい症状は頻尿と残尿感なので気をつけてください。
膀胱炎は再発しやすく慢性化しやすいので、早期発見早期治療が重要です。
○原因
膀胱炎を起こすバキテリヤは身近に存在するので、容易に起こりうる病気です。
メスの場合、糞による外陰部の汚れや犬すわりによってバクテリヤが尿道を伝わって膀胱に侵入するのが大きな原因であり、また、尿結石により膀胱内壁が傷つけられるのも原因になる。
○予防
餌に気を付け水を十分飲ますようにする。飲水量が少ない場合はジュースを薄めたりして、兎に角飲む量を増やす。
②尿結石
尿結石はペットのミニブタでよく起きる病気である。気が付かないと死亡の原因にすらなる要注意な病気です。
○症状
1、飲水量が減った。
2、尿が濁っていたり陰部に白いチョークのようなものが付いて いる。
3、背中を丸めている。
4、抱くのを嫌がる。
5、尿がとぎれとぎれだったり、頻尿だったりする。
6、残尿感がある様子をする。
○原因
膀胱の尿の中に結石ができる病気である。結石が小さいうちは排尿に伴って出てくるが、大きくなると尿管に詰まり排尿できなくなったり、激痛が出る。
病気の原因は飼料と飲水量の問題です。
結石の原因になるタンパク質、マグネシウム、リンなどを多く含む餌を与えない。
○治療
尿が濁っている程度の時は飲水量を多くする。真水を飲まない時は糖分塩分無添加の野菜ジュースを10倍以上に薄めて、とにかく多く飲ませる。
尿酸性化薬を飲ませるのもよいが、ブタに適した薬はない。外国製の尿酸性化治療用の飼料は「塩化アンモニウム」を添加してある。
結石が尿管に詰まってしまったときは、カテーテルを挿入し結石を一旦膀胱に戻し、薬剤で溶解させる。ただ、雄ブタの尿管は屈曲しているためカテーテルを通せないことが多い。この場合は手術によって取り出す。
○その他
わが愛トンも若いころ頻繁に尿が濁った。
尿酸性化剤や飼料の変更などで対処したが、改善しなかった。
結局、多量の飲水を心掛けた結果、現在は尿が濁ることはなくなった。体重は70~80kgあるが、毎日6リットルの水を飲ませている。
ブタ友のブーちゃんの中には、手術で一命をえたもの、手術が失敗して死亡したもの、獣医が腰痛と誤断して手術が間に合わなく死亡したものなど、この病気の例は多い。
ミニブタの病気 ①外部機関の病気
各部について記述します。
目
ブタが少量の涙を出し、目やにが付くのは異常ではないが、茶色っぽい涙以外の色の涙は内科的な病気などで起こるし、多量の涙は異物が目に入っている可能性があるので、洗目程度の目薬、ホウ酸水で目に入った異物が洗い流します。逆さまつ毛などが目に入る場合もみられます。この場合は目に入っている毛を注意して切ります。
異常な色の涙や洗目で異物が洗い流せない場合は、速やかに病院で診てもらいます。目はデリケートなので決して無理をしてはならない。
鼻
ブタは何でも匂いで確認し、動くものがあればひっくり返す。これはブタの習性そのものですが、時には鼻に怪我をします。怪我をして血が出ていても大概は自然治癒する。心配なら水で洗ってきれいにし、消毒薬を軽く塗ってやれば十分です。勿論深い傷など重傷の場合は、病院に連れて行きます。
透明で水っぽい鼻水も普通です。犬の鼻が常に濡れているのと同じです。
ただ、色がつた流出物は内科の病気の可能性が高し、頻繁なくしゃみや咳きも正常ではない。
歯
生まれたばかりの赤ちゃんブタには鋭い歯が生えている。普通は生まれたらすぐ先端部をカットするが、まだ尖ったままなら獣医に切ってもらいます(自分でもカットできるが・・・)。
乳歯は早いものは生後1週間頃から、遅いものでも3か月後には生え揃う(全部で28本になる)。
永久歯は4~20ヶ月で乳歯と入れ替わる。本数は44本になる。
ペットのブタは甘いものを食べがちなので、虫歯になる可能性が高い。犬用の歯磨きをクロスにつけて磨くが、ブタが素直にやらせることはほとんど期待できない。
次善の策としては犬用のコラーゲンでできたおやつを食べさせたり、水中に糖分を含まないものを沈めて食べさせること位です。
最善の策は甘いものを食べさせないことです。
獣医に治療を頼むとしても、ブタの麻酔は危険を伴うのでやってくれる獣医を探すのは大変です。
ペットブタで最も大変なことは雄は去勢してあっても、一生牙が伸びることです。伸びた牙は凶器と同様危険なので、時々切る必要があります。
ブタが寝ている時にヤスリなどで少しずつ切ったり、それができない時は獣医にやってもらいます。
その点メスブタはほとんどその必要性はありません。
脚
○ひづめ
屋外飼育や朝夕散歩に連れて行く場合は蹄を切る必要は生じないが、屋内飼育の場合は定期的に切る必要があります。
切り方は寝ている時に子供のころから少しずつ切り、切ることに慣らせます。どうしても無理なら獣医に切ってもらいます。
切る道具は小さい頃はニッパーで、大きくなったら剪定ばさみや枝切ばさみを使います。
蹄を切ることを怠ると割れづめや変形づめになることがある。
割れづめになったらきれいに洗い、消毒してからエポキシ樹脂で割れが進まないようにする。乾燥を防ぐため馬用の蹄用オイルを塗ると予防できる。
変形づめになった時は頻繁に少しずつ切って修正を進めるけれども、元のようにすることは難しい。
○足
散歩した後蹄底が傷ついていないか、ガラス片が刺さっていないか注意する。
肥満は歳をとると足腰の負担になり、歩けなくなったり、関節炎を起こしたりし寿命を縮める結果を招くので、ブタの食欲に負けて食べさせすぎないように注意する。
○脚
関節のトラブル
ブタは食欲旺盛で絶えず空腹を装う。可愛がるオーナーほどそれに負けて必要以上の食べ物を与えるため、大人になった頃には肥満ブタになっている場合が多い。
