今現在、学校教育のあり方が変わってきています。

21st century skills とgoogle で検索すると、コミュニケーション能力、問題解決能力、マネージメント能力などが飛び交います。

これが21世紀に必要な能力なのでしょう。

面白いYoutube動画 があります。

今現在ある職業の大半 (Social medial strategist, telework manager, elder care coordinator,, )は、10年前に存在しませんでした。

https://www.youtube.com/watch?v=Ax5cNlutAys

今学業中の学生の多くは、将来現在存在しない職業につくことになるだろうと予想されています。

 

 

インターネット普及のおかげで、誰もが何でも真実か否かは別にして、知ることができるようになりました。

従来の先生-生徒の関係性はもはありません。

従来の先生は、”先に生まれた”ため、多くの知識があり、それを学生に伝えるのが仕事でした。

今現在、先生に求められる仕事は、生徒の学習の意欲をかりたて、生徒に学習の”方法” を教え、今後生じる問題の解決方法を教え、ありふれた情報の中から正しい情報を選択する能力を育てる事であると考えます。

 

理学療法に関して、今後必要となっていく能力は何なのでしょうか?

もちろんこれだけではないですが、今後今までに比べて大きく焦点化されなければならない能力、それは私は、個々の理学療法士が、散漫する膨大な情報の中から情報を正確に収集し、その有効な情報を使う、つまり患者に伝え、EBPを実践することにあるとを考えます。(自分もこの能力を高めて行く日々です。)

 

Evidence-based physiotherapy “根拠に基づく理学療法” を、学部教育のうちからある程度学生が理解し、卒後EBPTを実践する必要性を非常に強く感じます。

臨床で生じる疑問を整理し、莫大な論文の中から自分の臨床疑問を解決するであろう論文のみを正確に摘出し、そしてそれぞれの論文に対する内的妥当性の吟味、そして外的妥当性の検討する能力が必要になってきます。

これに関して、信州大学の木村貞治教授がEBPTの実践 (http://jspt.japanpt.or.jp/ebpt/illustration/01/03.html)でわかりやすく書かれています。

自分の母校信州大学では、学部3年の終わりにPICOの個別の発表及び、4年生では、RCT研究を行うという非常に貴重な経験を得る事ができました。

ちなみに、オーストラリアのカーティン大学では、2年後期にはEBPTの概論(EBPTのステップ1~5を順に)、3年前期にPICOを使った非常に小規模な文献レビューの作成及び発表、そして4年後期には自分が実習で見た患者のEBPTの適応に関してクラスがあります。

 

WCPTのガイドライン"WCPT guideline for physical therapist professional entry level education"でもEBPTを実践する能力を挙げています。

 

これは移り変わりの激しい医学において、常に何が患者さんにとって何が最も効果的な治療法かを判断し、意思決定を助長する生涯に渡って必要不可欠な能力であります。今理学療法士にとって当たり前な「急性腰痛になったら安静ではなく、動け」という事実は、一昔前まではなかった科学的根拠です。治療を常にアップデートし、取捨選択を続けなければならないと感じます。

 

 

日本では、経験則に偏った、科学的根拠のない理学療法が蔓延している印象を受けます。ここオーストラリアでもその傾向はまだ根付いている印象がありますが、海外と比べた場合日本では程度が甚だしいと感じます。そしてこれが非常に大きな問題であると感じます。さらには、この経験則に偏った治療法を美化し、EBPを蔑んだ見方をする人がいます。この風潮は知る限り日本だけす。エビデンスでは治せない、という人がいて、経験として患者さんを治した独自の治療を広めているケースが多々存在していて、そして非常に残念なことに、それを信じ込む方々が大勢います。

 

 

経験則のみに偏った意思決定では、何がいけないのか?

われわれ理学療法士は日々の臨床の中で、自分の施した治療効果を意識的にそして無意識的に検証しています。熱心な理学療法士はしっかり妥当性の高いOutcome measures を使ってその効果を数値として算出していると思います。

そして経験のある理学療法士は、この”これまでの患者さんを良くしてきた治療”を、後輩に伝え、勉強会で伝え、セミナーで伝えます。

一見、この経験のある理学療法士から、”これまでの患者さんを良くしてきた治療”を教わることになんら問題ないかもしれません。

しかし、ここに大きな落とし穴があります。

それは何か一言で言うと、患者さんの良くなる原因は治療そのもの以外にも多数存在するからです。

まずは、人間誰しもが持つ自然回復能力です。急性腰痛や術後の肺合併症などが良い例です。これらの疾患を有する人は、何の介入なしでも、また効果的ではない治療を受けてもある程度満足した予後をたどります。日々の臨床の中で、どの程度”理学療法介入”によりよくなり、どの程度”自然回復”により良くなったのか知る術はありません。

