『Perfume Locks』2005年編~終~ | Perfumeとグルメの日記

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Perfumeと食べ歩き(主にラーメン)が好きです。
この2つのテーマについてのエントリーが中心です。

2006年編の前に終わっておきたいので残りを書きますね。




篠木雅博氏のインタビューをもう一度読んでみると、2004年9月にメジャーデビューの話を持ちかけられた時の、アミューズ側はPerfumeの事を、「中田ヤスタカの作るテクノサウンドを歌う近未来型アイドルユニットとして、秋葉原のコアな層に人気がある」とプレゼンテーションしているようです。




篠木氏ら徳間側は実際に原宿や秋葉原に何回か足を運んで、Perfumeのライブを見たそうですが、その感想は芳しいものではなかったようで、デビューさせようと決めた理由がスタッフの熱意だったという答えがそれを物語っています。




Perfumeに手応えを感じない徳間は、とりあえずアミューズ側のプレゼンテーション通りに、「アキバ」や「近未来」というキーワードを頼りに、秋葉原のコア層に向けた戦略を練りました。
アミューズ側もそれに沿う形で秋葉原での活動の比重を強めます。




しかし、これこそが重大な事実誤認だったのです。




Perfumeは秋葉原のコアな層にはウケる要素は1つもありません。




秋葉原のコアな層とは、ゲームやアニメの中のキャラクターにシンパシーを覚える人々。
いわゆる『ヲタク』です。



彼らはそれらのキャラクターが動画や絵に描かれた、つまり二次元の中に存在するからこそシンパシーを覚えるのです。
自分が所属する社会に実際に存在する女の子に確からしいモノを見つけられないか、或いはそれから忌避する為の対象として、好みのキャラクターを自分の中に作った疑似空間に反映させて楽しむのです。
(決して疑似恋愛ではありません)




一方、Perfumeはどうでしょう?




同じライブであっても、アニメの声優が自身の声で演じるキャラクターの枠から一歩もはみ出さないのとは正反対に、Perfumeは大きな声で歌うし、汗もかけば涙も流す。
彼女たちは何かのキャラクターではなく、実在の三次元の生身の人間そのものなのです。
(2009年の彼女たちの苦悩の原因は正にこの部分の克服だったと思います)



ヲタク側としては、せっかく実社会のそういう事を忘れる為にアキバに来ているのに、みたまんま三次元の女の子に自分たちの縄張りを荒らされる事は不愉快なはずです。




では、2004年までに秋葉原のイベントに来て盛り上がっていた観客とは誰だったんでしょう?




それはPerfumeのイベントの為に、電車に乗ってわざわざ他の街から来ていた一般のアイドルファンです。
彼らは二次元のモノでなければいけないという訳ではありません。
実際に歌い踊る三次元の女の子が好きな人々です。




つまり、Perfumeが秋葉原で盛り上がっていたというのは、実は秋葉原をイベント会場に選んでいたからという地理的な事だけであって、『Perfumeは秋葉原のコアな層にウケている』という最初のすり合わせが事実の誤認だったのです。




2005年に入って本格的にそのコアな層が集まるイベントに露出を開始すると、目の前の観客には上記の理由で当然受け入れられません。
その一方、今まで付いていたアイドルファンはそんなコアなイベントには参加したがりません。
この両者は似て非なる存在で交わる事はないのです。



結局Perfumeは2005年の大半を使って、自分たちに付いていたアイドルファンを振り落とし続けたという事になってしまったのです。




では2005年には全く光が射す事はなかったのでしょうか?




いえ、光はあったのです。それも随分皮肉な形で。




2005年8月28日に秋葉原にて、『アキハバラブ発売記念ライブイベント』がPerfumeの単独出演で行われました。
しかしこの日、タイトルの文字とは裏腹に翌日に発売を控えた『アキハバラブ』は歌われなかったのです。



秋葉原での活動の象徴であるこの曲は、Perfumeの目の前にいる「他の街から電車に乗ってやって来たアイドルファン」には何も響かないという事を、この日までにPerfume側の誰かが気づいたから、慌てて軌道修正を始めたのがこの辺りなのではないでしょうか。
そして、これ以後秋葉原で築いた人脈とほとんど交わる事はなくなり、Perfumeの影は秋葉原から消えていくのです。




「人間は努力をする限り迷うものだ」

ゲーテ




2006年、Perfumeはその舵を急展開させます。
それについては木曜日に本人たちの口から語って戴くことにしましょうかね(笑)。