これは老年期(おおむね10歳以後)に入って脚への負担大きくなり、関節炎などを起こす原因になる。歩けなくなれば介護も大変だし死への近道になる。
オーナーは決まった量のミニブタフードと野菜を与え、決して人の食べ物などを与えてはならない。それが愛トンの天寿を全うさせる方法です。
皮膚
大人のブタの皮膚は驚くほどドライスキンでガサガサになる。
あまりにも酷い場合は栄養のアンバランスも考えられるので、エサについて再考してみるのもよい。
基本的には「ミニブタフードに野菜(牧草なども可)」です。ブタの餌は残飯でよいと考えるのは、犬の餌はご飯の残りに魚の食べ残し(骨など)でよいと考えるのと同じです。
我が家では日生研のミニブタフードを与えています。
0551-36-2333に電話すれば送ってくれます。
ブタの病気 ②罹るかもしれない監視伝染病
多くの監視伝染病はペットのミニブタが罹ることはほとんどないが、0かと言えばそうでもない。
罹る可能性がある病気について記述します。
流行性脳炎・・・日本脳炎ウイルスがコガタアカイエカによって豚⇔豚、豚⇒ヒトに伝染する病気です。ブタ自身は罹っても発症しませんが、妊娠豚が罹ると異常産、造精機能障害が起こります。
豚はヒトへの感染の中間宿主になるので、できればワクチン注射をすることを勧めます。
口蹄疫・・めったに発生しない病気であるが、一旦発生した場合は、その地域のすべての豚は殺処分される。近年では2010年に宮崎県で発生している。多くの偶蹄類(牛、ヒツジ、ヤギ、シカなど)が罹る。
極めて感染力が高い口蹄疫ウイルスが、空気感染、接触感染で広まる。
発熱、食欲不振、嗜眠の後、口腔内、口唇、舌、鼻鏡、鼻腔、蹄に水疱ができる。最終的に死に至る。
豚丹毒・・自然界に広く存在する豚丹毒菌が糞や尿、唾液による経口感染、皮膚の傷からの侵入によって感染する。
敗血症型、蕁麻疹型、慢性型(関節炎など)の重篤な症状を示すことがあるので、ワクチン接種が望ましい。
流行性脳炎と豚丹毒のワクチンは同時に可能です。
オーエスキー病・・ブタヘルペスウイルスが鼻汁、唾液の経気道・経口感染による。妊娠豚や子豚は死亡する確率が高く、それ以外の豚は風邪様の症状を示すが多くは無症状のままキャリアになる。
豚以外の多くの家畜(馬、羊、ヤギ、ウサギ、犬、猫、など)も罹るがほとんどが死亡する。
日本では地方自治体毎に状況が異なる。感染豚がいない地域(清浄地域)、数年発症豚がいない地域(準清浄地域)、発症豚がいる地域(浄化推進地域)等に分けられ、それぞれに応じた撲滅対策が取られている。
北海道や沖縄の様な道県ではペットのミニブタでも県外からの移入には厳しい条件が付く。
トキソプラズマ病・・トキソプラズマ原虫による伝染病で、豚の場合猫(初感染の子猫の特定時期の糞)の糞の経口感染による。
この病気特有の症状はない。子豚の場合食欲不振、耳、鼻端、腹部等にチアノーゼ、腹式呼吸、食欲不振、起立不能の末死に至ることもある。
多くの感染症は豚⇚⇛豚感染です。従って予防の最良の方法は「ヒトもブタも絶対に養豚場に近づかないことです」。それに「日本脳炎、豚丹毒のワクチン接種」をしておけば、ペットのミニブタはまず監視伝染病にはかからないでしょう」。
ブタの病気 ①監視伝染病と人畜共通伝染病
ミニブタもブタです。従って家畜豚と全く同じ伝染病にかかります。近くにミニブタを診られる獣医が極めて少ない現実を考えるとミニブタをペットとして飼う時病気が気になるところです。
「豚病学(近代出版)」や「ブタの病気(家の光協会)」「人と動物の共通伝染病(酪農総合研究所)」「ポットベリードピッグの飼育書」を 見ると伝染病だけでも驚くほど沢山の病気があることが分ります。そこで上記した本を参考にして伝染性の病気の一部について簡単に記述したと思います。
◎監視伝染病気
監視伝染病は家畜豚・ペットブタ共通の感染させうる病気ですから、これ等の病気には一旦発生したなら、厳しい監視や処置を求められたり、発生状況を報告する義務のある病気(家畜伝染病[法定伝染病]、 届出伝染病)を含みます。豚に関する
○法定伝染病
牛疫 、 口蹄疫 、 流行性脳炎 、 狂犬病 、 水胞性口炎 、 炭疽 、 出血性敗血症 、 ブルセラ病 、 豚コレラ 、 アフリカ豚コレラ 、 豚水胞病 、
○届出伝染病
類鼻疽、 気腫疽 、レプトスピラ症 、 サルモネラ症 、 ニパウイルス感染症 、 野兎病 、 トキソプラズマ病 、 オーエスキー病 、 伝染性胃腸炎 、 豚エンテロウイルス性脳脊髄炎 、 豚繁殖・呼吸障害症候群 、 豚水疱疹 、 豚流行性下痢 、 萎縮性鼻炎 、 豚丹毒 、 豚赤痢 、
これらの多くは日本では発生していない病気やここ数年発生していない病気もあります。
これ等の病気に対してはワクチンが用意されているものもあります。
我々ペットのミニブタのオーナーはどのような病気のワクチンの接種が必要か心配になります。結論は家畜のブタほど多くのワクチンの接種は必要ないということで一安心させられます。
家畜のブタは狭いところに多数のブタが生活しており、あらゆる生活条件が厳しい状態にあります。このような状態では呼吸器関係消化器関係の病気 をはじめ多くの病気が発生することが予想されます。叉感染豚の導入、その豚舎で常在化している病気等もあり、各種のワクチンの接種が必要となりま す。養豚場でどのようなワクチンを接種するかは現在接種義務のあるワクチンはありませんから、養豚業者の判断によります。豚パブロウイルス病、AR(萎縮性鼻炎)、オーエスキー病(当局の許可が必要)、マイコプラズマ病、日本脳炎、豚丹毒などのワクチン接種が行われている可能性がありま す。