 

次に、患者のアウトカムを良くする治療以外の原因として、患者の”優しさ”があります。実際良くならなかったが、そのセラピストの尊厳を保つため、一生懸命治療してもらった治療者に対する恩義から、良くなったと言います。

これは、特に勉強会などで良く見られる光景です。参加者の中で講演者の治療を受けた場合、必ず答えは、「よくなった」です。良くならない、変わらないと正直に答えるのは、その講演者の尊厳を傷つけかねないからです。かつてこれを行ったのは、大学時代の友人Shibaだけです。医療統計的に、患者さんが治療群に振り分けられ、自分はその治療群にいることを知っていることで、「良くなった」と反応することを、”Hawthorne effect”といいます。

 

プラセボ効果も患者の良くなる原因です。治療の内容ではなく、治療を受けたことに自体に対して作用する、心理的なポジティブな影響である。そして、このプラセボ効果が治療の効果に大きく貢献していることが証明されています。

 

なぜ、自分が行っている治療が他と比べて、またはしないに比べて効果があるかどうかを証明するのに、無作為化比較試験 (Randomised controlled trial)が適切かというと、それは以上のバイアスを制御できるからです。

RCTは質の高い研究とされていますが、研究結果に偽りがない (バイアスが少ない)、結果を信用できる研究です。

(RCT=質の高い研究=研究結果を信頼できるとは前年ながらなりませんが)

 

EBPTとは、質の高い臨床研究の結果を意思決定の拠り所とし、さらに患者さんの意向と臨床家の知識・経験を融合した理学療法です。

 

 

 

では、なぜEBPTが必要なのか。

 

質の高い研究により得られた結果を取り入れた治療は、そうでない治療りも、より安全で効果的です。そして、科学的根拠を意思決定に取り入れることにより、理学療法は”最善”が望まれる臨床結果を患者さんに提供することができます。

インターネットが患者さんの病気・疾患に関して情報収集の強力な手段でありますが、情報は信頼性の高いものから低いものまで幅広く蔓延しており、患者さんは質の高い臨床研究に基づく”真の情報”を知るために理学療法士の助けが必要です。

 

次に、理学療法士は医療専門職です。そして、プロのであるとは、社会から信頼され、よくするための努力を怠らないことであり、理学療法士が行う治療は、科学的に証明された安全で効果的なものであるべきであります。経験則で治した治療を自分の根拠としていては、マムシ療法や口内炎に対する梅干しといったような民間療法と同等です。

そしてもし科学的根拠を意思決定に取り組むことを怠れば、患者の尊敬や信頼を失い、そして社会的な存在価値を無くしかねないと考えます。

 

さらに、EBPTは理学療法士という専門職の確保、拡大のためにも重要です。理学療法士は自分たちのサービスが社会に与える価値および限界を把握し、その社会的付加価値を高め続けなければなりません。医師に理学療法の真の価値(エビデンスに基づく理学療法による効率性)を認知させ、それにより開業権有無に関わらず、紹介状を送ってもらい、受け取った理学療法士は医師のニーズを満たす。厚生労働省に理学療法士の価値を証明し、「この分野は、理学療法士に任す」という認識を構築し職域を確保・拡大する。そしてその証明する唯一の方法が、理学療法研究であると考えます。

理学療法内部でAとBの理学療法治療で対立するよりも、一歩下がって”理学療法”を一つのくくりとして、理学療法士が一致団結し同じ方向を目指し、他の専門職と社会に与える付加価値の度合いで競争し、高め合う必要性があると強く感じます。

 

 

患者さんに対して、

「ある有名な先生がこの治療法は効くと言っていたから試します」ではなく、

「あなたと似たような状態の人を集めた質の高い臨床研究、この治療法が、この期間で、この程度効果があると証明されています」と患者さんに治療のOptionを提供し、最終的には患者さんの意思決定により治療選択を行ってもらうのが、もちろん全てではないですが、より理想に近い医療の形であると感じます。

(もちろん意思決定ができない状態である患者さんには当てはまらない話ですが。)

 

理学療法士一人一人が医療専門職として、目の前の患者さんに対して現存する最適な(best availabe)治療及び限界を常にアップデートし、患者さんの意向及び臨床家経験のみならず、科学的に有効であると証明された治療を考慮して、理学療法を実践する能力が、自分も含めて非常に大事であると感じ、より焦点を当てて高めていきたい思いであります。

