★ホラー映画の魅力 ファンダメンタルホラー宣言

 

本書は2003年に発売された小中千昭書の、ホラー映画の魅力を十全に語った本です。

小中氏はホラーというものを題材に数多くの脚本を残し、現在も続けている、映画界では知らぬものはいない超有名人です。

本書は、ホラー映画はなぜ人を惹きつけるのか、という根本的な問題から、原理的なホラー映画の論理まで、小中氏の巧みな理論を通じて解説、説明されています。なかでも特に目を引くのは「小中理論」。ホラーとはこうあるべき、と言ってしまえばすごく限定的に見えますが、そこから新たなる地平見渡せるような原理的なホラー映画の論理が展開されます。ホラー好きなら知らない人もいないような超有名理論なんですが(自分は最近までしらなかった)、今ではそれをわざと踏み越えて、面白いホラー映画を作り人もおおい気がします。

あと、本書で特に目を引くのは、小中氏の経歴、脚本を作るにいたった経緯。まさに、青春といっても過言ではないでしょう。

幼少の頃から抱き続けた淡い監督志望の夢や、若いころのホラー理論。きっとホラーが好きな人からすると一度は思ったことがある、ちょっとむず痒いような気持ちが赤裸々に語られています。

それに、今を代表するビックなホラー監督との邂逅や、彼が作ってきたホラーの歴史。 ホラー好きにはたまらないと思います。

やっぱり思ったことは、彼の生きてきた時代はまさに、Jホラーの黄金期と言っていいと思います。

黎明期から黄金期、いまでは見る影もありませんが、あの時代はよかったなあ、と回顧せざるを得ないホラーの熱気が本書を通じて伝播するようです。

ホラー好きはもちろん、ホラーの入門としてもきまりなく適書だと思います。