◆ R I N G O * S A N

  歌うパステル画家5*SEASONの蒼いブログショー
  3月の「りんご*さん」のオープン日は
  3/4(土)、3/5(日)、3/14(火)、
  3/22(水)、3/30(木)の5営業です。


テーマ:
◆ cinemazoo-大樹でそっと
大樹の中でそっと眠れたら…


「けーちゃん、墓買ぉたから」
今年の夏に実家へ帰った日、
やおら母が重大告白をした。
ぽかんとして私は言葉が出ず
ただ母の顔色をうかがっていると
「私とお父さんの墓や。いずれ死んだら、
 ふたりとも そこに入れてくれたらええから」
そうか、この人はもう死後のことを考えてるんだ…
「分かった、そうするわ、
 でも長生きしてや、まだまだやで」
言葉少なに場を繕うと、
「あたりまえや。
 きよしくんのコンサート、もっと見たいし」
「氷川きよしが生きがいかいっ!」
母が突っ込みどころを こしらえてくれたので、
どうにか安堵したものの、
頭の中ではハテナマークが飛び交っていた。

えっと。両親が共にいなくなったら、
喪主って誰になるの?
葬式費用って、いくらぐらい…?
親戚は誰と誰を呼べばいいのかな。
え~~未婚の私が死んだら、
私の墓はどうなるのかな?
特定の宗教がない私はどんなふうになるの?

分からないことだらけで、うつむいていた。
それでも、昔は夫婦喧嘩が絶えなかった両親なのに、
「仲良く眠りたい」と今は願ってる、
その変化がひたすら嬉しくて、
両親の買ったという、おそらく ささやかな墓が、
やけに健気に感じられ、
氷川きよしファンのミーハーな母が
おかしいほど神々しく思えたけど、
その一方で、こんなことも考えてたりなんかして。
死者を送るという儀式は
つまり残された側に決定権が移るってことで…
「お金。貯めておかんと」
現実的になっていた。その心情を母が察したのか、
「葬式代も貯めてあるから」
毅然と吐き出された言葉に苦笑いしてしまった。

映画『おくりびと』を観たとき、
あの日の「墓、買ぉたから」という母のことばが、
しきりに頭の中をよぎった。
両親が買ったという小さな墓、
それこそは両親の尊厳なのかもしれない…、
いつのまにやら破裂してしまった涙腺。
そうして、映画に登場するふたりの納棺師の、
美しくも官能的な所作に見惚れ、
「この人たちに両親をおくてもらいたい」と思ったのだ。

この映画はものすごくハリウッド的で、
ドラマチックで、大味で。
でも、納棺師というマイナー職業に誇りをもつ人たちの、
その凛とした姿勢と、“おくる儀式”がひたすら優雅で、
椅子に座って観ているのが申し訳なく、
地べたに正座したいほどだった。

墓の守人を託された娘として、
観るべき映画だったと思う。


★★★★★☆☆ 7点満点で5点
予想外に笑えた~。 葬式という
未体験ゾーンに立ち入った人間の右往左往が可笑しい。

ズブの素人が一人前の納棺師になる段階を、
もうちょっと描いてほしかった。
モックン演じる主人公がいかに素質があったとしても
段階を端折りすぎのような。

「けがわらしい仕事」なのかどうか。
オーケストラ奏者から納棺師へ転身した夫を、
はたして妻は受け入れられるのか?
見せ場が巧く、サラッと流しているところに好感。

「誰でもいいから刺したかった」
あってはならない理由で、尊い命が奪われるという、
無惨な事件が次々に起こった今年。
事件の報道を前に私たちは
もっと泣いてもいいんじゃないか、
赤の他人のために涙をいっぱいためて
見送ってあげてもいいんじゃないか、
どこかで現代人は麻痺しているんじゃないか。
泣きじゃくって映画を観ながら思った。

2か月以上前に観た映画なのに、想いが今もなお残ってる。
2008/10/1 新宿ジョイシネマにて鑑賞


●『おくりびと』公式サイト

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青い風船
地下鉄の通路で。
小さな子が青い風船をダッコしてた。


古き懐かしきパリ。
私が生まれる前に創作されたフランス産のお伽話。
『赤い風船』。
まず、その風景の美しさに打たれ、
胸が目が頭がビクビクした。

「少年が赤い風船と仲良く過ごしました」。
ただそれだけの物語。
ただそれだけなのに、ただそれだけだからこそ、
ラストでは涙がゲリラ豪雨になってしまった。

ハッピーエンドだと感じた。でも
違うかもしれない。実はとっても皮肉な結末。
悲劇なのかもしれない。
少年はあれからどうなったのだろう?