 

 

参考資料

https://www.amazon.com/Practical-Evidence-Based-Physiotherapy-Robert-Herbert/dp/070205450X/ref=mt_paperback?_encoding=UTF8&me=

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最近立て続けに、カーティン大学を卒業し手の免許取得する方法を尋ねられたので、このブログでわかっている範囲内で紹介したいと思います。

 

以前はAbbreviated Bachelor Course (2年次編入コース)があり、オーストラリア以外の他国で免許を取得した人は、このコースで3年間勉強して卒業できれば免許取得となっていました。
そしてMaster of Physiotherapy Courseは、おっしゃるように他国の理学療法士は入学不可能でした。

しかし、つい最近から内容が変わり、他国の理学療法士は以下の2つのいずれかの方法で免許取得可能となります。


1. 4年のBachelor of Physiotherapy を卒業
クラスは半年ごとに変わり、学生のほとんどは高校卒業したての人です。オーストラリア人が9割を占めます。

メリットは、ゆっくりと時間をかけて英語向上&勉強ができます。
デメリットは、やはり4年という期間です。

2. 2年半のMaster of Physiotherapy を卒業
最近からこのコースへの入学が可能となりました。

クラスは2年半固定で、生徒は他の似た学士(Exercise physiologyなど)を卒業したオーストラリア人がほとんどです。
メリットは、短期間であること。
デメリットは、特に4年生の実習時にコミュニケーション能力が問われるのですが、その2年半という短期間で英語を伸ばすのは、もちろん4年間に比べて難易度は増します。そして入る門も当然狭いことが予想されます。

さらに、学費は留年しなければ2のMasterの方が安いと思いますが、このコースは長期休みなどもほぼなく、かなり密なスケジュールであり、また日本人理学療法士でこのコースを通して免許取得したものがいないため、難易度は1に比べて高いと感じます。

 

非常に難しい選択であり、英語をゆっくり時間をかけて学びたいのであれば、1をオススメします。英語がある程度できる方は、2という選択肢もあるでしょう。

 

何かわからないことがありましたら、遠慮なくご連絡ください。

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第一回目の実習結果

テーマ:

先週で、4年生第1回の5週間の長期実習が終わりました。

 

実習ではCurtin大学で雇われている実習バイザー (Curtin Clinical Tutor; CCT)と、実習施設で毎日指導してくれるバイザー (Facility Clinical Educator; FCE) の2人のバイザーがつきます。

 

CCTは毎週金曜日の朝に来て、各生徒と一人の新患との理学療法 (情報収集から退院プランまで)を評価します。

 

そして、CCTとFCEそれぞれが生徒を受からすか受からせないかを、5週目の最終日に決めます。

 

私は3週目にCCTに今の段階では実習を受からすことはできないと言われ、CCT及びFCEと何をどうすればいいのかDiscussionしました。

具体的には

・ Nurseと tee upをできるだけする (例えばリハ前に患者の離床する計画を伝え、その後Nurseが患者にシャワーに入れやすくするようアレンジする) 

・主観評価をより包括的に、情報の漏れがないようにする

・ チーム医療ミーティングで、自分の担当患者のリハの状況を伝える

です。

二つ目以外は、やるかやらないかの問題であるため、4週目以降毎日行いました。

 

そして4週目にCCTとFCEから再評価を受けました。

そしてフィードバックでは、

「かなり良くなった。この実習は合格するだろう」と伝えられました。

 

そして最後の週、もちろん4週目でやったことをさらに意識的に強化し、他の医療職種とも交流が深まり、この実習を楽しんでいました。

 

5週目の水曜日、最終評価として再度CCTが来て、患者との一連の流れを評価し、告げられたのは、

「この実習を受からすことはできない」

でした。

 

そして、FCEからの最終評価も同じでした。

 

4週目以降受かると言われていた分、ショックでした。

CCTとFCE共に、4週目以降非常に患者と、そして他職種とのコミュニケーションの面で向上したが、5週間全体で評価すると "Pass"の水準には至らなかったとのことです。

 

色々とたてつきたい気持ちもありますが、結果は変わらないため、それはそうとして、次何が起こるか?考えはすぐにその方向に向かいました。

 

追加実習に行かなければならないのか?

行くとしたら、その分の学費は払わなければならないのか?

