2005-08-12 07:31:35

マラリア入院日記

テーマ:ブログ
●マラリア発症と治療の経過

私は、2005年3月6日(日)~30日(水)にかけて、西アフリカのシエラレオネに出張しましたが(実際にシエラレオネにいたのは、3月7日~27日の3週間です)、帰国して約1週間がたった4月7日に熱帯熱マラリアを発症しました。その経緯を以下に簡単にまとめておきます。

4月5日(火)
少し体がだるく感じられたので(倦怠感)、疲れがたまっているのかと思い、午後6時には仕事を切り上げ、会社から帰宅し、食欲はなかったので、夕食はとらずに、午後8時半には早めに休む。この時点では、熱はまだあまり感じず。

4月6日(水)
朝7時の体温38.6度。近所の内科医に行き、マラリアの可能性もあると説明したが、医師からは「おそらく風邪でしょう」と言われ、解熱用の抗生物質フロモックスと鎮痛・解熱剤ブルフェンをもらって帰ってくる(インフルエンザの検査もしたが、陰性だった)。会社は病欠。薬のおかげで、夜6時には熱は36.3に下がっている。朝、昼は何も食べられなかったが、夜は少し食欲がもどってきたので、軽く食べる。

4月7日(木)(入院日)
早朝3時ー4時頃に全身が悪寒におそわれる。朝6時には体温38.6度だったが、まだまだ上がりそうな雰囲気。体の中で次から次へと熱源が誕生し、熱がつきあげるように波状攻撃を仕掛けてくる感じで、体温が急上昇する。このこれまで経験したことがないような異常な熱の上がり方は、噂に聞くマラリアに違いないと考え、マラリア検査のできる病院に行くこととする(参考資料1参照)。都立駒込病院と国立国際医療センターに電話したところ、前者からは9時以降いつでも来てくださいと言われ、後者からは担当者が9時に来るまでわかりませんと言われたので、都立駒込病院 感染症科(〒113-0021 東京都文京区本駒込3-18-22、TEL. 03-3823-2101)に行くこととし、119番で救急車をお願いする。

埼玉県上福岡市の自宅から、朝のラッシュ時の川越街道をサイレンを鳴らしながら対向車線をどんどん走ってもらって、50分かけて午前9時40分に都立駒込病院に到着(聞くところによると、東京では救急車は管轄区域内の病院にしか配送してもらえないそうですので、埼玉県民でとてもラッキーだったと言えます)。救急車の中では、体温39.7度、最大血圧186だった(平常時の血圧は60-110程度)。意識はあるが、熱で頭はぼ~とし、体がからからにひからびていることを感じる。

都立駒沢病院で血液検査を受けると40分後くらいに、「熱帯熱マラリア」であることが判明、即入院が決まる。血液中の赤血球の1%にマラリア原虫が確認されたと言うことで、重症(赤血球の4ー5%にマラリア原虫)には至っていないものの、毎日血液検査をして経過を観察することとなる。

なお、マラリアだけでなく、他の熱帯感染症(腸チフス、B型肝炎、熱帯性出血熱等)が疑われたため、そのための検査(レントゲン、検便、心電図、触診等)を受け、検査結果が出るまで隔離病棟の個室に隔離されることとなる。

マラリアの治療は、「メフロキン」(Mefloquine、商品名:MephaquinあるいはLariam、1錠250mg 900円程度)と点滴(体内の水分補給と食欲がない間の栄養補給)。メフロキンはまず2錠を飲み、6時間後にさらに2錠を飲む。メフロキンを飲んだのはこの日だけで、この4錠だけで効果は1ヶ月ほど持続するという。なお、メフロキンには解熱作用はないため、最初のメフロキンを飲んだ2時間ほど後に解熱剤1錠も飲む。体温は夜6時には37.5度まで下がる。

4月8日(金)(入院2日目)
体温:朝6時37.6度、昼12時37.5度、夜8時37.2度。朝と昼に血液検査のため採血。この日のお昼から食事を取ってよいと言われ、病院の食事(一般食)が配給されるようになる。食事はまだフルには食べられないが、食べなくてはという意識だけで食べる。食事を食べられるようになったため、点滴はお昼で終了。