一方、我々のペットのミニブタは生活環境に恵まれ、栄養状態も良く(ダイエットブタを除く)、感染ブタとの接触もなく感染性の病 気に対して極めて良い状況にあります。従って、基本的にはワクチンの必要はないと言うのが私が問い合わせた家畜保健所や獣医さんの答 えでした。ただし、次のような場合は、獣医さんと相談の上幾つかの病気に対するワクチン接種をした方が良いでしょう。
① 近くに養豚場がある。
② あなたやペットのミニブタを連れて養豚場に出入りする(避けるべき)。
③ 養豚場に出入りする車が通る道を散歩させる(出荷するブタを乗せたトラックが良く通る)。
④ 繁殖する計画がある。
⑤ あなたのペットのミニブタが人畜共通伝染病叉は他の動物に対して中間宿主になって欲しくない。
⑥ 単独飼育のペットのミニブタでも起こる可能性のある病気に対応したい。
④に該当する病気としては 日本脳炎、豚パルボウイルス病、
⑤に該当する病気としては 日本脳炎、豚丹毒、
⑥に該当する病気としては 豚丹毒、
◎人畜共通伝染病(Zoonoses ズーノーシス)
人も動物も罹る可能性がある伝染病を言
います。
近年ペットブームで各種の動物が外国から輸入されている(殆ど無制限に野生動物の輸入を許可している先進国は日本だけで、 欧米ではイヌ・ネコ等の特別の動物に限って輸入を許可しているそうです)。それに伴って人畜共通伝染病がにわかに問題になってきていま す。特に、野生動物の場合未知のウイルス性の病気もあり注意が必要です。
ところでペットのミニブタには人畜共通伝染病はあるのでしょ うか。下の表のようにかなりの数の伝染病があることが分かりました。数多くありますがどのような経路で感染するのでしょうか。
①罹患ブタの排泄物を直接叉は間接的に 人が口に入れる場合
②豚に接触した場合
③空気中の漂う飛沫を吸い込む場合
元々ペットのミニブタがこのような病気に罹る機会は殆どありませんが、養豚場に出入りされる方 は気をつけたほうが良いでしょう。叉、ブタを扱った手で調理しないよう手洗いを励行しましょう。
尚、ここに上げた病気は豚肉を食して罹る病気は含まれていません。
疾病名 | 病原体 | 人への感染経路 | 症状(豚) | 症状(人) | 我国での発生 | 危険度 | |
---|---|---|---|---|---|---|---|
日本脳炎 | ウイルス | コガタアカイエカ | 不顕性感染、流産 | 不顕性感染、脳炎 | 有 | 中 | |
インフルエンザ | ウイルス | 飛沫感染 | 呼吸器症状、発熱 | 感冒様症状 | 有 | ||
水疱性口炎 | ウイルス | 接触感染 | 口蹄疫様症状 | 感冒様症状、水疱 | 無 | 小 | |
サルモネラ病 | サルモネラ菌 | 経口感染 | 発熱、下痢 | 食中毒 | 有 | 中 | |
エルシニア病 | 細菌 | 経口感染 | 健康体 | 胃腸炎症状 | 有 | 中 | |
ブルセラ病 | 細菌 | 経口感染、経皮感染 | 流産 | 感冒様症状 | 有 | 強 | |
炭疽 | 炭疽菌 | 接触、経口感染 | 腸炎型が多い | 炭疽傷、腸炭疽、肺炭疽 | 有 | 強 | |
仮性結核 | 細菌 | 経口感染 | 健康体 | 敗血症、下痢症、結節性紅斑 | 有 | ||
パスツレラ病 | 細菌 | 接触、気道感染 | 肺炎、咳、発熱 | 呼吸器症状 | 有 | 中 | |
類丹毒 | 豚丹毒菌 | 創傷感染 | 敗血症、関節炎 | 紅斑、敗血症 | 有 | 中 | |
結核 | 細菌 | 経口、気道感染 | 外見症状乏しい | 結核 | 稀 | ||
非定型抗酸菌病 | 非定型抗酸菌 | 気道、経口感染 | 外見症状乏しい | 肺疾患 | 有 | 中 | |
レプトスピラ病 | 細菌 | 経皮、経口感染 | 不顕性感染 | 発熱、黄疸、充出血 | 有 | 中 | |
カンピロバクター病 | 細菌 | 経口感染 | 無症状(腸内) | 食中毒 | 有 | 中 | |
豚赤痢 | スピロヘ-タ | 経口感染 | 粘血下痢便、腹痛 | 下痢、腹痛 | 有 | 中 | |
カンジダ病 | 真菌 | 経皮、粘膜、日和見感染 | 皮膚病変(子豚) | 表在性真菌病 | 有 | 小 | |
皮膚糸状菌病 | 真菌 | 接触感染 | 輪癬(子豚)、自然治癒 | 表在性真菌病 | 稀 | ||
クリプトスポリジウム病 | 原虫 | 経口感染 | 不顕性感染 | 下痢、腹痛 | 有 | 中 | |
トリヒナ病 | 線虫 | 経口感染 | 嘔吐、下痢、浮腫 | 下痢、顔面浮腫 | 有 | 中 | |
有鈎嚢虫病 | 有鈎嚢虫 | 経口感染 | 発熱、発育障害(幼豚) | 頭痛、昏睡、痙攣 | 稀 | 小 | |
カリニ肺炎 | カリニ虫 | 経口感染 | 呼吸困難、発育不良 | 未熟児、後天性免疫不全症候群と関連 | 有 | ||
サルコシスティス病 | 住肉胞子虫 | 経口感染 | 発熱、流産 | 食欲不振、腹痛、下痢 | 稀 | ||
大腸パランチジウム病 | バランチジウム虫 | 経口感染 | 無症状、下痢、血便 | 下痢 | 有 | 小 | |
エキノコックス病 | 多包虫 | 経口感染 | 無症状 | アレルギー | 有 | ||
トキソプラズマ病 | 原虫 | 経口感染 | 発熱、呼吸困難 | 早流産、脳髄膜炎、リンパ節炎 | 有 | 強 |
(註)不顕性感染・・通常は症状を表さないが、特別な場合(ex.妊娠した時)に症状を示す感染。
健康体、無症状・・病原体を保有しているが症状がない場合。
この寒さを乗り切るために
そもそもブタはどの位の寒さに耐えられるのか・・・・・?
