内的自己対話-川の畔のささめごと

日々考えていることをフランスから発信しています。自分の研究生活に関わる話題が多いですが、時に日常生活雑記も含まれます。


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フランス語であれ、英語であれ、日本語以外の言語で作られた短詩を、それがいくら俳句の音数律や句切れや季語などを尊重したものであっても、俳句として認めるかどうかは、意見の別れるところだろう。おそらく大半の日本人は、外国人が日本語以外の言語で俳句を真似て作った短詩が「俳句」と呼ばれることに抵抗を覚えるのではないだろうか。

外国語による俳句的短詩の実践を「俳句」と呼ぶことは、外国語による解説書を読んだだけで自己流で座禅を組むことを「禅」と呼ぶことと同じほど、その本質から遠ざかっている、という批判もあるだろう。

しかし、ここではそういう文学的経験の正当性に関する議論には立ち入らない。ただ、俳句あるいは俳諧の何がそれほどまでに外国人を惹きつけるのかだけを、昨日紹介した本に拠って、フランスの場合に限って、瞥見しておきたい。

まず、同書が出版物としてどのジャンルに属しているかが一つの手がかりになる。同書は、Le Livre de Poche の中の « spiritualités » というカテゴリーの中に括られている。つまり、文芸書としてよりも、広い意味での宗教的・精神的体験に関する書籍の一つとして出版されているのである。フランス語での俳句に関する出版物は、優に数十冊はあり、その大半は文芸書として出版されているが、その場合でも、俳句の精神を説明するのに禅をはじめとして宗教的要素に重きを置くのが一般的傾向である。

つまり、俳句の中に、自分の生活を新しい眼差しで見直すことを可能にしてくれるものが、さらには、生き方を変えてくれるものが見出だせるというところが強調されることが多い。あるいは、俳句の実作によって自分の生活が変わったことが実際の経験として語られ、その中でも文学的経験のいわば精神的効用が特に重視されている。

俳句の短さがその実作を誰の手にも届くところにあるものにしていることも俳句の魅力の大きな部分を占めていることは、日本語の場合と変わらない。もちろん、それは、俳句が簡単に作れるということを意味しないことは、少しでも自分で実践してみればわかることだ。それでも、俳句のサークルなどに属して、自作を合評してもらうことで、様々なことに気づかされ、句作に上達し、それが自分の普段の暮らし方まで変えていくことがある。そのような例が同書の序文にもいくつか紹介されている。

フランス語による haïku の実作者たちの多くは、最終的に日本語で俳句を作ることを目指しているわけではない。芭蕉や蕪村や子規などに学びつつ、あくまでフランス語の中で、俳句的精神あるいは俳諧的精神を実践しようとしている。その実践の内実がどのような言葉で分節化されているかを示している一例として、同書の序文の小見出しを順に列挙してみよう。

 

L’esprit haïku : une invitation à plus de vie

La voie des haïkistes

Saisir les instants précieux

S’ouvrir pleinement au réel

Exprimer son monde intérieur

Faire taire l’intellect

Se détacher

Aimer le trivial

Vivre dans la simplicité

S’incliner devant la nature

Accepter l’impermanence

Épurer

Atteindre l’équilibre

Partager

 

最後の節 « partager » で、筆者は、「分かち合う」ということは、単にある同好会の合評の席で互いの作品を批評し合うという次元にとどまるものではないと考えている。

互いの俳句に耳を傾けることで、言葉を聴くことそのことが訓練され、言葉を包む沈黙の豊かさにより注意深く敏感になる。言葉がそこから生まれて来る黙せる自然を共に前にして、より謙虚になる。自分の中の無駄なものを削ぎ落とそうとする。ものへの執着から離れようとする。そして、その分だけ、より生き生きと各瞬間を生きられるようになる。

そのような俳句的精神に基づいた社会を筆者は夢見ている。私もその夢を共有したいと思う。

 

1215日にも一度予告しましたように、こちらの拙ブログへの投稿は本日をもって最終回といたします。これまでご贔屓をいただいた読者の皆様には、ここに厚く御礼申し上げます。記事の投稿は、もう一つの拙ブログで継続いたします。

 

皆様、どうぞ良いお年をお迎えください。

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