4月9日(土)(入院3日目)
体温:朝6時36度、昼12時38度、夜8時37.6度。朝と昼に血液検査のため採血。午前中は熱がないが、偏頭痛がし、午後になって熱がでる。血液中の血小板が減少していると言われ、歯茎等から出血すると血がかたまりにくい状態なので、やさしく歯を磨くようにと注意される。食事は残さず食べられるようになる。頭もすっきりしてきて、気分的にも余裕が出てきたので、暇つぶしに本を読み始める(退院までの3日間で文庫本4冊を読み終えた)。

4月10日(日)(入院4日目)
体温:朝6時36度、昼12時37.2度、夜7時37.5度。日曜日だからか血液検査なし。昨日と同じく、午前中は熱がないが、午後になって熱がでる。午前中の偏頭痛は昨日より少しましになる。この日の夜、入院後はじめて寝汗をかく。

4月11日(月)(入院5日目)
体温:朝6時36.3度、昼12時36度、夜8時36.8度。朝血液検査のため採血。はじめて一日中体温が36度台で安定する。お昼頃、ずっと待っていたマラリア以外の熱帯感染症の検査の結果が出る。陰性。これではじめて病室外に行ってもよいという許可が出、隔離状態が解除される。入院後はじめて病室外に出て、あちこち病院内を探検する。病室内のトイレで、シャワーも浴びる。夕方判明した血液検査の結果も良好なため、明日退院してよいとの許可が出る。

4月12日(火)(入院6日目)
体温:朝7時36.5度。午前11時に晴れて退院(天気は曇りで、外は冷たい風が吹いていましたが)。医師からは発症後1ヶ月程度は再発の危険性があるので、まだ無理はせず十分に健康に注意するようにと言われる。念のため、1週間後に再検査に来るようにと言われる。5泊6日分の入院費は、健康保険で本人3割負担で、47,780円だった。

●4種類のマラリアとその違い

マラリアには、熱帯熱マラリア(Tropical malaria、Falciparum malaria)、四日熱マラリア(Quartan malaria、Malariae malaria)、三日熱マラリア(Tertian malaria、Vivax malaria)、卵形マラリア(Ovale malaria、Ovale malaria)の4種類がありますが、マラリア原虫をもつハマダラカに吸血され、人の体内にマラリア原虫が侵入してから発症するまでの潜伏期は、熱帯熱マラリアで12日前後、四日熱マラリアで30日前後、三日熱マラリアと卵形マラリアは14日前後といわれています。つまり、マラリア流行地からの帰国後1ヶ月以内に発症することがほとんどです。

私が都立駒込病院に担ぎ込まれた時の状況、すなわち最初に1ー2時間の悪寒・体の震えがあり、その後悪寒・震えは消えるが、体温が急上昇した状態が4ー5時間続くという状況は、マラリアによる「熱発作」と呼ばれています。この熱発作の間隔は、四日熱マラリアで72時間ごと、三日熱マラリアと卵形マラリアで48時間ごとに起こりますが、熱帯熱マラリアの場合は高熱が持続し平熱まで下がることはほとんどありません。マラリアの治療は発症から72時間以内にすることが大切といわれており、治療が遅れると4ー5日後に重症化することがあり、最悪の場合、脳の血管壁にマラリア原虫に感染した赤血球がびっしりと付着して血流が悪くなるという「脳マラリア」となり、命に関わりかねない状態となります。

熱帯熱マラリアと四日熱マラリアは治療が成功し熱がひけば原虫は完全にいなくなると言われていますが、三日熱マラリアと卵形マラリアの原虫は、肝細胞内で直ちに分裂を開始することなくしばらく潜んでしまう「休眠原虫」が形成されることがあり、これが後になって分裂を開始して血中に放出されるとマラリアが再発するという「慢性マラリア」化することがありますので、治療にも時間がかかります。

●ハマダラカとマラリア原虫

マラリア原虫はハマダラカ(Anopheles)によって媒介されますが、ハマダラカは世界中に400種近く存在し、うち50種以上がマラリアを媒介するそうです(ハマダラカの写真については参考資料2参照)。マラリアは、世界100カ国以上で毎年3~5億人にマラリア原虫を感染させ、毎年150~270万人を死亡させており(その大部分は5歳未満の乳幼児)、日本でも毎年海外帰国者100ー150名が発症しているそうです。WHOによると、先進国の人間がマラリア流行地に予防薬を服用せずに行った場合、1ヶ月間にマラリアに感染する確率は3%程度だそうですので、97%の確率で感染しないと言えますが、何度もマラリア流行地に行っていると当然感染する確率は高くなります。また、先進国の人間がアフリカに2年住むと、約30%の人がマラリアになったという統計もあるそうです。

