休みの日、どこに行こうか。金がなければ、街に出てもつまらない。どうせ、人ごみで酔うだけだ。それと、わたしは新宿、渋谷、池袋という、買い物とグルメには全然興味がないから、そういう街に用はない。通過するときは仕方がないが、わざわざそこに行くために降りることはない。
 まずは、都会では自転車で走ること。交通費もかからないのがいい。山手線の内側などは、実に狭い範囲で、きっと青森市よりも狭い。その中を歩いたり、自転車で走ったりすれば、距離感と大きさが解る。たいしたことはないのだ。
 
 それで、また友人と二人で自転車で日曜をあちこちふらつく。金のかからないところに行こうということになる。まずは、自転車で巣鴨まで行く。10分くらいで行ける。何をしに行くのかというと、まずは、JRの駅に寄って、大人の休日倶楽部のカードで、都内の美術館、博物館、水族館に動物園、庭園などが無料になるぐるっとパスというのを買いに行く。都内の78の施設が入れて、2千円なのだが、そのカードで買えば一割引きで購入できる。入館料が千円のところもあるから、そういう美術館2つ回れば元が取れる。なんとも素晴らしいパスなのだ。有効期間は二か月だから、この日から日付印を押してもらうと、6月25日までなら使える。
 わたしは、東京に去年出てきて、7月のひと月だけ、そのパスを使った。7割は消化したか。毎日出かけたし、一日に2.3カ所を回った。都内に散らばるので、区域を決めて、世田谷なら無駄のないルートで、地下鉄と徒歩で行ったり、自転車で行ける範囲はそれで走る。去年の夏は8月いっぱい青森に帰っていたので、ひと月しか使える時間がなかった。それでも50以上の施設を回る。
 気をつけないといけないのが、開館時間と休館日。月曜日は大概休みで動けない。それと、企画展の準備で休んでいるところに行って、無駄足を運ぶことも多々あった。それからは、ネットで調べるか、直接その施設に電話を入れて、開いていることを確認してから向かった。いままで三度も無駄足を運んだのが根岸の書道博物館だった。どうも運がなく、休みのときに行く。

 今回は、そういうことがないように、効率よく回りたい。しかも、わたしの仕事の休みの木曜日と日曜日に回るか、別の曜日でも夕方からならぎりぎり入れる。
 巣鴨に行ったのは、テレビ番組で見たランチの安い店に行って、昼飯にしようと、わざわざそのために出かける。巣鴨駅の北側の呑み屋街の小路にその食堂はあった。トンカツ定食が500円というから、本当かと行ってみた。わたしは、テレビを見ていなかったが、相方が見てメモしていた。きっと肉がハムみたいに薄いとか。そしたら、テレビでは肉厚であったという。果たして出てきたのは、薄かった。がっかり。おかずが3品と味噌汁がついて、まあワンコインランチだから、我慢しよう。
 その店の裏にあるのが、韓国料理店で、そこも紹介されていたようだが、ランチが600円で食べ放題という。店だけを見てきたが、それは次回にしよう。しかも、そのときは、朝飯だけでなく前日も飯抜きで行かないと。
 東京はなんでも高いというのは間違いで、青森でも驚くようなサービス値段で提供している飲食店がいっぱいある。そういうところをネットで探したりして、古本を売った代金で食べ歩くという楽しみができた。ささやかだが、豪華なランチはいくらでもあるが、激安で美味いというのを探すのがお値打ちだ。

 そこから今度は根津神社まで走る。それも文京区の情報だが、神社の裏庭の山、つつじが岡が満開だという。桜が終わり、今度はツツジだ。たぶん、日曜で満開というから混むだろうと思って入る。普段は、近くにある神社で前を通るのだが、さほど参拝客はいないのに、さすが、年に一度のツツジの名所だ。参道という参道を露店が埋めていた。歩くのも大変で、神社にお参りする行列もできていた。初詣のときでもこんなには来ないだろう。つつじが岡はすれ違うこともできない人で渋滞していた。上りの道では、カメラで写す人たちは、左側に立って撮っていた。右側は歩く人。そういう決まりが自然とできているのは、エスカレーターと同じなので一人笑っていた。色とりどりのツツジは種類も多い。花の形も違う。天気もよく暑いくらいだ。初夏という感じもする。友人は感激していた。わたしは人の多さに感激していた。

 人を避けるように、そこから谷中に出る。どこをどう走ったか解らないほど、小路ばかり走った。大名時計博物館というのがあって、立ち寄るが、個人でやられているようで、何か入りづらい。有料と立て看はあるが、いくら取られるのか書いていないし、なんとなく蔵の入口が普通の民家のようで、パスすることにした。古民家をカフェにしているところも覗く。谷中を好きになった外人の画家が絵処という画廊を古い建物を利用してやられている。そういうのも覗くだけ。
 前にも入って感動した朝倉彫塑館に入る。建物も重要文化財で、彫刻家の朝倉文夫のアリトエと住居が作品と共に保存されている。ぐるっとパスはそこで引き換える。最初の券を使う。こじんまりとした日本庭園と和風の住居と洋風の建物、屋上庭園と、よく造られている。友人はこんなところに住みたいと言う。細部に渡って、芸術家の設計思想と手が入っている。それがうまく調和されている。落ち着く。

 まだ時間があるので、そこの近くにある古本屋で昨日売った古本の代金をもらい、どこか行きたいと、友人が一人乗っている。まあ、自転車で走るのも運動にはなる。どこか公園で花が咲いているところというので、西日暮里から熊野のほうに走る。都電荒川線が走っている。そこから河原に出たいというリクエストで三河島から荒川区を抜けて、隅田川、荒川に至る。そこは足立区だった。まるで東京縦横無尽だ。大きなホームセンターがあったので見学だけ。その地下にあるスーパーで、アイスが半額とあるので、買って、尾久の原公園のベンチで食べる。夕方で落日を見ながら、川風に当たる。
 今日使った金は一人580円だった。