答えはケースバイケースと言えます。なぜかと言うとそのブタが育ってきた環境や個体差があり、またどの位の防寒環境を用意できるかによって異なるからです。
実例を挙げれば、ブー友のブーはスウェーデンで暮らしていますが、3月頃にはまだ一面の雪景色ですが、日中は日だまりの雪がないところで、マットレスを敷いてウェアーを着た状態で日向ぼっこを楽しんでします。
夜は隙間風が入らない小屋の中の毛布で包まれたケージの中で寝ているそうです。
イギリスの冬も寒いですが、HPには隙間風が入らない小屋に多量の藁を入れてやれば、豚はすっぽり全身を藁にもぐらせて鼻だけ出して寝ているそうです。
ただこの状態はあたかも冬眠を思わせるような状態で、ブタは餌を食べる時しか藁から出てこず、きわめて気難しくなると書いてあります。
またアメリカのカナダに近い地域で飼っている場合の記事として「異常低温警報が出たら直ちに小屋に入れなさい」とか「水が凍って飲めなくならない様に見回り、ぬるま湯を補給してやりなさい」「ブタの耳が凍傷を起こさないように長時間外に出さないように」等と言う記述もあります。ここからわかることは慣れれば相当の寒さに耐えられるということです。しかし、そのような場合でも寒さが身に沁みるようであれば避難できる隙間風が入らない保温用品(藁や毛布の様なもの、時には保温用ヒーター)を用意することは絶対条件です。
しかし、ブタも人と同じように温暖な環境で育って居れば、寒さに耐える耐性は著しく低くなります。
例えば日本の話ですが、冬かなり寒いところにあるふれあい牧場で温かいところで育ってきたブタを十分な保温施設がない状態で飼ったところ全滅してしまったとか。室内で飼育していたブタが排泄を外でするようにしつけていたところ、冬の夜いつものようにドッグドアから外に出て、雪が積もる寒さに耐えかねて、朝気が付いたら軒先で凍死していたなどと言うこともあります。
冬の寒さはブタにとっても健康上良くない状況です。風邪やインフルエンザを始めとして万病の原因になるので、寒さ対策は十分にしなくてはなりません。ブタは脂肪の塊、耐寒性が強いだろうと楽観はできません。
では一般的にどのような飼い方をしたらよいのでしょうか?
○屋内飼育の場合
人が生活している環境ではあまり問題になりませんが、それでもすっぽり体が隠れる程度の毛布などを用意してやる必要があります。
○屋外飼育の場合
それまで生活していたのと同じ環境を整えてやる必要があるので、前の飼い主から飼育環境を良く聞いて同等以上の温かさを用意しなくてはなりません。 屋外飼育の環境はその地の気候によって大いに異なりますが、寒い地域の場合は
①雨漏りなどしなく隙間風が入らない小屋を用意します。小屋の中には十分な保温が出来るようにたっぷりの藁や体を包む毛布などの保温材を用意します。そうすればブタはその中にもぐりこみ体温を保つよう自身で備えます。
②①以上に厳しい環境の場合は、何らかの保温器具を用意します。養豚場で は大規模になるので電気やガスを用いた赤外線放熱器や保温シート、床暖房などを行いますが1~2頭のペットのミニブタには過剰設備となるでしょう。
ペット用としては赤外線電球を天井からつるしたり、養豚場の子ブタ用として 売られている電気のホットシートがよいでしょう。
赤外線電球の場合はブタが配線を傷つけたり、電球を破損しないように整え なくてはなりません。また、ホットシートは低温火傷しにくいような温度が保たれるよう温度設定がなされており、ブタが鼻ゴリしても大丈夫な物質で 作られています。
○我が家の場合
我が家は横浜市にあり、程よい気候の地にありますが、夜も外飼いするように変更した時、小屋を置いてある空間自体に風が入らないようにし、そこに厚いベニヤで作った小屋を用意しました。
小屋の内側は毛布を張り付け、壁からの熱の放出が少なくなるようにし、床には1㎝のゴムシート、電気ホットシート、ジュウタンを敷き詰め、床からの放熱を防ぐとともに、低温火傷しないようにも気を付けました。勿論タップの毛布も入れてやりました。
出入り口は出来るだけ小さく作り、厚手のビニルシートを暖簾風に切って取り付けるとともに、ブタが小屋に入って寝てからは入口に毛布をつるし、冷気が入らないにしています。
なお、小屋の中には温度センサーを取り付け最低・最高温度のチェックもしています。
この暑い夏を乗り切るために
この夏の暑さは例年になく暑いもので、人は勿論ペットの熱中症も心配されます。まして熱放出に不利な体型のミニブタにとって熱中症は極めて現実的な問題です。
ではどの様な対策が考えられるでしょうか考えてみましょう。
◎屋外飼育の場合
○庭など空間が広い場合
庭など空間が広い場合は、ブタは適当に日陰を選んで昼寝しますからあまり心配はいらないのですが、時間によっては日陰が出来ない場合もあるので次のような対策が必要です。
①小屋は日陰になるところに設置します。もし日陰がない場合は遮光ネットを購入して張り、日陰を作ります。涼しく昼寝できる空間を必ず用意しましょう。
遮光ネットはネットですから、雨が降っても水がたまらず重さも軽いので簡単なロ―プで張ることが出来ます。遮光の割合はいろいろの程度のものがありますが、我が家では80%遮光のものを使っていますが、思ったほど暗くはなりません。
インターネットで検索すれば、いろいろな大きさ、遮光割合のものが手に入ります。
②プールを用意します。ミニブタにとって水浴びは最適な体温上昇を防ぐ手段です。
プールは体が余裕で入るものを用意します。モルタルを練るフネと言うプラスチック製のものを使いやすいです。
