TPPを巡る「公約」とはなんだったのだろうか。何を信じればいいのだろうか。水面下で進められる交渉を推測するためにも、TPP公約を巡る言説を時系列を追い整理してみる。裏切られたのが誰か、裏切ったのが誰か、浮き彫りになるはずだ。

自民党は交渉参加に臨むにあたり
TPP についての考え方 H24.3.9
http://www.jimin.jp/policy/policy_topics/recapture/pdf/055.pdf

TPP 交渉参加の判断基準
① 政府が、「聖域なき関税撤廃」を前提にする限り、交渉参加に反対する。
② 自由貿易の理念に反する自動車等の工業製品の数値目標は受け入れない。
③ 国民皆保険制度を守る。
④ 食の安全安心の基準を守る。
⑤ 国の主権を損なうようなISD条項(注)は合意しない。
⑥ 政府調達・金融サービス等は、わが国の特性を踏まえる。

以上の6条件を掲げていた。当時はこれが公約であった。

その後、総裁選にて
「『聖域なき関税撤廃』を前提にする限り、TPP交渉参加に反対します。」
をTPPの公約とする安倍新総裁が誕生。

元々安倍新総裁はTPP賛成派。
TPP交渉参加に賛成する安倍晋三
http://www.dailymotion.com/video/xy0rw7_tpp%E4%BA%A4%E6%B8%89%E5%8F%82%E5%8A%A0%E3%81%AB%E8%B3%9B%E6%88%90%E3%81%99%E3%82%8B%E5%AE%89%E5%80%8D%E6%99%8B%E4%B8%89_news

公約として、反対派にとっては、「6条件」と比較して党見解としては明確に後退したのである。
(この辺りは拙ブログ 口笛 売国奴に告ぐ 
http://kknagomi.blog.fc2.com/blog-entry-10.html
に一部記録してある。私もtwitter上でたびたび警告していた論点。)

しかしインターネット上では「6条件=自民党公約」とする「楽観的な噂」が拡散されていた。

衆院選 安倍晋三(現首相)
http://senkyo.mainichi.jp/46shu/kaihyo_area_meikan.html?mid=A35004001001
問12:(TPP参加)輸出入関税を原則ゼロにする環太平洋パートナーシップ協定(TPP)への参加に賛成ですか、反対ですか。
回答:1. 無回答
問13:(TPP農業)TPPの農業分野への対応について、あなたの考えに最も近いものを一つ選んで下さい。
回答:1. 無回答

2012 衆院選 J-ファイル
http://jimin.ncss.nifty.com/pdf/j_file2012.pdf
109 自由貿易 にて6条件を明記。

この6条件にて農家やネット世論を「公約である」と「説得」。地方をはじめ自民党の衆院選圧勝に寄与。

第二次安倍内閣樹立。
TPPを含め、構造改革推進シフトは鮮明であった。
安倍政権の内実 東谷暁  日本農業新聞 2013年1月21日
http://kknagomi.blog.fc2.com/blog-entry-6.html

2013年2月28日衆院予算委員会での安倍総理の発言
TPPで守るべき国益「Jファイル=政権公約」は公約ではない!?
http://www.youtube.com/watch?v=BaSYyhnJZUk

Jファイル(総選挙政策集)は「公約ではない」!?
TPPで首相答弁 5項目投げ捨て 2013年3月1日(金)
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik12/2013-03-01/2013030102_03_1.html


TPP 対策に関する決議  平成 25 年 3 月 13 日
自由民主党外交・経済連携本部  TPP 対策委員会
http://www.jimin.jp/policy/policy_topics/pdf/pdf091_1.pdf 
※6条件遵守

2013年3月15日 TPP交渉参加表明
平成25年3月15日 安倍内閣総理大臣記者会見
http://www.kantei.go.jp/jp/96_abe/statement/2013/0315kaiken.html

安倍支持自民党員 三橋貴明氏による解説
TPP交渉参加 本当に大丈夫か? 2013年3月29日
http://dacapo.magazineworld.jp/top/feature/107358/

第183回国会4月19日農林水産委員会 委員会決議
http://www.shugiin.go.jp/Internet/itdb_rchome.nsf/html/rchome/Ketsugi/nousui025650A4D790637249257B5200029CA6.htm