ハマダラカは湿地帯(日当たりがよい、浅い水の所、水のきれいな所)に生息しているため、熱帯多雨地帯とその周辺の草原、農作地帯がマラリア発生地と言われております。ハマダラカは、羽に白黒の班紋を持つことと、物にとまるとき(人体への吸血の際)、イエカ・ヤブカといった他の蚊と異なり、尻を上げて斜めに釘を刺したような姿勢に見えることが特徴です。一般に1500m以上の高原地帯や山岳地帯ではハマダラカの発生はないとされていますが、1800mの高地でマラリアが流行したとの記録もあり、油断はできません。

マラリア原虫は、ハマダラカの唾液腺に集まっており、メスのハマダラカが産卵のために吸血を行う際に唾液とともに人の体内に侵入します。人の体内に入ったマラリア原虫はいったんは肝臓に潜みますが、成長すると肝細胞を破壊して血液中に遊離され、赤血球の中に入ります。赤血球内で成長・分裂を繰り返し、8個~32個に分裂した段階で赤血球膜を破壊して遊離し、新たな赤血球に侵入して、また同じサイクル(無性生殖のサイクル)を繰り返します。この赤血球外に放出される際に発熱が起こります。

人間の体内には約6リットルの血液があり、血液1ミリリットル中に、男子で450万~500万個、女子で400万~450万個の赤血球がありますので、赤血球の1%にマラリア原虫がいるという状態とは、450万個/ml x 6000 ml x 0.01 = 2億7000万匹のマラリア原虫が体内にいるという計算になります。これだけの数のマラリア原虫が分裂して赤血球から飛び出すたびに発熱が起こるわけですから、マラリアによる熱発作中、いかに大量の発熱が体の中から襲ってくるかがわかります。

マラリアの熱の出方の特徴は、最初は穏やかな熱(ステップ1)なのでいつもの風邪かなと軽く考えていると、そのうち悪寒が走り(ステップ2)、急激な体温上昇が襲って来る(ステップ3)というものです。

●マラリアの治療薬・予防薬

シエラレオネのマラリアは90%以上が熱帯熱マラリアといわれていますが、ほとんどが「クロロキン」(Chloroquine。商品名:Aralen、Avlochlor、 Nivaquine、Resochin等。1錠1円程度と安いのが特徴)耐性マラリアですので、予防・治療薬としては「メフロキン」が一番ポピュラーです。メフロキンは、効果が長く持続する(1錠飲めば約1週間効果がある)強い薬ですが、副作用が強いことでも知られています。メフロキンの副作用としては、胃腸障害(ひどいときは嘔吐も)、平衡感覚障害(ふらふらして、歩行困難な場合も)、悪夢や幻覚(アメリカのPeace Corpsの統計では、メフロキン服用者の3割が悪夢を見たそうです。躁鬱病患者が服用すると躁鬱が激しくなるとも言われています)等があげられていますが、私は幸いなことに、特に強い副作用を感じることはありませんでした。私の場合は、重症マラリアではありませんでしたので、メフロキン錠剤を経口投与されましたが、重症患者の場合は直接注射用キニーネ等を血液中に投与することも行うそうです。

メフロキンは赤血球を包み込み、マラリア原虫が赤血球内に入り込めないようにする作用を持っています。赤血球内に入り込めなかったマラリア原虫は死滅します。しかし、すでに赤血球内に入っているマラリア原虫に対しては無力ですので、メフロキンを服用しても、服用前に赤血球内に入ってしまったマラリア原虫がすべて外に出てくるまで、すなわち2ー3日は発熱が続きます。

なお、WHOによると、シエラレオネではメフロキン耐性マラリアが1%ほど報告されており、メフロキンが万一きかなかった場合には、中国のマラリア薬(Artesunate。漢方薬の黄花蒿(キク科ヨモギ類のクソニンジン)から抽出されたアルテミシン水溶性誘導体。中国・桂林製薬やタイ・Atlantic Pharmaceuticalsの商品やスイスMepha社のPlasmotrim Lactab、Plasmotrim Rectocaps等がある)やフランスのマラリア薬(Halofantrine、商品名:Halfan)を試してみますと言われました。現在日本国内で認可・販売されているマラリア薬は、経口キニーネ、ファンシダール、メフロキンの3種類だけだそうで、上記の薬はともに厚生省未認可で、研究・実験用に日本に輸入されているだけですので、健康保険がきかず、自己リスクで投薬を受ける旨の誓約書にサインしてもらいますと言われました。