少年が赤い風船を握りしめている健気な姿は、
生まれたての赤ん坊の小さな手と重なった。

ギュッと握られた赤ん坊の小さなグーの手。
人はその手に大切なものを握って生まれてくるが、
やがて成長し、手が開くようになったとき、
“大切なもの”を手放してしまう。
失ったものは何だったのか?
人はそれを探すために生きるのだ、こんな話を思い出した。

わずか35分の短編フィルム。
映像作家アルベール・ラモリスの詩情あふれる真心。
どうやって撮られたんだろう?
見えないワイヤーを使って? あるいは手品?
風船がまるで生きてるみたいだった。
風船が笑ったり泣いたりするなんて!
もちろんCGなんてものは、まったくない時代のこと。

「フランスの映画にね、
『赤い風船』というのがあります。
 短い短い映画なんですけどね、
 きれいなきれいな映画ですよ」

淀川さんが生前、絶賛されていた『赤い風船』。
先生~ようやく映画館で観ましたよ!
灰色のパリの町に赤い風船が
悲しいくらいに映えてました。
丹誠込めて、こしらえられた1本です~。


2008/8/20 シネスイッチ銀座にて鑑賞

やぎ座 5*

★★★★★★☆
『赤い風船』『白い馬』公式サイト
『白い馬』と併映。東京での公開は10/10まで。

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刃
キラッ☆ 私の身近な道具であり凶器。
パステルを削ったり紙の表面を削ったりする大事な道具も、
使い方を誤れば凶器になる。
ちなみにロシア・マフィアのファミリーとして認められた者は、
その契りとして胸に星印のタトゥーを入れるそうだ。
星は希望の象徴として捉えられることが多いが、
マフィアの誓いに使うってぇのは痛い。かなり痛い。


マフィアの世界を描いているのに、
銃がさっぱり出てこない映画を観た。
『イースタン・プロミス』。

ロシア・マフィアの世界とはこうなの?
いやいや、そうではないだろう。
刃で肉体を切り裂く暴力が、
この映画のフィクション性を高める道具なのだ。
切り裂かれた後、映画は観る者を現実とは別世界へ疾走し、
日常の「すぐそこ」にあるだろう無気味な闇社会へと導く。
あらゆる人間は、本来なら快適さをくれる便利な道具を
殺戮の凶器へと変えてしまうことができるのだ。

私が絵を描く道具として重宝しているカッターも、
キャベツやネギをリズミカルに刻む包丁も、
使い方を誤れば、人の命を奪ってしまえる。
刃だけではない、車も電話もパソコンも。

実際、フツーの人間が、
フツーに身の回りの道具を使って大罪を犯す、
こんなニュースが連日報道されている。
無知ゆえに、と思わずにはいられない。
痛みを知らないものは安易に痛みを他者に与えてしまう。

『イースタン・プロミス』は、
私がイチオシで賞賛している俳優ヴァンサン・カッセルと
男気にクラッときているヴィゴ・モーテンセン、
美貌だけではない女優ナオミ・ワッツの演技が秀逸!
観るべき映画を観て良かった。
ハラショー! 鬼才グローネンバーグ監督!


★★★★★★☆ 7点満点で6点 +0.5
これほどの演技が交錯する映画、ここのところ観たことない。
一瞬たりとも目が離せない。
けれど、あまりの痛みに目を覆ってしまった弱虫な私。
満点にならなかったのは、そのせいか?
もっと観ていたい、100分では短すぎると思ったのは、
心のどこかで『ゴッドファーザー』と比較してる…?

「残虐行為で始まる冒頭」、
話題となっているヴィゴ兄さんの「一糸まとわぬ格闘シーン」等々、
観ている者に「切り裂かれる痛み」をいやというほど見せつける。
特に、サウナでの「一糸まとわぬ格闘シーン」は、
この映画の山であり、最大のメッセージ。
丸裸で刃に立ち向かうヴィゴ兄さん、カッコイイ。
スタントなしで撮影されたときくけど、よく撮れたなぁ。奇跡だ。
それまで静に徹していたヴィゴ兄さんが一転し動となる、
あまりの変身っぷりには、
人の内面でゴソゴソと うごめく情念を見せられたようだった。

バカ息子役のヴァンサンの演技は、またもハラショー!
やっぱ好き、ヴァンサン!
残忍で非情で頭の足りない二代目でありながら、
実は闇の中の光にもなるという実に難しいキャラを、
ヴァンサンは見事に繊細な演技で表現してる。
ラストのヴァンサンとヴィゴ兄さんの心の交差は、
人間とは光を求める生き物だと伝えているかのようだった。

ヴァンサンが演じるバカ息子と同じく、
光になっているのが父親の分からない赤ん坊。
誕生の場面は神秘的ではなく、ホラーっぽい。
新しい命はコウノトリが運んでくるといったファンタジーではなく、
出産に立ち合ったナオミ・ワッツが
闇社会へ巻き込まれるであろう序章にふさわしい。
が、映画のラストで赤ん坊は天使に変わる。

ヴァンサンとヴィゴ兄さんの間には、
同性愛者的ともいえる一筋縄ではいかない感情が通っていて、
男組織における「男と男の関係」をリアルに感じることができた。
男だけの世界、男の流儀に生きている輩は、
男に女を見るんじゃないか、と私は思うのだ。

この映画ほど、私に英語力があれば、と悔しく思わせるものはない。
ロシアなまりの英語が飛び交うのは私にも分かったけれど、
字幕を追うのではなく、直にロシア訛りの英語が理解できたら、
もっともっとクローネンバーグの世界に感嘆できただろうに。

●『イースタン・プロミス』サイト

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