参院選におけるJ-ファイルについて
Jファイル 公約と別 TPP対応で首相 衆院予算委 (2013/10/22)
http://www.agrinews.co.jp/modules/pico/index.php?content_id=24058

6条件が守られる担保は全くない状況。


さらに、6条件が守られることがないことについての解説。
ジェーン・ケルシー:TPP協定における日本・自民党の国益条件に関する問題提起(その1)
http://antitpp.at.webry.info/201308/article_2.html

ジェーン・ケルシー:TPP協定における日本・自民党の国益条件に関する問題提起(その2)
http://antitpp.at.webry.info/201308/article_3.html


TPP交渉の行方は 東大・鈴木宣弘教授に聞く 米の強硬策で難航 日本さらなる譲歩の恐れも 2014年03月26日
http://www.nishinippon.co.jp/feature/life_topics/article/78131
‐日本が交渉を有利に進められる見込みはあるか。
「取引する材料がない。軽自動車の税金の引き上げ、がん保険の取り扱い、牛海綿状脳症(BSE)に関する米国産牛肉の輸入条件緩和とか、すでに2国間の協議で、守ると決議した国益を自主的に譲り渡している。米国の自動車関税も、半永久的な猶予期間(25~30年後に日本市場での米国車のシェアが低かったら撤廃しない)を容認した。国会決議を無視して、あれもこれも譲りますと、攻めるタマをすべて出しているから、これだけは勘弁してと言っても、さらに譲らされるだけ。交渉になっておらず、本来なら離脱すべき段階に来ているといっていい」

鈴木宣弘 東京大学大学院教授 講演ツイートまとめ
http://togetter.com/li/502453
「そのうち、10年間の関税撤廃猶予とセーフガードでコメを聖域化したと言い出すだろう」

林元農水相による2013年4月頃の発言。
https://twitter.com/HEAT2009/status/320928867378417666
林農相「自民党は5品目などについての聖域確保で決議している。‥‥しかし、例外という言葉は意味が広く、例えば10年かけて徐々に関税をゼロにするという時に、『15年にする』のも例外になる。あるいは『除外』するとか『重要品目の扱いを後で再協議する』といったこともある」

甘い「TPP交渉漂流」予測 米国選挙後に備えよ ジャーナリスト 東谷 暁 (2014/8/18)
http://www.agrinews.co.jp/modules/pico/index.php?content_id=29340
「日米首脳会談後、私たちは両国の高官が『交渉は進んでいる。具体的なところまでは詰めていない』と語るのを何度聞かされたことだろう。人によっては努力していることの表れと受け止めたようだが、まともなセンスで判断すれば、両国高官はカブキプレイ(芝居がかった仕草)をしているだけのことだ。

 11月に米国が中間選挙を終えれば、スクープされた数字そのままではないにしても、日本側からしてみればとんでもない数値が交渉の基準とされることになるだろう。そしてそうなったときどのように反対運動を展開すべきか。いまのうちに準備しておく必要がある。」

※「どのように反対運動を展開すべきか。いまのうちに準備しておく必要がある。」という発言に注目を。この姿勢こそ今こそ自民党支持者がとるべき態度ではないだろうか。いつも手遅れにさせている原因となっている「楽観論」を排し、備えるのである。

【農業改革、その狙いと背景】農政・農協「改悪」の正体 鈴木宣弘・東京大学教授
http://www.jacom.or.jp/proposal/proposal/2014/proposal140804-25045.php
「TPPは、4月のオバマ大統領の訪日での日米『実質合意』が『ちゃぶ台返し』となって、『決まらなくてよかった』のではなく、いま明らかなことは、TPPを決着するには牛肉・豚肉・乳製品などの関税を限りなくゼロに近づけるしかない(冷凍牛肉では38.5%→19.5%→9%→まだ下げ足りない)という重大な事態に陥っているということである。国外からの日本の農産物関税は『撤廃しかない』との圧力もさらに強まっている。」

さて、最後に一言付け加えたいことがある。

6条件があるから大丈夫と言っていた方々は今何を語っているだろうか?

「反新自由主義」「反グローバリズム」「反TPP」…誰が闘って、誰が裏切ったか、記録していかなければなるまい。これも「準備」である。これからも私たちは此処に生きていくのだから。