Tue, June 27, 2006
肉体の悪魔
テーマ:な行で始まる映画「男前嫌いなの?」
と友人にきかれたことがあるけど、
そんなことはない、オトコマエは良い。が!
会話のキャッチボールができれば良いけど、
ただ顔を見合わせてニコニコしているだけだったら、
飽きる。会話が弾むか、または
内面からにじみ出る魅力がなければ、ハイそれまで♪
よくいわれることだけど、男前は飽きが早く、
味のある顔はだんだん惚れるって。それに、
挫折や苦悩を乗り越えている人は年齢に関係なく、
そこにいるだけで沸き上がってくるものがあり、
やがて顔も出で立ちも美しく輝いてくる。
映画も、絵でも、これと同じことがいえる。
美男子を見せられるだけじゃ
1~2時間は退屈でしかたない、覚めてしまう。
特に私は映画に芸術性を求めてしまうので、
キレイではなく“美しいもの”に心をうたれる。
美しいとキレイは違う。
今日の芸術は
うまくあってはならない、
きれいであってはならない、
ここちよくあってはならない。
ほぼ20年ぶりに再読中の
岡本太郎著『今日の芸術』で唱われている芸術論。
この通りだと思う。岡本太郎の知識を丸覚えするのではなく、
私は 10年余りにわたって、
この論を自分の肌で直に味わったように思う、
芸術とは、居心地の悪いものである、と。
先々週の月曜日、
銀幕の貴公子と呼ばれているキレイな若者が
カバに そっくりの、色白で太った人妻に一目惚れし、
その後、道ならぬ恋に堕ちるというフランス映画を観た。
端正な顔だちの若者はジェラール・フィリップという
若くして他界したフランスの伝説のスター。
めっちゃくちゃ きれいな顔だちの俳優だ。
でも、「アイドル映画」ならまだしも、
官能世界を表現するには
人間の残酷さも、生きるための卑屈も受けとめ、
それらを消化してからでないと厳しい。
容姿で損をしたと思っている人間は、
そういったものを早くから受けとめているので、
残念ながら男前はアーティストとしては歩が悪い。
不倫の恋。
やろうと目標をたてて努力するものではなく、
ウィルスにかかるようなもの、恋は病だ。
気が付いたら感染していて、自覚症状がでたときには、
もう疾走し、そこから逃れられない。
それほどに強烈なもの、それは魅力というよりも
むしろ魔力というべきもので、
私が芸術と呼んでいるものの本性だと思っている。
禁断の恋は その頂点であり、テーマのひとつだ。
美男子でなくて よい。
人の心を盗み取るような魔力を帯びた作品。
これを描こうとする人に惹かれる。
官能を帯びた絵か、映像か、音楽か、口説き文句か、
または不埒な接吻か、裸体か、欲情か⋯
それとも果汁がしたたりおちる熟れた果実か、
時としてそれは懸命の度が過ぎて、
あまりに不様で格好悪いけれど、
それらに私は美しいと感動する、
けしてキレイとは言えないものたち。
美男子とカバさんが恋に落ちる『肉体の悪魔』にも
そんなものがあれば、共感できたかも。
とはいえ、「これはこういうものだ」と
ガンジガラメに決める必要もないが
魔力を汲み取った表現法に私は惹かれるし、
私自身、魔力を帯びた一枚を描けたなら、
もう何もいらない至福の時だと思う。
『ニクタイ ノ アクマ』、タイトルが強力すぎ。
せめて「恋の悪魔」か「小悪魔」ぐらいか。
肉体に潜む悪を感じさせてくれる美的表現は
音楽でも映像でも台詞でも、本作にはなかった。
しかも私は今年、『肉体の学校』という
官能傑作を観てしまっているのが イタイ。
ジェラール・フィリップという
キレイな若者を見るための
イメージ映像としては楽しい。
この人をスクリーンで観られたことは良かった。
ただ、この人の子どもゆえの無邪気さと
残酷さは感じられたけど、
いかんせん彼が惚れる人妻がカバさんで、
彼女の魔力は伏せてあったのはいただけない。
女優だって顔じゃない、でも彼女から
色気は感じられない。キレイなお人形さん。
橋田寿賀子のフランス版という感じでもあるので、
台詞の多いドラマが好きな方にはオススメ。
濡れ場、会いたい気持を自制し葛藤する場面、
人妻の旦那の邪心など、道ならぬ恋に必要な描写を
気前よくバサッと切り落としているのは、
監督の意図だろうけれど、
それゆえ、カップルに ほとんど共感できず、
ラストの悲劇は飛躍しすぎて シラケてしまった。
三島由紀夫原作、増村保造監督の『音楽』では
音楽を性的快感のメタファーとして描いていた。
そう、音楽の独創性でも本作は物足りない。
~池袋・新文芸坐にて観賞~
◆ T シ ャ ツ 展 開 催 中
7/3(Mon) まで 東京・代官山アートラッシュにて
TEL 03-3370-6786 ●詳しいお知らせはこちら

レイモン ラディゲ作/松本 百合子 翻訳 新訳『肉体の悪魔』
原作の方がきっと、セクシーだと思われます。
●映画『音楽』の感想
●『肉体の学校』の感想。
