 

など、色々と考えがめぐりました。

 

そして先週の金曜日、カーティン大学にいき、実習を取りまとめているスタッフの一人とMeeting がありました。

その方は自分の状況を非常に丁寧に聞いてくれ、私のコミュニケーション能力を向上するためのStragtegyを考えてくれました。

そしてその結果、来週から非定期的に、大学近くのAged careでPhysio asssitantとして Volunteerするよう手配してもらえました。

もちろん学費は発生せず、しかも指導者がいない実習です。

自分はもっと英語を話せる場を増やしていきたいと伝えた結果の提案でした。

そして、追加実習の有無に関しては、また別の組織が決断することなので、その方のコントロールできる範囲外であるとも言っていました。

 

何が今後起こるか全くわかりませんね。

この不透明な現実の中でも、とりあえず今この幸運な状況に感謝し、次のCardioの実習に向けて準備していきたいと思います。

 

ありがとうございました。

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カーティン大学のPhysioのコースでは、4年生になると 5週間の実習に5つ行かなければなりません。
そのうち3つはCore Unitと呼ばれ、筋骨格筋系、心肺系、神経系から成り、誰もが必ず行かなければならなりません。
そして、残りの二つはOption A とOption Bと呼ばれ、それぞれRandomに振り分けられます。遠い田舎に行くこともあれば、希望すれば海外に臨床実習に行くことも可能です。
 
私は現在、Option AとしてFiona Stanley Hospital という病院で、Orthopaedic Wardに配属されており、整形オペ直後の患者さんの理学療法を担当しています。Curtinから来てるもう一人学生君と同じ病棟です。
この病棟では25床に対して、3~4人のPTと1~2人のOTがいます。
 
一日の大まかな流れは、
まず朝8時から15分ほどのミーティングで、Physioのボスが誰がどの患者さんをみるか振り分けます。現在は1週間経ち4人ほど担当させてもらっています。
そして、Physioを行う際、
1. カルテを見て情報収集 → Supervisorに患者さんの情報を5分ほどで伝える。
2. Obs chart を確認して血圧や心拍数などの推移を把握して、時にNurseに患者さんの状態を聞く。
3. 患者さんの部屋に入り、主観評価 (一般的なfeeling, 痛みの評価、めまい・吐き気の有無?、社会歴、家の状態など)を行います。
痛みが強ければリハの妨げとなりますので、Nurseに疼痛コントロールの薬を出してもらいます。
4. 客観的評価 (ROM, Strength, Sensation test, Capillary refill, mobility)を行います。
5. Ambulation 
客観的評価が終わり離床に対して問題がなければ、術直後からベッドに座りそして歩行器を使って歩行を開始します。
6. Education 
THRに対する禁止肢位を伝え、ベッドでやってもらう運動を指導します。
7. Nurseに動作レベルを伝える、またはホワイトボードに記入。
8. カルテ記載
と大雑把にいうとこのような流れになります。
 
日本と大きく違うのは、ROM制限に対する介入などは行わず、治療の9割以上を占めるのは離床して歩行練習です。あと入院期間が極端に短く、若い人の骨折で松葉杖を必要とするなら1~2日間の入院、お年寄りでも3~4日で大概は退院、転院または、訪問リハとなります。
 
言語に関してですが、やはりSuperviserと話すときなど特に忙しい時は、とっさに何かを伝えたり、パッと言われたことに対して聴き直す必要があり、ストレスを感じる時も多少あります。看護師と話すときなどは、話すこと、聞くことがある程度固定されており、話しやすい印象です。そして、患者さんとのコミュニケーションは、一番やりやすいと感じています。言っていることがわからなかったり、自分の言っていることが伝わらないということは、あまりない状態です。
 
英語に関して、日常生活で全く英語を使わない環境で育った日本人でも、2年生3年生を通過して4年生まで来たら、ある程度ではあり個人差もありますが、多職種や患者さんとコミュニケーションをとり、ある程度医療人として役割を果たすだけの言語能力が身についていると言えるでしょう。それよりも自分の英語に対して自信を持ち、ゆっくりでもいいから伝えることが大事であると、日々感じる毎日です。

今の心境を文字にする。

テーマ:

非常に幸運なことに、自分は今海外で理学療法を学ぶことができている。

自分が学びたい分野では日本よりすぐれている海外。

自分が本当に学びたかった、保存療法で患者さんを治す方法を、学ぶことができているのは、幸運としか言いようがない。

 

これがどれほど幸運なことであるかは、行きたくても経済面で工面ができない友人や、周りに反対されて断念している友人から話を聞けば明らかである。

 