ブタがしゃがんだ時に体半分が沈めばよいでしょう。気持ちよさそうに水浴びしますよ。
ブタは水を見ると排尿する習性があります。プールの水がオシッコ水になると非衛生的ですし、場合によっては入らなくなります。時々水の交換が必要です。
③あまり風通しがよくない場所の場合は、サーキュレーターを雨に濡れないよう設置してやればベストです。
④プールとは別にいつでも好きなだけ飲める清潔な水を用意します。
○べランダなど限られた空間の場合
ミニブタは屋外の屋根がない狭い空間で飼われる動物ではありません。この様な環境しか用意できない場合は飼育をしない方がよいです。しかし、何らかの理由で飼わざるを得なくなった場合は、特に夏(冬)の環境整備に気をつけなくてはなりません。そのような場合は次の点に気をつけましょう。
①直射日光が当たり気温が高くならないようにする。そのためすだれや遮光ネットを使う。
②風通しを良くする。すだれや遮光ネットを使う時も上下、左右は隙間をあけ風が通るようにする。また、あまり風通しがよくない場所の時はサーキュレーターを使って効果的に換気する。
③体を冷やすためにプールを用意する。オシッコをするので時々水を交換し、衛生的にする。
もし、衛生的なプールを用意できない時は、園芸用などに既製品があるミストやシャワーを用意し、給水タイマーで一定間隔でベランダに満遍なく水を散布する。
④プールとは別にいつでも好きなだけ飲める清潔な水を用意します。
◎室内飼育の場合
人が快適に過ごせるのと同じ環境を整えます。
①風通しの良い涼しい部屋で飼うこと。
②①の環境が整えられない時はエアコンを用意します。エアコンには注意しなくてはならないことがあります。それは近年人感センサー付きのものがありますが、このタイプのエアコンの場合動物を感知しない場合が報告されています。特にカメラの顔検知センサーのようなものがつかわれている場合、事故が起こりやすいようです。この様なエアコンの場合は、留守中に停止して熱中症にならないような設定にしなくてはなりません。
ケージに入れておく場合は、エアコンの風が直接当たらない場所や空気だまりで冷えないような場所を避けねばなりません。サーキュレーターなどを使って部屋全体を冷やす様に配慮します。
話はそれますが、犬を飼っているような場合、特に暑さに弱い北方系の犬や鼻ペチャで呼吸で体温調節をしにくい犬の場合はとりわけ注意が必要です。
③いつでも好きなだけ飲める清潔な水を用意します。
◎車で移動する時
夏は車で移動することも多いものです。このような場合も注意が必要です。
①車の乗せる場合は直射日光が当たらないようにします。真夏の日差しは強いので例えエアコンを使っていても体温が上がってしまう場合があります。
日差しは向きが変わるので、窓にサンシェードをつけておくとよいでしょう。
②ブタはケージに入れて後部席やカーゴルームに置きます。自由にさせておくと運転の障害になることもあり、また急ブレーキや追突した場合、ブタが空中を飛びブタだけでなく乗員にも重大な事故を及ぼします。
③室内の場合と同様にエアコンは停止する場合があるので、絶対にブタだけを車中に置かないでください。エアコンが止まれば車中は40℃になることも珍しくなくアッと言う間に熱中症になります。
④休憩をこまめに取り、水を飲ませ排尿させます。また、体を冷やすためにもペットボトルに十分な水を用意し、体温が高くなっていると思われる時は体にかけて冷やすようにします。
◎散歩する場合
①ブタの体型を考えると日中の日差しが強い時の散歩は避け、朝夕の涼しい時に散歩させます。
ミニブタの多くはポットベリー系で短足の上お腹が垂れ下がっています。このような場合、地面近くの高温な空気に晒され、地面からの輻射熱が強く、人が感じる温度に比べはるかに高温を体験することになり、熱中症になる可能性が高いのです。
②①の理由により、飲み水だけでなく体を冷やすためにもペットボトルに水を用意し、体温が高くなっていると思われる時は体にかけて冷やすようにします。
◎一般的注意
①すべてのシチュエイションにおいて、ブタは自由に水を飲める状況にしなくてはなりません。ブタは汗をかかないし、呼吸で熱を放出するのも効率良くなく、ウサギや象等の様な放熱器官もありません。冷たい水を飲み温かい尿を放出するのが重要な熱の放出手段です。
②万一熱中症になったら、ともかく体温を下げる工夫をします。
○直ちに涼しい場所に移す。
○首筋、脇、脚等を冷やす。
○立てる場合はお腹が軽く水にしたる程度の水深のプールに入れる。
○水を飲む時は、冷やしたスポーツ飲料などを飲ます。氷を食べれば適度の量を食べさせます。
その際特に注意することは、全身を一気に冷やす等の急激な冷却をしないこと。ショック死することがありますから。
③重症の場合は②と並行して、直ちに獣医の往診か診療を受けます。
獣医は大腸などに冷水を注入して体内から体温を下げる試みを行います。
重症の場合、死に至るか後遺症が残る場合があります。
ブタの分類上の位置、イノシシとの相違
ブタの先祖はイノシシだということは皆さんご存知と思います。
ブタは農耕時代が始まった世界の各地で同時多発的にイノシシの家畜化が始まったと言われています。
その原因は狩猟時代は獲物の量の変動が激しく、人口の増加は少なかったのですが、農耕時代になると気候の影響があるとはいえ、「収穫量=養える人口数」が俄然多くなってきたし、食糧に余裕が出来て来ました(作物のくずも出てくる)。そして時々の狩りでは蛋白質の供給が間に合わなくなったので、野生動物を家畜化するようになりました。
