傑作、来ました。
ぃや、2009年製作なので、とっくに来ていたのだけれども。
POVである。
フェイクドキュメンタリーである。
つまり、ドキュメンタリーの体をして事件や人に密着。
カメラは手持ち。
低予算。
ここにあるのは知恵と工夫。
映画的に失敗も成功も紙一重の中で、狂気と正気が紙一重の男を描く。
これが滅法、面白い!
どこまでが用意されたセリフで、どこがアドリブなのかもわからない。
カメラは、啓示を受けたというフリーターに密着。
その男の中身が浮き彫りになるにつれて、寒気が高まる。
ああ、なんという生々しさか!
フリーターを演じた宇野祥平がとてつもない!何なんこの人!天才か。たぶんそう。
絶妙にダメな人間を演じてこの自然さ!
ご本人がダメ男の可能性もあるけれども、というくらいにナチュラル。
あまりにも圧倒されて、取り憑かれたように見入ってしまった。
監督が惚れ込んでのキャスティングが大成功。最近の活躍も、大納得。
AD役の東美伽のクールさがいい。
高槻彰のプロデューサー感がいい。
近藤公園が出ていて驚いた。
監督はホラー界の天才・白石晃士だ。
白石監督の十八番スタイルだから間違いがない。
特異な展開が、まるで当然の帰結のように映し出される説得力。
加えて、白石監督はアップに耐え得るモチ肌だと分かる。
『オカルト』というタイトルは観終わってから実感するわけだが、幽霊系とは違う。
ある殺人から始まる顛末だ。
今作に本人役で登場する黒沢清監督の、とある傑作ホラーに通じる印象もある。
私事ながら人材派遣業の受付をしていたことがあり、見聞きした光景の数々だった。
現代社会の問題も含有。
それがまた、リアリズムを生んで沼に引きずり込まれるよう。
こういうことかもしれないなと思う、人の衝動性というのは。
突発ではなく、過程を踏んでいる。
超常現象が織りなす、ワケの分からなさも格別。
そうして、観ている間にドンドンと気持ち悪くなってくるのだ。
精神的にではなく、胃がでんぐり返り始める。
グッタリしてくるので、もしや呪い的な何かではとドキドキしていたが、気づいた。
激しい手ブレPOV画面に酔っていたのだった。
TV画面で観ていたのに、だ。
恐るべし、本気のフェイクドキュメンタリー。
あのカラスもCGではないらしい。
物事の本質に肉薄する、この迫力よ。
GYAO!
2009年・日本
監督・脚本・撮影・編集: 白石晃士
音楽: 中原昌也(Hair Stylistics)
出演: 宇野翔平、白石晃士、高槻彰、東美伽、野村たかし、ホリケン。、近藤公園、吉行由美、篠原友季子、大蔵省、黒沢清、渡辺ペコ
※鑑賞の感想です。情報に誤りがございましたら御一報頂けましたら幸いです。