このなかなか実行不可能な選択を、自分の意思で操作できる天命及び両親、祖母に感謝したい。

 

今自分が20余で立てた志は、根元は変わらないが次第に「私」から「公」へと比重が変わってきていると実感する。

 

元々は、「自分が」という気持ちが強かった。自分が痛感した非力を克服するために海を渡った。

 

しかし今はその「私」の目標を実現することに加えて、志を「国家」に向けて、現在学んでいること、学んだこと、そしてこれから学ぶことを日本に広めることで、日本の社会特に医療社会に微力ながらも貢献したいと考える気持ちが強くなっている。

 

今読んでいる森信三氏の「修身教授録」という本に、

20歳までに志を立て、40歳という人生の折り返しまで学び続けることでそれ以降の社会貢献の準備をし、それから60までを学んできたものを波紋させるが如く国家の益となるよう仕えよ

と書かれてある。

 

ここで書かれてある具体的な年齢まで正確とはならなくても、これを人生の一つの指標として、精進していく次第である。

 

そして、「修身」を学びの根幹、人生の永遠の課題とするところをここで文字にして常に意識し続けたい。

みなさんこんにちは。だいぶ 「徒手療法のメカニズム - Part 1」から時間が空いてしまいました。申し訳ございません。

 

前回の「徒手療法のメカニズム - Part 1」では、Motion Palpation (PIVMS, PAIVMS)の妥当性・信頼性の低さを、引用文献とともに書きました。そして、理学療法士が徒手療法を行う際の理由付けとして述べる「関節の位置のずれ」や「Hypomobilie」の、科学的な根拠のなさを紹介しました。

PAIVMの評価

 

 

今回は、では、なぜ徒手的な検査 (PIVMS, PAIVMS)により, 関節の硬さ (Hypomobility)を真に評価できないのに、徒手療法によりなぜ筋骨格系の痛みが軽減されるのかを少し書いていきたいと思います。

 

ちなみに世界的に見ても、約500人のニュージーランドとアメリカのManual therapistに対して行った調査では、76%がPIVMSは評価の妥当性があると信じており、回答者の98がPAIVMSやPIVMSの評価の結果をもとに徒手療法を行うと述べています。

 

この関節軸のずれやHypomobilieという理由付けは、大きくくくると「Biomechanics」に基づく理由付けと言えます。

 

しかし近年の研究で、徒手療法による「Neurophysiological effect」が痛みを軽減させる"主な"メカニズムであることが証明されてきています。

なぜ徒手療法による身体への物理的な刺激が、患者さんの有する痛みを軽減させるのか、という問いに対して、様々な角度から仮設付け及びその検証が行われてきました。


徒手療法のメカニズムを大きく分けると、
1. Mechanical stimulus 
2. Peripheral mechanism 
3. Spinal mechanism 
4. Supraspinal mechanism 

の5つに分けられます。各々について少し説明していきます。

 

 

1. Mechanical stimulus 
これは、従来の徒手療法による効果の裏付けとなる仮説であります。例えば、他動的なJoint mobilisationによる関節の伸張性の増大、自動+他動的なMobilisation with movement による関節軸のずれの修正を加えた上での生理運動、などが、Biomechianicalな、その徒手療法を加えている組織自体に何が働いているかという説明付けを行ったものです。

 

このBiomechanical な理由付けは、結論から言うと、根拠が乏しいとされています。
第一に、徒手療法によるTarget組織の正常化(関節軸のずれの修正、関節の伸張性の増大)は、短期間のみ見られると研究で示されています。

第二に、触診による関節軸のずれや関節の硬さ(1つの関節が他の関節に比べて硬い)の判断は、信頼性が低いとされています。

第三に、徒手的な検査の妥当性は低い、つまり関節以外の他の組織が同時に動かしているため、真に関節を評価しているとは言えない。

第四に、訴える部位とは異なった部位に徒手療法を加えることで、訴える部位の痛みの軽減が研究によって証明されています。例えば胸椎による徒手療法による頚部の痛みの軽減やテニス肘に対する頚椎への治療での痛みの軽減などがあります。

 

 

2. Peripheral mechanisms 

徒手療法は、組織損傷による炎症反応に対して、直接作用すると言われています。

あるグループが発表した研究では、徒手療法をおこなったグループは、Sham (偽の) therapyのグループよりも、有意にサイトカイン(炎症誘発物質) が減少したと報告しています。他にもこのような末梢組織で起こる炎症に対して徒手療法は何らかの効果があるという研究はされており、このPeripheral mechanisms による疼痛軽減はある程度有力であると結論付けられています。