家畜に向いている動物は肉が美味・毛皮が有効に使える・草食や雑食であって飼料が入手しやすい・産子数が多い・人に馴化し易い等ですが、イノシシはそのほとんどを満たしていました。
ではイノシシと家畜化したイノシシ=ブタとはどう違うのでしょうか?それは下記のようになります。
○まずイノシシと豚の分類学上の位置について調べてもましょう。
実はイノシシもブタもほとんど分類学上の差はありません。
動物界
脊索動物門
脊椎動物亜門
哺乳綱
ウシ目(偶蹄目)
イノシシ亜目
イノシシ科
イノシシ属
イノシシ種
ここまではイノシシもブタも全く同じです。そして亜種と言う更に細かい分類でイノシシはヨーロッパイノシシ系(8亜種)、アジアイノシシ(ニホンイノシシ、リュウキュウイノシシ、コビトイノシシ等17亜種)、に分類されます。
イノシシの家畜化はヨーロッパで2ヶ所、西アジアで1ヶ所、中国で1ヶ所の合計4ヶ所で行われ、その後これらのブタの交流が行われた結果、分類学上豚を細かく分類する意味がなくなってきたため、一括して「イノシシの亜種」として扱われる。
要するにブタは一括してイノシシの1亜種である。良く我々が耳にするヨークシャーとかランドレースと言うのは、品種であって分類学上では区別されない。
○美味で薬効がある⇒現代科学で言えば「イノシシの肉はDHA(ドコサヘキサエン酸)、EPA(イコサペンタエン酸)など、高度不飽和を多く含んでいます。それらは血栓を溶かしたり、血液をサラサラにして、若々しさを保つのに役立ちます」。古代人がそのようなことは知らなくても美味である、体が温まるなどの経験からイノシシを家畜化しようと考えたと思われます。
しかし、家畜化されて豚になった現在この特質はかなり失われたものと思われます。それは人が如何に効率よく肉を得るかという点に特化して品種改良(?)した結果でしょう。それは、豚は約半年で100㎏くらいになったところで出荷出来るように、濃厚飼料でどんどん肥らせ狭い柵の中でろくに動けないようにしている結果です。
○毛皮が有効に使える⇒現在はイノシシそのものの捕獲量が少ないのであまり我々が知る用途はありませんが、古代人は有効に利用していたと思われます。現在でも豚の毛は刷毛や筆等に使われてるし、革製品は我々の日常でも良く利用されているところです。
○草食や雑食飼料が入手しやすい⇒イノシシはドングリなどの木の実や植物の地下茎、石をひっくり返したり地面を掘って出てくる虫、時にはネズミなどの小動物、死んだ動物などを食べている雑食動物です。豚も勿論雑食動物でほとんどのものを食べます。従ってポットベリーの原種と思われる中国南部、ベトナム、太平洋の島々などの豚はほとんど放牧状態で自然の中で餌を得ています。非常に飼いやすい家畜です。
ドングリを良く食べる豚としてイベリコブタが有名です。
○産子数が多い⇒イノシシは1年に1回3~8頭出産します。これは多くの反芻動物が1年に1~2頭しか生まないのに比べればはるかに効率が良い。それに比べて豚は常時発情できるし、1回の出産で1~12頭産む(4~8頭が多い)。計算上は3回出産できるが、母豚の体力の回復などを考えて1年2回強の出産に止める。
○ブタはイノシシに比べて早熟である⇒イノシシは2歳くらいで性的に成熟する。一方ブタは家畜として効率良くするために品種改良(?)され、8ヶ月齢程度で受胎可能です。しかし、それではまだ母体が脆弱であるから出産育児は母体の負担が大きすぎるため、早くても1歳になってから交配させる。前にも記したとおり、出産数が多いので乳頭数はイノシシの5~6対に対して7~8対ある。
○馴化し易い⇒イノシシは野生の状態ではかなり狂暴であるが、赤ちゃんから育てればかなり人に馴染む。一方豚は赤ちゃんから育てればペットにさえすることができる。さすが大型のブタをペットにするには困難が伴うが、小型のブタならばペットにすることは容易です。近年ポットベリーに代表されるブタ達がペットとして持て囃されるのがその状況を良く物語っています。
○ブタの方が寿命が長いはずだが・・・⇒イノシシの野生下での寿命は10歳くらいらしい。しかし、ブタの平均寿命は15年と思われるが・・・実際には家畜豚の寿命は6カ月程度です。なぜって、人が食料にしてしまからですよ。
○ブタの方が早く成長する⇒これは一寸考えればそうだろうと思われるでしょう。だってブタはイノシシを改良(?)して人に都合のよいようにして作られた家畜だからです。
上で書いたようにブタは6ヶ月くらいで食べごろになるように作られました。どのような変化を与えたかと言うと、ブタの成長率はイノシシの2倍、イノシシは1歳の時90㎏ですが豚は半年で100㎏位になります。そのために豚の腸の長さは、1.5倍になり、消化吸収をよくしています。その結果胴長になりベーコンに適した体系にもなっています。
また、豚は濃厚飼料を与えられのに対してイノシシは満腹できるほどの餌を得ることは大変だからやたらぷくぷくは成長できないのです。その上野生では敵や気候などの環境の変化に備えるために成長よりも体力の強靭化も必要です。
イノシシの平均体重は200㎏(ニホンイノシシ)に対して、多くの家畜豚は250㎏になります。
○運動能力を比べてみれば野生動物のイノシシの方が断然強力です⇒イノシシは1m以上の柵を容易に助走なしに超えられるし、私が過って見たイノシシは人が上り下りできないような急斜面を平気で下りて行きました。
その点柵の中で寝そべっている豚は運動能力は低。、良くふれあい牧場で見られるミニブタ競争はいずれも子ブタばかりです(子ブタは驚くほど俊敏ですよ)。
愛トンは70㎏ありますが、50㎝の柵さえ乗り超えることができません。最もポットベリーはお腹が大きくてひっかかってしまうので無理もありませんが・・・。
