先週末のこと。
バイエルン・ミュンヘン vs ボルシア・ドルトムントの試合が深夜1:30から
放送していて、どうしても見たかったので、雨の降る中、
同級生のゆきちゃんのマンションにお邪魔してきました。
彼はスカパー!と契約してるので、どうしても見たいサッカーの試合がある時は
彼の自宅にお邪魔して見せてもらっています。
居間にて、俺がみやげ代わりに持っていったシングルモルトウイスキー山崎を
二人でチビチビやりながら試合を見ていました。
とはいっても、ゆきちゃんは昔からサッカーなんか全く分からないんだけど…。
「今のレヴァンドフスキの裏を取ったプレーはすごい良かったね」なんて言っても、
「それってどういうことなの?」とか聞いてくるぐらいだし。
観戦中、我々は刺身の盛り合わせをつまみながら飲んでたのですが、
彼がテーブルの端にある醤油を取ろうとして立ち上がったんです。
その瞬間、彼の体からふと変なニオイが漂ってきました。
「……お前、なんか臭い」
思わず言ってしまった俺。
「え?臭いって口?」
「いや口じゃない。
なんか首の辺りから臭ってきたよ」
「えーーー俺さっき風呂入ったけどな…。
どんなニオイだった?」
自分のニオイが気になるのか、こと細かく聞いてくるゆきちゃん。
彼から漂ってきたニオイは、俺もよく説明が出来ないんだけど、
ひと言でいうなら「おじさん特有のあの臭い」でした。
西武池袋線のラッシュアワー時、おじさんたちが密集してる辺りから必ず漂ってくるあの臭い…。
それを彼に話すと、
「ああ、それは自分でも薄々感じてたよ。
俺の枕さ、だんだんうちの親父の枕のニオイになってきてるんだよね」
などと言いました。
----親父の枕のニオイ?
どんなニオイなのかしら…。
ついつい気になる俺。
「どれ、お前の枕のニオイちょっと嗅がせてみろ」
俺とゆきちゃんは2DKの居間の隣にある寝室に向かいました。
サッカーの試合もちょうど前半戦が終わってハーフタイムだったので。
若い女性の髪の香りなら嫌いな男はまずいないだろう。
そうではなく、43歳のオッサンの枕のニオイを嗅ごうとしてるのだ。
酔っ払ってたとはいえ、俺もどうかしてる 笑。
寝室(和室)のど真ん中には既に布団が綺麗に敷かれていました。
彼はベッドよりも布団派で、毎日寝しなになるとせっせと布団を敷いています。
んで、肝心な枕にはトムとジェリーのタオルが巻かれている。
何故にトムとジェリー? 笑。
----早速、息を止めながら枕に顔を近づけ、おそるおそるニオイを嗅いでみる。
「…………」
「で、どうなの聖輝?」
しばしの沈黙、俺は言いました。
「……お前、サバ読んだろ?」
「どういうことだよ?」
不安そうに尋ねてくるゆきちゃん。
「これじいさんのニオイだろ!
おじさん通り越してじいさんだよ!」
そう、彼の枕から漂ってきたのは、じいさん特有のニオイ。
昔、埼玉の田舎にある遠い親戚の家に行った際、そこのじいさんの
寝室に入るとこのようなニオイがしたものです。
鳥が出てくるでっかい柱時計と、孔雀の立派なはく製が置いてあったじいさんの寝室…。
だから決して臭いというわけではなく、どちらかといえばノスタルジー溢れる懐かしいニオイ。
ゆきちゃんは自分の枕を「おじさんっぽいニオイ」だと主張したが、それは違う。
俺が嗅いだとこ、それは紛れもなくじいさんのニオイだ。
つまり彼はサバを読んだということ。
グラビアアイドルやAV女優で、本当は26歳なのに「18歳ですっ」なんて
サバを読むのがいるが、それと同じ 笑。
俺はついでに寝室の押し入れをガーーーッと開けてみたら、やはりそこもじいさんのニオイがしました。
もしこの部屋に女性が泊まりにきたら彼は敷くのだろうか?
じいさんのニオイのする西川羽毛布団を 笑。
パッと枕を見ると、何故かトムとジェリーが悲しい表情をしているように俺には見えました 笑。
----それにしても驚きでしたね。
もともと彼は神経質で、中学の頃は学校にこっそりコロンを持ってきていました。
とはいってもコンビニで売ってるようなギャツビーの安物コロンでしたけど。
体育の授業が終わった後なんかも、ニューエイト・フォーでシューーッとやってたし…。
それぐらい彼は昔から自分のニオイには気を使ってました。
あと小学校の時も、俺は低学年の頃までは身体が小さかったため、
ゆきちゃんの着れなくなった衣類をよくもらってたんです。
お下がりってやつ。
我々は同い年ですけど、当時、身体の大きさは顕著だったので…。
彼のお母さんが、着れなくなった衣類を紙袋に詰めて俺んちに持って来てました。
その際、彼のお母さんは、
「洗濯しないでそのまま持ってきちゃったから洗ってから着てね」
なんて言ってたけど、どの衣類も綺麗で洗剤のいい香りがしたのを覚えてます。
じいさんのニオイなんか一切しなかったですよ。
----サッカーの試合が終わった後、酔いも回ってきたこともあり、
そのまま彼の自宅に泊まってきました。
んで、翌日のお昼前ぐらいに起きて、お暇してきました。
帰り際、彼は何気なく俺に聞いてきたんです。
「……俺さ、そんなにおじさんの臭いするかな?」
だからおじさんじゃなくてじいさんでしょうが 笑。
俺は彼に耳の後ろをよく洗うよう提案してみました。
加齢臭というのは、耳の後ろから漂ってくるとどこかで聞いたことがある。
だから入浴時に耳の後ろをキレイキレイ・ボディソープで万遍なく洗えば、
ニオイもある程度は抑えることが出来るんじゃないかと…。
それとファブリーズを買ってきて、寝室の押し入れ、ならびに枕や布団に
マメにシュッシュした方が良いかも…とサジェスチョンしました。
んで、更に彼は俺に聞いてきました。
「聖輝さ、お前の枕もじいさんの臭いするだろ?
怒らないから正直に言ってみ?」
「…………」
こら!一緒にするな! 笑。