 

3. Spinal mechanisms 

徒手療法が脊髄に神経生理学的な影響を与えて痛みを軽減するという説明付けも報告されています。

徒手療法により、脊髄への痛み刺激の入力の減少が確認されており、他にも神経鈍麻作用も報告されています。

 

4. Supraspinal (脊髄より上位の) mechanisms 

これが最も有力なそして主な作用機序とされています。徒手療法がperiaqueductal gray (PAG)やrostoventral medulla (RVM)を代表とする脊髄より上位の痛みを調節する部位に作用して、オピオイドおよび非オピオイド効果を与えるというものです。これに関しては、長くなるので詳しくは次回以降のプログで書きたいと思います。

つまり徒手療法により、鎮痛物質が脊髄上位から放出され、痛みを軽減するというものです。

さらには、脊髄より上位のMechanismというくくりでは重要とされているのが、プラセボ、徒手療法による期待などの心理的な影響であり、これらも非常に有力なメカニズムと結論づけされております。

 

 

今回のブログで何を伝えたかったというと、従来の徒手療法の疼痛軽減の説明付けが科学的に正しくなかったと証明されており、それに変わって徒手療法が末梢以外の脊髄、脊髄上位、脳に作用する事により疼痛軽減が行われているという事です。

 

これら最新の知見を知ることは非常に重要で、一つの徒手療法の"技術""テクニック"を習得するために、徒手療法コースで何十時間、何十万円を犠牲にしている現状に何も思わないわけにはいきません。

 

徒手療法のメカニズム Part1

テーマ:
今日は、日本にいた時からずっと疑問に思っていた徒手療法のメカニズムについて少し書きたいと思います。
このブログは二部作とし、第1部では前置き、そして第2部で と徒手療法のメカニズムについて書きたいと思います。


まずはじめに、セラピストが主に手 (肘でも、足でも)を使って、患者さんの体の部位を押したり、突いたり、撫でたり、するあらゆる治療のことを広く徒手療法と呼ばれていますが、今回は理学療法士が頻繁に用いるマニピュレーションやマッサージ、そしてモビライゼーションについて書きたいと思います。

理学療法士が痛みや機能障害を有する方に対して、これらの徒手療法を使って患者さんの症状の緩和を試みることは非常に一般的であると思います。
最近ではマリガンが提唱しているMobilisation with movement (についてMWM)が理学療法士にとって有名な徒手療法ですね。

これらの講習会に出て、資格を取り、レベルアップするためにコースをさらに受講することが流れですね。

実際これらの治療法による治療効果は有効であることを示すRandomised control trial (RCT)研究は多くあり、科学的に証明されています。

モビライゼーションやマニピュレーションは、評価により"関節の動きにくさ"を見つけ、それが痛みを引き起こしているという仮説のもとに施行され、症状の変化を図ります。
(ここで"関節の動きにくさ"と書きましたが、脊椎において関節の硬さの徒手的な評価は、妥当性・信頼性ともに乏しく、これらは単に tissure compliance test とされています (Landel et al (2008)))。

MWMでも、関節の位置の微妙なずれを感知し、それに対してMWMを行います。
外反捻挫をした患者さんは、受傷時に腓骨遠位が前下方に亜脱臼し、その後に起こる浮腫と癒着により脛腓関節にずれが生じると仮説付けされ、Hubbard (2006)はこの外反捻挫後の腓骨の前方へのずれをImagingを用いて確認しています。

【筋骨格系由来の痛みが多くはこの位置のずれから生じるため、MWMに各関節における微妙な位置のずれをMWMにより軽減することで痛みが軽減し、関節の動きが良くなる】
というのが、MWMによる生体力学的なメカニズムの説明です。

しかし、このメカニズムに対する科学的な証拠は乏しいのが現状です。
Hsiehら (2002)は、転落により右母指を受傷した79歳の女性に対して、MWMによる治療効果および関節ずれの修正をMRI imagingを用いてケーススタディ検証しています。受傷一ヶ月後、右第一基節骨が左に比べて4度回内していることを確認し、この関節のずれに対してMWMを3週間行いました。結果、三週間後、痛みはVASで6から0にまで軽減しましたが、MRIによる関節のずれには変化が見られませんでした。Hsieh らは、これらの結果から、MWMにより治療中に関節のずれは軽減されたかもしれないが、長期的な痛みの軽減に、関節のずれの修正は影響を与えていないと、結論付けています。


Vicenzinoら(2007)によるMWMによる文献レビューでは、MWMによる関節のずれの修正によって、痛みや機能障害を軽減するという証拠は現在ないと結論づけられています。

では、なぜ徒手療法により痛みが軽減するのでしょうか?