○イノシシは運動能力を発揮するため、人で言えば逆三角形▽の体型⇒イノシシでは上躯と下躯の割合が7:3位ですが、家畜豚は丁度反対の割合になっています。食用の豚はその方が多くに肉が取れるからです。
○体色は皆さんご存知の通り、イノシシはこげ茶色、豚は黒または白、赤茶色が普通ですね。イノシシのこげ茶は保護色ですが、ブタの白は家畜ゆえの色で、野生動物には向いていません。たとえアルピノで出現しても、被食動物なら目立って容易に食べられてしまうから、野生の被食動物では生存しにくいのです。
○イノシシのオスは牙が発達しています⇒イノシシが生きながらえるにはいち早く逃げるか、窮地に至ればこの砥ぎ済まれた牙を左右に振って敵に致命傷を負わせます。ですからイノシシ狩りに使う猟犬はイノシシに跳びかかったりする様に訓練されていません。周りを取り囲んで逃げ道をふさぎ猟師が来るのを待つようにします。
良く言われる「猪突猛進」は目的を目指して向う見ずに進むのに使われますが、実は窮地に陥ったイノシシが逃げ道目指して全速で走り去ろうとしているのであって、向う見ずに走るわけではありません。
ブタはどうかと言うと雄はやはり一生牙が伸び続けます。しかも上下の牙をすり合わせ鋭利な刃物状にするので極めて危険です。去勢していないブタはこれが顕著なので時々切らねばなりません。
○イノシシとブタの外見の違いで気がついたことは他にないですか?
1つはイノシシの耳は立っているのに比べて多くの家畜豚の耳は垂れています。
2つ目はイノシシの尻尾はまっすぐです。一方家畜豚の尾はクルリンと曲がっているのが多いです。
この違いはそれらが果たす役目の相違から来ています。
耳は周りの状況を知る重要な器官です。野生動物ではこれが十分に機能しないと命にかかわってきます。
尾は地位の象徴であるし、移動する時は後に続くものえの目印になります。
ブタにとって警戒心は必要ないし、狭い柵の中では体をぶつけたり噛みついたりして強さを示せばよいので、耳は立っている必要も尾が真っすぐな必要もありません。劣性遺伝や突然変異で生じた特徴は生存にほとんど悪影響がなければ、そのまま飼い続けられるし子孫も残します。
ただ、ミニブタの多くは家畜豚のようにいろいろな交配が行われていないためか、多くの品種で耳が立ったり尾が真っすぐです。
拙著「ミニブタをペットにする」のお知らせ
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ミニブタを飼いたいと思っている方に(間違った情報⑨)
ブタは丈夫な動物で、ほとんど病気をすることはないので、安心して飼える。
現実 ⇒多くの方がそう思っている節があります。
その証拠にミニブタを診られる病院を探すこともなく、安易に飼い始め病気になって慌てて病院を探しだすオーナーさんが、絶えません。
しかし、どの動物も病気になる可能性があります。とくに、ミニブタの赤ちゃんは未熟児状態で生まれますから、しっかりと自分で餌を食べだすまで、極めて不安定な動物なのです。
一般に「ブタは丈夫な動物である」と思われているのは、むかし、離乳し安定した状態になったブタを農家で引き取り、6ヵ月齢になるまで育てて出荷していた頃の様子から出た話ではないでしょうか。
ペットブタを飼うときには、次のような病気に注意が必要です。
◎赤ちゃんブタはまだまだ体が安定していないので、極めて不安定な健康状態です。特に、下痢など消化器官のトラブルが起きやすく、母豚が授乳している頃でも起こり得るトラブルなので、子ブタを購入する時は肛門付近をよく見て、下痢の跡がないことを確認してください。 下痢をしたら直ちに診療してもらいましょう。
◎一番の問題は栄養失調と肥満です。
明らかに栄養失調と思われるブタをしばしば見かけます。その理由はもちろん小さく育てようという間違った飼育法です。
その結果、一見元気そうに見えても心臓の発達が不十分で、ある時期それが顕在化して突然死と言う形で現れることがあります。また、免疫力が弱く病気になりやすく、結局早死にさせてしまうことがしばしばおこります。
一見矛盾するように思われますが、肥満も大きな健康上のトラブルを生みます。
子ブタの頃はコロコロして可愛く見えますが、歳を重ねると脚のトラブルの原因になります。動物は歩けなくなれば排泄もままならず、従って食欲も進まず、死を早める結果になります。
大人になってからの肥満は人の場合と同様に、生活習慣病になる可能性が高くなります。ただ、ミニブタの生活習慣病についての研究はアメリカでも不十分であり、まして日本の獣医で熟知している人はほとんどいないでしょう。それ故にオーナーは予防に努めなくてはなりません。
餌の不足と餌のやりすぎはペットブタにとって同じくらい重要な問題なのです。
◎皮膚の乾燥やふけはある程度已むおえないことですが、親などからうつされている疥癬(カイセン)はよく見られるダニによる皮膚病です。
異常に痒がったり、擦りすぎて血が出るようなら明らかにカイセンです。これは注射で容易に治るので、早期に病院に連れて行きましょう。
◎蹄の問題もしばしばみられます。散歩でつまづいたりした場合、栄養不良の場合、乾燥状態が続いた場合などに、ひづめが欠けたり縦にひびが入ったりすることがあります。
ちゃんと栄養を摂っていても起こる場合は、乾燥を防ぐために馬の蹄用オイルを塗りますが、なければ植物油などで代用できます。
注意しなくてはならないのは、ばい菌が入ることです。
常々注意して観察し、発見したら消毒し病院で診てもらいましょう。
エポキシ樹脂で固定することもあります。