なお、メフロキンはマラリアの予防薬としても使われますが、その場合は、マラリア流行地域の到着1週間前より服用を開始し、1週間間隔で毎回1錠を服用し、マラリア流行地を離れた後も4週間服用を続けることになっています。日本でメフロキンを入手できるところとしては以下のような所があります(メフロキンを予防薬として購入するときは、健康保険が適用されません)。

(1)東京慈恵会医科大学 熱帯医学研究部
〒105-0003 東京都港区西新橋3-25-8 
TEL. 03-3433-1111

(2)海外勤務健康管理センター(JOHAC)健康管理部 予防接種外来
〒222-0036 神奈川県横浜市港北区小机町3211
TEL: 045-474-6003)

(3)赤玉薬局
〒141-0033 東京都品川区西品川2-23-18
TEL: 03-3491-1256、FAX: 03-3491-1261

通常、海外旅行前にメフロキンを入手するには、マラリア外来のある医療機関(たとえば上記の(1)や(2))に必ず旅行者本人が行き、外来で診察を受けて医師の処方箋をもらって購入する必要がありますが、(3)の赤玉薬局では、赤玉薬局に行く必要はなく、玉薬局からFAXで送られてくる「抗マラリア剤申込書」にある問診表(渡航予定地(国、都市名)、渡航期間、体重、肝臓・腎臓の既往症、アレルギーの有無、抗マラリア剤服用の経験、現在治療中の病気と薬)に答えを書き込んでFAXすれば、その記載内容から医師が判断して処方してくれ、薬代を銀行振り込みしますと(1錠あたり1,300円と送料400円)、宅急便で送ってくれます。なお、メフロキンを飲んだ場合は副作用がひどくなるので、アルコールを飲んではいけないと注意をされました。

また、赤玉薬局以外では、新宿ビルクリニック(TEL: 03-3340-0245)でドキシサイクリン(Doxycycline)というマラリアの予防薬を処方してくれます。ドキシサイクリンも、クロロキン耐性マラリアが大半を占める地域で使用されている薬だそうです。

もちろん最大のマラリア予防法は、夜、蚊に刺されないことですので、蚊取り線香や蚊帳を利用し、夜間はなるべく長袖長ズボンを着用して肌を露出しないようにすることが有効だといわれています。

なお、私は試したことがありませんが、蚊帳に関しては、住友化学が開発した「オリセットネット」という防虫蚊帳もあるそうです。住友化学がタンザニアはじめアフリカ各国の企業に無償で技術提供を行ってライセンス生産を行い、UNICEF/WHOがアフリカでマラリア対策用に配布している、3年間防虫効果が持続するという防虫蚊帳です。ほ乳類に毒性の低いピレスロイド系の薬剤ペルメトリンを練り込んだ樹脂で編まれており、従来の蚊帳よりも網の目が大きいため、蚊は入らないが風通しがよいのが特徴だそうです。3つのサイズがあり、8,000~11,500円で販売されています。入手方法は以下のホームページをご参照くださ
い。

http://malaria.himeji-du.ac.jp/IPublic/malaria-net-j/general/olyset-net.html

以上、私自身の健康管理の甘さから、今回マラリアを発症し、多くの皆様にご心配とご迷惑をおかけし、本当に申し訳ございませんでした。私のケースをもって他山の石としていただければと思い、マラリア発病と治療の様子や医師から聞いたマラリア情報やインターネットで調べたマラリア情報をまとめておきました。少しでも皆様の今後のご参考にしていただければ幸いです。

(参考資料)
1。 マラリアの検査・治療ができる日本の病院リスト
http://www.forth.go.jp/keneki/kanku/disease/malaria/malsodan.html
http://malaria.himeji-du.ac.jp/IPublic/malaria-net-j/hospitals.html

2. ハマダラカの写真
http://www.museum.kyushu-u.ac.jp/INSECT/10/10-1-2p.jpg
http://www.tm.nagasaki-u.ac.jp/medical/Mosquito%20Photo/An%20minimus.jpg
(コガタハマダラカ)
http://www.tm.nagasaki-u.ac.jp/medical/Mosquito%20Photo/An%20saperoi.jpg
(オオハマハマダラカ)
http://www.tm.nagasaki-u.ac.jp/medical/mosquito_around_the_world.html
(ガンビエハマダラカ)
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