第二部で、少し知っている範囲で紹介したいと思います。
今日からEaster holidayということで、約10日の休みに入ります。
現在、Curtin大学で腰痛の診断および治療について学んでおり、とりあえず大学教育における腰痛における"理論"を学び終えました。

(学びを終えたというと語弊があります。患者さんのOutcomeをよくするためにもっと深く広く学ぶことはたくさんありますが、大学側が、将来有資格者として働く"学生" に求める、腰痛の"knowledge"に当たる情報を提供し終えた、という意味で捉えてもらえればと思います)

Evidence based physiotherapy practice が、
・ patient values & Preferences
・ Best Research Evidence
・ Clinical Expertise


から構成されるため、大学としてはこの「Best Research Evidence 」にあたる最低限の情報を学生に提供した、と言える段階にきました。

なぜブログに書いているかというと、

このオーストラリア行きを決め、今行っている勉強、そしてこちらでの臨床経験は、すべて原点を辿れば、
「どうやったら、この目の前にいる患者さんをよくできんねん」
という問題提起から始まりました。困っている患者さんを治せない、なんで痛がっているかわからない、という嫌な経験から始まりました。

そしてこの問題を解決するために、いろんな人の情報を集め、オーストラリアの理学療法を知り、「オーストラリア行きがこの問題を解決するための手段」であると自分でベストと勝手に決め付けたので、今オーストラリアで行っていることを、行っています。

つまりは、今行っているほとんどの行動は、この[問題・ミッション]をクリアするための長期的な実験のように捉えています。

この"理論"を一通り学び終え、問題解決のための一つの段差を登った、という気がせずにはいられなくて、興奮して、このブログを書きました。

これから来年の実習、そして臨床経験を経て、理論 「どう診断し、どう治療するか」を患者さんに当てはめ、治療結果を考察し、パターンを形成し、パターンからずれてたらなぜずれているかを考え修正するという重要な段階が待ち構えています。そして得たものを日本に帰り、いろんな形で還元できるものがあればするのも、またワクワクする将来の目標であります。

一つ、こちらの筋骨格筋系理学療法の治療効果に関して
コミュニケーションスキルが、Manual therapyや、ある特定の治療方法よりも大事という、強いエビデンスがあり、本当にその通りやと思います。

International の学生、英語は第二言語、日本にいる25年間, 99.5%英語を使わなかった日本人としては、ある意味治療効果において不利かもしれません。
コミュニケーション能力が良ければ良いほど治療効果がいい、というのが証明されているわけですから。
でもそれは自分が選んだ選択なので、できる限りの事はやります。もしかしたら、不利ではないかもしれませんし。

とりあえず、何か一つの大きな節目を自分的に迎えた、という日記でした。ちゃんちゃん。
今日で2週間の実習が終わり、今3日後に控えた日本帰省を待ちわびているところです。
それぞれ生徒によって実習先は違うのですが、僕はAged Careと呼ばれる、日本で老人ホームに該当する施設で、2週間実習させていただきました。

内容は、PTA(Assistance)として患者さんを必要度に応じて選択して理学療法を提供するというものです。

日本と違い、まだ2年生にもかかわらず全く束縛がなく、自由に患者さんに好きなリハビリメニューを提供することができ、また患者さんとのコミュニケーションも非常に楽しめ、とても充実した実習でした。

このAged care での実習を通して非常に感じたのが、
・年をとれば、日本人もオーストラリア人も変わらないな
・ ほとんどのスタッフは非オーストラリア人で、移民がオーストラリアの白人高齢者を支えているんやな
という2点です。

英語力をもっと伸ばさなければいけないとは常に思っていますが、こちらでAged Careで働くなら、さほど高い英語力が必要というようには感じませんでした。

次に、2年2学期の科目紹介に移りたいと思います。
Cardiopulmonary Science

この教科では、授業、実技を通して、心肺リハの主観客観評価 (Xray, 聴診, 含め)および、主要な心肺疾患 (COPD, Asthma, Cystic Fibrosis)の呼吸リハについて、学びました。
4年間でどこまで深く習うかわからないので、この教科がどこまで心肺リハをカバーしたかはわからないですが、内容的にはVolumeが多く、個人的に最も時間を割いた科目でした。