◎密飼育の家畜豚について起こる呼吸器病や各種感染症はほとんど心配ありませんが、人への中間宿主になる日本脳炎(家畜豚に於いて感染豚の割合が80%を超す府県が関東以南で多く見られます)と豚丹毒の予防のため、予防接種が必要です。
◎私の周りで死亡したペットブタは次のような理由で死亡しています。
○原因不明・・まだまだブタの診療になれていない病院が多く、死因を断定できない場合が多い。
多くの場合、食欲がなくなり、従って排泄量が減り、死に至る。
ちょっと元気がないなと思われたその日に死亡する、突然死に近い場合もあります。ブタは突然死が多い動物と言われています。
○膀胱炎・尿結石・・膀胱炎は雌ブタに多く起こります。それは犬座りした時に菌が尿道口から侵入し、膀胱で繁殖しやすいためです。一方尿結石は雄ブタに多く起こる。原因は結石が出来た時、曲がりくねった尿管途中で結石が詰まるためです。結石を生じるのは飼料が不適切な場合、飲水量が少ない場合によく起こります。典型的な症状の場合、両者とも診断は容易ですが、オーナーさんの観察が不十分なため、発見が遅れて重症になり死亡することが見られます。
中には、背中を丸めて痛そうにしているので病院に連れて行ったところ、腰痛と診断され治療が遅れて死に至ったことがありました。
○稀な例ですが、腸ねん転の死亡例もあります。大型犬ではよくみられる病気ですが、ペットブタでも起こりうることが解りました。
愛トンは、嘔吐があり病院に連れて行ったところ、胃腸が弱っているだけと診断されましたが、半日後には腸ねん転で死亡しました。
○日本で初期にペットブタとして飼い始められたブタは、10歳を越しそろそろ老衰と思われるブタが出てくるようになりました。
ブタの寿命は15年と言われていますが、これは平均値ですから10歳を超すとそろそろ天寿を全うするブタが現れても不思議ではありません。
○ミニブタの病気について熟知している獣医は非常に少ない現状を考えれば予防に勝る治療はありません。
ミニブタを飼っている方、これから飼おうと思っている方は、飼育書をよく読み予防に努めなくてはなりません。
なお、手前味噌になって恐縮ですが、ミニブタの飼育について記述がある本は下記の本に限定されていると言っても過言ではないでしょう。
※「ミニブタの医・食・住」(どうぶつ出版)・・現在は絶版になっていますが、アマゾンで中古本で多数売れれています。初版、改訂版ともさしたる内容の相違はありません。
※「ミニブタ飼いになる」(誠文堂新光社)・・イラスト多用の楽しい飼育本です。
※「ミニブタをペットにするー特性・飼育環境・医療・トレーニング」(アテネ社)・・ミニブタの医・食・住の三訂版に相当する本ですが、更に充実した内容になっています。10月下旬に発売予定です。
ミニブタを飼いたいと思っている方に(間違った情報⑧)
◎家族と仲良くできるか?
ミニブタはフレンドリーな動物なので家族と仲良くできる。
現 実⇒ミニブタは確かにフレンドリーな動物であり、家族と仲良くできるというのが、そもそもアメリカでペットとして飼うようになった理由の1つです。
しかし、現実には多くのオーナーが“攻撃的な行動があった”と言っていますし、アメリカではそれが原因で飼育放棄されているブタが多いのも事実です。
アメリカでは有志やブリーダー等が保護施設(サンクチュアリー)を運営していますが、どこも満杯状態だそうです(飼育放棄の理由は攻撃的であるということだけではありませんが・・・)。
私が知ってるオーナーさんの中には、良い関係を作るのに苦労した人は多いし、中には、結局面倒を見ている人のみが接触でき、他の家族は触ることさえできないというケースもあります。
我が家でも、今居るブーは絶えず人を警戒し、私も縫う程の傷を負ったことがありました。現在も機嫌がいい時は触ることができますが、不機嫌な時は“触らぬ神にたたりなし”状態です。
勿論、多くのオーナーさんは極めてフレンドリーな状態で飼っており、何の問題もなく室内飼育しているし、中には夜はベッドに一緒に寝ていりる方もいます。
◎原 因 ⇒次の幾つかの原因が絡み合って噛みつくことがあります。
①ブタは群れを作る動物で、群れの中には序列があります。ミニブタも成長するに従って家族(群れと考える)の中での順位を確立しようとしたり、順位を上げようと自分と少し上位と考えている人にチャレンジします。ここで躾を誤ると攻撃的なブタになります。
②あまり早く親や兄弟から離されたブタは、自分の位置の作り方が分からない。
③暴力的な飼育法や家族の中に暴力を振るう人がいると、それに対抗するために攻撃的になります。
④一人ぼっちで放置されることが多かったり、室内飼育で人に会う機会が少ないと社会性が発達しない。
⑤ブタの言いなりになって育てたり、攻撃的な行動を放置する。
⑥強い給餌制限をすると、日常的にストレスになる。特に成長してからの給餌制限は、注意深くするする必要がある。
⑦多くの動物で見られるように、それぞれの個体によって近づかれたり触られたりする時の方向に不得手な方向があり、予告なく近づくと噛みつかれることがある。馬の場合、後ろから近づくと蹴られることが多いのが良い例です。
⑧テリトリー感情が強い状態の時、テリトリー意識が強い個体の場合、他のブタに触った時の臭いをつけていると、攻撃されることがある。
⑨遺伝やその個体のそれまでの飼育環境、個性で攻撃的な気質を獲得していることがある。
◎対 策⇒上記の⑨の場合は、トレーニングによる矯正が難しいことが多い。この場合は、外飼いにするしかないでしょう。
それ以外の場合は、適切なトレーニングをすれば、穏やかなペットになるでしょう。