テストは、実技および筆記試験に分かれており、実技ではXray の読解およびACBTと呼ばれる呼吸リハのあるテクニックを患者さんに教えるというものでした。
筆記試験では、3つの筆記および、12個の選択問題で、
筆記試験は、Asthmaがどうやって呼吸苦を引き起こすのか、なぜ長期臥床者が立ち上がると発汗し心拍数が上がるのか、などでした。


Neuroanatomy and physiology
この科目では、視床、大脳基底核をはじめとする代表的な脳の局所の機能解剖を学び、後半では15ほどの代表的な神経疾患(ギランバレー症候群、ダウン症)に関して、病態生理学、進行などを学びます。

試験は
1. 解剖室での筆記試験
2. レポート
3. 学期末の筆記試験
4. 実技試験
です。

4の実技試験では、基本的な神経疾患患者さんの評価(失調試験、随意性テスト、脳神経テスト、etc)を模擬患者さんに対して10分で行います。
テストで問われる内容は実技の授業で一通りやりますし、Curtin作製のebookでも見れるので、準備は比較的簡単や思います。

2は、
3つのQestionsに対するレポートで、例えば、ある患者さんの脳画像をみて、予測される高次脳障害を挙げ、その機序、臨床症状を書けというもので、この問いには25以上引用文献を使わなければならなかったです。


Peripheral musculoskeletal science
この科目は、ずっと昔からか、カーティンで学びたかった科目の1つです。
カーティン大学における末梢の筋骨格系障害患者さんの分類方法を学び、各分類ごとのTreatment & Managementを学びました。
日本では学ばない関節副運動に関しても学ぶことができました。

授業は、レクチャーおよび実技に分かれており、レクチャーは股•膝•足•肩の代表的な疾患の病態、治療などを学び、実技では主観および客観的な評価
、治療を学びました。

試験は学期末の筆記試験と、学期途中および学期末で行われる実技試験です。
筆記試験は、Lecture notesと呼ばれる授業のスライドから満遍なく出ます。量が半端なく多いため、勉強量は多かったです。問題は例えば、Tendinopathyを呈するCaseに対して、どういった指導を行うか、や、なぜ肩関節は医学的診断が行えないかなどです。

今日はこの辺にして、また後日残りの2科目、


Western Force のPhysiotherapist

テーマ:
今、APA(Australian Physiotherapy Association) 主催のセミナーから帰ってきました。
お題は、
"Mechanisms to management - case study and imaging in rugby injuries"
で、
まぁこれは絶対に行かなあかんやろ、っていう題名やったんで、行ってきました。

内容は主に、
主要なラグビー時に頻繁に起こる疾患と、画像のリンクを、ケーススタディーを通して見ていくというものでした。

講師は、Western Force という、PerthのRugby Union チームでPhysioをやっている人で、
他にも、AFL のEagles や サッカーのPerth Glory からも参加者としてきていて、オーストラリアスポーツ界を代表する人たちの興味深い議論が聞けたのが、本当に刺激的でした。

この中に入って、自分も自分をスラスラ表現でき、深いディスカッションることを夢みています。目標でもあります。


理学療法士としてオーストラリアを選んで、こっちで2年ちょい住んでみて非常に思うのが
「こんな逆境日本では絶対味わえないな」
ということです。

日本人を理学療法で治す、というのが目的なら、日本で臨床を積んでもオーストラリアで臨床を積んでも変わらないかもしれません。それはわかりません。賢く学べば。経験年数は関係なしに。

でも、大きな違いは困難の多さであると思います。
困難と感じるか感じないかは、心の持ちようなので、僕の意見です。

上で述べたような人らを”今”の自分を比べると、
言語力で格段に劣る
コミュニケーション能力で大きく劣る
理学療法の知識、経験でも大きく劣る
であります。

向かい風ばっかりです。
特に、「自分を表現する」というところが、最も大きな壁であります。

でも、こう感じる時にホンマこの生活選んで良かったな、と思います。
乗り越えたい壁がいくつもあります。
言語力も、コミュニケーション力も、理学療法力も、メンタルも、全部。
いつか身が結ぶと信じています。

今はテスト中で、理学療法の楽しさを感じる機会が薄れていましたが、今日のセミナーはホンマに刺激的で、理学療法の楽しさ、こちらの生活の楽しさにどっぷり浸かってきました。

なんやこの感想ブログ!? 長めのTweetみたいな感じですかね。

明日は物理療法の実技試験なんで、もう寝ます。ほなまた次回!!